コミュニティへの感謝をこめてースティーブストン日本語学校 『千羽鶴プロジェクト』

完成した千羽鶴を持つ教師。Photo courtesy of The Steveston Japanese Language School
完成した千羽鶴を持つ教師。Photo courtesy of The Steveston Japanese Language School

 スティーブストン日本語学校は、日系市民の多く住むスティーブストン(リッチモンド南部)に位置し、1960年の開校以来、コミュニティにおける日本語と日本文化の普及活動に積極的に取り組んでいます。

 2020年3月の新型コロナウィルス感染拡大により、本校はオンライン授業に移行し現在に至っています。毎年生徒が楽しみにしていた運動会や学習発表会はできなくなりましたが、お正月パーティーやお楽しみ会はオンラインで開催され、オンラインでできることを創意工夫して提供し続けています。

 本校は地元スティーブストンやリッチモンド市との繋がりも深く、長年様々なコミュニティイベントにも協力をしています。しかし、コロナ禍でイベントはほとんど中止となり、コミュニティへの参加も限られています。直接会えない中、お正月パーティーやお楽しみ会のようにオンラインで何かできないかと考えていたとき、「コミュニティのために頑張っている人たちに感謝の気持ちを込めて千羽鶴を贈ろう!」という案が出され、2021年度の学校のプロジェクトとして実行される運びとなりました。

 贈り先には、長年本校と協力関係にあるスティーブストンコミュニティセンター(SCC)が選ばれました。教室の入っている日加文化センターの建物はSCCが管理しています。教室での対面授業が行われているとき、SCCのスタッフは生徒が気持ちよく勉強ができるように、机や椅子が壊れていないかなど些細な部分にまで心配りをして、温かく見守ってくれています。また、教職員や生徒・保護者にもいつも笑顔で対応し、日本語で「こんにちは!」などと挨拶もしてくれるので、みな気持ちよく施設を使用することができています。オンライン授業になっている現在も、教師がオフィスで授業準備をする際に、「日本語学校の生徒はみんな元気に勉強しているか」など気にかけてくれています。何気ないやりとりですが、教職員も本当に気持ちが明るくなります。

 こうしたSCCのスタッフに感謝の気持ちを示そうと、全生徒とその保護者に千羽鶴プロジェクトへの参加を呼びかけました。

教師による糸通し。Photo courtesy of The Steveston Japanese Language School
教師による糸通し。Photo courtesy of The Steveston Japanese Language School

 2021年9月の新学期開始直前に全生徒に折り紙が配布され、「1000羽を目指してがんばろう!」と学校からのプロジェクトの趣旨を送りました。折り鶴の作り方を知らない生徒もいるため、家庭で日本語を話す中学高校生クラス(普通科シニアクラス)の生徒がzoomで「折り鶴セッション」を担当し、鶴の折り方を教えてくれました。このセッションは、折り鶴を知らない生徒の文化体験の場になっただけでなく、折り鶴指導を担当した中高校生達からも「難しかったけど、とてもいい経験になった」とのポジティブな評価を得ました。クラスの枠を超えた生徒同士の交流が生まれたことも、このプロジェクトの大きな成果でした。

 10月後半に回収された折り鶴は、当初の目標を大きく上回り、合計約1100羽も集まりました。中には、自分の折り紙を使って100羽も折り鶴を提供してくれた家族もあります。頑張って鶴を折ってくれた生徒、保護者、教職員に、改めて感謝を表します。

 その後、教師が手分けをして折り鶴に糸を通していきました。針と糸を使っての時間のかかる作業でしたが、1羽1羽を丁寧に根気よく繋いでいき、その結果、綺麗な折り鶴が完成しました。

本校職員とSCCの職員。Photo courtesy of The Steveston Japanese Language School
本校職員とSCCの職員。Photo courtesy of The Steveston Japanese Language School

 12月7日には、日加文化センターにて SCCのスタッフへの千羽鶴贈呈式が行われました。式では、まず鈴木知子校長による日本での千羽鶴の意味についての説明があり、また本校と地元住民のためにコロナ禍でもサポートをし続けてくれているSCCのスタッフに対し、感謝と称賛の言葉も伝えられました。更に、この先1000年に渡ってSCCがコミュニティと共に繁栄していくことへの願いが述べられました。スピーチ終了後、贈呈式のために駆けつけた普通科シニアクラスの生徒たちが、SCCのスタッフに千羽鶴を手渡しました。今後コミュニティーセンターを訪れる多くの人に見てもらえることを願います。予想よりも多く折り鶴が集まったため、小さい千羽鶴も作られ、日加文化センター内の受付け近くに飾られました。コロナ終息後、日加文化センターを訪れる際には、ぜひご覧ください。

 コロナ禍で実施された千羽鶴プロジェクトは、本校のメンバー全員が参加し、大成功に終わりました。新型コロナ感染拡大の不安が続く中でも、みんなで協力して千羽鶴を完成できたことに大きな意義を感じ、教職員一同大変嬉しく思っています。また、地元コミュニティとの繋がりを再確認でき、本校の使命の一つである「日本文化の普及」、更にはカナダの多文化主義に貢献することもできたと自負しています。

 このプロジェクトを通し、たとえ対面で会えなくても、学校のメンバーと、そしてコミュニティのメンバーとお互いに繋がっていることを改めて実感しました。今後もこの繋がりを大切にしていきたいと切に願っています。

*千羽鶴贈呈式までの対面による作業は、感染防止策を徹底して行われました。

(記事提供 スティーブストン日本語学校コミュニケーション委員会)