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Naomi Mishima

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Honda Celebration of Light 2024、今年はポルトガルで幕開け!

 今年もバンクーバーの花火大会 “Honda Celebration of Light”が始まった。2024年の参加国は、ポルトガル、マレーシア、イギリス。

 毎年大勢の人が会場となっているイングリッシュベイに詰めかけ、真夏の夜空を彩る大輪に酔いしれる。

 今年は少し趣向を変えて、花火打ち上げ前にドローンでのショーも開催されている。

 すでにポルトガルは7月20日、マレーシアは24日に終えて、あとは27日のイギリスを残すのみ。今年はどこが優勝するのか?

 見逃した人は日加トゥデイの写真と動画で!

Honda Celebration of Light 2024 ポルトガル。2024年7月20日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 ポルトガル。2024年7月20日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 ポルトガル。2024年7月20日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 ポルトガル。2024年7月20日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 ポルトガル。2024年7月20日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 ポルトガル。2024年7月20日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
ドローンでスポンサー名の"HONDA"の文字を描いた。Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
ドローンでスポンサー名の”HONDA”の文字を描いた。Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
Honda Celebration of Light 2024 マレーシア。2024年7月24日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

(記事 編集部/写真・動画 斉藤光一)

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18 ☆文末の「ね」は難しいね !

日本語教師  矢野修三

 日本語超上級者からおもしろいメールが届いた。「もし沖縄で日本語を勉強していたら、先生に怒られませんでしたね(笑)」である。最初は意味がさっぱり分らなかったが・・・。こんな文章が続いた。「沖縄言葉についての『ことばの交差点11』を読んでそう思いましたね(笑)」である。

 それは少し前に沖縄言葉(うちなーぐち)について書いたエッセイで、沖縄では文末に「ね」をつけて、例えば、「ランチに行きましょうね」。これは別に相手を誘っている言葉ではなく、自分が一人でランチに行く意味だと分かってびっくり。でも沖縄言葉では、このように会話文の最後に「ね」を付けるのが一般的で、確かに慣れれば温かみを感じる素敵な言い方。こんな内容であり、これを読んでの感想をユーモラスに書いて送ってくれたようである。

 そういえば、彼女は会話で、文の最後に、理由もなく、よく「ね」をつけていたことを思い出した。例えば「出身はどこ?」の答えに「カルガリーですね」や「これから友達と会いますね」などなど。何回か注意したことがある。うーん、でももし沖縄だったら、注意されなかったかも。なるほど、ようやく彼女の言いたいことが分り、思わず笑ってしまった。

 この終助詞、文末の「ね」は日本語教師にとって、かなり骨が折れる。日常会話において「今日は暑いですね」などのように文末に「ね」をよく付ける。これは話し相手に親しさを表わしながら同意を求めているので、相手が「はい、暑いです」と「ね」を付けずに返事すると、かなり不自然な冷たい感じの会話になってしまう。その通りですね。

 そこで、生徒には会話における「ね」の重要性を教えなければ・・・。でも落とし穴が待っている。文末「ね」は他の使い方もいろいろあり、相手を確認する、例えば、「Aさんは大学生ですね?」に対して、しっかり「ね」を付けて、親しみを込めたつもりで、「はい、大学生ですね」と答える。うーん。気持ちは分かるが、でも、この場合は、「ね」を付けると不自然な会話になってしまう。こんなこと日本人にしてみればごく当たり前のことだが、生徒にすれば確かに難しい。

 レベルが上がるにつれ、なるべく日本語らしい自然な会話をしたくなり、「ね」をつければ親しみのある会話になると思って、どんな場合でもこの「ね」を付けてしまう生徒、特に女性に多い。メールをくれた彼女もそう思っていたとのこと。アニメなどの影響大である。

 この文末の「ね」は会話に親しさや柔らかさを出すにはとても効果がある。依頼や誘いなどの「またお願いしますね」や「また一緒に飲もうね」など、確かに「ね」を付けると、とても効果的。

 でも、親しさを出すつもりで、単なる自分の行動に、「私はあしたウィスラーに行きますね」や「これからカラオケに行きますね」のように、「ね」を付けてしまうと、親しみどころか「そんなこと知らないよ、勝手に行けば」と相手は気分を害してしまう恐れあり。さらに、「ありがとうね」などの「ね」はアクセントを変えることで、軽い感じの表現にも・・・。日本人は巧みに使い分けている。

 このように「ね」はいろいろな用例があり、日本語教師としては大変。結局のところ、「習うより慣れよ」(Practice makes perfect)で、「体で覚えてね」とアドバイスしたいね。そして、「ね」について、沖縄出身の日本語教師とお話したいね。勝手にすればと怒られそう。

「ことばの交差点」
日本語を楽しく深掘りする矢野修三さんのコラム。日常の何気ない言葉遣いをカナダから考察。日本語を学ぶ外国人の視点に日本語教師として感心しながら日本語を共に学びます。第1回からのコラムはこちら

矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)    
メール:yano@yanoacademy.ca
ホームページ:https://yanoacademy.ca

アート・ミキさん「Gaman – Perseverance: Japanese Canadians’ Journey to Justice」出版

アート・ミキさん。著書「Gaman」を手に。2024年4月、リッチモンド市で。撮影 斉藤光一
アート・ミキさん。著書「Gaman」を手に。2024年4月、リッチモンド市で。撮影 斉藤光一

 全カナダ日系人協会・会長として1988年9月22日、ブライアン・マルルーニ首相と共に日系カナダ人の戦時補償の合意書に署名したことで知られるアート・ミキさんが、今年4月に著書を出版した。「Gaman – Perseverance: Japanese Canadians’ Journey to Justice」(Taronbooks 2023)

 「Gaman」とは「我慢」を指す。ミキさんは、「リドレス運動中の状況を表していたと思ったから」と語った。戦後補償のリドレス運動は日系移民100年祭を機に盛り上がりを見せ、紆余曲折しながらようやく1988年に身を結んだ。その中心にいたのがミキさん。

 当初はリドレス運動について書く予定だったという。「いつか本にしたいと思って、リドレス中にメモを多く残していたんです」。30年前の話だと笑う。それから約3年前に「そろそろやらなくては」と執筆のためにメモを整理し始めた。その時にリドレス運動にも大きく関わったが、他にも自分が関わった先住民族の問題や市民権委員としての仕事なども入れて、「回想録(メモワール)にすることに決めました」。

 構想30年、執筆2年、「資料をたくさん集めたりして、すごく大変だった」と笑った。そうして完成した本の表紙には3本の木がデザインされている。ミキさんの孫息子がデザインしたという。「三木」を表している。

 昨年は戦時補法合意から35周年だった。カナダ政府の日系カナダ人強制移動政策も、リドレス運動も、いまのカナダの在り方に大きな影響を与えている。リドレスとは何だったのか、戦後補償がカナダに与えた影響とは。そのヒントが見つかるかもしれない。

 日本語での翻訳予定を聞くと「日本で興味を持ってくれている団体はあるけど」との回答。日本は来年戦後80周年。そう遠くない昔、日本からカナダに渡った人たちのカナダでの「Gaman」と努力を日本にも紹介できるといいかもしれない。

(記事 三島直美)

「おかあさんの被爆ピアノ」上映会@パウエル祭/ “Hiroshima Piano” Film Viewing at Powell Street Festival

広島で被爆しながらも奇跡的に無傷で残った「被爆ピアノ」を修復して全国で演奏会を開く調律師・矢川が出会う人々を通して広島からのメッセージを伝える「おかあさんの被爆ピアノ」をパウエル祭で上映します。

主人公は、調律師・矢川と、自分の母親が祖母の被爆ピアノを寄贈していたことを知った大学生・江口。被爆ピアノを巡るそれぞれの複雑な思いが交錯する物語です。映画は実在の調律師をモデルに描いた作品で、主演は矢川を佐野史郎さん、大学生の江口を武藤十夢さん(AKB48)が演じています。

映画は約2時間、日本語で英語の字幕付きです。

「おかあさんの被爆ピアノ」@パウエル祭

日時:8月4日(日)4:30pm
会場:Firehall Arts Centre(280 E Cordova St, Vancouver)オッペンハイマー公園から1ブロック西側
入場料:無料
パウエス祭のホームページにも詳しく掲載されています。https://powellstreetfestival.com/programs/hiroshima-piano

“Hiroshima Piano” Film Viewing at Powell Street Festival

In Hiroshima, there was a piano that remained unharmed after being scorched by the atomic bomb. This piano, known as “the Hiroshima piano,” has become a symbol of hope and resilience. The stories of various people are woven into the history of this piano through the efforts of the piano tuner who carefully maintains it.

The film’s story was inspired by the life of Mitsunori Yagawa, a piano tuner who restored this instrument and embarked on a journey across the country.

The film is about two hours in Japanese with English subtitles.

Date: August 4, Sun.
Time: 4:30 pm
Place: Firehall Arts Centre(280 E Cordova St, Vancouver)One block west of Oppenheimer park
Admission: Free
The Powell Street Festival website : https://powellstreetfestival.com/programs/hiroshima-piano

バンクーバー日系人合同教会から8月のお知らせ

  • 教会日曜日日本語礼拝の案内

毎週日曜日午前11時より。礼拝の後、軽食をいただきながら親睦の時を持っています。クリスチャンでない方、留学、ワーキングホリデーで来られた方も大歓迎です。Zoom (ID 5662538165、パスコード1225)オンライン参加もできます。

  • 野外礼拝とバーベキュー

8月11日(日)午前11時から恒例の野外礼拝を教会斜め向いのBrewers Park(4175 Victoria Dr)で行います。礼拝後、教会からバーベキューを準備します。一品持ちよりください。初めての方も大歓迎です。礼拝は英語と日本語バイリンガルで行われます。

  • シニア・初心者ラインダンス 

毎週土曜午前11時から12時 会費$1、踊った後、マック(実費)をいただきながら交流の時を持ちます。

  • Zoomで聖書を読む会(ID 5662538165、パスコード1225)

火曜日午前11時 英語で聖書を読む会、水曜日午前11時、隔週の午後7時半
初めって聖書を読みたい方も歓迎します。

  • ダウンタウンイーストサイドでサンドイッチ手渡し:木曜日午前9時からの準備、10時半から11時の配布のボランティアをしてみませんか?
  • 教会ミニバザー

8月24日(土)午前11時から午後2時 教会ミニバザーを行います。Thrift Saleは行わず、日本食を提供します。
8月第2週の火曜日、木曜日(6、8、13、15、20、22日)にバザーのための饅頭作りをします。
バザー当日、饅頭作りの時、ボランティアでお手伝いをしてくださる方を募集しています。

  • 結婚、葬儀、その他の人生相談をお伺いします。

お問合せ:604-618-6491(テキスト可)、vjuc4010@gmail.com  牧師 イムまで
住所:4010 Victoria Dr, (Between 23rd and 25th Ave East), Vancouver

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サレーNorthwood 合同教会 日本語会衆 礼拝

8月18日(日)午後2時より。
住所:8855 156 St, Surrey, BC, V3R 4K9
お問い合わせ:604-618-6491(テキスト可)イム、kuniokazaki98@gmail.com 岡崎まで

ホワイトキャップス引き分けを挟んで5連勝、GK高丘は最少失点の活躍

GK高丘、試合後にロッカールームの前で。2024年7月17日、BCプレース。写真 日加トゥデイ
GK高丘、試合後にロッカールームの前で。2024年7月17日、BCプレース。写真 日加トゥデイ

 ホワイトキャップスはホームで勝利し、これで引き分けを挟んで5連勝となった。GK高丘も5試合で失点4と1試合1点以下の失点でゴールを守り、5連勝に大きく貢献している。

7月17日(BCプレース:23,198)

バンクーバー・ホワイトキャップスFC 2-1 スポーティング・カンザスシティ

先制はホワイトキャップス。34分にWhite(FW)が決めたかと思ったが、判定はカンザスシティのオウンゴールで1-0。後半に入り動きが良くなったカンザスシティは69分に同点に追いつく。ホワイトキャップスは途中出場したPicault(FW)が決めて2-1として逃げ切った。

「選手がやるべきことを理解している」

 ホームで6月29日にセントルイス・シティSCに4-3で勝利して以降、アウェイが続いていたが、モントリオールとの引き分けを挟んでカナディアン・チャンピオンシップを含めて5連勝と好調だ。

 高丘は「それぞれの選手が自分がやるべきことを分かって、チームのやり方を理解していますし、迷うことなくプレーできているのが勝利につながっていると思います」と語った。

 ただこの日の試合内容については、「もうちょっとゲームコントロールしたかった」と反省の言葉が口をついた。後半はゲームコントロールがうまくいかず相手に流れを渡す時間があったと振り返った。

 7月に入って5試合で4失点。2点以上取られた試合はまだない。それでも「無失点で抑えられる試合も何回もあったので。そういう意味ではそこをゼロで抑えられなかったというのは全然違うので、次の試合はゼロで抑えられるようにしたいです」と貪欲さを見せた。

 チームはこの日の勝利で4位に浮上。次は7月20日、オールスター前、最後の試合に6連勝を目指してBCプレースでヒューストン・ダイナモと対戦する。

今年もリーグスカップが7月30日から始まる

 MLSとLIGA MXに所属する北米3カ国、カナダ、アメリカ、メキシコの47プロチームが参加する「リーグスカップ」が7月26日から始まる。ホワイトキャップスは、グループステージはウエスト7で、ロサンゼルスFCとクラブ・ティファナと同じグループ。

 ホワイトキャップスの初戦は7月30日のロサンゼルス、2試合目はBCプレースでクラブ・ティファナと対戦する。

7月、8月のホームゲームhttps://www.whitecapsfc.com/

7月27日(土)4:30pm Wrexham AFC戦(国際親善試合)
8月3日(土)7:00pm Club Tijuana戦(リーグスカップ)
8月24日(土)4:30pm ロサンゼルスFC戦
8月27日(火)7:30pm パシフィックFC戦(カナディアン・チャンピオンシップ)

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「きみこの真珠」音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第25回

はじめに

 日加関係を応援頂いている皆さま、音楽ファンの皆さま、こんにちは。

 早いもので、2022年7月に始めた「音楽の楽園」は2年を過ぎて、いよいよ3年目に突入します。実感するのは、カナダの奥深さです。それは、音楽だけに限りません。政治・経済・ビジネス・科学技術・芸術など、様々な分野でです。理想を掲げ、常識にとらわれず、斬新なものを生む、エネルギーと創造性に満ちていると思います。

「きみこの真珠」のパンフレット
「きみこの真珠」のパンフレット

 そこで、今回、皆さまに紹介したいのは、「きみこの真珠(Kimiko’s Pearl)」という新作バレエです。ここには、音楽、舞踏、舞台美術、現在、過去、歴史、政治、欺瞞、諦観、希望、赦し、勇気、家族、そして愛が凝縮しています。

「ブラボー・ナイアガラ」

 「きみこの真珠」は、オンタリオ州ナイアガラ・オン・ザ・レイク地区で優れた舞台芸術を地元コミュニティーに紹介している非営利団体「ブラボー・ナイアガラ(Bravo Niagara! Festival of the Arts)」により委嘱・制作された作品です。

 「ブラボー・ナイアガラ」は、トロント出身の日系カナダ人ピアニスト、クリスティン・モリさんと御令嬢のアレクシス・スピルデナーさんが10年前に立ち上げました。

Christine Mori(左)and Alexis Spieldenner:Co-Founders, Bravo Niagara Festival of the Arts, Co-Creators and Producers, Kimiko’s Pearl. Photo by Bo Huang
Christine Mori(左)and Alexis Spieldenner:Co-Founders, Bravo Niagara Festival of the Arts, Co-Creators and Producers, Kimiko’s Pearl. Photo by Bo Huang

 クリスティンは、アスペン音楽祭、タングルウッド音楽祭を経て、ジュリアード音楽院を卒業。米国で30年余にわたり、フロリダ管弦楽団所属のピアニストとして活動する傍ら、アイザック・スターンからボビー・マクファーレンまで多彩なアーティストと共演し、高い評価を得ます。現役を退いたクリスティンは、トロントの郊外ナイアガ地区に帰郷します。第2の人生を始めるに際し、自身の日系カナダ人としてのアイデンティティーと音楽家としての情熱が結びつきます。長年の夢を形にする時が来たのです。それは、地元ナイアガラ地区に世界水準の音楽家を呼び、地元コミュニティーに極上のパフォーマンスを届けるというものです。

 御令嬢のアレクシスは、ピアニストの母の下で音楽愛を吸収して成長し、デューク大学を優秀な成績で卒業。オンタリオ州のドーズウェル副総督から多様な文化振興に功績のあった若者を表彰する「リンカーン・アレキサンダー賞(注)」を授与されます。(注: リンカーン・アレキサンダーは、オンタリオ州初の黒人の副総督)

 「ブラボー・ナイアガラ」は、母の芸術的センスと娘のマネージメント能力が融合して、良い仕事に恵まれます。地元に密着する姿勢も好感されます。2014年の立ち上げ以降、「ブラボー・ナイアガラ」は、このコラムでも取り上げたジェームス・エーネス(第20回)ヤン・リシエツキ(第23回)をはじめとするクラシック音楽やマンハッタン・トランスファーなどのジャズ、ポップのスター達を引っ張って来ます。地元コミュニティーにとっては、居ながらにして、世界最高峰の音楽に触れるまたとない機会です。地元コミュニティーに提供する音楽・舞台芸術は、年を追うごとに、充実していきます。

日系カナダ人アイデンティティー

 「ブラボー・ナイアガラ」が確固たる基盤を固めると、クリスティンとアレクシスの母娘は、長年温めて来たアイデアの実現に取りかかります。日系カナダ人が辿って来た旅路を舞台芸術作品に昇華させるのです。

 日系カナダ人の歴史を概略すれば、最初期の移民、差別的な扱い、刻苦勉励して得た安定したカナダでの生活、太平洋戦争の勃発と敵性外国人移民としての強制収容や財産没収、戦後は、戦時中の困難を克服しカナダ社会の中で尊敬される地位を築くに至る訳です。

 実は、このような日系カナダ人の歴史が反映された芸術作品は少ないのです。それは、日系カナダ人が辿った苦難と克服の経緯が現在のカナダ社会において十分に認知されていないのと同じです。クリスティンとアレクシスは、芸術を通して日系カナダ人の歴史と誇りを伝える意義の大きさを確信します。正に、日系カナダ人のアイデンティティーの核心でもあります。

 とは言え、歴史を芸術で描くということは「言うは易く行うは難し」です。そこで選択されたのがバレエです。人類がつくる究極の舞台芸術の一つです。音楽と舞踏と舞台美術がつくりあげる空間には、言葉を超えた人間の情念が現れます。極めて具体的な事象から喜怒哀楽の感情までも盛り込めるのです。

 但し、新作のバレエ作品を制作し実際に上演するためには、台本、音楽、振り付け、美術、ダンサー、演奏家、リハーサル、上演会場等々が必要で、そのためには莫大な経費を要します。現代の舞台芸術は、如何に経費を工面するかという現実的問題に直面します。あのカーネギー・ホールも一時は倒産・解体の危機に直面したほどです。

 しかし、クリスティンとアレクシスの構想力と緻密な戦略と情熱が道を拓きます。National Creation Fundからの支援が確保出来たのです。いよいよ、構想が作品へと結実します。

総合芸術バレエ〜7つのスペクトラム

 「きみこの真珠」は、次の7つのスペクトラムが交差し融合して初めて完成しました。

 第1に、物語です。これは、クリスティンとアレクシスの4世代にわたる家族の旅路です。実は、トロント生まれのアレクシスが4代目で、ミドルネームもキミコ。「きみこ」のモデルです。家族の物語は、きみこの視点で、曽祖父シズオ・アユカワの代から描かれています。アユカワ・ファミリーの実話に基づく物語が作品の核です。但し、物語だけではバレエになりません。物語の真髄をバレエによって最高に輝かせる台本が不可欠です。トニー賞受賞台本作家のハワード・ライヒが書き下しました。

 第2に、音楽です。現代カナダが誇る作曲家ケビン・ラオが、ライヒの台本に基づいて、全編を新たに作曲しました。バレエには台詞はありません。全ての感情や情景を音楽で描かねばなりません。ラオが紡ぐ旋律とハーモニーとリズムが、音楽でしか表現できない情感を舞台に生み出します。

 第3に、振り付けです。世界最高水準のウィニペグ・バレエ所属のヨースケ・ミノが担当しました。舞台の進行に合わせて、強制収容という非道な措置、絶望、諦観、希望、愛まで、舞踏で表現します。鍛え抜かれたダンサーの律動を引き出します。

 第4に、舞台美術です。ポップ・アートから日系カナダ人の歴史をモチーフにした作品まで実に多彩かつ上質な作品群で、カナダ勲章も受賞されているノーマン・タケウチ画伯らの作品です。シンプルな舞台に、アクセントをつけ、時代と場所を提示します。

在オタワ日系人画家ノーマン・タケウチ氏による絵画(舞台のバックグランドに使用)。Photo by Embassy of Japan in Canada
在オタワ日系人画家ノーマン・タケウチ氏による絵画(舞台のバックグランドに使用)。Photo by Embassy of Japan in Canada

 第5に、演奏家たちです。ケビン・ラオ作品の常連でもある国立芸術センター管弦楽団の首席チェリストのレイチェル・メンサー、メトロポリタン・オペラ管弦楽団のハープ奏者のマリコ・アンラクらが参加。極上の演奏が物語と舞踏を包み込みます。

 第6に、ダンサーたち。ウィニペグ、コースタル、ボストンのバレエ団から参加し、鍛え抜かれた肉体の強靭さと柔らかさと美しさで、起伏に富んだストーリーを表現します。

 そして、第7は、音響と照明です。バレエが上演される場を、観客席とは完全に異なる時空へと変貌させる要です。ケビン・ラオの音楽は、観客席を取り囲む360度の何処から聞こえてくるかは、バレエの進行に合わせて、緻密にデザインされているのです。

 これら7つのスペクトラムが重なり「きみこの真珠」全2幕が完成します。入念なリハーサルを経て、実際に聴衆の眼前でその真価を問う時が来ます。

世界初演〜オンタリオ州セント・キャサリン市、2024年6月22〜23日

パフォーマンス後の挨拶。Photo by Embassy of Japan in Canada
パフォーマンス後の挨拶。Photo by Embassy of Japan in Canada

 クリスティンとアレクシスが構想した4代にわたるアユカワ家の物語は、 National Creation Fund の支援を得て、「ブラボー・ナイアガラ」が委嘱・制作。新作バレエ作品「きみこの真珠」は、抜群の音響を誇る地元の劇場「ファースト・オンタリオ・パフォーミング・アーツ・センター」において、本年6月22日、午後7時から世界初演が行われました。

戦争博物館に寄贈された鮎川家のトランク(当日のみ会場にて展示)。Photo by Embassy of Japan in Canada
戦争博物館に寄贈された鮎川家のトランク(当日のみ会場にて展示)。Photo by Embassy of Japan in Canada

 特筆すべきは、会場ロビーに展示されていたアレクシスの曽祖父シズオ・アユカワが自ら手作りした木製トランクです。これは、戦時中の日系カナダ人収容の歴史を後世に語り継ぐべくアユカワ家からオタワの「国立戦争博物館」に寄贈されたものです。今般の世界初演のために、特別に展示されました。日系カナダ人が強制退去させられた時、携行出来たのは鞄一つだけだったという非人道的な措置を無言で訴えていました。舞台にも、家族4代にわたる出来事と思い出を次世代に繋ぐ重要なアイテムとして配置されています。この木製トランクに刻印された「13657」という数字が、非人間的措置の非道さを静かに告発しています。

 世界初演は、最初に関係者の挨拶で幕を開けました。「ブラボー・ナイアガラ」を代表して、アレクシスが、家族の思い、日系カナダ人の思い、新作オペラにかける思いを述べました。一つ一つの言葉に本当に重みを感じました。私も、今日の極めて良好な日加関係の土台に日系カナダ人の存在があり、苦難を乗り越えて来た旅路への信心なる敬意を表しました。
 その後、和太鼓グループによる勇壮なオープニング・アクトが祝福しました。

 バレエ「きみこの真珠」は、1941年12月7日の日本軍のパールハーバー攻撃で太平洋戦争が没発する場面から始まりました。物理的には同じ舞台ですが、美術と音楽と舞踏と照明の妙で、全く異なる時と場所となります。変幻自在です。設定は、ブリティッシュ・コロンビアからウィニペグ、そしてトロントへと移ります。敵性外国移民として断罪される場面も、過酷な中に勇気を持って対峙する場面もあります。きみこの祖父母が恋に落ちるラブストーリーは可憐です。言葉を用いない描写の中で、舞踏の芸術性に圧倒されます。

 音楽と舞踏と舞台美術が融合した素晴らしいパフォーマンスは、瞬く間に終わりました。鳴り止まぬスタンディング・オベーションが、聴取の感動を直裁に示していました。

その先へ

 「きみこの真珠」の世界初演は壮大なプロジェクトの始まりです。

 音楽に関して言えば、2025〜26のシーズンで、トロント交響楽団による「組曲『きみこの真珠』」の演奏が予定されています。これは、バレエ作品として作曲された楽曲をオーケストラ用作品として再構成するものです。「きみこの真珠」が新しいアヴェニューを歩み始めます。ストラビンスキーの「火の鳥」もバレエ音楽が管弦楽曲へと展開したものです。「組曲『きみこの真珠』」がケビン・ラオの最高傑作になると確信します。

 そして、日系カナダ人の歴史を描くバレエ「きみこの真珠」は、将来は首都オタワ、北米最大都市ニューヨーク、更には東京においても上演されるべき作品だと思います。来年は、大阪万博の年です。日本とカナダの間でも様々な文化交流が行われます。是非とも、その一角に「きみこの真珠」が含まれることを願ってやみません。

パフォーマンス前の歓談風景、左から2番目 Alexis Spieldenner、3番目 Christine Mori(後ろ姿)、大使、MCを努めた Mary Ito (CBC Radio)、ゲーリー川口JCCC元会長。Photo by Embassy of Japan in Canada
パフォーマンス前の歓談風景、左から2番目 Alexis Spieldenner、3番目 Christine Mori(後ろ姿)、大使、MCを努めた Mary Ito (CBC Radio)、ゲーリー川口JCCC元会長。Photo by Embassy of Japan in Canada

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

バンクーバー沖縄太鼓「沖縄から発信、世界で共に平和を願う」Ichari-Van Night~The Spirit of Okinawa

 沖縄の文化に親しみ、恒久平和を発信するイベント「Icahri-Van Night~The Spirit of Okinawa」が6月22日、日系文化センター・博物館で開催された。主催はバンクーバー沖縄太鼓、共催はバンクーバー沖縄県友愛会。

 会場では沖縄料理やオリオンビールが楽しめたほか、三線(さんしん)やエイサー、琉球舞踊、平和学習、折り紙などの体験ブースがあり、舞台では、琉球舞踊、三線独唱と、訪れた約450人が一夜限りの「沖縄」を満喫した。

オリオンビール試飲コーナー。2024年6月22日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
オリオンビール試飲コーナー。2024年6月22日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

「命どぅ宝・サガリバナプロジェクト」

 同じ時間、日本は6月23日、沖縄「慰霊の日」を迎えていた。太平洋戦争末期の1945年の沖縄戦で日本軍の組織的戦闘が終結したとされる日。沖縄県では休日で、79年たった今も、推計9万4千人と言われる一般住民の犠牲者を含む約20万人の戦没者の霊を慰め、恒久平和を祈る大切な日として過ごす。

 その「慰霊の日」に沖縄から全世界に向けて平和の大切さを発信しようと企画されたのが、沖縄の創作芸団レキオスが主催した「命どぅ宝・サガリバナプロジェクト」。日本時間の正午に、沖縄で、日本で、バンクーバーで、そして世界で、同時に黙とうをささげ、一斉にエイサー「舞香花〜SAGARIBANA〜」を舞う。バンクーバーでは午後8時に始まった。人々は演舞に見入り、涙を流し、沖縄に思いを馳せた。

 「舞香花~SAGARIBANA~」は、沖縄のシンガーソングライターYuMeさんがレキオス代表・照屋忠敏さんの思い出を基に作詞作曲した楽曲。

バンクーバー沖縄太鼓によるエイサー演舞「舞香花〜SAGARIBANA〜」。2024年6月22日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
バンクーバー沖縄太鼓によるエイサー演舞「舞香花〜SAGARIBANA〜」。2024年6月22日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 バンクーバー沖縄太鼓代表・花城正美さんは「慰霊の日」は沖縄の人々にとって特別な日と話す。日本国内38団体、海外ではインドネシア、アメリカ、南米やオーストラリアなど9団体が参加、「バンクーバー沖縄太鼓もこの『命どぅ宝・サガリバナプロジェクト』に参加し、感慨無量です」。

 「命どぅ宝」は「ぬちどぅたから」と読む。太平洋戦争で唯一地上戦が行われ、大きな犠牲を払った沖縄の人が大切にしている言葉。「『命どぅ宝』というのは沖縄の言葉で命っていうのが一番大切なんだよって、命あってこそできるんだよという意味です。沖縄で起きた歴史を通して世界の平和を望んでいきたいということですね」と笑顔を見せる。

 エイサーにはもともと「先祖供養・鎮魂の意味がある」と言う。それが現在は創作エイサーという形で舞台でもできるようになり世界に広がったと説明した。バンクーバー沖縄太鼓も創作エイサーで恒久平和への思いを発信している。

 今回の「Icahri-Van Night」の準備期間はたったの4カ月。「兼次(飛翔)実行委員長の吸引力とバンクーバー沖縄太鼓メンバーの見事な結束力と、バンクーバー沖縄県人会友愛会のご尽力、献身なボランティアの方々、そして日系センターのご協力、ご支援していただきました諸々のスポンサーのおかげさまで実現できました」

 サガリバナプロジェクトはエイサー演舞だけだが、バンクーバーではプロジェクトだけするよりも「沖縄を感じてもらって、沖縄芸能に触れて、沖縄のことを話しながらみんなで世界の平和を願うということで『Ichari-Van Night』としました」。「Ichari」とは沖縄のことわざ「いちゃりばちょーでー」から来ている。「みんな一度会えばもう兄弟・家族だという意味なんです。いつも支えてもらっているコミュニティの人たちと交流したいということで、その言葉を取って今回のイベント名にしました」

 これだけ多くの人が来てくれたのは「感動ですね」とうれしそうに笑う。「Ichari-Van Night」は恒例イベントとして継続したいという。「第1回の成功に皆さんにお礼をお伝えしたいと思います」と花城さん。「沖縄の文化芸能を通して、そしてエイサーを見て感じていただき、沖縄の歴史を顧みながら、皆さまと共に世界の平和を願いたいという思いから、これからも続けていきます!」と満面の笑みを見せた。

バンクーバー沖縄太鼓代表・花城さん(左)とIchari-Van NIGHT実行委員長・兼次さん。2024年6月22日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
バンクーバー沖縄太鼓代表・花城さん(左)とIchari-Van NIGHT実行委員長・兼次さん。2024年6月22日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(取材 三島直美/写真・動画 斉藤光一)

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Gifts and Things「ファッション雑誌とコラボ、新しいマーケティングで日本市場を開拓」佐藤広樹さんインタビュー後編

バンクーバー市ガスタウンにある店の前で。写真提供:Gifts and Things
バンクーバー市ガスタウンにある店の前で。写真提供:Gifts and Things

 日本の人気ファッション雑誌とコラボするという斬新なアイデアで日本市場を開拓しようとしているバンクーバーのGifts and Things。「お土産物屋さん」ではなくバンクーバーのお洒落なギフトショップとして日本での知名度を上げるのが狙いだ。

 「カナダと言ったら “Gifts and Things”となるといいなと思います」と笑うオーナーの佐藤広樹さんに話を聞いた。後編。

Gifts and Things「ファッション雑誌とコラボ、新しいマーケティングで日本市場を開拓」佐藤広樹さんインタビュー前編

異業種とのコラボで知名度を上げる

動物が描かれたマグカップ。写真提供:Gifts and Things
動物が描かれたマグカップ。写真提供:Gifts and Things

 コラボはファッション雑誌だけでなく、5月のゴールデンウィークには東京でイベントを開催。環境活動をしている滝沢ごみクラブと合同のイベントで、Gifts and Thingsのトートバッグ販売やカナダでのエコグッズなどを紹介した。

 今後も「SNSインフルエンサーと一緒に何かできればいいかなと思っています」という。「コアなファンが付いている人たちと一緒にやっていければいいかなって」

 Gifts and Thingsも知ってもらいたいし、「カナダの良さをもっと日本の人に知ってもらいたいから」と話す。

 日本でそろそろGifts and Thingsが知られてきたなと思うようになるまで「3年くらいかな」と見ている。「すぐにはやっぱり無理なので。地道にやっていかないと。ポップアップもやったり、宣伝もやったり、雑誌とタイアップやったりとか、とにかくやってみる。すると新しいマーケットができたらそこで次に何かできるので、その先のビジネスになればいいかなと。日本人なので(日本で)何かできれば、それがまたプラスになる。(商品を)持って行くだけではね。(日本で)何かやれば将来につながるので。色々な動きをしていきたいです」

もっとカナダを知ってもらいたい

 佐藤さんはバンクーバーで日本人経営の土産物店がなくなっていることをさみしく思っているようだ。「だんだんと日本人同業者がいなくなってしまった」と話す。だから自分たちもなくならないようにするにはどうするかを考えなくてはと言う。

 「新しいところからどんどん攻めていかないと、いつかなくなっちゃうんじゃないか。競合はローカルですから、そこに勝たないといけない。常に新しいことを取り入れて、若い人の感性を取り入れて、ローカルに負けない店づくりをしていく。そして日本人としての強みを生かす。日本のマーケットには入りやすいので、そこでいま動いているところです」

 バンクーバー店では品揃えやディスプレイの工夫に加えて、日本式の細かな接客でリピーターを増やしている。「コミュニケーションはリピーターにつながります」と言う。新しい商品を開発したいとの意欲もある。いまはアメリカドル高の影響もあり「良い風が吹いています」と感じている。だからいまできることを一つ一つ実践していく。

 ファッション雑誌とのコラボもその一つ。「FUDGEに載れば洋服好きの人がカナダの物を見てくれる。そういう人たちにカナダに興味を持ってもらう。そしてカナダに来てもらう。そうなったらいいなと思って。ガスタウンはお洒落ですし、きれいな街なのでみんなに知ってもらいたいんです。こっちの方から入り口を増やせば日本からカナダに来る学生や旅行者も増えるし、カナダではこういうトレンド物を売っているんだなってカナダのイメージアップにもなる。だからファッション雑誌で紹介してもらうのは新しい入り口なのかなと思っています」

 今後も数回掲載を考えてると話す。中期的なビジョンで「客」ではなく「ファン」を増やしていく。そうして「カナダと言ったら “Gifts and Things”となるといいなと思います」と笑った。

佐藤広樹(さとう・ひろき)
Crescent Moon Enterprises Ltd.オーナー・代表取締役
1998年ウィスラーにSMILE GIFT、2008年バンクーバー市ガスタウンにSmileys Giftを開店し2020年GIFTS AND THINGSに改名

Gifts and Things
359 Water Street, Vancouver
TEL: 604-632-0155
ウェブサイト:https://www.giftsandthings.info/
インスタグラム: https://www.instagram.com/giftsandthings.ca/

バンクーバー市ガスタウンにある店の前で。写真提供:Gifts and Things
バンクーバー市ガスタウンにある店の前で。写真提供:Gifts and Things

(取材 三島直美)

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第14回 おひとりさまが終活をしないと、どうなる?! Pさんのケース その1~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

​​7月になり、バンクーバーでは、やっとバンクーバーらしいカラッと気持ちの良い気候になってきました。この時期は、青空が広がり、爽やかな風が吹く日が多く、外で過ごすのがとても気持ち良いですね。短いカナダの夏を思い思いに楽しみましょう。私はビーチでのんびり過ごしたいところですが、息子たちの野球で、ほぼ野球場で過ごしています。

いきなりですが以前、私が会った人の中に、こんなことをおっしゃった方がいらっしゃいました。「自分は配偶者もいないし、子供もいないおひとりさまだから、終活はいらないと思っている。だって自分が死んだ後のことは自分がやることじゃないから、わざわざ高いお金を払ってまで遺言も作りたくない。正直に言って、本当に興味も関心もない!今を生きることで精一杯!」と言われた方がいらっしゃいました。誰もが自分の人生をどう生きるかは自由です。ただ終活の観点から見れば非常に残念だと言わざるを得ません。自分がいなくなった後に残された人たちがどうなっても構わないと言っているようなものだからです。

私は終活は自分や周りの人への「思いやり」だと思っています。自分自身も悔いなく、周りの人への感謝も込めて行うのが終活なのですが、頑なに「自分は必要ない!やらない!」という方がいらっしゃることも事実です。

では、実際にこのような方が終活をされないとどんなことが起こりうるのか、私の経験も織り交ぜて具体例を挙げて、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

Pさんのケース

Pさんは50代のカナダ在住の日本人男性。翻訳会社の社長(社員はPさんのみ)で独身・子なし。20代でカナダに移民し、両親はなく日本に妹が1人いる。趣味は節約とジョギング。Pさん名義の不動産あり。(自作の架空人物です。実在の人物や会社とは関係・関連ありません)

もしもPさんが突然亡くなったら、どうなる?

Pさんの仕事仲間で友人でもあるQさんが、何度メールしても、携帯に電話してもPさんが出ません。不審に思ったQさんは、数日後にPさんの住むマンションの管理人と一緒にPさんの部屋へ行くと、部屋の中でPさんが亡くなっていました。QさんはPさんの日本の家族に連絡しなければと思いますが、連絡先を知りません。共通の友人に尋ねても誰も知らないため、Qさんは途方に暮れてしまいました。

終活ポイントアドバイス
①Pさんが日本とカナダにいる家族や友人の名前や連絡先をあらかじめ伝えておけば良かった
②おひとりさま同士の安否確認ネットワークのようなものを作っておけば良かった

個々ではお互いのメールアドレスや携帯電話番号を知っていても、その家族や周りの人の連絡先を知らせ合っていないことが多々あります。近所の人が異臭に気づき、警察へ連絡したときにはすでにかなり日数が経っており、正確な死亡日を特定できないこともあります。Pさんのケースでは少なくともQさんがPさんの住所を知っていて、そこまで遅くならずにPさんの状況を確認できたのは良かったですね。

また、以前は会社に出勤してこないので会社の人が気が付くというケースが多かったのですが、最近では自宅で仕事をしているスタイルの人が増えているので、これに自分が当てはまると思われた方はぜひすぐに対策を講じていただきたいと思います。

家族や友達の連絡先を交換しておいても、安否確認ネットワークを作っても、もしかしたら全く使わないかもしれません。使わないならそれはそれで、「お金のかからない保険」と思うのはいかがでしょうか?使うことがなければそれは幸いなことですし、万が一のときには「あって良かった!」ときっと思うことでしょう。

結局、Pさんの日本の家族の連絡先がわからず、思い余ったQさんは日本大使館に相談しました。大使館を通じてPさんの妹さんに連絡を取ってもらいましたが、QさんがPさんの妹さんと話せたのは、Pさんの死亡が確認されてから3日後のことでした。その間、カナダの警察、葬儀社、マンションの管理会社などとの対応に追われたのはQさんでした。

まさかこんな形でカナダと日本両方の政府機関にお世話になり、迷惑をかけることになるなんて、きっと亡くなったPさん自身は思いもよらなかったはずです。また、「早く知らせてあげたい」、「もっと早く知りたかった」といったQさんとご遺族の気持ちの葛藤もあったはずです。

続く

*このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

海外終活アドバイザー・弁護士アシスタント
「終活をせずに亡くなった!認知症になって困った!途方に暮れた!!」を、「終活しておいて良かった!」「終活してくれていて、ありがとう!」に変えたい!そんな思いから2020年に終活アドバイザー資格を取得。海外在住の日本人向けの「海外終活」についての講座や説明会、ご相談はブログやFacebookなどのSNSをご覧ください。家族はカナダ人の夫+息子2人+猫1匹、バンクーバー在住。

ブログ: https://globalmesen.com/
Facebook: https://www.facebook.com/noricovancouver
Instagram: https://www.instagram.com/norikocanada/
Line公式: https://line.me/R/ti/p/%40490fuczh
その他SNS: https://lit.link/norikocanada
著書「海外在住日本人のための50代からの終活」:​​https://a.co/d/ad4OeLw

笑いの健康効果を学び、笑い力を鍛える2024~笑いの底力、バンクーバーで講演会&体験会が開催される

日系文化センター・博物館での講演会&体験会の様子。2024年6月16日。写真提供:日本語認知症サポート協会
日系文化センター・博物館での講演会&体験会の様子。2024年6月16日。写真提供:日本語認知症サポート協会

 日本語認知症サポート協会では以前から笑いヨガの講座を開いてきた。この度「日本笑いヨガ協会」の代表・高田佳子さんを講師に迎えて、メトロバンクーバーで全4回の講演会&体験会を開催した。

 高田佳子さんは2009年にインドで笑いヨガを学び、日本へ帰国後「日本笑いヨガ協会」を設立。笑いと健康の研究を進め、全国で講演や指導を行っており、著書や翻訳書も多数出版している。一級建築士及び老年学修士であり、日本応用老年学理事、早稲田大学文学学術院非常勤講師も務める。

 6月14日から16日まで全4回の講演会は、日系文化センター・博物館(日系センター)やスティーブストン仏教会、リステルホテルなどの会場で開催されたほか、Zoomでの配信が行われた回もあり、たくさんの入場者、視聴者を集めた。

 このうち6月16日に日系センターで行われた「未来をつくる笑いの力」と題された4回目の模様をリポートする。

 笑いヨガをベースとした笑トレ®は、立ち上がって行うものだけでなく、座ったままでもできるものも多い。呼吸に意識を置くものが多い点にはヨガの要素を感じるが、ヨガの難しいポーズを取るという必要もなく、誰でもすぐに始められそうなものばかりだ。

 笑トレ®にはいろいろな体操がある。手や脇の下の筋肉を伸ばしたりするストレッチ、スクワットなどの筋トレがあったり、ゴム飛びの真似などで可動域を拡大するなどといった運動効果が期待される。

 いくつかの体操のあとにはパワーポイントで「笑いの力」について説明した。93歳のスーパーモデル、93歳のフィットネスインストラクター、94歳の世界最高齢の総務課長など、さまざまな分野で活躍する高齢者を紹介。これらの人たちの共通点は素敵な笑顔だ。

 その他にも、アメリカのプロ野球選手のベースボールカードで選手の表情と寿命の関係を調査した結果、笑顔で写っている選手のほうがそうでない選手に比べて平均して7歳ほど長生きしているということなどを紹介した。笑いは健康や寿命に良い影響があると高田さんは言う。

 「人は楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しい」という言葉を紹介し、笑うことで心身を活性化し、ポジティブな気分を引き起こすことが可能だとしている。また、いろいろな口の形に開けて笑ってみることで、オーラルフレイル*の予防になったり、表情筋のトレーニングや肌の血行促進にも役立つという。

*オーラルフレイル:口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つ。口の周りの笑トレ®を行う事で、口輪筋や舌筋を鍛え、誤嚥予防や滑舌を良くすることに繋がる。(日本語認知症サポート協会より)

 笑トレ®で一番大切なのは声を出して笑うことだ。高田さんによると、おもしろく感じなくても笑うことはでき、それはおもしろいことがあって笑うのと同じ効果が期待できるという。笑うことで血液循環が良くなり、体が温まるのを実感できる。そして、声を出して笑うことでストレス解消に役立つほか、リラックス効果もあるという。また笑いは伝染するので、周りの人を巻き込んで笑いの渦を広めることができるのも良い点と、笑うことの効用を説く。

 今回の講座では、15種類ほどの体操を高田さんのリードで参加者が体験。会場には朗らかな笑い声が響き、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

 どれも簡単な動きなので、体が硬い人でも可動域が狭い人でも無理なくできるのが特長。運動をしようと気負わなくても、気楽に始められるのも良い点だろう。

 おもしろいことがあったわけでもないのに笑うということは、やってみると意外と難しい。よく笑えるようになることで、内臓に刺激を与え、血液循環が良くなり、幸せホルモンが検出されてポジティブな気持ちになれる。いまよりもっと健康で豊かな未来のために、毎日の生活に取り入れるのもいいかもしれないと感じさせてくれる講座だった。

(取材 大島多紀子)

日本語認知症サポート協会より
この講演会および体験会は、「Japanese Canadian Legacies Society」のCommunity Fundからの助成金をいただき、企画・運営いたしました。

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Gifts and Things「ファッション雑誌とコラボ、新しいマーケティングで日本市場を開拓」佐藤広樹さんインタビュー前編

FUDGE掲載記念で日本でも限定販売したオリジナルトートバッグ。写真提供:Gifts and Things
FUDGE掲載記念で日本でも限定販売したオリジナルトートバッグ。写真提供:Gifts and Things
FUDGE掲載記念で日本でも限定販売したオリジナルトートバッグ。写真提供:Gifts and Things
FUDGE掲載記念で日本でも限定販売したオリジナルトートバッグ。写真提供:Gifts and Things

 日本の人気ファッション雑誌とコラボするという斬新なアイデアで日本市場を開拓しようとしているバンクーバーのGifts and Things。「お土産物屋さん」ではなくバンクーバーのお洒落なギフトショップとして日本での知名度を上げるのが狙いだ。

 「カナダと言ったら “Gifts and Things”となるといいなと思います」と笑うオーナーの佐藤広樹さんに話を聞いた。

日本向けウェブサイトを開設

 バンクーバー市でも特に観光客に人気のガスタウンにあるGifts and Things。ガスタウンの象徴「蒸気時計」に近く絶好のロケーションだ。店内には商品が見やすくディスプレイされ、心地よくショッピングできるよう考えられている。

 そんなバンクーバーのGifts and Thingsが日本での購入専用ウェブサイトを今年4月に開設した。販売するのは日本向け商品。「オリジナル商品を扱っています。日本の人たちに見てもらって購入してもらえるように、日本販売専用のホームページを作りました」

 バンクーバーの商品を日本へ持って行って販売するのは費用がかかる。しかも「そうするとただの販売になってしまって、普通の商品を売ってるだけになってしまいます」。Gifts and Thingsの名前が目立たないという。だから「オリジナルを出して、(Gifts and Thingsの)名前を知ってもらえばいいと思って」。

 そして日本で「名前を知ってもらう」ための方法として雑誌とのコラボを思いついた。

人気ファッション雑誌FUDGEとコラボ

 雑誌掲載となったとき、従来なら旅行雑誌に「お勧めのお土産物」として掲載されていたが、そこは発想を転換。若者に人気のファッション雑誌「FUDGE」(発行:株式会社三栄)を選んだ。

カラフルな動物柄の靴下が並ぶ。写真提供:Gifts and Things
カラフルな動物柄の靴下が並ぶ。写真提供:Gifts and Things

 「(FUDGEの人も)カナダでお洒落な雑貨を販売しているお店だってことを理解してくれて、今回紹介していただいて」。バンクーバー店で販売している人気のアイテム、ジェリーキャットやカラフルな動物柄の靴下などが4月13日に発売された5月号とFUDGEの公式WEBサイトに掲載された。

 それに合わせて掲載記念としてバンクーバーで扱っているGifts and Thingsの名前入りオリジナルトートバッグを日本で1カ月限定販売。「FUDGEの雑誌を見てこのお店気になったなと思ってくれた人がロゴの入ったバッグを欲しいと思って買ってくれると名前が広がるなと思って。価格を抑えて販売しました」

人気のジェリーキャット。ジェリーキャット販売店でカナダナンバー3に選ばれた。写真提供:Gifts and Things
人気のジェリーキャット。ジェリーキャット販売店でカナダナンバー3に選ばれた。写真提供:Gifts and Things

 日本に数あるファッション雑誌の中からFUDGEを選んだのは、バンクーバー店のスタッフからの勧めだった。「日本に住んでいた時に海外に興味がある人が読む雑誌がFUDGEで」というのは店長の久保ゆうやさん。日本にいる時にはアパレル業界で働いていた経験もありファッション雑誌にも詳しい。佐藤さんは「うちの若い人たちがみんなFUDGEを知っていたので。教えてもらわなかったら私は分からなかったんです」と笑う。

 FUDGEの魅力は雑誌だけでなくインスタグラムのフォロワーが多いこと。「ストーリーズにあげてもらったのでそこから見てくれた人も多いと思います」

 そうして日本でのGifts and Thingsの名前が知られて行くとカナダに来た時に「あッ、Gifts and Thingsの商品!ってイメージで入ってきてくれるかなと。そしたらバンクーバーのお店も広がっていくかなと」と話す。「そういう活動を今後数年かけてブランディングしていこうかなと思っています。FUDGE掲載がその第1歩ですね」

後編に続く。

佐藤広樹(さとう・ひろき)
Crescent Moon Enterprises Ltd.オーナー・代表取締役
1998年ウィスラーにSMILE GIFT、2008年バンクーバー市ガスタウンにSmileys Giftを開店し2020年GIFTS AND THINGSに改名

Gifts and Things
359 Water Street, Vancouver
TEL: 604-632-0155
ウェブサイト:https://www.giftsandthings.info/
インスタグラム: https://www.instagram.com/giftsandthings.ca/

(取材 三島直美)

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