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Naomi Mishima

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15 ◎「孫の手」は家族の温もり !

日本語教師  矢野修三

 突如として、うれしき孫持ち爺ちゃんになったので、友人や生徒の皆さんからいろいろお祝いの言葉をいただき、某(それがし)の周りには「孫」に関する話題がよく出るようになった。先日も、このエッセイが読めるレベルの上級者2人とお花見勉強会を。その席で「爺ちゃん先生、おめでとうございます。またお孫さんと会いたいでしょう」。ちょこっと冷やかされてしまった。

 そこで、ちょこっと孫に関するこんな諺を話題にした。「孫は目に入れても痛くない」である。するとすぐに、目などには入らないですが、「孫はかわいい」を強調した言い方ですよね、と答えた。うーん、さすが上級者、大したもんだが、英語にも「the apple of my eye」のような「eye」を用いた同じような意味のproverbがあると聞き、びっくり。

 ではもう一つ、「孫は来てよし、帰ってよし」。これには2人顔を見合わせて・・・、よく分かりません、である。分からなくて当たり前田のクラッカー。これはかなり昔の諺であり、昨今はほとんど使われていないが、日本人であれば若者世代でも、そこはかとなく分かる。爺ちゃん・婆ちゃんにとって、孫が遊びに来てくれるのはとてもうれしい。でも長くなると、体力的にも金銭的にもかなり大変で・・・、帰る時はホッとする。これが本音かも。こんな説明をしたら、はっきり言わない日本的な表現で、おもしろいですね、と感心してくれた。

 すると、Aさんから「孫の手」の話が飛び出た。彼女曰く、背中をかく道具、日本語では「孫の手」ですね。すてきです。文化として家族のあたたかみを感じます。なるほど、おっしゃる通り。英語では「back-scratcher」とのことで、確かに味も素っ気もない。

 実は、かなり昔だが、「孫の手」について同じようなことを話題にした生徒がおり、その時は「孫の手」の語源など、分からず調べてみて、びっくりしたことを思い出した。

 この「孫の手」はナント、中国の古い伝説に登場する仙女「麻姑(まこ)」に由来するとのこと。この麻姑はすごい美人で、爪を長く伸ばしており、その長い爪で背中をかいてもらったら気持ちがいいだろうと・・・。そんな故事から中国で「麻姑の手」という言葉ができ、それが室町時代あたりに日本に入ってきたとのこと。江戸時代に「まこ」が「まご」になり、「孫の手」が生まれたようで、うーん、まことに驚きであった。

 確かに、こんなこと生徒にはあまり説明したくないが・・・。でも語源はともあれ、孫がお爺ちゃんやお婆ちゃんの背中をかく、そんな家族の温もりをイメージして、日本の古き文化としてこの「孫の手」という言葉が生まれ、育まれてきたのは間違いないであろう。

 生徒も最初はびっくりしたようだが、「先生、語源など聞かなかったことに・・・、それより平均寿命100歳の時代になりますから、『孫の手』から『ひ孫の手』に変えたほうが・・・」。なるほど、これには思わず笑ってしまった。

 この「孫の手」談議は文化も絡んで、上級者にはなかなか有意義である。でも「孫の手」で背中をかくたびに、美しき、悩ましき爪を想像してしまい、かゆくもないのに「孫の手」を手にする回数が増えそうで、少々心配でござる。

「ことばの交差点」
日本語を楽しく深掘りする矢野修三さんのコラム。日常の何気ない言葉遣いをカナダから考察。日本語を学ぶ外国人の視点に日本語教師として感心しながら日本語を共に学びます。第1回からのコラムはこちら

矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)    
メール:yano@yanoacademy.ca
ホームページ:https://yanoacademy.ca

「春土用*晴れの合間に土いじり」

カナダde着物

第58話
*千夏先生の他装ワークショップ*

 土用の日は、夏だけでなく春にもあるのをご存知でしょうか。
 陰陽五行説では宇宙は2つの陰陽と5つの元素(水、金、土、火、木)からできていると考えられていて、春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」が支配するとされ、残った「土」を各季節の終わりの18日間に当てはめたことから、立春立夏立秋立冬の前の18日間を土用というそうです。次の季節へ移る前の調整期間で、体調管理にカレンダーが使われていたようです。

 春の土用は「土を掘り起こしてはいけない」という注意があるそうですが、バンクーバー近郊ではイースターが終わる頃からガーデナーたちの作業が始まります。
 きっと、かつては農作業で体調を崩さないように、という戒めがあったのでしょう。
 いつも急いでいる現代人は、なかなか暦の通りにはいきませんが、季節の変り目に季節性アレルギーを持つ私には少し当てはまります。

 それでも若葉の木々や花々が美しいこの時期は、家の中に閉じ籠るのはもったいなく、くしゃみを連発しながら庭仕事に精を出しております。

 皆さま、時節柄、健康にはくれぐれもご留意ください。

「canada goose and sakura」Manto Artworks
「canada goose and sakura」Manto Artworks

*今日の着物*Today’s Kimono

「千夏先生の他装ワークショップ」

 去年の初頭から、娘さんの短期留学に付き添いカナダへいらしている若林千夏さんが、和の学校で着物に関わるお手伝いをしてくださるようになりました。
 ご実家は栃木県宇都宮で150年続く呉服屋さんだそうで、日光市で着物レンタルや着付けサービスなどもご家族で経営されているそうです。

「しゃなりさん(呉服屋)と千夏さん」コナともこ
「しゃなりさん(呉服屋)と千夏さん」コナともこ

 今回は他装(他の人に着付をすること)を長年されてきたプロの着付師、千夏さんから「コツを盗むぞ!」という企画で、ワークショップを開催しました。

 自分の体型は殆ど変わりませんので、慣れてくればそんなに大変ではありません。
 しかし、他装は10人いたら10人の体型があり、その方の魅力を最大限に生かして着付けをすることを目指しますので、経験値と技が求められます。
 毎回、反省と学びがあり、とても奥深いものです。

 私が他装で大事にしていることは、着物を着た方がご自分の魅力に気付き、日本人の方でしたら、日本人としての誇りを持ってくださるよう、努めることです。

 芸術品を身にまとえるということで、日本人以外の方々からも愛されている着物。
 素晴らしい伝統文化であり、是非これからも受け継いでいただけたらと願っております。

 皆さまもお寺での行事や儀礼の際に、是非、着物でいらしてみてください。

「他装ワークショップ@東漸寺」コナともこ
「他装ワークショップ@東漸寺」コナともこ

*今日の和の学校*Today’s Gathering

「満開の桜の下でキッズダンス」

 今年のバンクーバー近郊での桜は、あれよあれよと開花が始まり、いつもならもう少し後に咲く八重桜がトンネルを作り、ドライブ中も心がウキウキしてきます。
 清らかで優しいピンク色は、グレー色の冬から一転して、春のスタートとしてピッタリな色ですね。

 今年から始まりました「お寺deキッズダンスとキッズ茶会」ですが、今回はお花見のお茶会を兼ねて開催いたしました。
 桜の木の下でダンスを保護者さんへお披露目し、その後、本堂にてお釈迦様の誕生日(新暦)をお祝いしながら、一服のお茶を愉しんでいただきました。

 来月は五節句の3つ目にあたる「端午の節句」があります。現代では「こどもの日」として、子どもたちの健やかな成長と幸せを願う行事となっております。

「お寺deダンス🌸キッズダンスチーム2024 Spring」コナともこ
「お寺deダンス🌸キッズダンスチーム2024 Spring」コナともこ

参照
日本の行事・暦:http://koyomigyouji.com/index.html
きもの大辞典:https://www.someoriren.jp/dictionary/index.html

着付講師 若林千夏(わかばやしちなつ)さん
家族は、旦那と4人の子どもとトイプードル。
アボッツフォードに次女の高校留学のお供で引っ越してきたばかりの50代新米移住者です。
呉服屋で生まれ育ち、20代からは本格的に着物や着付けに携わりながら楽しく日本の良さを広められたらいいなと思っております。
しゃなり:ホームページ https://shanari.com/

「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから

「カナダde着物 日系センター夏祭り2023にて Kona Tomoko」コナともこ
「カナダde着物 日系センター夏祭り2023にて Kona Tomoko」コナともこ

コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
13年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。

年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。

*詳しくはコナともこ までお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。

カナダ人の夫+社会人と大学生の3人娘がおり、バンクーバー近郊在住。

和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
インスタグラム https://www.instagram.com/wa_no_gakkou_tozenji/
フェイスブック https://www.facebook.com/profile.php?id=100069272582016

東漸寺Tozenji Temple https://tozenjibc.ca/

コナともこ
Facebook https://www.facebook.com/tomoko.kona.98
Instagram https://www.instagram.com/konatomoko/?hl

「東漸寺🌸春🌸2024」Manto Artworks
「東漸寺🌸春🌸2024」Manto Artworks

MLSから日本代表に、吉田選手から高丘選手にエール

吉田選手と高丘選手。LAギャラクシーがBCプレースを離れる直前に。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
吉田選手と高丘選手。LAギャラクシーがBCプレースを離れる直前に。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
試合後にインタビューに答える吉田選手。LAギャラクシー戦。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
試合後にインタビューに答える吉田選手。LAギャラクシー戦。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 バンクーバーで今季初のMLS日本人対決が4月13日に実現した。バンクーバー・ホワイトキャップスFCのGK高丘陽平選手と、LAギャラクシーに所属するDF吉田麻也選手、DF山根視来選手がBCプレースで対戦した。

 西カンファレンス首位攻防となった試合は、ギャラクシーが3-1で勝利。高丘選手にとっては今季初の3失点と悔しい負け試合となったが、試合後には吉田選手とユニフォームを交換したり、山根選手と笑顔で話したりと、日本人対決に普段は見せない表情を見せていた。

 試合後、MLS2シーズン目となる吉田選手に、MLSについて、高丘選手について、話を聞いた。

ホワイトキャップスについて

 イタリア人の監督で、やることを徹底してやるというふうに思います。いくつかパターンがあって、それをするのと、そんなに難しいことをしないのと、守備が硬いっていうのはあったのかなと思います。

 (BCプレースは)人工芝もちょっと難しさはありますけど、それもこのリーグ(MLS)の特徴だしおもしろかったです。

MLSで日本人がプレーすることについて

 やっぱり一緒に同じ日本人としてこのリーグで戦ってるので、お互いに刺激し合っていると思いますし、(高丘選手は)僕が来る前からこっちでがんばっているのを知っていたので、ここでポジションを勝ち取って。どこにいてもそんなに簡単なことではないと思うし、特にキーパーという一つしかないポジションでがんばっているなと思います。

 久保も含めて僕ら(4人)がこのMLSの良さっていうのを日本に発信していって、もっともっと評価されるべきリーグだと思うし。日本にあまりにも情報が少ないので。この前も Jリーグの野々村さんが来て色々と話したりもしたんですけど、みんなMLSのこの成長のスピードっていうのは非常に驚くので。

山根選手、試合後のインタビューで。LAギャラクシー戦。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
山根選手、試合後のインタビューで。LAギャラクシー戦。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 そこから学べることはたくさんあるし、僕も高丘くんも山根も情報を発信していかなくてはいけないなと。良いパフォーマンスを出して、少しでもニュースを届けて。あとはリーグ(MLS)の日本人(選手)の評価も高めていかなくてはいけないので、次の日本人(選手)を取ろうという気持ちにリーグの色々なチームが思ってくれるような活躍をしなくてはいけないなと思います。

MLSの印象について

 一つは国が大きいので、この1つの国でチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグぐらいの、それ以上の移動距離があるし、時差もあるし。あとは気温の差も大きいので、これから暑くなってくるので、まだ涼しい時はいいと思うんですけど、これからが本当に勝負だなぁというふうに思います。

 リーグはそうですね、日本と似てるかなと思いますね。DP(Designated Player)の選手たちが違いをつけますけど、それ以外でもローカルの選手や僕みたいにある程度年齢が上がった選手が来たりもするし、インターナショナルのリーグだと思います。日本より平均年齢も(若いし)。日本の印象だと年取った選手が行くっていう印象あると思うんですけど、でも実際にはJリーグの平均年齢よりも全然若くて。確かJリーグが27、8歳ぐらいでこっちが25、6歳なんで。そういう意味ではすごく勢いのあるリーグだと思ってます。

高丘選手について

吉田選手と高丘選手。LAギャラクシーがBCプレースを離れる直前に。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
吉田選手と高丘選手。LAギャラクシーがBCプレースを離れる直前に。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 決して簡単じゃないと思うんです。というのは僕みたいに、例えばヨーロッパである程度やってくれば最初から多少のリスペクトがある中でプレーできますけど、日本からいきなり来るっていうのは、まずそこでのリスペクトを勝ち取らなきゃいけないし、どうしても体格的にも最初はクエスチョンの目で見られてたと思うんです。でも、しっかりと自分のポジションを確保して信頼を勝ち取って試合に出続けて、一定の評価を得ているというのはすばらしいことだし、もっともっと食い込んでいけるんじゃないかなと思います。

 (日本)代表にも食い込んでいけると思うので、ここでパフォーマンスを出して(ほしいです)。間違いなく(日本)代表のスタッフたちもこれからアメリカに来たり、キャンプしたり試合をしたりすると思いますし。(2026年に)ワールドカップがあるし、そのタイミングで話があれば、声が掛かるチャンスはあると思うので、その時までにしっかりと自分のコンディションと良いパフォーマンスを維持できるかが鍵なんじゃないかなと思います。

***

 バンクーバーの印象を聞くと、「スタジアムもいいし、街もきれいだし」と話した。以前にビザの取得で2、3日滞在したことがあるという。「その時にすごくいい印象を持っていたんですけど、素敵な街だなぁと思って」。移動が大変なMLSの遠征だが、「アウェイに行くと色々と全然ロスとは違うものが見られるのでおもしろいんですけど、またバンクーバーはおもしろいなと」とも話した。

 高丘選手とはバンクーバーに滞在した時に一緒に食事をしたり、ロサンゼルスに来てすぐの時にも話をしたりと、これまでは面識がなかったがMLSに来て交流があると話す。これまでMLS所属選手から日本代表が選出されたことはなく、高丘選手にそのチャンスがあればつかんでほしいと語った。

 吉田選手も山根選手も日本代表を経験。吉田選手は代表キャプテンも務めた。ギャラクシーでもキャプテンとしてチームを引っ張っている。ヨーロッパでもプレーした代表経験を持つ選手がMLSチームでキャプテンとして活躍し、MLSの良さを発信することで、日本でのMLSの評価が変わることは間違いない。

 次のワールドカップは2026年、カナダ、アメリカ、メキシコの3カ国共同開催。バンクーバー市も開催都市で、BCプレースで7試合が予定されている。

 MLSに所属する日本人選手、できれば高丘選手が、このリーグで活躍し、2026年ワールドカップで日本代表としてプレーすることを期待したい。

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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西川流カナダ彩月会「温習会」開催のお知らせ

 西川流カナダ彩月会が第3回「温習会」を開催いたします。今回は7年ぶりの開催となります。

 ぜひご家族、ご友人とお誘いあわせの上、ご来場ください。

日時:4月27日(土)午後2時開演(1時30分開場)
会場:日系文化センター・博物館(6688 Southoaks Crescent, Burnaby)
入場料:10ドル(チケット問い合わせ先:604-584-8320)
特別ゲスト:フルート演奏者・小西千恵子さん、ピアノ演奏者・Danielle Leeさん

日本漢字能力検定(2024年6月)の申し込みは締め切りました:グラッドストーン日本語学園

グラッドストーンで漢字検定開催

  

 2024年6月16日(日)実施の『公益財団法人 漢字能力検定試験』は申し込みを締め切りました。ありがとうございました。

***

 2024年6月16日(日)に『公益財団法人 漢字能力検定試験』を実施いたします。

 この検定は国内はもとより、世界の日本語学校でも実施されているものです。日本国内でも高校や大学の入学試験において有利であったり、企業内でも受検を促しているところもあるとのことです。

 カナダにいるけれども、将来日本で勉強しよう、あるいは働こうと思っている方、もしくはいずれ日本で社会生活を送ろうと考えている方は、この機会に受検をお勧めします。

 日本語能力試験に大変役に立っているという声もあります。

 受検をご希望の方は、お申込用紙を添付にてお送り出来ますので、グラッドストーン日本語学園までお問い合わせ下さい。お申し込み締め切りは、2024年4月6日(土)です。

2024年度公益財団法人認定日本漢字能力検定実施要項

実施日:2024年6月16日(日)午後2時
申し込み締切日:2024年4月6日(土)
会場:日系ヘリテージセンター2階
申し込み連絡先:グラッドストーン日本語学園(日系プレース内)
電話:604-515-0980
*定員に達しましたら締め切りとさせて頂きます。

過去最大規模のさくらデイズ・ジャパンフェア、快晴で大盛況の2日間!

 昨年は雨に降られたさくらデイズ・ジャパンフェア、今年は4月13日、14日とも初夏を思わせる快晴となった。Vancouver Cherry Blossom Festival(VCBF)の一環として毎年バンデューセン植物園で開催されるジャパンフェアは年々人気が高まり、バンクーバー市民にとって欠かせないイベントとなっている。

 今年はベンダー数が79、来場者数は15,000人を超え過去最大規模となった。植物園内には、日本の文化に関連するフードやクラフトブース、体験スペースが並び、ステージでは和太鼓奏者金刺敬大さんと三味線奏者はなわちえさん、佐藤派糸東流空手、さくらシンガーズ、APPARE Yosakoi Vancouver、Wailele Wai Waiなど、39グループによるパフォーマンスが披露され、大いに盛り上がった。

 たくさんの来場者が太陽の日差しで照らされる満開の八重桜を楽しみながら、フードや音楽、ダンスなどを通して日本の文化を堪能する2日間となった。

第14回を迎え、成長し続けるさくらデイズ・ジャパンフェア

さくらデイズ・ジャパンフェアの幕開け、恒例の鏡割り。在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事(左端)やさくらデイズ・ジャパンフェア実行委員長・塚本隆志さん(右端)が参加。2024年4月13日、バンクーバー市。 Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
さくらデイズ・ジャパンフェアの幕開け、恒例の鏡割り。在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事(左端)やさくらデイズ・ジャパンフェア実行委員長・塚本隆志さん(右端)が参加。2024年4月13日、バンクーバー市。 Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 第1回は2009年。2010年のバンクーバー・オリンピック/パラリンピック開催と2020年の新型コロナウイルス感染拡大で2回中止となったが、2021年のオンライン開催を含めて、今年は14回目となる。

 第1回からジャパンフェア実行委員会委員長を務める塚本隆志さんは「ベンダー数が多いので、園内だけでなく駐車場も使っているところが今までにないところです。実行委員会委員長として辛いことも多いですが、その分終わった時に達成感があります。年々大きくなっていることも、やりがいになっています。最後に皆さんから『良かったですね』と言っていただけることが一番うれしいですね」と笑顔を見せた。

日本文化を体験できる日本酒試飲ブースや浴衣レンタルが大人気

 BC州日本酒協会が主催する日本酒試飲ブースでは6社が参加、16銘柄を小さなカップで飲み比べでき、日本酒を味わうカップルやグループの笑い声であふれていた。

大盛況のBC州日本酒協会主催の日本酒試飲ブース。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
大盛況のBC州日本酒協会主催の日本酒試飲ブース。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today

 BC州日本酒協会メンバーのちぐさポペルさんは「毎年出ているのですが本当に盛況です。初心者の方からお酒のことをよく知っている方までいらっしゃいます。最初のステップとしてはすごくいいと思います。日本酒ってハードルが高くて1本何十ドルとするし、それよりは色々試してお話をして、まず認知してもらう。BC州日本酒協会自体が、お酒の窓口を広げるということを目的でできたので、こういうイベントはすごく助かります」と笑った。

 毎年子どもたちに人気の建友会による風車制作体験ブースでは、心地よい風が吹くたびにクルクルと回る風車の展示が目を引き、親子連れでにぎわっていた。建友会会長松原昌輝さんは「今年は天気がすごく良いので、いつもよりも早いペースで風車の枚数が減っています。また建友会の会員が作ったコースターやウッドクラフトも販売していて、結構売れています。さらに風車を作った子どもたちがドネーションをしてくれていて、今年は能登半島地震被災者の皆さんへの寄付を考えています」と話した。

毎年大人気、建友会の風車制作体験コーナー。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
毎年大人気、建友会の風車制作体験コーナー。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today

 毎年大人気なのは浴衣レンタルも同じ。レンタルスペースは長蛇の列をなしていた。家族全員で浴衣を着て楽しむBhimsen Timslsinaさんは「すばらしい体験です。バンクーバーアイランドからこのフェスティバルのためにやってきました。とても楽しんでいます」と満足そうだった。

和太鼓と三味線で圧巻のパフォーマンスを披露

 和太鼓奏者金刺敬大さんと三味線奏者はなわちえさんが披露した力強いパフォーマンスに、来場者たちの歓声が止まなかった。

 演奏後、はなわさんは「たくさんの人がいて、天気もすごく良くて風も心地がよかったです。さらにお客様の表情も見えて、皆さん楽しそうにされていたので、弾いていて気持ちよかったです」と笑顔で答えた。

 今年で5回目のパフォーマンスとなった金刺敬大さんは「2日間ともこんなにも晴れたのは久しぶり。ピクニックをしながらすごくたくさんの人が見てくれていたので、いつも以上に自分の中でも盛り上がりましたね」とうれしそうだった。

 フードコーナーも大盛況で、テーブルや芝生で食事やドリンクを楽しむ来場者であふれ、植物園内はにぎかな笑い声と平和的な雰囲気に包まれていた。

満開の八重桜と浴衣レンタルを楽しむ来場者。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa/Japan Canada Today
満開の八重桜と浴衣レンタルを楽しむ来場者。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa/Japan Canada Today
家族全員で浴衣レンタルを楽しむバンクーバーアイランドから来たBhimsen Timslsinaさん一家。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
家族全員で浴衣レンタルを楽しむバンクーバーアイランドから来たBhimsen Timslsinaさん一家。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
元気いっぱいのパフォーマンスを披露したTenrikyo Joyous Stars。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
元気いっぱいのパフォーマンスを披露したTenrikyo Joyous Stars。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
酒粕を使ったスキンプロダクトのブース。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
酒粕を使ったスキンプロダクトのブース。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
フードトラックにも多くの人が…。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
フードトラックにも多くの人が…。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
大盛況の浴衣レンタルブースと色彩豊かな浴衣を来た来場者たち。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today
大盛況の浴衣レンタルブースと色彩豊かな浴衣を来た来場者たち。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa /Japan Canada Today

(取材 古川紋)

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バンクーバー日系社会に朗報 本格的シニア向けグループホームRosewood by Nikoniko竣工

写真 BTN Senior Care Management Limited Partnership
写真 BTN Senior Care Management Limited Partnership

Bayshore Gardens Real Estate Holdings社(社長 岡本裕明)とNikoniko Health社(社長 阿部山ゆうこ)の出資によるBTN Senior Care Management Limited Partnershipが所有運営するRosewood by Nikonikoがバーナビー市ローズウッド通り7868番地で竣工しました。

このグループホームは10床という小規模な建物ゆえにスタッフが顧客の状況をしっかり把握したうえで日本的なサービスを提供することを目的とし2019年の用地取得後、リゾーニングを経て、24年3月末に完成しました。

3月28日に開催された竣工の儀では金光教の橋本竜三教会長がその儀を執り行い、竣工式ではRaj Chouhan州議会議長やMike Hurleyバーナビー市長の祝辞のほか、同市議会からは6人もの議員が駆け付け、在バンクーバー日本国総領事館からも田中剛士領事が参加するなど華やかに開所を祝う一方、カナダでもほとんどないグループホームのコンセプトに市長以下興味津々で、大変前向きな印象となったようです。

バンクーバーの日系社会ではシニア層が増えていく中、Nikoniko社では訪問介護を中心に事業を展開してきましたが、事業を推進する中で日本的なグループホームの必要性からBayshore Garden社との協業により今回、完成にこぎつけたものです。

なお、同施設はBC(ブリティッシュ・コロンビア)州政府のAssisted Livingのライセンスを授与されており、民間による運営施設として経営されます。

広く天井の高い建物と大きな窓はスペーシャスで段差もなく、建物内にはエレベーターも設置されています。また、広々とした庭では木々が奏でるほか、ベジガーデンで居住者がガーデニングや野菜の栽培なども楽しめるようになります。また、日本の茶室を思い浮かべるインスパイアルームが別棟であり、脳の運動教室や体操など多目的ルームとして活用されます。建物の設計はヒロタ建築設計事務所で、代表のEitaro Hirota氏はシニアケア施設設計のエキスパートであり、今回は和のテイストをふんだんに取り入れ、箱庭や日本的な浴室のスパルームなども完備しています。

オーナーの一人、岡本氏は「このコンセプトが当地で理解されれば日系のみならず、カナダ全体の問題となるシニアの生活について解決策のオプションの一つとなると信じる。運営の状況を見て第二弾を検討したい」と述べています。

3月28日竣工式にて来賓及び関係者と記念撮影。写真 BTN Senior Care Management Limited Partnership
3月28日竣工式にて来賓及び関係者と記念撮影。写真 BTN Senior Care Management Limited Partnership

(寄稿 BTN Senior Care Management Limited Partnership)

異色のピアニスト角野隼斗さん、バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラと共演

角野隼斗さん。Photo courtesy of Vancouver Metropolitan Orchestra
角野隼斗さん。Photo courtesy of Vancouver Metropolitan Orchestra
角野隼斗さん。Photo courtesy of Vancouver Metropolitan Orchestra
角野隼斗さん。Photo courtesy of Vancouver Metropolitan Orchestra

 東京大学大学院(情報理工学系研究科創造情報学専攻)出身という異色の経歴を持つ、いま話題のピアニスト角野隼斗さんが、バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ(VMO)と共演する。

 Cateen(かてぃん)という名で活動するYouTubeチャンネルでは登録者数が現在133万人。クラシックだけにとどまらず、ポップスやジャズなども演奏するほか、作曲・編曲も手掛ける音楽家として、いま最も注目を集めている若手音楽家のひとり。

 コンサートチケットはすぐに完売すると言われるほどの人気で、日本では全国公演ツアーを開催し、海外ではオーケストラとの共演やリサイタルなど幅広く活躍している。

 今回のバンクーバーでの公演に際し、角野さんは、「バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ、そしてマエストロ、ケン・シェと一緒にカナダデビューを果たせることをとても楽しみにしています。バンクーバーの美しい街を見ること、そしてバンクーバーの人々と出会い、Gershwin Concerto in Fを皆さんの前で演奏できることを楽しみにしています」とコメントを寄せた。

 VMOマエストロのケン・シェさんは、「東京で行われた“Cateen”(角野隼斗)のリハーサルに出席しました。そこでは、私の先輩である佐渡裕さんと一緒にツアーでのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のリハーサルを行っていました。それは本当に魅惑的で、彼は音楽に対する深い理解と愛情を持っていると感じました。佐渡さんと話している時、隼斗が去年Gershwin(ガーシュウィン)の“Rhapsody in Blue”で共演してデビューした時の感動を話してくれました。それを聞いて、Gershwin Concerto in Fを共演することがとても楽しみになりました」と5月4日の角野さんのカナダデビュー共演に期待を込めた。

 VMOにとって今回の公演は2023-24年シーズンのフィナーレ。シーズンを締めくくるにふさわしいゲストを迎えての公演となる。

VMOシーズンフィナーレ with 角野隼斗

日時:2024年5月4日、7:00pm (Opening Act by Vancouver College Wind Ensemble)、7:30pm Pre-Concert Talk、8:00pm VMO Concert
会場:ブリティッシュコロンビア大学(UBC)Chan Centre for the Performing Arts(6265 Crescent Road, Vancouver)
指揮:Ken Hsieh
ピアノ:角野隼斗“CATEEN”
チケット情報: www.vmocanada.com、もしくは、www.chancentre.com

チケットプレゼントのお知らせ

 5月4日に開催されるバンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ(VMO)と角野隼斗さんが共演するコンサート”All that Rhythm with Cateen!”のチケットを抽選で10名様にプレゼントします。

 ご希望の方は、件名に「VMOチケット希望」と明記の上、メールにてご応募ください。
 応募メールアドレス: promo@japancanadatoday.ca

 締切は4月29日正午。当選者には弊社より連絡いたします。

 ご応募、お待ちしております。

(記事 編集部)

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食品産業の問題に切り込むドキュメンタリー「Food, Inc. 2」ロバート・ケナー、メリッサ・ロブレット監督

A scene from FOOD, INC.2 Courtesy of Mongrel Media
A scene from FOOD, INC.2 Courtesy of Mongrel Media

 晴れの日が多くなってきて気持ちの良い季節になって来たバンクーバー。お友達と集まってBBQをしたり、お弁当を持ってビーチでピクニックするのが楽しみな方も多いのでは?特に最近の物価高、持ち寄りでワイワイできるってお財布的にも最高ですよね。

 さて今回ご紹介するのは、食品産業の問題に切り込むドキュメンタリー「Food, Inc. 2」(監督ロバート・ケナー、メリッサ・ロブレド)。2010年にアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた「Food, Inc.」(ロバート・ケナー監督)の続編です。

 前作では食肉処理工場、農園、そして違法労働者の問題に迫り大きな話題を集めました。私たちが口にする肉や小麦、とうもろこしの生産過程や安全性を問う映像は、かなりショッキングだったのを覚えています。

 今作では前作ほどの衝撃映像は無いものの、依然として改善されていない食肉工場の労働環境やさらに進んだ巨大企業による独占(カナダでも価格高騰の一因と言われていますよね!)、そしてプロセスフードや甘味料が健康に与える影響などを伝えます。新型コロナの頃の食肉処理工場でのクラスターはまだ記憶に新しいところだし、いや映像よりも何よりも10年以上経っているのに未だ何も改善されてないって・・・と、そちらの方が違った意味でショックでした。ただ、前作が撮られた2008年よりもオーガニック食品や代替肉の普及が進んでいたり食品産業と環境問題の関係について考える人が増えていると本作は伝えているので、少しは良い方向に進んでいる兆しもあるのでしょうか。

 というわけで私たちが毎日口にする食べ物について考えさせてくれる映画です。お肉もお魚も大好きだし、誰もが安全な食料品を身近なお店で適正価格で買えるのが一番だと思う私に今出来ることは何だろう、そんな問いを投げてくれた作品でした。

 バンクーバーではVIFFセンターで上映中です。

A scene from FOOD, INC.2 Courtesy of Mongrel Media
A scene from FOOD, INC.2 Courtesy of Mongrel Media

Lalaのシネマワールド
映画に魅せられて

バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。第1回からはこちら

Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
みなさん一緒に映画観ませんか!?

「かんがえごと3」~投稿千景~

エドサトウ

 太陽の黒点の活動が弱くなり、数年先には小氷河期に入るという科学者の話があり、1670年頃のようにイギリスのテムズ河の流れ水が氷ることが想像されるという。最近の大雨などの異常気象は、小氷河期の前ぶれで、強い寒気と温暖な湿った気流がぶつかって起こる現象のようにも見える。

 小氷河期と言っても、僕の考えでは、数度平均気温が下がるくらいではないかと思える。しかし、今頃の地球の温度は温暖化で2度以上近く平均値より高いわけだから、小氷河期は今よりも5度Cくらい寒くなるということかもしれないとすれば、冬気温がゼロ前後であればマイナス5度Cになるということであろうか?

 マイナス5度C以下の寒い日が続けば、池や川は厚い氷に覆われてアイススケートができるようになることが想像される。当然、北国の北海道とか、北欧やカナダ、ロシアなどは、今まで以上に農作物の収穫は望めなくなるのではと思われる。

 小生が出演した『Shogun 将軍』が、世界で話題になっているらしいが、興味半分で言えばイギリス人ブラックソン(三浦按針)が日本に漂着した1600年頃は、すでに小氷河期が始まっていて、異常気象により農作物の不作があったとすれば、食料などお金になるものを求めて新天地を目指すものがいたとすれば、英国からオランダの東インド会社の船に乗りアジアを目指した船団があったととしても不思議はない。

 当時、ヨーロッパの寒冷に比べれば、中国や日本はさほど強い寒冷期はなかったようである。であれば、東南アジアの中国、日本は、夢の国黄金の国であったかもしれない。

 「小氷河期(1300-1917)はこうだ。西ヨーロッパと中央ヨーロッパにおいて、IPCCとそれが評価する基礎となる査読つき研究では、干ばつは増加しておらず、したがって理論的に言って、干ばつ増加は人為的な気候変動によるものではないと結論づけている。(中略)将来、気温が2度C以上変化した場合においても、現時点ではIPCCは、現時点での科学的理解は変わるとは考えていない。」とあり、さらに「影響を受けやすい理由の一つは人間の強制力(訳注:CO2などによる温室効果などのこと)がない場合でも、気候は大きく変動するという事実である。」とロジャー.ビールキー.ジュニア(監修:キャノングローバル戦略研修所)の見解がある。

 「IPCCでは産業革命以降の地球温暖化を約0.8度Cとしておりますが、この大部分は小氷河期からの戻りに過ぎないかもしれません」とも言よしている。

 やがて来るであろうと想像される小氷河期に対して私たちは、十分なエネルギーの準備、備蓄をしなければなるまいと考えごとをする小生である。

*IPCC「Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織。

投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
これまでの当サイトでの「投稿千景」はこちらからご覧いただけます。
https://www.japancanadatoday.ca/category/column/post-ed-sato/

「ザ・トラジカリー・ヒップ」音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第22回

はじめに

 私事ですが、オタワに着任して、早いもので、1年11ヶ月が過ぎました。この連載も22回目です。カナダは非常に若い国ですが、タイトルの通り、数多くの秀逸な音楽家を生んでいます。圧倒的な才能に溢れる天才・鬼才・異才が目白押しです。中学生で洋楽を聴き始めて以降、自然にカナダ出身のアーティストも聴いて来ていたの、大概の有名アーティストは知っているつもりでした。しかし、それは正に「井の中の蛙大海を知らず」でした。

 オタワに着任して、徐々に同僚・知人・友人が増え、音楽談義に花を咲かせていました。2022年の夏です。

カナダ人A氏「そんなにロックが好きなんだから『ザ・ヒップ』は知ってるでしょ。カナダの誇りだよ」
私「えっ。知らない。誰?」
A「トラジカリー・ヒップのことですよ。」
私「いや。初めて聞く名前だよ。でも、印象に残る名前だね。」
A「バンド名が示唆するように、オルタナ系のサウンドだよ。トルドー首相も大好きだと公言してる。」
私「へー。」

 という訳で、私は、トラジカリー・ヒップをオタワに来て初めて知った次第です。ほぼ予備知識無しに、聴き始めました。聴けば聴くほど、ザ・ヒップのサウンドに魅せられました。ロックの原点みたいなサウンドです。米国のREMに似てるとも感じましたが、同時に、とてもカナダ的なバンドだと思いました。コアなファンのみならず、多くのカナダ人がトラジカリー・ヒップのことを親愛の情を込めて、「ザ・ヒップ」と呼んでいます。私が聴き始めた時は、既に活動を停止して6年が経っていました。劇的な最後の瞬間も後になって知りました。それでも、心からの敬意を込めてザ・ヒップと呼ばせてもらいます。

 という次第で、今回は、ザ・ヒップについてです。

オルタナティブ〜ロックの原点回帰

 ザ・ヒップを聴き、彼らのライブ映像を観ていると、音楽の原風景を感じます。同時に、音楽が辿って来た長い歴史を垣間見る思いがします。

 と言うのは、音楽は、太古の昔からとても自由なもので、皆が声をあげ、石や骨や木を叩き、喜怒哀楽を表し、時に、祈り、祝福し、悼んで来たからです。ザ・ヒップのコンサートがそれに重なるのです。

 そして、時代が進むにつれ、音楽は洗練され、やがて、偉大な先人達が音楽の奥義を様々に探究し、美しく響く法則を発見し、伝承されます。教会は音楽を利用し、一層の発展を遂げます。和声論が確立し、偉大な作曲家群が西洋古典音楽を究極の芸術表現へと昇華させ、世界を席巻します。

 20世紀になると、そんな古典音楽とアフリカのリズムが融合して、ジャズが生まれ、やがてロックンロールが誕生します。ロックンロールは、若者が必然的に抱く理由なき抵抗感と不満と葛藤を完璧に吸収し、一気に現代の音楽の主流になります。近代科学技術と市場経済がロックンロールに推進力を与え、強大な産業へと変貌します。結果、音楽は、芸術性と商業主義の境界線で彷徨始めます。「売るために妥協し、その結果売れた」のと「心の底から表現したいものを表現した結果、売れた」の差は大きいのです。真実は、アーティストの心の中にしかないかもしれません。しかし、長い目で見れば、聴衆にも分かるのです。

 そこで、ザ・ヒップです。彼らのサウンドには、虚飾を排し、自分達にとって正直であろうとする強靭な意思がある、と感じます。耳障り良くするために、砂糖をコーティングしたり、人口着色料を使ったりすることを拒否しているのです。洗練され、進化し、贅肉が付いた商業化されたロックに背を向けた、原点回帰です。そこから、別の進化の道を歩み始めたのです。ザ・ヒップがオルタナティブ・ロックと称される所以です。一方、ザ・ヒップは、商業的に大成功しています。33年に及ぶ活動期間に、1枚のEP(デビュー盤)、13枚のスタジオ・アルバム、ライブ盤1枚、シングル盤50枚余をリリースし、9枚がカナダのアルバム・チャートの首位になっています。カナダで最も売れたバンドです。それでも、商業主義に堕すことなく、カナダという国の核心を衝いて来たのです。そんなザ・ヒップをカナダのオーディエンスは愛して止まなかったのだと思います。

キングストンの出合い

 ザ・ヒップは、キングストンで誕生しました。始まりは、1984年です。この時、ボーカルのゴード・ダウニーは20歳で、クィーンズ大学で人文学専攻でした。ゴードは、ドラムのジョヨニー・フェイと一緒に様々なプレイヤーと不定期に活動していました。そこで、地元の別のバンド「ザ・ロデンツ」の凄腕ギタリストのロブ・ベイカーとベース奏者ゴード・シンクレアがゴード・ダウニーとジョニーに合流します。ロブは、ゴード・ダウニーのカリスマ性のある強靭な歌声は『最強のフロントマン』になると直感したと言います。ここに4人組のパーマネントなバンドが成立。引き続きロデンツと名乗り、クィーンズ大学の学生街のバーで活動し始めます。

 1986年、この4人組ロデンツは、かなりイケたバンドではありましたが、1986年、ゴードは、幼なじみのギタリスト、ポール・ラングロアに声をかけます。サウンドに厚みが欲しかったのです。ポールは、当時、ファスト・レストラン・チェーンの「レッド・ロブスター」で働いていましたが、バンドに参加するために辞めました。ここで、ボーカル、ドラム、ベース、にギターx2の5人組が誕生します。そして、バンド名は、元モンキーズのマイク・メネエスが製作した短編コメディーの連作映画「エレファント・パーツ」の中の一つの短編のタイトルから拝借しました。敢えて和訳すれば、「悲劇的なまでに飛んでいる」でしょうか。ヒップは、ラブ&ピースのヒッピーに通じます。語感は、常識破りの飛んでる前衛的なイメージで、周りから見れば痛く可愛そうな程です。そんな名前を名乗ったところに、我が道を行く彼らの矜持があるように感じます。

 そして、トラジカリー・ヒップは、30年余にわたり、一切のメンバーチェンジ無しで、この5人は活動を共にします。

デビューEP「トラジカリー・ヒップ」

 5人は、まず、キングストン界隈のクラブから、徐々に活動の場をオンタリオ州全体に広げていきます。オンタリオ州は面積にして日本の2.8倍の広大な州です。南部の都市を中心に小さなクラブやバーで機会さえあれば、何処にでも出かけて演奏したといいます。

 1987年暮れには、7曲入りのデビューEP「トラジカリー・ヒップ」を地元独立系レーベルからキングストン近郊のみでリリースします。そして、1988年の春先に5週間かけて、カナダ全土でコンサート・ツアーと言うか、ドサ周りを敢行します。片田舎の小さな会場で、奇妙な名の無名の新人バンドを見た観客の反応は悪くなかったそうです。デビューEPは、徐々にカナダ全土でリリースされていきます。シングルカットされた「スモール・タウン・ブリングダウン」を筆頭に佳曲ぞろいです。今、聴いてもインパクトのある音盤で、ジャケット写真も、蒼い情熱が潜む唯ならぬ雰囲気です。ザ・ヒップの魅力がほぼ全開しています。しかし、FMラジオではある程度オンエアされたものの、当時は全く売れませんでした。

 似たような経歴の新人バンドは星の数ほどあります。が、ザ・ヒップの運命の扉は、この後に開くのです。

ブルース・ディッキンソンの発見

 1988年11月の或る日の朝の事です。米大手のMCAレコードの新任副社長がマンハッタンの自宅で朝食を食べている時に、新人アーティストのオムニバス盤CDをBGMとして流していました。すると、或る曲が妙に耳に残ります。調べると、トラジカリー・ヒップの「スモール・タウン・ブリングダウン」でした。即座に連絡先を調べて、ザ・ヒップのマネージャーと連絡を取ります。兎に角、彼らのパフォーマンスを観たいのだと。直近の公演は、11月11日(金)にマッセイ・ホールでのトロント音楽賞への出演でした。因みに、この夜のチケットを見れば、ザ・ヒップの名も載っています。超多忙な日程をぬって、ディッキンソン副社長は、1泊2日の予定でトロントに飛びます。この夜、ザ・ヒップは2曲だけ演奏しています。ゴードが1曲目の歌い出しでマイクを落としてしまうハプニングがありました。メンバーは動揺し、演奏が破綻しかねない状況だったといいますが、カリスマ的なゴードの機転が効いて、難局を乗り切りました。

 翌12日(土)、ディッキンソン副社長は、ザ・ヒップとの契約も視野に入れて、ランチにザ・ヒップを招待します。実は、ランチの後は、ニューヨークに帰る予定でした。しかし、その日の夜、ザ・ヒップがトロントの名門クラブ「ホースシュー・タヴァン」に出演すると知ると、予定を変更し、ザ・ヒップのパフォーマンスを観に行きます。そこで、即座に、MCAレコードと長期契約を結びます。

MCA第1弾「アップ・トゥ・ヒア」〜第2弾「ロード・アップル」〜飛躍

 1989年春、ディッキンソン副社長の強い意向で、ザ・ヒップは、米国テネシー州ナッシュビルの超名門「アーデント・スタジオ」にて第2弾の録音に取りかかります。MCA社の意気込みも感じます。何故なら、アーデント・スタジオは、レッド・ツェッペリン、ボブ・ディラン、B.B.キング、ジェームス・テイラー、オールマン・ブラザース・バンド等々の錚々たるアーティストが録音した場所。経費も相当なものだからです。無名の新人バンドに眠る才能の原石に賭けたのです。ザ・ヒップも、ライブで演奏して観客の反応の良い曲を中心に各楽曲に磨きをかけます。1989年9月、結果が出ます。

 捨て曲なしの全11曲を収録した「アップ・トゥ・ヒア」は、音楽的にも商業的にも大成功です。最初の1年だけで10万枚を売り上げ、1989年のカナダ年間アルバム・チャート14位。90年1月にゴールド・ディスク、3月にはプラチナ・ディスク認定を受け、年間チャート5位です。ジュノー賞の最優秀新人賞も得ます。

 翌91年2月、第3弾「ロード・アップル」をリリースすると、4月には初めて、カナダのアルバム・チャートで首位に立ちます。この音盤は、あのダニエル・ラノアのスタジオで録音されました。ザ・ヒップの唯一無二のサウンドが完全に確立しました。2台のギターが絡み鋭角的なリズムを刻むバンド演奏に乗って、ゴードの声が彼自身が書く歌詞を力強く歌う時、人生の機微が胸に迫ります。

 ザ・ヒップは米国では大成功を収めることはありませんでした。極上のバンド・サウンドにゴードの強力な声と歌詞であるのにです。ある意味、それだからこそ、ザ・ヒップはカナダを拠点としカナダを歌い続けることが出来たのですし、ザ・ヒップの核心がカナダ人の胸に共鳴したのでしょう。

 いずれにせよ、ここから、カナダの国民的バンドの歴史が始まりました。

脳腫瘍

 光陰矢の如し。ザ・ヒップは、時代を駆け抜け、いつしか現代カナダのアイデンティティーの重要な一部をなすに至ります。決して多作ではありません。一つのアルバムを完成するのに2年余がかかります。振り返って聴けば、どのアルバムも時代を活写している部分と時代に関わらない普遍的な部分が混在していると感じさせます。そして、バンドの一体感が損なわれることはありませんでした。しかし、何事にも予期せぬ事態は生じます。天災は忘れた頃にやって来る、と言います。

 2015年12月、ゴードが末期の脳腫瘍と診断されるのです。

 ザ・ヒップは、この診断に先立ち既に新音盤の録音を完了しており、「ゴギー・スターダスト」として16年3月にリリース予定で、その旨公表されていました。このタイトルは、デビッド・ボウイの傑作「ジギー・スターダスト」に由来します。しかし、16年1月、ボウイが逝去します。更に、2月にはゴードが発作で倒れます。これを受けて、ザ・ヒップは、アルバム・タイトルもリリースの時期も、そしてバンドの今後のあり方についても真剣に検討します。

 2016年5月、ザ・ヒップは、ゴードが脳腫瘍と診断された事を公表します。合わせて、夏にカナダ全土で公演ツアーを行うと表明します。

 6月17日、ザ・ヒップの最後のアルバム「マン・マシーン・ポエム」がリリースされます。

2016年7月22日〜8月20日

 ザ・ヒップの最後のツアーは、1カ月で10都市を周る現代カナダ史の重要な1ページを刻みます。

7月22日、ヴィクトリア、@セイブ・オン・フーズ・メモリアル・センター
  24日、バンクーバー、@ロジャーズ・アリーナ
  28日、エドモントン、@リクサル・プレイス

8月1日、カルガリー、@スコシアバンク・サドルドーム
  5日、ウィニペグ、@MTSセンター
  8日、ロンドン、@バドワイザー・ガーデンズ
  10日、トロント、@エアカナダ・センター
  12日、同上
  16日、ハミルトン、@ファースト・オンタリオ・センター
  18日、オタワ、@カナディアン・タイヤ・センター
  20日、キングストン、@ロジャース・K-ロック・センター

 脳腫瘍で発作も起こしているゴードの体調に気遣いながら、ザ・ヒップは万全の準備でこのツアーに取り組みます。医療チームも同行です。

 30年余の集大成だから、セットリストが凄いのです。デビュー盤から最新盤までの中から90曲です。10都市11公演で、毎回、90曲の中から20曲程を選び、全く違うセットリストで演奏したのです。30年余の一貫した活動の賜物です。他の大物アーティストの場合は、セットリストを決めて基本的にはそれを繰り返す場合がほとんどです。臨時で雇ったミュージシャンがバックアップします。しかし、ザ・ヒップは全て5人だけです。一回の公演に投入するエネルギーが半端ありません。

 8月20日の千秋楽は、ザ・ヒップ創世記のキングストン。素晴らしい音楽的冒険の後の帰郷です。1曲目はサード・アルバム「フルリー・コンプリートリー」収録の『フィフティ・ミッション・キャップ』で始まりました。アンコールは3回。合計30曲を演奏し切りました。そして、ザ・ヒップの30年余の活動の最後となった曲は『アヘッド・バイ・ア・センチュリー』です。第5弾音盤「トラブル・アット・ザ・ヘンハウス」に収録。シングルカットされてカナダ・チャートで首位になった曲です。フォーク・ロックのナチュラルな色調の佳曲で、日本でも放映されたCBCのテレビ・ドラマ「赤毛のアン2」の主題歌でもありました。

 トルドー首相も会場に駆けつけ、メンバーを激励。CBCはテレビとラジオで全国に生放送し、ネットでも配信。1170万人が視聴したそうです。カナダ人の3人に1人が観た計算です。ザ・ヒップは完結しました。

結語

 ゴード・ダウニーは、闘病の末、2017年10月17日、他界。ザ・ヒップは物理的にも消滅します。他のメンバーは、それぞれの道を歩み始めました。

 しかし、ザ・ヒップの最後の日々は克明に記録されていました。そして、ドキュメンタリー映画「ロング・タイム・ランニング」が同年のトロント映画祭でプレミア上映されました。Amazon primeで視聴可能です。言葉を超えたカナダの音楽と青春と友情の物語です。

 ザ・トラジカリー・ヒップよ永遠なれ。

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

能登半島地震被災者支援チャリティイベント「Noto Night」、寄付金をバンクーバー総領事館に

左から、渡辺雅之さん、平居幹さん、丸山浩平総領事。写真:渡辺雅之さん
左から、渡辺雅之さん、平居幹さん、丸山浩平総領事。写真:渡辺雅之さん

 渡辺雅之さんが2月17日に開催した能登半島地震被災者支援チャリティイベント「Noto Night @ Nikkei Centre」で集まった寄付金を在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事に手渡したことを報告し、協力者に感謝した。以下は渡辺さんからの寄稿。

***

 3月1日、BC-Japan Friendship Facebookグループの管理者である平居幹と渡辺雅之は、2月17日に開催された「Noto Night @ Nikkei Centre」チャリティイベントで集めた募金を、丸山浩平総領事に渡しました。

 イベント後、マッチング寄付や個人・グループからの追加寄付もあり、最終合計は16,560ドルとなりました。平居と私は、総領事館が日本政府の窓口として義援金を受け取ってくれたことに感謝を述べて、すべてのお金が能登半島地震被災者に届くようお願いしました。

(寄稿 渡辺雅之さん)

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