国境を越えて—カナダで見た「命の物語」森と海が教えてくれた「共に生きる」ということ | 第2弾

カナダの「森」で学ぶ持続可能な社会と自然の関係性

連載でお届けしている武庫川女子大学付属高等学校のカナダ海外研修レポート。

シリーズ2回目となる今回の記事では、The University of British Columbia(UBC)の研究機関である森林やUBCキャンパスツアー、Douglas Collegeでの模擬授業、エコビジネスに取り組む企業見学の様子をお届けします。

生徒たちは自然環境と人間社会のつながりを体感的に理解。問いを軸にした学びと英語での対話を通して、主体的に考える力が育まれました。

森で深まる自然と社会のつながり

この日は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州に位置するUBCの研究林「Malcolm Knapp Research Forest」 にて、自然と社会の関係性をテーマとしたフィールドワークを実施しました。

あいにくのAtmospheric rivers(大気の川)の影響で、大雨に見舞われる中での活動となりました。しかし、生徒たちは森の中での体験に強い関心を示し、自然環境に身を置きながら積極的に学びに参加しました。木々や土、川の流れといった五感を通した体験が、教室では得られないリアルな理解へとつながっています。

講師による問いかけを中心とした進行により、生徒は「知識を受け取る側」ではなく、「考え、発信する側」として参加する姿勢を見せました。英語での質問や発言も自然と生まれ、言語を“使う場”としての価値も高い時間となりました。

UBC Research Forestでの散策とガイドによる解説 (2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBC Research Forestでの散策とガイドによる解説 (2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
森の中を歩きながら学ぶ生徒たちの様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
森の中を歩きながら学ぶ生徒たちの様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

環境問題を「自分ごと」として捉える学び

本プログラムでは、環境問題を単なる知識としてではなく、「自分たちの生活とつながるテーマ」として捉えることが重視されました。

・森林を守るとは具体的に何を指すのか
・木を伐採する経済的・生態的な意味と役割とは
・自然の変化と人間活動の関係はどう影響し合っているのか

こうした多角的な問いの中で、生徒は持続可能な社会の構造を理解していきました。

特に印象的だったのは、「変化そのものではなく、“急速な変化”が問題である」という視点です。この考え方を通して、生徒は環境問題を感覚的ではなく、構造的に捉える力を育んでいました。

また、実際の森林内で樹木の種類や特徴を観察することで、知識と体験が結びつき、一段と深い理解へとつながっていました。

ガイドさんから木の種類について学ぶ生徒たち。(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ガイドさんから木の種類について学ぶ生徒たち。(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研究林に併設された森林工場を見学する様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研究林に併設された森林工場を見学する様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

体験・対話・振り返りによる学びの深化

見学後の集合写真(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
見学後の集合写真(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

本プログラムは、「体験 → 対話 → 振り返り」の流れで構成されており、学びの定着を高める設計となっていました。

森林内での体験後には、Forest Buildingにて振り返りの時間が設けられ、クイズ形式での理解確認が行われました。このプロセスにより、生徒は自身の学びを言語化し、整理する機会を得ています。

また、安心して発言できる環境の中で、生徒たちは英語でのアウトプットにも挑戦し、「伝えること」への自信を少しずつ高めていきました。

本研修は、自然環境への理解を深めるだけでなく、
・主体的に考える力
・問いを持つ力
・言語を通して表現する力
を育む機会となりました。

日本だと行く機会の少ない森の研修に生徒たちからは、

「鳥の鳴き声や雨の音など自然がのどかでないと聞くことのできない事を感じることができました。」
「これまで繋いできた歴史がある木であり、古くからのDNAが存在しているので昔から生えている木こそ大切にしなければいけないという事を知りました。」

環境問題を「正解を知るもの」ではなく、「考え続けるテーマ」として捉え始めており、その姿勢こそが本プログラムの大きな成果といえます。

大自然の中での体験と対話を通して得られた学びは、今後の探究活動やグローバルな視点の育成にもつながる重要な一歩となりました。

寄稿者:山下 樹春 カナダ在住7年目。University of VictoriaにてChild & Youth Care分野を学びながら、留学中の小学生・中高生を対象とした英語学習支援、生活面のメンタリング、国際交流プログラムの引率を行っている。

UBCで体感した「日常の自然」

さて、研修の折り返しであったこの日は、世界的な学術拠点であるUBCを訪問しました。広大なキャンパスと博物館でのミッションをこなしながらUBC内をツアーしました。生徒たちは森・海・川、そして先住民の知恵が織りなす「循環」を体験しました。未来を創る主体者へと成長していく様子を追います。

今回は、ウエストバンクーバーの公立高校に留学をする二人の生徒さんに寄稿文をお願いしています。研修参加者の生徒さんと同年代の二人が、研修をどう捉えたかも注目です。生徒同士が留学体験についての情報交換したり、友情も育んだ研修期間ともなりました。

森と海に囲まれたキャンパス

この日はUBCに行きました。春を迎えたキャンパスには桜が満開に咲き誇っていました。キャンパスは想像していたよりもずっと広く、学生がたくさんいて、「大学ってこんなに大きいんだ!」とみんな驚いていました。

カナダでの研修もいよいよ残り1週間です。
研修が始まったばかりの頃は、時差ぼけで疲れていたり、ホストファミリーとうまく話せなかったりして、不安そうな様子もありました。でも、毎日英語で話したり、新しい文化に触れたりする中で、少しずつ生活にも慣れてきて、笑顔で過ごす時間が増えてきました。

また、私たち現地のユースボランティアとも仲良くなり、研修が終わった後に気軽に話せるようになったことも、とても良い思い出です。
生徒たちと過ごしていると、私たちが初めてバンクーバーに来た頃の気持ちも思い出しました。

最初は、お互いに助け合いながら行動することが多かった生徒たちですが、だんだんと「まずは自分で考えて行動してみよう」という姿勢が見られるようになりました。海外での生活を通して、自分で挑戦する大切さを学んでいるように感じました。

UBCは、森と海に囲まれた自然豊かな場所にあります。実際に歩いてみると、校舎のすぐ近くに大きな木々があり、その先には海も見えました。自然がとても身近にあることに驚きました。日本では自然を特別な場所として感じることが多いですが、カナダでは自然が生活や学びの一部になっているように感じました。また、森や川、海はそれぞれ別々ではなく、すべてがつながっていることも実際に見て学ぶことができました。自然はそれぞれ独立しているのではなく、一つの大きな循環の中にあるのです。

UBCのキャンパス内の写真(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBCのキャンパス内の写真(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

標本が教えてくれた自然のつながり

次に訪れたのは、UBCにある「Beaty Biodiversity Museum(ビーティ生物多様性博物館)」です。
館内にはたくさんの動物や植物の標本が展示されていて、その数は200万点以上あるそうです。

特にサーモンの展示では、海で育ったサーモンが川に戻って産卵し、その命が森の栄養になるという話を学びました。海・川・森はすべてつながっていて、一つでもバランスが崩れると自然全体に影響が出ることを知り、とても驚きました。展示を見ている生徒たちも、「もし人間が自然を壊してしまったらどうなるんだろう」と考えている様子でした。

Beaty Biodiversity Museumの標本に興味を示す生徒たち(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Beaty Biodiversity Museumの標本に興味を示す生徒たち(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

先住民の考え方から学んだこと

展示では、具体的な先住民の文化や自然との関わりについても紹介されていました。先住民の人々は、自然や生き物を資源としてだけでなく、「共に生きる存在」として大切にしてきました。

例えばサーモンも、食べ物というだけではなく、文化や生活に欠かせない大切な存在です。そして、「自然のバランスを崩さない程度に、自然に感謝して受け取る」という考え方を大切にしているそうです。この考え方は、今の環境問題について考えるときにも大切なことだと思います。生徒たちと私たちは、自然と人は別々ではなく、お互いにつながりながら生きていることを学ぶことができました。

生徒たちの変化する「問い」

今回の研修では、生徒たちの考え方にも少しずつ変化が見られました。
最初は「きれい!」「すごい!」という感想が多かったのですが、だんだんと「どうしてこの自然は守られているのだろう」「自分たちにできることは何だろう」と考えるようになりました。

博物館で生き物の展示を見たことで、生き物は環境に合わせて生きていることを実感しました。そして、人間の行動によってその環境が変わってしまうことにも気づきました。

環境問題は遠い世界の話ではなく、自分たちにも関係があることなのだと感じた生徒も多かったと思います。

今回カナダで学んだ「自然とのつながり」を日本でも思い出しながら、日常生活の中で自分にできることを考え続けていきたいです。一人ひとりの小さな行動でも、それが積み重なれば未来の社会や自然を守ることにつながるのではないかと思いました。

寄稿者:近藤 彩名 

福岡出身の14歳(中3)小学校1・2年生はフィリピンのセブ島の現地小学校に通いのびのびと育つ。日本の小学校卒業後、12歳で母と共に渡加。バンクーバー公立高校のG9に在籍中。ゴルフとSUPに挑戦中。

佐藤千菜津 

東京都出身17歳(高2)2歳から英語に親しみ、インターナショナルの幼稚園で教育を経て成長。日本の小中学校卒業後、16歳で単身カナダへ渡り、現在はバンクーバーの公立高校G11に在籍。趣味はダンス、料理。

日本にはないコミュニティカレッジに挑戦!ダグラスカレッジ サイエンス模擬クラス体験

今回は、ダグラスカレッジでコンピューターサイエンスと環境科学の模擬授業に挑戦。留学を視野に入れる生徒たちが、大学とは異なる日本にはない、コミュ二ティカレッジの魅力とその役割の重要性に気づく機会となりました。

留学生にとって カレッジの魅力とは

最初に、海外マーケティング担当のHanaさんより、ダグラスカレッジの魅力についてお話をいただきました。広いキャンパスを持つ大学への留学に憧れる人は多い一方、英語力などの理由から途中で学業を断念してしまう学生が多いのも現状です。

そうした中、ダグラスカレッジの魅力の一つが、教授と学生の距離の近さです。大学では400人規模の大講義や、教授ではなくTA(ティーチングアシスタント)による授業も珍しくありませんが、ダグラスカレッジでは1クラス最大35名で、すべての授業を教授が担当します。研究機関大学での指導経験を持つ教授も多く在籍しています。慣れない環境での留学において、教授と密にコミュニケーションを取れる環境は大きな魅力です。

また、学費の面でもカレッジに通うメリットがあります。大学に4年間通う場合と比べて、学費は半分から三分の一程度に抑えられるとのことでした。カレッジに2年間通った後に大学へ編入した場合でも、約15,000ドルの節約になるそうです。

ブリティッシュコロンビア州では、BC Transfer Guideに示されているように、高等教育機関間で単位互換が可能なシステムが整備されています。そのため、ダグラスカレッジからUBCやSimon Fraser University(SFU)などの大学への編入も、余分な単位を取得することなくスムーズに行えるのが特徴です。

英語が母語でない学生にとっては語学面の不安もありますが、ダグラスカレッジでは学内に英語コースを備えているほか、提携する私立の語学学校で学んだ後、IELTSを取得して入学することも可能です。さらに、学内外でのクラブ活動やスポーツチームも充実しており、留学生向けの奨学金制度も整っています。

今回の研修スタッフの中には、ダグラスカレッジからカナダやイギリスの大学へ進学した方もおり、カレッジは留学生にとって安心してスタートを切れる場であることを実感できるお話でした。

海外マーケティング担当のHanaさんによる、ダグラスカレッジの説明(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
海外マーケティング担当のHanaさんによる、ダグラスカレッジの説明(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

模擬クラス1:コンピューターサイエンスのクラスでゲームとVR体験

コンピューターサイエンスのクラスでは、最初に、ダグラスカレッジの生徒が作ったゲームを実際に体験させていただきました。ライオンが障害物をよけながらShahriar Khosravi教授を追いかけるという内容で、Shahriar Khosravi教授はとても陽気な方でした。生徒たちも楽しそうにゲームをしながら英語でコミュニケーションを取っている姿が印象的で、高得点を取った生徒には賞品も用意されていました。

後半では、VRゴーグルを装着して弓を的に射るゲームを体験しました。慣れるまでは下に落ちている弓を拾うことすら難しい生徒もいましたが、徐々に慣れると、皆楽しそうにプレイしていました。

将来ゲーム制作に興味のある生徒も、そうでない生徒も、和気あいあいとした雰囲気の中でアクティビティを楽しんでいたのが印象的でした。

VRゴーグルを使ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
VRゴーグルを使ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ダグラスの学生が作ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ダグラスの学生が作ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

模擬クラス2:環境科学のクラスで地質学について学ぶ

2つ目の模擬クラスでは、Environmental Science(環境科学)の授業を担当しているNathalie Vigouroux-Caillibot教授から、地質学について講義をしていただきました。まず、日本とカナダの気候や地質の違いについて説明があり、バンクーバーと長野県が気候や地質の面で似ていることも紹介されました。

また、サーモンが私たちの生態系にとって鍵となる種(keystone species)であるというお話もしていただき、前週に学んだ内容ともつながる授業となりました。

その後、実際の岩石サンプルを見せていただき、火山の噴火で地表に噴出した石と地中に堆積した石の違い、さらに地質学の専門用語について、ワークシートを使って生徒たちも奮闘しながら問題に取り組みました。

内容が難しかったという声もありましたが、教授の穏やかでゆっくりとわかりやすい英語を使った授業は、英語を母語としない学生にとって非常にありがたいものでした。また、学校スタッフのマイケルさんが日本への留学経験者であったことから、わかりやすい日本語で通訳してくださる様子にも、生徒たちは興味を持っていたようでした。

これまでは分からないことがあっても発言するのに躊躇していましたが、教授やスタッフのマイケルさんに積極的に質問をしている様子でした。

この生徒たちの変化は、わからないことを「壁」として諦めるのではなく、「理解できるもの」として捉え直す。「思考の粘り強さ」こそ、本研修が引き出した大きな魅力です。

実際の鉱石に触れながらの活動。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
実際の鉱石に触れながらの活動。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Nathalie Vigouroux-Caillibot教授によるサーモンの重要性についての説明。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Nathalie Vigouroux-Caillibot教授によるサーモンの重要性についての説明。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

寄稿者:宮本 麻里
東京都世田谷区出身。現在は、West Vancouver Secondary SchoolとSentinel Secondary Schoolで日本語を教えている。

割り箸を価値に変えるChopValueの挑戦:ドイツからの留学生が起業し世界を揺るがす

自然の繋がりをテーマとする今回の海外研修では、エコビジネスに熱心に取り組む企業にも訪問しました。身近な「割り箸」がどのように洗練された家具へと生まれ変わるかの工程を見学。また、エコビジネスの可能性や仕組み、企業の社会的責任を深く学びました。

2億8千万本の割り箸を再利用|サーキュラーエコノミーの衝撃

皆さんは、世界中で一年間にどのくらいの「割り箸」が廃棄されているか知っていますか?

その数はなんと、年間約800億膳とも言われています。私たちは食事のあとのわずかな時間でそれらを「ゴミ」として手放してしまいますが、その裏側にある豊かな森林資源にまで思いを馳せることは、日常生活の中では難しいかもしれません。

バンクーバーの街角にある工場「マイクロファクトリー」を構えるChopValue社。ここで私たちが目の当たりにしたのは、その常識を覆す驚くべき数字でした。これまでに再利用された割り箸の本数は約2億8,000万膳。それによって抑制されたCo2排出量は約1,344万kgにのぼります。

創立者のFelix Böck氏は、ドイツ出身でUBC森林学部の博士課程在学中に大量に捨てられる割り箸に着目。研究者としての知見を活かし、割り箸を高密度な木質素材へと再生する技術を開発しました。捨てられるはずだった割り箸を、再び社会の中で循環させる仕組みを作り上げました。

割り箸を再利用して作られたChopValueのロゴ(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
割り箸を再利用して作られたChopValueのロゴ(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

地域で完結する「マイクロファクトリー」|輸送による負荷を最小限に

ChopValueのモデルが画期的なのは、巨大な工場を一つ作るのではなく、都市ごとに小さな「マイクロファクトリー」を展開している点にあります。

「回収 → 加工 → 利用」をすべて地域(ローカル)で完結させる。これにより、素材を運ぶための長距離輸送を省き、輸送に伴う二酸化炭素(Co2)排出を徹底的に抑えています。これは、グローバル化が進んだ現代社会において、あえて「地域とのつながり」を重視することで環境負荷を減らす、持続可能なビジネスモデルです。

創業の想いや地域循環の仕組みについて、説明に聞き入る生徒たち。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
創業の想いや地域循環の仕組みについて、説明に聞き入る生徒たち。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

高度な再生技術と「自然」の再定義

実際に、バンクーバー市内の飲食店で回収された箸の加工プロセスを見学した生徒たちの目は、驚きに満ちていました。回収された割り箸は、人体に有害な化学物質を一切使わずに乾燥・滅菌され、樹脂を浸透させた後、高温で一気にプレスされます。

1枚のタイル(約20cm四方)に使われる割り箸は約300本。細く、折れやすかった割り箸が、重厚感と強度を持つ美しい木材へと生まれ変わる。そのようなプロセスを目の当たりにし、生徒たちは「自然」を単なる材料として消費するのではなく、知恵を使って「価値」を維持し続けることの重要性を学びました。

バンクーバー市内の飲食店で回収された割り箸。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
バンクーバー市内の飲食店で回収された割り箸。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
割り箸を再利用して作られたタイルや小物。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
割り箸を再利用して作られたタイルや小物。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

日本の「200億膳」という現実|未来へ繋がる心の種

ここで生徒たちは、一つの厳しい事実に直面します。日本では年間約200億膳もの割り箸が消費され、その大半が焼却処分されているという現実です。日本の方が圧倒的に多くの箸を使用しているにもかかわらず、なぜこの取り組みが広がらないのか。そこには、廃棄物処理に関する「法律の壁」や、衛生面への意識、そして「使い捨て」を前提とした社会構造がありました。

ある生徒が、「今まで、ゴミ箱に捨てる瞬間に何も考えていなかった。でも、これからは一度踏みとどまって考えたい」と語りました。

今回の見学を経て、生徒たちの意識は「自分たちの課題」へと変わりました。「日本の方が資源があるのに、活用できていないのはもったいない」「私たちができる具体的なアクションは何だろう?」。生徒たちの目は、自分たちの足元にある日本社会の現状をどう変えていけるかという、当事者としての熱い視線でした。

私自身、今回の見学を通して「資源は無限ではない」という、当たり前ながらも忘れがちな真理を改めて胸に刻むことができました。
普段の生活の中でつい見落としてしまいそうな、私たちの些細な選択。しかし、今日「何を選び、どう捨てるか」という一人ひとりの行動の積み重ねこそが、確実に未来の環境を形作っていきます。この研修で得た実感を、一時の思い出で終わらせるのではなく、私自身もまた、未来への責任を繋ぐ一人として歩んでいきたいと感じています。

見学後、地元バーガーチェーン「A&W」へ。店舗のテーブルとして実際に使われている製品を見学。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
見学後、地元バーガーチェーン「A&W」へ。店舗のテーブルとして実際に使われている製品を見学。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

次回のシリーズ最後の記事では、UBCのFaculty of Forestry and Environmental Stewardship(森林学部)協力のもと、森の中でのアクティビティやラボ見学。研修最終日の先住民との対話の様子をお届けします。

寄稿者:齊藤 紗織

カナダ在住3年目。日本では地元の自動車メーカーで総務部を経験。その後、Coop留学でバンクーバーに留学し、現在はワーキングホリデーで滞在中。AK JUMPでの国際交流プログラムの企画や運営を担当している。

本研修プログラムの実施・協力組織

UBC Malcolm Knapp Research Forest(マルコム・ナップ研究林) The University of British Columbia(UBC)森林学部が管理する、5,000ヘクタールを超える広大な研究用森林です。1949年の設立以来、森林管理、生態系保護、気候変動に関する世界最先端の研究拠点として活用されています。同時に、次世代への環境教育の場としても重要な役割を担い、自然界の複雑な相互作用を体感的に学べるプログラムを提供しています。

Beaty Biodiversity Museum(ビーティ生物多様性博物館)The University of British Columbia(UBC)内に位置する、カナダを代表する生物多様性の研究・教育拠点です。200万点を超える膨大なコレクションを誇り、生命の歴史や進化、生態系の保全について発信しています。研究者と一般市民を繋ぐ架け橋として、地球上のあらゆる生命の「つながり」を深く理解するためのプログラムを提供しています。

 Douglas College(ダグラスカレッジ) ブリティッシュコロンビア州最大規模の公立カレッジであり、大学レベルのアカデミックな教育と、実践的なキャリア教育を融合させた独自のカリキュラムで知られています。「本研修では、現地の学生との交流や実際の模擬授業を通じ、生徒たちの多角的な視点と探究心を刺激する学びの場を提供しています。

ChopValue(チョップバリュー) カナダ・バンクーバー発のサーキュラーエコノミー企業。UBCの博士号を持つFelix Böck氏により設立され、世界で初めて「使い捨ての割り箸」を高品質な家具や建材へと再生する技術を確立しました。世界各地に小規模な加工拠点「マイクロファクトリー」を展開し、資源の回収から製品化までを地域内で完結させる、環境負荷の極めて低い持続可能なビジネスモデルを世界中に広めています。

武庫川女子大学附属高等学校 「高い知性」「善美な情操」「高雅な徳性」を兼ね備えた有為な女性の育成を理念に掲げ、グローバルな視野を持って社会に貢献できる女性の育成に力を入れています。本研修を通じて、自発的な探究心と国際感覚を育んでいます。

AK Jump Educational Consulting Inc. カナダ・バンクーバーに拠点を置き、年齢・障害・バックグラウンドを越えて、カナダでの留学・進学、そして多角的な学びへの挑戦を、インクルーシブなチームで支えます。小中高生の留学から、教育専門家・政策関係者・カウンセラー向けの研修まで。対話を通して問いを深め、思考を広げる学びをデザインします。

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