隣組セミナー 「日本人弁護士による法律セミナー:カナダで弁護士を雇う前に知るべき3つのポイント」

 隣組主催によるZoomセミナーが、5月24日に開催された。弁護士の楠原良治さんと、リーガルアシスタントの大瀬麻衣さんが講師として参加し、カナダで弁護士に依頼するにあたってのアドバイスをおこなった。

弁護士を雇うべき?

 弁護士への依頼を検討するのは、多くの場合、なにかしらの問題が起きたときだろう。弁護士に依頼する際の費用は決して安いものではないため、どのような状況でお願いするかをまず考える必要がある。

 なにか問題が起きた際、自分で解決する、弁護士に依頼する、弁護士以外の専門家に依頼するという方法が考えられる。

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州では、Civil resolution tribunalという5,000ドル以下の民事裁判を、オンラインでおこなえるシステムが作られた。ただ、そのシステムを使った経験がない人には難しい部分も多いので、その使い方について弁護士による初期のアドバイスはほぼ必須といえる。

 弁護士に頼まず自分ですべて進めることには、問題が複雑化して余計な費用が生ずる懸念がある。すべてを依頼しないとしても、初期段階で弁護士のアドバイスを得るほうが安心だ。 

 また、BC州では、Unbundled legal serviceというものがある。初期の書類作成や、裁判のみに出席するといった部分的なサービスを提供するもの。ただ、費用は抑えられるが、すべての弁護士がこのサービスを提供しているわけではないという問題点がある。 

 弁護士以外の専門家に相談することも検討したい。遺言書やPower of attorney(委任状)の作成、不動産に関することなどは、ノータリーパブリックに依頼することも可能。移民関係の問題については移民コンサルタントに、税金に関する問題は税理士や会計士にまずは相談してみるのもよい。いずれにせよ、複雑な案件、裁判が必要となる場合などは、弁護士に依頼する必要が出てくることもある。また、費用は弁護士の場合とあまり変わらないこともある。

弁護士選びのアドバイス

 弁護士に依頼する場合、相談したい内容にどれだけ通じているか、弁護士の専門分野を確認することが非常に重要である。カナダの弁護士は州ごとに免許を得ているため、他州の法律に関してアドバイスをすることができない。一方、税金法など連邦法については、どの州であっても弁護士の免許を持っている人ならばアドバイスが可能。

 ひとりの弁護士が多くの案件を抱えている場合、初回ミーティングのみ顧客に会い、その後はパラリーガルやアシスタントに任せるということもある。その点から、パラリーガルやアシスタントととも、可能であれば会ってみることもお勧めする。

 さらに、顧客の意向を尊重してくれる弁護士を選びたい。「私の指示とあなたのアドバイスが異なることがあった場合、どうしますか」と聞いてみるのもよいだろう。また口コミも判断基準の一つとして活用したい。

弁護士への報酬

 報酬には以下のような種類がある。

・時間制報酬(Hourly fee):案件に対してかかった時間を1時間あたりで計算する。10分ほどの電話での会話であっても、料金は発生する。

・固定料金型報酬(Fixed fee):案件に対して固定料金のみを報酬とする。裁判になる場合など、期間が読めないこともあるので、弁護士側で設定していないことも多い。

・成功報酬(Contingency fee):和解金や賠償金が確定されたあと、費用が徴収される。すぐ支払う必要がない、解決しなければ支払う必要がないというメリットがある。反面、弁護士がリスクを負う可能性を含むため、必要経費が割高に設定されていることも多い。

契約書の諸経費の内容、Retainerの支払いタイミング、支払期限なども確認したい。Photo from iStock
契約書の諸経費の内容、Retainerの支払いタイミング、支払期限なども確認したい。Photo from iStock

契約内容の確認は大切

 支払いには主に以下のようなものが発生する。

・弁護士報酬(Fee):GSTとPST両方がかかる。

・諸経費(Expenses):書類提出料や専門家を雇う必要がある場合の費用など。なお民事裁判の場合、裁判で勝訴すれば、相手に経費を請求することは基本的に可能。

・信託資金(Retainer):前払いするデポジットのようなもの。

 契約書にサインする際には、報酬額だけでなく諸経費の内容、Retainerの支払いタイミング、支払期限なども確認するようにしよう。

 また、顧客からまたは弁護士側から契約を解除する場合の条件などについても契約書に明記されているので、確認するようにしたい。

質疑応答

 「弁護士に不満・不正があると思うときはどうすればいいか」という質問には、大手事務所であれば上司に当たる人へ相談する。また、弁護会に苦情を申し立てることもできる。調査の結果、問題があることが分かれば、その弁護士へペナルティが科される。ただし、それによって、顧客に弁護士費用などが返還されるということは必ずしもない。損害賠償を請求したい場合は、新たに弁護士を雇って民事裁判で訴えるということになる。

 「顧問弁護士の依頼は受けているのか」という質問には、楠原さんの場合は、初期コンサルテーション(有料)を受けてもらい、その後何か問題が起きた場合には対応が可能とのこと。また初期コンサルテーション後に登録料のようなものも発生しないと説明した。

 その他、Power of attorneyや遺言書の作成の重要性、後見人の指定などについても質問がよせられた。

(取材 大島多紀子)

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