ヘンリー・ワカバヤシ氏へ外務大臣表彰授与「人生の師と仰ぐミナガワ氏と両親に感謝」

花束を受け取ったワカバヤシ夫人(中央)と外務大臣表彰を受賞したヘンリー・ワカバヤシ氏(左)、丸山浩平総領事と。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
花束を受け取ったワカバヤシ夫人(中央)と外務大臣表彰を受賞したヘンリー・ワカバヤシ氏(左)、丸山浩平総領事と。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 ヘンリー・ヒロシ・ワカバヤシ氏への令和4(2022)年度外務大臣表彰伝達式が3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸で行われた。

 ワカバヤシ氏は、パシフィック・リエイコン・アソシエイツ社を共同創業、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の公共交通機関スカイトレインの建設やバンクーバー国際空港の拡張工事など重要インフラ事業を手掛ける。また日系コミュニティでは、日系文化センター・博物館やモミジガーデンの建設、隣組建物の改修工事にボランティアとしてかかわった。

 日系二世のワカバヤシ氏は、1980年代の日系カナダ人リドレス運動に参加し、バンクーバー日系カナダ人リドレス委員会副委員長として活躍。日系カナダ人の名誉回復と社会的地位向上に大きく寄与した。

 両親が日本人で、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)卒業後はバンクーバーの三菱商事カナダに10年間勤めていたこともあり、流ちょうな日本語を話す。

 その活躍は日本とカナダの友好関係促進にも大きく貢献し、こうした功績が認められ、今回の受賞となった。

 丸山浩平総領事は、ワカバヤシ氏の数々の功績に触れながらも、自身の親戚から直接聞いたアメリカで経験した日系人としての苦難とワカバヤシ氏ら日系カナダ人が受けた差別的体験に思いを馳せ、個人的に心に迫るものがあると語った。こうした経験をへて日系カナダ人の名誉回復にバンクーバーで主導的に活躍したこと、カナダのビジネス界での活躍、日系コミュニティへの貢献など、多大な功績によるワカバヤシ氏への外務大臣表彰に改めて「おめでとうございます」と祝福した。

人生の師と仰ぐ人に出会えたことに感謝

ヘンリー・ワカバヤシ氏。この日のスピーチは英語だったが、実は流ちょうな日本語を話す。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
ヘンリー・ワカバヤシ氏。この日のスピーチは英語だったが、実は流ちょうな日本語を話す。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 ワカバヤシ氏は、母と父の祖国である日本とカナダとの相互理解を促進する役割が受賞の理由であることに喜びを表し、両親や先人が自らを犠牲にしても、自分の子どもたちによりよい機会が得られるためにカナダに移民してきたことに「心から感謝する」と語った。

 そして、人生の師と仰げる人、ヒロ・ミナガワ氏に出会えた自分は幸運だったと振り返った。

 化学エンジニア専攻でUBCを卒業したワカバヤシ氏は、自分の学んだ分野での就職を希望したが当時化学エンジニアという仕事に就ける機会はなくJETROにパートタイムで就職。そんな時に戦後初めてカナダオフィスを開設した三菱商事会社のマネージャーだったヒロ・ミナガワ氏に声を掛けられたと話した。化学エンジニアとしての仕事を希望していたワカバヤシ氏にミナガワ氏は、「エンジニアにはいつでもなれるから、今は私の下で働いて、そしたら6カ月で立派なビジネスマンになれると言われた」と笑った。

 いつも繰り返し友人らに話しているのはと前置きして、「三菱商事で働くことを決心して、ミナガワ氏を自分の師と仰ぎ、彼の下で働けた幸運は、ハーバード大学でMBAを習得するよりも、自分のキャリアにとって有益なことだった」と語った。また、会社を立ち上げた後、大きなプロジェクトにかかわることになったのもミナガワ氏の協力があったからと話し、「今回の受賞をミナガワ氏に捧げたいと思う」と感謝の気持ちを表した。

 また日系二世として一世だった両親が家族に示した自分たちは国の犠牲者ではないという姿勢、誰も恨まないという教えがあったからこそ、日系カナダ人に対する強制移動政策を経験していたとしても、「日加両国のために全力で尽くすことができたと思う」と両親に感謝した。

 あいさつの最後には63年連れ添っている夫人や駆け付けた家族、友人の名前を笑顔で呼んで感謝を表した。

(写真 斉藤光一/記事 編集部)

ヘンリー・ワカバヤシ(へんりー・わかばやし)
Pacific Liaicon and Associates Inc.共同創業者(1970年)
UBC with a degree in chemical engineering(1958年卒業)
関わったプロジェクトは多く、上記以外には、バンクーバー・コンベンションセンター拡張工事、他には、EXPO 86、BC Ferries、BC Transit、VANOC(バンクーバーオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)for 2010 Olympic and Paralympic games、BC Hydro Site Cにもシニアアドバイザリーとして携わっている。
2008年カナダ勲章(Order of Canada)、2000年BC勲章(Order of British Columbia)受章。
2017年日系プレース・ファウンデーションThomas Shoyama Lifetime Achievement Award受賞。

外務大臣表彰

 国際関係のさまざまな分野で活躍し、日本と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をしている個人や団体の功績をと称えると共に、その活動に対する一層の理解と支持を国民に求めることを目的としている。

ワカバヤシ氏(左)と丸山総領事。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
ワカバヤシ氏(左)と丸山総領事。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
記念品贈呈時に笑顔を見せる丸山総領事(右)とワカバヤシ氏。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
記念品贈呈時に笑顔を見せる丸山総領事(右)とワカバヤシ氏。2023年3月10日、在バンクーバー日本国総領事公邸。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

合わせて読みたい関連記事