日本語教師 矢野修三
このようなすごい小説を日本で出版したカナダの友人がいます。彼の名はブライアン・ダン。本来の職業は作家ではなく、弁護士さん。ブライアンとの出会いは、およそ20年前。彼の妻は日本人で、当校の日本語教師養成講座を受講されたのがきっかけでした。
日本語が話せるカナダの弁護士と聞いて、日本語教師として興味を持ち、初めてお会いしてびっくり。彼の日本語はうまいなどというレベルではなく、とても流ちょうで発音も美しく、まるで日本人と話している感じ。さらに古典(平家物語)などにも造詣が深く、驚きの連続でした。
仕事の関係で、日本に転勤され、しばらくお目文字も叶いませんでしたが、去年の暮れに、「枯楓の救い」という題名の小説を文芸社から上梓したとの報告を受け、先ずはびっくり、そして納得。日本語の小説家としてのデビューに拍手、万歳でした。
たまたま、先月バンクーバーに一時帰国されたというので早速会って、この本を手にしながら、いろいろなトピックに花が咲きました。
まず、この小説の内容ですが・・・、心にトラウマを抱えたカナダ人弁護士と東京の下町でひっそりと暮らす女性との・・・。著者が表紙の帯に書いてあるごとく、「愛は寂しさも悲しさも増幅させ、そして昇華させてくれる」です。うーん、とても含みのある、深遠な雰囲気が漂う、言葉遣いですね。すごい。
それにしても、東京の下町、銀座、京都、鹿児島、そしてバンクーバーと舞台を変えて繰り広げられる「禁断の愛」であり、彼がどうしてこのようなストーリーを思いついたのか・・・。それがものすごい驚きでした。ナント、全体をまとめ上げるまでに約8年も費やしたとのこと。
さらに、題名「枯楓の救い」ですが、枯楓(こふう)の読み方も難しく、最初はあまり馴染めませんでしたが、これに関して、彼曰く、「ちょっとしたひらめきでした」とのこと。
まさしく、主人公はカナダ人でカナダといえば「楓・かえで」。それにあらすじと強く関係する「枯れかけた楓」や「救われる」などを加味した「枯楓の救い」がひらめいたようです。
結びのエピローグも素晴らしく、なるほど、なるほどと何度も頷きながら読み終え、この題名「枯楓の救い」がとてもぴったり、ストンと腑に落ちた次第です。
そして、最後に彼とのこんなやり取りで締めくくりました。「日本を離れて、バンクーバーにお住まいの日系社会の皆さんや一度でもバンクーバーで過ごされた経験のある方々に、ぜひこの本を読んでいただき、日本の伝統文化の素晴らしさや日本語の奥深い表現などを再認識していただければ嬉しいですねーーー」 以上也。
ブライアン・ダン著「枯楓の救い」(文芸社)
日本では書店やネットで購入可能、カナダからは電子版を電子書籍サイトから購入できる。

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