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閑散としたバンクーバー空港。Photo © the Vancouver Shinpo

~日本入国体験談(前編)~

 日本政府が3月18日に決定した「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う水際対策強化に係る新たな措置」により、今は日本への渡航を避けているという新報読者も多いと聞く。しかし、やむを得ず日本に渡航する必要がある人もいる。

 4月に日本に飛び7月にカナダに戻ってきた優子さん(65歳、女性)が入国時の体験談を寄せてくれたので2回に分けて紹介する。
(注:寄稿された体験談に編集部で見出しを付けた)

***

バンクーバーから羽田へ

 帰国便は4月下旬NH511、バンクーバー発羽田行き。実はバンクーバーから全日空に乗るのは初めてです。ゲート待合室にはざっと数えて50人ほどしかいません。子ども連れが一組のみ。車いすゼロ、年寄りは私だけか。ああもう少し先輩のご夫婦がいらっしゃる。

 もちろん全員マスク。待っている乗客もマスク。マスクが消えているというのに、みんなどこから手にいれたのかしら。大半が若者。大きな紙袋を抱えた人が多いのはワーキングホリデーを切り上げて帰国か、という感じです。学生という雰囲気ではない。

 ガラガラの飛行機というのは快適です。お手洗いは半分専用。いつも利用している某航空会社よりはるかに美味しい機内食。器も上等。マスクでさらに美しげなスチュワーデスの方々。毛布の入っていたビニールをまとめておけば何にも言わなくてもすっと持って行ってくれる。やさしいお声を何度もかけていただきました。

 多謝。機内でコロナウイルスに関する注意書と申告書をもらって記入。提出用4枚込み全5枚。ライン(Line)の使用許諾書というのが目新しい。ラインで通信しないと、帰国後2週間、保健所からときどき直接健康状態チェックの電話がかかってくるそうです。しかし、A4版片面印刷もったいないと思うのは高齢者だから?注意事項もウェブサイトに掲載されていたのと同一の文章。まあいいか。

 しかし、A4サイズ5枚の紙を持って動くって、両手に荷物をぶらさげた人はどうするのかね、と老婆心。私はリュックで両手が空いていたからよかったけど、折りたたんでいいものかどうか不明の紙を、1枚ならまだしも5枚も手に持って歩くことになりました。

日本到着してから機内で25分待機

 さて無事(羽田空港)着陸。どちらのドアが開くかと用意して待っていると、「皆さま、申し訳ございませんが、検疫官が到着するまで今しばらくお座りになってお待ちください」とアナウンス。席へ戻ると「他の飛行機もあるため時間がかかっているようです。いましばらく…」とさらなるアナウンスがあって、水を配りはじめました。「明日乗継便のあるお客さまを先に…」というのが次でした。あら知らなかった。国際線に乗り継ぐ乗客もいたのでした。

 まず通路を10人ほどが降りていきました。それからしばらくしてやっと出してもらえました。想像していた白いPPE(防護ガウン)に身を固めた検疫官は現れず。到着から飛行機を降りるまで25分ほどでした。

 ついに降りました。感動の日本第一歩。「はい、こちら」の指示にうながされてひたすら歩いてゲート142番に誘導されました。ゲートカウンターのPAシステムに一番えらそうな男性がひとり。カウンターの前に直角に折り畳みテーブル2つ。6人ほどが座っています。

 待つように指示があったので待つ。他の乗客が次々と入ってきて最後の若者が入ってくると、「以上です」という職員間の確認があって、おもむろにアナウンスが始まりました。日本はえらい。欧州ならビジネスクラスは別扱いしたのではないかしら。

日本のフィジカルディスタンスは1メートル?

 アナウンスは機内でもらった注意、つまり外務省の海外安全ホームページの水際対策強化の案内をそのまま読み上げるものでした。まあ何回も同じことをしなければならないのだから無理もない。下手に余計なことをいってもまずい。安全策ですね。そして手順の説明。子ども連れ、お手伝いの必要な方が一番、次が自家用車かレンタカーで今日中に自宅へ帰る人。1メートル間隔で並ぶように指示があり、およそ6割の人が列を作りました。

 私? 私はお迎えが翌日なので一泊指定待機場所を覚悟。カナダの隔離距離は2メートルで1メートルなんてできるだけ避けたい。というわけで最後の待機組の列が短くなってから最後尾に並びました。それなのに、もっとつわものがいて、私の後ろに一人現れおった。

 係員同士は1メートル離れていません。まあ横の感染リスクは少ないということでしょう。私の担当はてきぱきと質問してきぱきと指示する女性の方。日本女性は有能です。私の記入を確認し、おばさんのおしゃべりに嫌な顔をせずにこやかに対応。迎えが明日まで来ないことを伝えるとじゃあ142番ですね、と隣の職員と話している。なんか覚えのある番号ね、とは思ったもののよく考えず。

 提出用の書類4枚のうち2枚を返してくれ「待機場所から出るときに提出」とのこと。さらに小さな紙をくれて「検査時に提出」。「陽性だとすぐに結果が出ます。陰性だと結果のお知らせまで数日かかる場合もあります」とのこと。

あっという間に終わったPCR検査

 うやうやしくゲート142から送りだされて、またてくてくと歩く。やたらと曲がるけれど、どこをどう歩いているのか不明なまま検査所に到着。驚いた。そこだけなぜか狭い通路。狭い通路の片側にブースを4つ設置。この検査通路を通過して反対側の広い通路に出る仕組み。

 私の番が来ると「3番へ行ってください」と指示。でも2番のブースの前で試験を終えた若者が荷物をごそごそして通路をふさいでいます。1メートルの距離すらとれない。待とうと決めた私に3番のブースからお呼びがかかる。仕方がない。顔をそむけてすり抜けて3番ブースへ。またてきぱきとした女性。検査表を手渡しました。

 ちょっと驚いたのはPPE。ニュースで見る欧米や韓国のPPEのように安全眼鏡に大きなマスク、頭から下まで白の防護服、と思っていたらとんでもない。ぺらぺらの、のどぐりの大きな不織布ガウン。マスク、ゴム手袋。

 PCR検査については「インフルエンザの検査受けたことありますか。あれと同じです。これを鼻からのどまで入れますからくしゃみをしたりせきが出たり、つらいかもしれませんが、すぐですから」といいながら、さっと入れてさっと引き出しておしまい。うまい!

後編に続く

*記事中の個々のサービスに関する感想は取材協力者の個人的な感想です。

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