急増するヘイトクライム~遭遇したらどうするか

 アジア系住民に対する差別や偏見に基づくヘイトクライムが北米で急増している。バンクーバー警察が2021年2月に発表した報告書によると、バンクーバー市で発生したアジア系に対するヘイトクライムは2019年の12件に対して2020年は98件。2020年は前年と比較して717パーセントの増加となった。

 カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校の憎悪・過激主義研究センター(Center for the Study of Hate and Extremism)が今年3月に発表した報告書では、2020年にカナダで起こったアジア系ヘイトクライムは139件だったとしている。

 バンクーバーでの事件は98件でカナダ全体の7割を占め、カナダの大都市の中で最多、最悪となった。

 カナダでヘイトクライムが急増する中、前編では被害者が警察に通報する制度について改善を求める運動をリポートした。

 後編ではヘイトクライムに遭遇したときどうするか、バンクーバー市で利用できるようになった通報フォーム、さらにブリティッシュ・コロンビア(BC)州の通報ホットラインについて紹介する。

ヘイトクライムに遭ったら通報しよう

 ヘイトクライム急増が問題になり始めた2020年5月、在バンクーバー日本国総領事館が注意喚起を行っている。

その中で、
・被害に遭った場合は躊躇(ちゅうちょ)することなくその場で『911』
・緊急でない場合の届出先は,バンクーバー市警察 Non-Emergency call(604-717-3321)
・あるいはブリティッシュ・コロンビア(BC)州のHate Crime Team(1-855-462-5733、メール:BC_Hate_Crime_Team@rcmp-grc.gc.ca
と通報先を案内している。

 BC州では新たにヘイトクライムのホットライン設置の準備を行っているので、利用ができるようになれば、ホットラインも利用することができる。

バンクーバー市のヘイトクライム通報フォーム

 バンクーバー市で通報する場合、緊急でない事件であれば電話ではなくヘイトクライムの日本語通報フォームもある。
https://vpd.ca/police/assets/pdf/forms/hate-reporting-form-japanese.pdf

 事件が起きた日時、場所と何が起こったか、ヘイトクライムを行った人を知っているか、特徴や服装などについて記入して、
・スキャンして電子メールで送信(vpd.diversity@vpd.ca
・窓口提出 – バンクーバー警察の次のいずれかの広報窓口に持参
   2120 CAMBIE STREET
  (毎日、午前8時~午後5時)
  3585 GRAVELEY STREET
  (月曜日~金曜日、午前8時~午後5時)
・ 郵送 –
  宛先
  DIVERSITY, INCLUSION, & INDIGENOUS RELATIONS SECTION
  3585 GRAVELEY STREET, VANCOUVER, B.C., V5K 5J5

 前編で紹介した、ヘイトクライム被害をバンクーバー警察に届け出たスティーブン・ゴーさんは「バンクーバー警察にはヘイトクライムを担当する部門があり、通報すればきちんと調べてくれます」とバンクーバー新報の取材で語っている。

 警察は通報を受けて周辺のセキュリティカメラを確認したという。そのほか「警察ではデータも取っていて、アジア系コミュニティがヘイトクライムに遭っていることをデータで示す必要があります」と強調した。

 BC州政府もウェブサイトで「事件を通報することは、たとえ些細な事件と思われる内容でも、大変重要です」と呼びかける。起こったことがヘイトクライムだという確証がなくても通報することを勧めている。

 「通報すると、警察やコミュニティ内のパートナーが地域内の予防策をはじめ教育、アウトリーチイニチアチブを取るのに役立ちます。また、通報内容は社会的風潮を見極めたり犯罪の拡大を防ぐのにも役立ちます」(州政府ウェブページ:BC州におけるヘイトクライム

BC州は通報ホットラインを準備中

 BC州ではアジア系へのヘイトクライム急増を受けて、ホットラインの設置準備を始めている。

 通報は緊急の場合は911へ、そうでなければバンクーバー市ならフォームを提出、もしくは緊急以外の案件の通報番号などを用いて連絡する。911に通報するケースか、それ以外かの判断については、州政府ウェブページ「ヘイトクライムを通報する」を参照。以下抜粋。

911に通報するケース
・犯罪が通報時点で行われている
・自分自身が身の安全の脅威にさらされている
・他人が身の安全の脅威にさらされている
・所有物、物件が犯罪行為の危険にあっている

緊急ではないケース
・ヘイトクライムの被害者だが、現在身の安全の脅威にさらされていない
・他人がヘイトクライムの被害者だが、現在身の安全の脅威にさらされていない
・インターネットやSNS上で脅し、憎悪の煽り、また人や所有物・物件に対する犯罪行為をほのめかしている
・所有物・物件がヘイトクライムの的にされた

ヘイトクライムを目撃したら
・被害者の人に寄り添い、ほかに目撃者がいれば協力する(複数のほうが効果あり)
・可能であれば、ビデオを撮るなどして記録する
・そのビデオを被害者と共有する

参考資料
BC州におけるヘイトクライム 
https://hatecrimesinbc.resiliencebcnetwork.ca/?lang=ja

ヘイトクライムを通報する
https://hatecrimesinbc.resiliencebcnetwork.ca/report-a-hate-crime/?lang=ja

(取材 西川桂子)

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