パンデミック前の成田空港Photo by Keiko Nishikawa
新型コロナパンデミック前の成田空港。Photo by Keiko Nishikawa

日本入国と自己隔離(前編)

 日本では新型コロナウイルス感染拡大阻止のため、カナダをはじめ政府が入国拒否の対象としている国や地域から帰国した人は、PCR検査を受けることや、公共交通機関を使用せず、検疫所長が指定する場所(自宅等)において14日間待機することなどが求められている。

 7月31日8月4日にバンクーバー新報に寄せられた体験談を掲載したが、引き続き、これまでに世界各地から日本に帰国した人やその家族に帰国の際に困ったことや、受け入れる側として注意したことなどの話を聞いている。

 なお、PCRテストについては7月末より成田および羽田空港で唾液による検査が開始され迅速化が図られているなど、刻々と状況は変わっている。今回は特定の帰国者の経験を紹介する。

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 一人目は、3月23日にオランダ(デルフト)から帰国した20歳男性。オランダの大学に通っていたが、大学の授業・試験がオンラインで行われることになったため、日本に帰国。出国はアムステルダムで関西国際空港に到着後、兵庫の自宅に戻った。e-mailでのインタビューに本人および家族のコメントとしてお母さまが答えてくれた。

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 帰国に関して一番困ったことは?
 帰国する際に困ったことは少なかったですが、唯一出発空港までの移動手段が盲点でした。私が帰国した当時、すでにオランダでは電車の運行本数を減らしていましたが、普段なら自宅からアムステルダム空港まで電車で40分ほどの移動で、今回も電車で行くつもりでいました。

 しかし、帰国当日に駅まで行くと快速電車(Intercity)が全く運行しておらず、普通電車(Sprinter)のみ運行していました。事前にスケジュールを調べていたので、何かの間違いかなと20分ぐらい駅で待っていましたがやはり電車は来ません。普通電車で空港まで向かってもフライトには間に合わないので、駅でUberを呼んで空港まで行きました。35分乗って料金は約70ユーロ(約110カナダドル)かかりました。

マスクを着用していなかった乗務員

 機内について聞かせてください。
 機内はかなり空席が目立ち、私の隣と前後の座席も空席でした。人が少ないエリアに座りたかったので、座席指定の時にあえて追加料金が必要な機内前方座席を選択しました。後方の座席の様子はあまり見えませんでしたが、前方よりは少し乗客が多かったように感じました。

 乗客のほとんどが日本人あるいはアジア系でした。私が帰国した時はマスクを持っていませんでしたが、他の乗客は6~7割ほどがマスクをしていたと思います。(KLMオランダ航空の)乗務員はマスクをしていませんでした。 

 到着時の様子、PCRテストを受けましたか?
 私が到着した時はまだPCR検査が求められておらず、検査を受けませんでした。関空に国際線で到着すると普段はゲートからシャトルに乗って検疫所まで移動しますが、今回はシャトルも止まっていて徒歩で検疫所まで行きました。

 また、検疫所に行く途中の廊下にはずらりと長いテーブルが並んでいて、そこで個人情報、入国時の体調、出国地、日本での滞在先、滞在先までの移動手段などを質問票に書くように検疫官から伝えられました。質問票を記入したら検疫所のカウンターに並び検疫官が一人ずつチェックしていました。

 私が帰国した当時はあまり「ソーシャルディスタンス」という言葉が日本には広まっていない段階だったので、列に並ぶ人の間隔はかなり狭かったですが、私はあえて前の人と少し間隔をあけるようにしていました。ちなみに、出発したアムステルダム空港では常に係員が人との間隔をあけるよう注意を促していました。

 検疫所のカウンターではサーモカメラでの検温と質問票の内容をダブルチェックされ、3分ほどで通過しました。

 ただ、並んでいた一部の人は空港から公共交通機関を使うことができないことを知らなかった人もいて、カウンターの隣で知人に迎えに来てもらうように連絡している人もいました。私の場合は両親が空港まで自家用車で迎えに来ていました。

 検疫所を通過した後は普段と同じように手荷物を受け取り、税関を通過すると到着ロビーに出られました。40~50分ほど普段より余計に時間がかかったと思います。

 帰国に関して、特に準備したことはありますか。
 事前に日本大使館からのメールに入国後は公共交通機関が使えないことが書いてあったので、両親に空港まで迎えに来てもらうようにしました。帰国を決定したのが当日の2日前で準備する時間が少なかったので、機内用のマスクを買いたかったのですが、やはりどこにも売っておらず、そのまま普段と同じようにマスクを持たずに出発しました。

意外に難なく過ごした自己隔離の14日間

 2週間は外出不可となっています。どのようにして過ごしましたか?
 ちょうど帰国した次の2週間は大学の試験期間と重なっていたので、家で勉強していました。試験もオンラインで行うので家から出る必要もありませんでした。

 2週間が終わったときの感想。
 ちょうど2週間が終わった頃に緊急事態宣言が発令されたので、期間終了後も基本的には家にいました。2週間家から出ないのは辛くなると思っていましたが、振り返ってみれば意外と難なく過ごせていたと思います。

 やはり、同時期に試験勉強をしなければいけなかったということもありますが、もしまた2週間の外出自粛をしなければいけなかったとしても、その期間に何か集中して取り組めることがあればあまり苦労することなく過ごせると思います。

自己隔離者が同居していると出勤停止

 お母さまに質問です。家族として気を遣ったことはありますか?
 夫の会社では、同居人に自己隔離者がいる場合は出勤停止となるため、空港に迎えに行った後、夫はできるだけ接触せず、息子が自宅に戻ったらすぐに単身赴任地へ戻りました。

 私の勤務先では、自己隔離者が自宅にいる場合の規則はなかったのですが、確認したところ結局出勤で構わないとのことでした。ただ同僚にはかなり気を使いました。母親の私も有給で休みを取ったり、出勤してもマスクや手洗い、ソーシャルディスタンシングなどかなり気を使いました。緊急事態宣言が出る前だったので、在宅勤務の準備が整っていませんでした。

 自宅はマンションなので、息子が自己隔離中はエレベーターに乗らないようにしたり、近所の方とはできるだけ話さないようにしたり、コンタクトを取らない方法を考えて実行していました。

 渡航者およびその家族の両方への質問です。今後、渡航しなければならない人にアドバイスなどがあれば教えてください。
 自己隔離中は、食事ぐらいは楽しみとなるよう本人の好きなものを作ったり、買ってきたりしていました。デパートももうすぐ閉店になりそうな時だったので、ケーキや本人の好きなものを急いで買いに行きました。

 学生ビザの方の場合、もう一度海外に渡航する人もいると思います。再渡航に際して、気を付けようと思っていることなどあったら教えてください。
 住民票を日本の住所に置いておくか、抜くかを考えています。

 海外大学の学生は国民年金の納付免除特例に当たらなくて、20歳になると支払い請求が届きます。そのため、大学に入学した際、役所で事情を説明して住民票を抜きました。

 今回も再度帰国したときに住民票を戻せばいいかもしれませんが、マイナンバーカードも無効になりますし、海外在住とはいえ収入のない一時滞在者で、家族は日本に住んでいる状態ですので、子供だけが住民としての受益から除外されることに有事のときは考えてしまいます。

 最後に何か一言あれば。

入国などの情報は常にアップデートされるので、最新の情報を入手できるようにしておくことが重要だと思います。

*記事中の個々のサービスに関する感想は取材協力者の個人的な感想です。

(取材 西川桂子)

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