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Naomi Mishima

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日本漢字能力検定(2024年6月)のお知らせ:グラッドストーン日本語学園

グラッドストーンで漢字検定開催

 2024年6月16日(日)に『公益財団法人 漢字能力検定試験』を実施いたします。

 この検定は国内はもとより、世界の日本語学校でも実施されているものです。日本国内でも高校や大学の入学試験において有利であったり、企業内でも受検を促しているところもあるとのことです。

 カナダにいるけれども、将来日本で勉強しよう、あるいは働こうと思っている方、もしくはいずれ日本で社会生活を送ろうと考えている方は、この機会に受検をお勧めします。

 日本語能力試験に大変役に立っているという声もあります。

 受検をご希望の方は、お申込用紙を添付にてお送り出来ますので、グラッドストーン日本語学園までお問い合わせ下さい。お申し込み締め切りは、2024年4月6日(土)です。

2024年度公益財団法人認定日本漢字能力検定実施要項

実施日:2024年6月16日(日)午後2時
申し込み締切日:2024年4月6日(土)
会場:日系ヘリテージセンター2階
申し込み連絡先:グラッドストーン日本語学園(日系プレース内)
電話:604-515-0980
*定員に達しましたら締め切りとさせて頂きます。

バーナビー日本語学校 幼稚科体験会

【日 程】2024年4月3日 (水)

【時 間】午後4時30分~6時00分

【場 所】Lochdale Community School  (6990 Aubrey Street, Burnaby,  V5B 2E5)

【対象年齢】2〜4歳(2024年度のご入学は、年内に3歳以上になるお子様が対象です。)

【お申込みフォーム】https://forms.gle/5Jgb4oc4pSB6QP4Z8

【お問合せ】office@bjls.ca

カナダの教育から日本を変える!「答えのない教室」との出会い

「答えのない教室」の様子
「答えのない教室」の様子

 カナダに来てから早17年。ワーキングホリデイを使って長くても一年、おそらく半年くらいで帰るだろうと思って初めての海外を経験したのが2007年。縁があって、語学学校から学童保育(デイケア)でボランティアする機会を得て、それがきっかけでデイケアで働くことになった。のちに永住権をとり、支援員(Educational Assistant)として学区で働き、働きながら大学に行き、高校の数学教師となったのが2019年。一つ一つの経験は意図したものではなかったが、今置かれた状況でより自分に向いているもの、自分がワクワクするものを追い続けた結果が今だと思う。

Building Thinking Classrooms
Building Thinking Classrooms

 教師になってからもより生徒に数学の楽しさを感じてほしいなと思っていた。数字や図形の間にいろんな関係性があって、どんなストーリーがあるのかを伝えたいと思っていた。でも多くの生徒はその楽しさには気づいていないようだった。表面的な解法を覚えるばかりでつまらなそうだった。どうしたものかともどかしさを感じていたけれど、どうしていいかわからないまま教員一年目を終えた。そんな時に出会ったのがBuilding Thinking Classrooms(答えのない教室)だった。

リリヤドール教授
リリヤドール教授

 これはSFU(サイモンフレイザー大学)の数学教育で著名なリリヤドール教授が開発された教授法。14のステップを通してより多くの生徒がより自然な形で考えることを楽しむ授業を実現できることを謳っている。幸運なことに2020年の末にこの教え方が書かれた本が発刊され、この教え方に精通している先生がおられた学校での勤務が決まった。本を読みながら実践しながら、また同僚の先生に相談しながら、はじめはおぼろだった「答えのない教室」ははっきりとした輪郭を描いた。

「答えのない教室」で授業が激変!

「答えのない教室」の様子
「答えのない教室」の様子

 一般的なクラスでは、先生がクラスの中心で、生徒が整頓された机に座って先生の方向を向いている。例題から演習を繰り替えし問題をこなしていく。だが「答えのない教室」ではどうだろう?生徒はまず立った状態で授業が進む。縦掛けになったホワイトボードに向かって3人ずつのグループでワイワイと騒がしい。それぞれのグル-プが自分たちのペースでそれぞれの問題に取り組んでいる。3人だからこそ、お互いに質問をしあい、わからないところはわからないと言いあえる空間がある。三人寄れば文殊の知恵ということわざがあるが、アイデアはアイデアを誘い、気が付けば理解は深まっていく。先生はただ教え込むのではなく、生徒がより考えられるように導く役割をなす。考えれば考えるほど先生頼りだったクラスはより自立したクラスへと変容していく。

「答えのない教室」の広がり

 この教え方は、算数・数学教育からスタートして小中高大学へと広がっている。北米だけでなく、英語圏、西欧、北欧へと驚くペースで広がっている。英語の原著になる本はすでに7か国語(デンマーク語、ノルウェー語、スウェー デン語、ポーランド語、トルコ語、中国語、フランス語)に翻訳されている。教育関係者で作られたFacebookのグループではすでに5万人以上の方が参加され、日々の実践を報告したり質問をしあうサポート体制が自然な形でできあがっている。

 算数・数学教育からスタートしたものの、考えることをより自然にする仕組みについて解かれた教授法なので、他教科への応用も可能。小学校はもとより、中高においても理科(特に物理)は言うまでもなく、国語や社会、家庭科など幅広い実践がなされている。

なぜ「答えのない教室」を広めようと思ったのか

 2020年、コロナの影響もありオンライン授業が増えたころ、日本でもウェビナーがかなり増えた。それまでそこまで興味はなかったが、日本で行われる教育関係のウェビナーに参加するようになった。そこで生徒主体な学び、協働的な学び、探究学習などカナダでもよく聞く話をたくさん聞いた。世界でもインクルーシブ教育最先端のカナダで実践している「答えのない教室」が日本で必要とされているかもと感じた。

 その感覚だけを頼りに日本の教育関係者とつながり、2022年の夏に小中高大学や教育関係者向けに「答えのない教室」模擬授業を開催した。10を超える会場で実践する中で、感覚は確信になった。忖度でもなく、丸暗記でもなく、生徒自身が自立して考える、探究する授業は「答えのない教室」に答えがあると思った。

「答えのない教室―3人で「考える」算数・数学の授業」
「答えのない教室―3人で「考える」算数・数学の授業」

 最初は原著になる「Building Thinking Classrooms」を翻訳することも考えたが、日本での実践本をまずは先駆けとして出版する運びとなった。それが「答えのない教室―3人で「考える」算数・数学の授業」(2月24日発売)である。14のステップのコアになる仕組みや、カナダでの実践や日本での実践で得られた普段の授業への導入方法、世界での実践者へのインタビューや共著者で日本での実践を実現してくださったデンマーク株式会社の有澤和歌子さんの視点でこの教え方を日本に取り入れたい思いなどがつづられている。

これからの展望

 この教え方をもとにカナダそして日本の両国での教員研修や教員養成に取り組んでいきたいと考えている。私一人の力でサポートできる生徒は1年に多くて200人程度。一人また一人と感化することで、より多くの先生の昔ながらの教え方で抱えているもどかしさを解消する手助けをし、そこからより多くの生徒の考える楽しさにつながればと思う。この教え方を取り入れだして早5年がたとうとしている。生徒がより考えるようになるだけでなく、私自身も教師としてより考えるようになったと思う。当たり前に疑問を持ち、より生徒にとって有意義な学びとは何かこれからも試行錯誤し続けたいと思う。

梅木卓也(うめきたくや)

バンクーバー学区公立高校教師
兵庫県加西市出身。2007年度よりワーホリをきっかけに、カナダで学童保育や障害児サポート等に携わり、19年度よりバンクー バー市の高校数学教員となる。 現在サイモンフレイザー大学にてリリヤドール教授の元、数学教育の修士課程在学中。「答えのない教室」著者兼認定講師。海外で先生になりたい人たちを応援するサロンを運営。カナダと日本両方で教員研修や教員養成に関わることが現在の目標。趣味は読書とカフェ巡り。双子の父。著者についてはこちらからtakuyaumeki | Twitter, Instagram, Facebook | Linktree

第10回  エンディング(終活)ノートのススメ 最終回~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

デイライトセービング(夏時間)が3月10日から始まり、少しずつ暖かくなってきていますが、まだ冬を思わせる寒い日もありますね。しかし、確実に春めいてきているので、きっとすぐに暖かい日が続くことになるでしょう。春休みになることもあり、また桜の時期でもあるため、この時期に日本へ一時帰国する人も多いように感じます。私は去年の3月に日本へ行き、久しぶりに日本の春と桜を楽しみました。ちょうどその頃は野球のワールドシリーズで日本全体が盛り上がっていたのも楽しい思い出です。

さて、今回はエンディングノート(終活ノート)を書く7つの利点についての4回目、いよいよ最終回となります。

6. 情報の提供

銀行、証券、保険会社などの金融機関や、電気やガスなどの公共料金、携帯電話など様々な取引先や契約先の会社名や内容など、必要な情報を家族が簡単に確認できるように書いておくことをお勧めします。

最近では特に携帯電話で全てのやり取りや注文や契約をする方が増えています。以前の項目2とも少し重複しますが、本人以外が携帯電話にアクセスできなければ、そこにある情報が分からず、また開示してもらうまでにかなりの時間と労力を要するため、日頃から自分にしかわからないことで、もしものときのために配偶者や家族がアクセスできるように手段を講じておく、または何かに書き残して、情報をあらかじめ共有しておくことが大切になってきます。

これ以外にも「出生〜現在までの本籍地」、「職歴」、「好きな香り」、「苦手な飲み物」なども書いておくと助かる場面や良いことがたくさんあるんです。この説明は長くなるため、また別の機会があればお話したいと思います。

7. 自分史を振り返り、後悔を防ぐ

ノートを書きながら、自分の人生を振り返り未来を見つめることができます。日頃から育児、家事、仕事、学校、介護などで忙しい人は、なかなか自分に向き合う時間がありません。自分の夢や願望を思い出したり、自分の内側にある思いに気づいたり、自分の人生を振り返ったり、「自分は今、幸せか?なりたい自分になれているか?理想の人生を生きているか?」と自問自答してみることで、これからの未来や人生について、ゆっくり考える良い機会にもなります。

ノートを書くことで、人生を終えるまでにやり残したことがないか、心残りがないかを確認することもできます。「叶えられていない夢はないか?」「実現できていないことはないか?」と自分に問いかけてみてください。それができたなら、次のステップとしてみなさんがやるべきことは、実際に行動を起こし、1つずつ実現させるだけです!それができれば、人生でやり残した後悔の数がぐっと減ることでしょう。

ここで晩年を迎えた方に「後悔はありますか?」と質問したアンケートです。よくある代表的な回答をいくつかご紹介したいと思います。

  1. もっと家族や家族との時間を大切にすればよかった
  2. 仕事ばかりしなければよかった
  3. もっと自分の気持ちに正直な人生を送ればよかった
  4. 周りの目を気にしすぎなければよかった
  5. やりたいことに挑戦すればよかった

その他にも「子供たちに好きなことをさせてあげればよかった」「もっと若い頃から健康に気をつければよかった」といった回答もありました。

みなさんは同じ質問をされたら、なんと答えるでしょうか?
人生を終えるにあたって、多少の心残りはあっても後悔はないといいですよね。 4回にわたってお伝えしたエンディングノートを書く利点ですが、論より証拠!実際に書いてもらうともっともよく理解していただけます。私のノート作成講座の参加者さんも、回を追うごとに学びや理解が深まっていくので、「参加してよかった!」「ノートを書くのが楽しくなってきた!」という喜びの声をたくさんいただいています。

*このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

海外終活アドバイザー・弁護士アシスタント
「終活をせずに亡くなった!認知症になって困った!途方に暮れた!!」を、「終活しておいて良かった!」「終活してくれていて、ありがとう!」に変えたい!そんな思いから2020年に終活アドバイザー資格を取得。海外在住の日本人向けの「海外終活」についての講座や説明会、ご相談はブログやFacebookなどのSNSをご覧ください。家族はカナダ人の夫+息子2人+猫1匹、バンクーバー在住。

ブログ: https://globalmesen.com/
Facebook: https://www.facebook.com/noricovancouver
Instagram: https://www.instagram.com/norikocanada/
Line公式: https://line.me/R/ti/p/%40490fuczh
その他SNS: https://lit.link/norikocanada
著書「海外在住日本人のための50代からの終活」:​​https://a.co/d/ad4OeLw

ZIPAIRバンクーバー就航、第1便が成田から到着

バンクーバー空港70番ゲートに到着する成田からのZIPAIR第1便。2024年3月13日、バンクーバー空港。Photo by Japan Canada Today
バンクーバー空港70番ゲートに到着する成田からのZIPAIR第1便。2024年3月13日、バンクーバー空港。Photo by Japan Canada Today

 定刻より少し早めに成田から到着したZIPAIR第1便がバンクーバー空港に姿を見せた。3月13日、カナダと日本を結ぶ初の国際線中長距離LCC(格安航空会社・Low Cost Carrier)ZIPAIRが就航した。

便数をさらに拡大へ

 ZIPAIRバンクーバー成田線は3月13日から週3便で運航を開始。ZIPAIR Tokyo代表取締役会長・岩越宏雄氏はあいさつで、12月の発表以降予約率は就航から数カ月はすでに99.9%になっていると語った。7月28日からは週5便に増加する。「ZIPAIRはこれまでにないイノベイティブなエアラインとして、快適なフライトを提供できると自信を持っています。そしてこれが国際線の新しいスタンダードになると確信しています」とあいさつを締めくくった。

 式典が終わり「ようやくカナダに就航できて非常にうれしく感じています」と笑顔を見せた。バンクーバーに来たのは初めてという。街並みが美しく、「このような街に就航できてうれしく思います」と話す。今後は「なかなか難しいところはありますが」と前置きしながらも、「機材が揃ってくればデイリーでオペレーションしたいなと思っております」とさらなる増便にも言及した。

 在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は「東京とバンクーバーの路線が増えることで(日加)往来の増加に貢献され、日本とカナダ、周辺関係地域を含む協力関係、友好関係の増進に寄与されることを期待しています」と日本とブリティッシュ・コロンビア州の往来強化に期待した。

バンクーバーと縁のある機長が初フライトで夢を叶える

 成田からバンクーバーに到着した第1便は、折り返しバンクーバー発第1便として成田に向かう。機長を務めるのは堀田晋吾氏。あいさつで、バンクーバー市近郊のメープルリッジ市に3年間滞在していた経験があると話した。その後操縦士となり、日本・カナダ間を飛行することが夢だったと言う。この日は機長としてバンクーバー発第1便のフライトを任された。「今日は私の夢が叶う日となりました」とうれしそうに語り、周囲から拍手が起きた。「みなさん今日のフライトを楽しんでください。私も楽しみます」と満面の笑みを見せた。

 記念式典が行われたバンクーバーから出発するゲート前では、日本茶をベースにしたドリンクが搭乗予定の乗客らにふるまわれるなど和やかな雰囲気に包まれた。

ZIPAIR就航記念式典で。左から、バンクーバー空港エアーサービス部門ディレクター Russell Atkinson氏、堀田晋吾機長、ZIPAIR Tokyo代表取締役会長・岩越宏雄氏、在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年3月13日、バンクーバー空港。Photo by Japan Canada Today
ZIPAIR就航記念式典で。左から、バンクーバー空港エアーサービス部門ディレクター Russell Atkinson氏、堀田晋吾機長、ZIPAIR Tokyo代表取締役会長・岩越宏雄氏、在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年3月13日、バンクーバー空港。Photo by Japan Canada Today

(取材 三島直美)

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「日本好き高校生たちの熱き戦い!」メトロバンクーバー・ジャパンボウル2024

緊迫した雰囲気の中、白熱する決勝戦の様子。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
緊迫した雰囲気の中、白熱する決勝戦の様子。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
メトロバンクーバー・ジャパンボウル2024、参加者全員で。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo courtesy of JETAABC
メトロバンクーバー・ジャパンボウル2024、参加者全員で。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo courtesy of JETAABC

 今年で第7回を迎えるメトロバンクーバー・ジャパンボウル(Metro Vancouver Japan Bowl)が3月9日、日系文化センター・博物館で開催された。

 会場にはメトロバンクーバーの高校12校から21チーム、60人が参加。1組最大3人で、日本について広範囲なクイズに挑戦した。

 出題は、日本のマナーから時事問題、日加関係、その他にも文化、地理、歴史、地域、スペシャルトピックなどで、正解するには知識として知っているだけでなく漢字を含めた日本語を理解しておく必要もあるかなりレベルの高い大会となっている。

 主催はJETプログラム同窓会BC&ユーコン支部(The Japan Exchange and Teaching Alumni Association of British Columbia & Yukon:JETAABC)。

今年の優勝はLARGE FRIES 、21チームの頂点に

優勝チームLARGE FRIES、Kevin Liさん(左から2番目)、Alex Mengさん(中央)、Gabriel Silladorさん(右から2番目)。丸山浩平総領事(右端)から受け取った賞状を手に。左端はR.A. McMath Secondary教師Grace Hoさん。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
優勝チームLARGE FRIES、Kevin Liさん(左から2番目)、Alex Mengさん(中央)、Gabriel Silladorさん(右から2番目)。丸山浩平総領事(右端)から受け取った賞状を手に。左端はR.A. McMath Secondary教師Grace Hoさん。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today

 決勝へ進むチームが発表された瞬間、大きな歓喜の声が上がった。決勝で戦えるのは3チーム。今年はEbi、LARGE FRIES、Point Grey Houndsが勝ち抜いた。

 緊迫した雰囲気の中で行われた決勝は一進一退。全問終了すると2チームが同点ということで追加問題が出題されたほどの接戦となった。

緊迫した雰囲気の中、白熱する決勝戦の様子。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
緊迫した雰囲気の中、白熱する決勝戦の様子。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today

 そして順位発表。3位から順に、Point Grey Hounds、Ebiと発表され、そのたびに大きな歓声が上がった。優勝はLARGE FRIES。21チームの頂点に立った。

 在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、昨年に続き大会に出席して「今年もカナダの若者が日本について多くの項目ですばらしい知識を発揮してくれたことをうれしく思います」とあいさつ。「この大会を通じて若者の日本への興味がカナダと日本との関係をより深くしてくれることと思います」と将来の日加の架け橋に期待した。

 優勝したLARGE FRIESのGabriel Silladorさん、Alex Mengさん、Kevin Liさんは、自分たちが優勝するとは思わなかったと興奮気味。最後2チームが同点で順位決定の追加問題があると聞いたときは「1位と2位を決めるためだと思った」と3人が笑顔を見せた。

 Silladorさんは今大会のために「ゆっくりと(昨年の)9月とか10月くらいから(準備を)始めて、2月、3月に真剣に取り組みました」と振り返った。Liさんは今回が3回目の参加。「だから大体どういう問題が出るかは見当がつきました」とちょっと余裕を見せたが、前週末にはバンクーバー総領事館主催の弁論大会に出場していて時間がなく、「(主催者が)ガイドをくれるので大事だなと思う情報を見つけて使えるなと思えるところを集中的に準備しました」。Mengさんが「大体1カ月くらい前から準備して、全ての情報を集めて毎日勉強しました」と話すと、Liさんは「僕のノートを繰り返し復習したのはすごく役に立ちました」と言って3人で笑った。

JETプログラム同窓会BC&ユーコン支部がボランティアで支えるジャパンボウル

ボランティアとしてイベントを支えるJETAABCと審査員ら全員で。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
ボランティアとしてイベントを支えるJETAABCと審査員ら全員で。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today

 高校生を対象としたクイズ大会「ジャパンボウル」はJapan-America Society of Washington DCが1992年に日本語での大会形式を創設したのが始まり。今では世界各地で開催されている。

 BC州ではメトロバンクーバー大会としてバーナビー市の日系センターで毎年開催。新型コロナウイルス禍ではオンラインで開催したこともあったが今年で7回目となる。主催はJETAABCで、会員がボランティアで開催している。

 大会実行メンバーの一人Rachel Davidsonさんによると今年は新しく3校が参加したという。参加校もメトロバンクーバー各地に広がり、ラングレーやポートムーディ、オンライン校からも参加した。

 大会に参加する高校生も大変だが、運営側の準備もまた大変となる。「問題は毎年出題されるコアカテゴリーと3年に1回出題されるトピックがあります。そうすることで参加生徒が同じトピックに当たらないようになっています。今年は鉄道やビデオゲームなどのトピックがありました」。これらは配布される「Study Guide」に記載されている。「出題問題は、(大会運営)ボランティアでアイデアを出し合って、参加者全員に公平で挑戦的な問題になるように努めています」と高校生たちが楽しんで参加できるようにこれからも取り組んでいく。

メトロバンクーバー・ジャパンボウル2024年順位

優勝:LARGE FRIES(リッチモンド市R.A. McMath Secondary)
2位:Ebi(バンクーバー市Eric Hamber Secondary)
3位:Point Grey Hounds(バンクーバー市Point Grey Secondary)

2位となったEbiと賞状を授与したバンクーバー領事館専門調査員・長谷川綾子さん(左端)。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
2位となったEbiと賞状を授与したバンクーバー領事館専門調査員・長谷川綾子さん(左端)。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
同点だったが順位決定戦で惜しくも敗れ3位に、Point Grey Hounds。左端は賞状を授与したJETAABCのDaniell Markewiczさん。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today
同点だったが順位決定戦で惜しくも敗れ3位に、Point Grey Hounds。左端は賞状を授与したJETAABCのDaniell Markewiczさん。2024年3月9日、日系文化センター・博物館。Photo by Japan Canada Today

(取材 三島直美)

「人生を振り返り、明日を見据え、熱く語った!」第36回ブリティッシュ・コロンビア州日本語弁論大会開催

全員集合 お疲れさまでした!2024年3月2日、バンクーバー市UBCアジアンセンター。Photo by 笹川守/Japan Canada Today
全員集合 お疲れさまでした!2024年3月2日、バンクーバー市UBCアジアンセンター。Photo by 笹川守/Japan Canada Today

 ブリティッシュコロンビア大学(UBC)アジアンセンターに、弁士が集まり、自らの胸の内を流ちょうな日本語で熱く語った。日本への関心が高まっている現在、36回目となるこの弁論大会での競争率もますます激しさが増し、うれしい審査員泣かせとなっている。

 日本語への関心の入り口は、「アニメ、漫画、ポップカルチャーをもっと理解したかったから」という声が多く、その後、日本文化への理解へと深化している。

参加者が楽しんで日本語を学んでいるという印象とあいさつで語った在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年3月2日、バンクーバー市UBCアジアンセンター。Photo by 笹川守/Japan Canada Today
参加者が楽しんで日本語を学んでいるという印象とあいさつで語った在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2024年3月2日、バンクーバー市UBCアジアンセンター。Photo by 笹川守/Japan Canada Today

 在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事が表彰式で「本来、他国語を学ぶことは、とても苦痛を伴うものなのに、皆さん楽しんで学んでおられるような印象でした」と述べた。好きなことから入門するのが上達のコツなのだろう。

 最近では、日本への観光も通常のルートだけではなく、穴場的な地方へと広がりを見せ、地元の人とのコミュニケーションがスムーズになってきたという。それは、この弁論大会の盛り上がりぶりからもうなずける。

大学の部1位受賞者の発表内容を紹介する。

<大学生の部・初級>

「ビターコーヒーとケーキ」ケリー・デンさん(Kelly Deng:UBC)
 大学入学後、最初の専攻は生物学でした。それはビターコーヒーの味のようなものでしたが、途中で日本語の授業を取ることができました。それはおいしいケーキの味。ビターコーヒーとケーキの2つの味のハーモニーは格別。人生、自分の好きなことばかり選べるわけではないので、苦手なものでも好きなものと組み合わせれば、うまくいくという教訓を得た思いです。

<大学生の部・中級>

「自分自身から私を守ってあげるもの」ソヒ・リさん(Seohee Lee:UBC)
 私は毎日、日本語の授業の1時間前に教室に入り、ホワイトボードに似顔絵を描く習慣があります。“それは何のために描くの?”という疑問を持たれていましたが、今では、その絵が現在の自分の感情表現となっているようで、クラスメートとのコミュニケーションツールの一助になっているようです。だから、この習慣は当分続きそうです。

<大学生の部・オープン>

「占いブーム」チブン・ショウさん(Zhiwen Zhong:UBC)
 占いは紀元前2000年にさかのぼるといわれます。誰もが一度は試したことがあるでしょう。占いの回答は、あいまいで、誰にも当てはまるものと知っていながらも、迷ったとき、つい頼ってしまうもの。それが、背中を押してくれるときもあり、自信を取り戻すきっかけになれば幸い。占いが長年続いてきたポイントではないでしょうか。

優勝者は「カナダ全国日本語弁論大会」に参加

全国大会へ向け気持ち新たに(左から)チブン・ショウさん、ソヒ・リさん、ケリー・デンさん。2024年3月2日、バンクーバー市UBCアジアンセンター。Photo by 笹川守/Japan Canada Today
全国大会へ向け気持ち新たに(左から)チブン・ショウさん、ソヒ・リさん、ケリー・デンさん。2024年3月2日、バンクーバー市UBCアジアンセンター。Photo by 笹川守/Japan Canada Today

 カナダ全国の地区大会を勝ち抜いた強豪たちがオタワの在カナダ日本大使館に集まり「カナダ全国日本語弁論大会」が3月24日に行われる。BC州・ユーコン準州からは今回の「大学生の部」の各カテゴリー優勝者が出場する。3人は日本語をもっと勉強したいと意欲を見せ、「全国大会がんばります!」と心の内で火花を散らしながらも互いに健闘を誓い合っていた。

第36回BC州日本語弁論大会

 3月2日、UBCアジアンセンターで開催。在バンクーバー日本国総領事館、BC州日本語弁論大会実行委員会共催、UBCアジア研究学科、UBC、ローカル企業・団体、日本の姉妹都市(安中市、千葉市、 釧路市、さいたま市)協力。

 発表者は、BC州、ユーコン準州に居住し、日本語を母国語としない人が対象。今年の大会には、高校生の部に初級12人、中級9人、オープン3人、大学生の部には初級6人、中級8人、オープン5人が参加した。

(取材・写真 笹川守)

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Vancouver Cherry Blossom Festival 2024、3月29日から開幕!

バンクーバー市M.H. Macmillanスペースセンター前。Photo by Koichi Saito
バンクーバー市M.H. Macmillanスペースセンター前。Photo by Koichi Saito

 バンクーバーに春の訪れを告げるVancouver Cherry Blossom Festival。今年は3月29日からさまざまなイベントが開催される。発起人のリンダ・ポールさんの提案で2005年に始まった「バンクーバー桜まつり」は、今やバンクーバーの春の風物詩。

 フェスティバルのメインイベントの一つは、The Big Picnic。David Lam Park(1300 Pacific Blvd)で開催されるフェスティバルの開会式を兼ねた桜の下でピクニックを楽しむイベント。公園には、David Lam氏が寄贈した桜があり、満開時には一面に桜が咲き誇る。ピクニック用シートや食べ物は持参するか、現地で購入することもできる。音楽やダンスなどのパフォーマンスもあって、お花見気分に。イベントは無料。https://vcbf.ca/event/the-big-picnic-2024/

 もう一つの人気イベントは、Sakura Days Japan Fair。日本の伝統や文化を体験することができるのが魅力で、毎年大人気。茶道や華道、書道などのワークショップや、和太鼓などのパフォーマンスがあり、日本のフードや日本酒などのグルメも満喫できる。今年は4月13日、14日に開催。入場は有料で、チケットはオンラインで購入。https://vcbf.ca/event/sakura-days-japan-fair-2024/

 他にも、桜の種類や歴史について学ぶTree Talks and Walksや、桜にインスピレーションを受けて英語俳句を作るHaiku Invitational(3月1日からオンラインで受け付け開始、6月1日締め切り)、メトロバンクーバー各地でのポップアップイベント、桜のトンネルを自転車で楽しむBike the Blossomsなど、イベント満載。

 約6万本が咲き誇ると言われるバンクーバーの桜は、1930年代初めに神戸と横浜の市長が500本の桜をバンクーバーに贈ったのが始まり。それらはスタンレーパーク内にある日系カナダ人戦没者慰霊碑の周りに植えられた。

 さらにVancouver Cherry Blossom Festival のサイトによると1958年には当時の在バンクーバー日本国総領事館・田辺宗夫領事により「日加の永遠の記憶と友好」として約300本の桜が贈られたという。バンクーバーで咲く約4万3000本の桜は何らかの形で日本から贈られたとポールさんが記している。

 春の訪れとともに、桜の美しさと日本文化、そしてバンクーバーの多様性を祝うVancouver Cherry Blossom Festivalは4月25日まで。

Vancouver Cherry Blossom Festivalウェブサイト:https://vcbf.ca/

(記事 編集部)

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人形供養のご案内

東漸寺では日本から持ってきて今は飾ることがなく押入れで眠っているひな人形、五月人形、藤娘人形などの供養を行うことにしました。

BC州ではお寺で「お焚き上げ」は法律の理由で実行できませんので、集められた人形は本堂で飾って住職が供養したあと、地元のリサイクル専門業者に渡して焼却又はリサイクルしてもらいます。

つきまして、法要は下記の通り開催いたします。

日時:2024年4月28日(日) 午後1時(受付 午後12時開始)
場所:東漸寺 209 Jackson Street, Coquitlam BC

人形の受付は予約制です。供養料と注意事項については https://tozenjibc.ca/doll-ceremony へアクセスしてください。

連絡先:担当者 渡辺 tozenji.bc@gmail.com     cell (778)320-4533

日々の小さな幸せが愛おしくなる「Perfect Days(パーフェクトデイズ)」ヴィム・ヴェンダース監督

「パーフェクトデイズ」より。Courtesy by TIFF
「パーフェクトデイズ」より。Courtesy by TIFF

 いよいよアカデミー賞授賞式が日曜日と迫ってきましたね!今年の注目は何と言っても「バービー」と「オッペンハイマー」の対決のはずでした。ところが、ノミネート作品発表の時点で「オッペンハイマー」がアカデミーの推しだと判明してしまい、少し、いやかなりがっかり。それでも、昨年公開作の中で大好きだった「アメリカン・フィクション」と「Past Lives」がノミネートされているし、ファッションチェックも楽しいし、となんだかんだ日曜を楽しみにしている私です。

 さて、今回ご紹介するのは、そのアカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされているヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」。昨年のカンヌ国際映画祭で上映された際には、主演の役所広司さんが日本人俳優としては19年ぶり2人目(1人目は柳楽優弥さん)の最優秀男優賞を受賞した作品です。日本では年末に公開されていたのに、ここバンクーバーでは2月中盤にやっと劇場公開になりました。

 ストーリーは東京、渋谷でトイレの清掃員として働く平山という男の毎日を静かに追っていきます。本当に静かに。毎朝起きて、缶コーヒーを飲んで、好きな音楽を聴きながら車を運転して、ていねいに仕事をして、同じ場所で昼食を食べ、木漏れ日に目を細め、仕事が終われば銭湯に行き、夕飯を食べ、読書してから寝る。休日は洗濯をして、写真を現像に出して、行きつけのバーで少し飲む。その繰り返し。そんな変わらぬ毎日にも同僚の影響でイレギュラーなことが起きてしまったり、平山の過去につながる人物が登場したり、と小さな波が押し寄せる。

 「足るを知る」という言葉がそのまま当てはまるかの様な平山の毎日。淡々としているけれど、小さな満足にあふれているのが観ている方にも伝わってきます。セリフがとても少ない役なのに目や表情だけで優しさや人間味を溢れさせてしまう役所さんの演技はさすがです。彼はこの生活に落ち着くまでにどんな人生を歩んできたんだろう、と想像力も掻き立てられました。あとは東京という都会の片隅で生きる人々が、皆それぞれにストーリーを持って生きている。そんな普通の人生を撮るヴェンダース監督の温かい眼差しも感じる2時間でした。

 観終わった後は平凡な毎日が本当に愛おしく思えて。ベタな感想だけど、もっともっと大切にしながら「今」を楽しもうと思えてきました。それにしても70年代のロック良かった・・・

 バンクーバーではFifth Avenue Cinemaで上映中です。

Lalaのシネマワールド
映画に魅せられて

バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
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Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
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「カナダ“乗り鉄”の旅」第10回 無人運転のスカイトレイン「どのようにストをするの?」~世界で5番目に住みやすい都市・バンクーバー編

トランスリンクのスカイトレインの路線「ミレニアムライン」の電車。無人運転のため先頭部は展望席になっており、筆者も乗車した(2023年12月22日、バンクーバー近郊コキットラム市)
トランスリンクのスカイトレインの路線「ミレニアムライン」の電車。無人運転のため先頭部は展望席になっており、筆者も乗車した(2023年12月22日、バンクーバー近郊コキットラム市)

大塚圭一郎

 「地下鉄の電車をどこから入れたのでしょうねえ?それを考えると一晩中寝られなくなるの」とは1970年代に大ヒットした春日三球・照代の「地下鉄漫才」だ。今年1月にカナダ西部ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)バンクーバーの都市圏を走る「スカイトレイン」のストライキを労働組合が検討しているというニュースを見ながら、こうつぶやく向きもあったかもしれない。「無人運転の電車をどのようにストをするのでしょうねえ?それを考えると一晩中寝られなくなるの」

【スカイトレイン】バンクーバー都市圏を走る無人運転の鉄道。3路線があり、営業距離は計約80キロ。1986年のバンクーバー国際交通博覧会を控え、1985年に開業した「エキスポライン」が最初の路線。「ミレニアムライン」は2002年に開通し、10年のバンクーバー冬季オリンピック(五輪)・パラリンピックに向けて中心部とバンクーバー国際空港のアクセスのために建設された「カナダライン」は09年に営業運転を始めた。スカイトレインを含めたバンクーバー都市圏の公共交通機関「トランスリンク」によると、22年秋のエキスポライン・ミレニアムラインの平日利用者数は約28万8千人、カナダラインは約11万2千人。3路線いずれも鉄軌道の上を車輪で走るが、エキスポラインとミレニアムラインの車両は磁石の力で進むリニアモーター駆動なのに対し、カナダラインは線路脇にある第三軌条から電気を取り込んで走る。

トランスリンクのスカイトレインとシーバス、快速バスの路線図(トランスリンクのホームページから)
トランスリンクのスカイトレインとシーバス、快速バスの路線図(トランスリンクのホームページから)

3日間のストを警告

バンクーバー中心部を走るトランスリンクのトロリーバス(2023年12月22日、大塚圭一郎撮影)
バンクーバー中心部を走るトランスリンクのトロリーバス(2023年12月22日、大塚圭一郎撮影)

 バンクーバー都市圏を走る公共交通機関「トランスリンク」の運行会社コースト・マウンテン・バス・カンパニー(CMBC)のスーパーバイザーら180人超でつくる労組CUPE4500が2024年1月22、23両日の2日間のストを実施。トランスリンクの路線バスの大部分と、バンクーバー中心部のウオーターフロントと近郊のノースバンクーバー市を結ぶ水上バス「シーバス」が運休し、CMBCによると両日とも約30万人の利用者に影響が出た。

 ストは労組側が求めた待遇改善を会社側が拒否する労使対立によって勃発した。CUPE4500が3年間で20~25%の賃上げを要求したのに対し、CMBCの提示は他労組と同水準の3年間で13・5%上昇だったため決裂した。CMBCのマイケル・マクダニエル社長は「スーパーバイザーが、他の労組が受け入れた上昇幅の2倍弱(の25%)を要求しているのは非現実的だ」と批判した。

 CUPE4500は1月のスト終了後、2月3日未明までに暫定合意ができなければ3日間のストを実施するとけん制。その際は路線バスとシーバスにとどまらず、スカイトレインもストに追い込むことも視野に入れると表明していた。

航行中のトランスリンクのシーバス(手前、2023年12月21日、大塚圭一郎撮影)
航行中のトランスリンクのシーバス(手前、2023年12月21日、大塚圭一郎撮影)

無人運転なのにスト?

 だが、CUPE4500のコメントを聞いて疑問がわいたかもしれない。一つはコンピューター制御で運行しており、電車を無人運転しているスカイトレインをどのようにストに追い込むのかという点だ。

 路線バスの運行には運転手、水上バスの操縦には船長らが携わっており、1月にストを実施したスーパーバイザーはそれらを動かすための管理業務を担っている。

スカイトレインの券売機(2023年12月21日、ウオーターフロント駅で大塚圭一郎撮影)
スカイトレインの券売機(2023年12月21日、ウオーターフロント駅で大塚圭一郎撮影)

 これに対してスカイトレインの電車は無人で走り、駅に着くと扉が自動的に開く。発車時刻になると合図音が鳴って扉が閉まる。また、利用者が駅で出入りするのも無人の自動改札機で、集積回路(IC)乗車券「コンパス」を接触するなどすれば通過できる。コンパスへの入金なども駅構内にある券売機で対応できる。

 無賃乗車などを取り締まる警察官らは駅にいるものの、まるで人手不足やストのリスクを予見していたような省人化を図れている。

門外漢の労組がなぜスカイトレインに介入?

 しかし、スカイトレインも全てが機械任せというわけではもちろんない。“頭脳部”に当たる制御室「コントロールセンター」には従業員が詰めており、電車の運行状況などを確認しているのだ。

 大きな画面には電車が走っている位置と車両数、遅れの有無をタイムリーに表示する。また、各駅に設置している監視カメラが撮影した映像もモニターに映し出されており、安全運行を支える縁の下の力持ちになっている。

 もしもコントロールセンターの従業員がストをした場合、スカイトレインは運行停止に追い込まれる。しかし、1月にストをしたCUPE4500が所管しているのはCMBCが運行を担っている路線バスとシーバスであり、スカイトレインは含まれていない。

ノースバンクーバー市を走るトランスリンクの路線バス(2023年12月22日、大塚圭一郎撮影)
ノースバンクーバー市を走るトランスリンクの路線バス(2023年12月22日、大塚圭一郎撮影)

 そこで次なる疑問となるのは、門外漢の労組がなぜスカイトレインのストをぶち上げることができるのかという点だ。調べたところ、日本では考えにくい特殊な事情があることが分かった。

 カナダ放送協会(CBC)によると、CUPE4500は今回の労使対立を受けた対抗手段として、管轄外の公共交通機関のストを実施する法的権利を認めるようにBC州の労働関連委員会に要請した。これが認められた場合、CUPE4500は所管外のスカイトレインのストに踏み切ることができるというのだ。

どのようにストをする?

スカイトレインのエキスポラインのメイン通り・サイエンスワールド駅(2023年12月21日、バンクーバーで大塚圭一郎撮影)
スカイトレインのエキスポラインのメイン通り・サイエンスワールド駅(2023年12月21日、バンクーバーで大塚圭一郎撮影)

 ただし、スカイトレインの安全運行のためにコントロールセンターに入れるのは原則として担当する従業員だけだ。部外者であるCUPE4500の組合員に立ち入りが許されるはずがない。

 それではBC州の労働関連委員会がもしもストを認めた場合、CUPE4500はどのようにストを実践するのかという疑問も出てくる。CUPE4500は1月のスト後に「スカイトレインを止めるために駅で監視することを検討する」と明らかにしていた。

 これは推察になるが、ストになった場合はCUPE4500の組合員がスカイトレインの駅に張り込んで従業員が早朝の営業開始時に駅のシャッターを開けられないようにしたり、駅にバリケードを敷いて利用者が立ち入れないようにしたりすることを検討していたのではないか。BC州の労働関連委員会がストを認めた場合、ストの“お墨付き”を得た形となる。このためCUPE4500との無用な衝突を避け、スカイトレインの従業員が出勤せずに運行が止まる展開も考えられよう。

スト回避にたゆまぬ努力を

 事態を重く見たBC州は労使間の特別調停人のビンス・レディ氏を指名。レディ氏の勧告をCMBC、CUPE4500の双方が2月1日に受け入れたため、スカイトレインまで巻き込む恐れのあった3日間のストは食い止められた。

 カナダ最高裁判所は2015年1月、労組のスト権は団体交渉の「不可欠な要素」であり、1982年に制定された「カナダ権利および自由憲章」(カナダ憲章)で保護されるとの判断を下している。私も2005~06年に勤務先の共同通信労働組合の関西支部副委員長、新聞・通信社の労組でつくる新聞労連(日本新聞労働組合連合)近畿地連の副執行委員長を歴任しており、労組の存在意義と活動の重要性をよく理解している。労組がスト権を「伝家の宝刀」として確保しておく必要性も分かっている。

 だが、トランスリンクはバンクーバー都市圏の通勤や通学などに欠かせない足になっているだけにストは大きな打撃を与える。長引けば利用者の生活や経済に悪影響を与え、ひいては信頼感が低下して利用者離れも引き起こしかねない。

 このように労組の「伝家の宝刀」も乱用しては威力を失い、果ては自刃行為になりかねないのではないか。労組は労使交渉でできるだけ解決の糸口を探り、大切なお客様である利用者に大きな迷惑が及ぶストは極力回避できるようにたゆまぬ努力を求めたい。

【読者からのおたより】

 大塚圭一郎さんの連載「カナダ”乗り鉄”の旅」をいつもたのしみにしています。カナダ横断鉄道が敷かれたことで国が発展した(先住民の方々や鉄道建設に関わった労働者の方々の犠牲の上で)にもかかわらず、すっかり車依存社会になってしまいましたが、環境問題解決や人口増に対応するインフラとして、やはり鉄道だ!というのが私見です。
 バンクーバー都市圏では、日本や他国の駅に比べるとスカイトレインもセントラルステーションも殺風景ですが、旅客鉄道のニーズとファンの押しで、サービス拡大を願ってやみません。
 これからも面白い記事を発信して下さい。

高橋美枝
New Westminster 在住

(ご本人の許可を得て文面をそのままご紹介しました)

【筆者・大塚圭一郎からのご返信】

 高橋様、ご丁寧なおたよりを頂きましてありがとうございました。「環境問題解決や人口増に対応するインフラとして、やはり鉄道だ!」というご意見に私も100%賛同します。

 私は昨年12月にVIA鉄道カナダの大陸横断列車「カナディアン」にトロントからバンクーバーまで乗りました。途中で通過した大陸横断鉄道の建設過程では、ご指摘の通り多くの先住民や労働者が命を落としました。VIA鉄道カナダのスタッフからは「亡くなった労働者には中国系の方々が多かった」と教えられました。

 そのような過去を厳粛に受け止めながらも、カナディアンの素晴らしい乗車体験については共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS」での連載「鉄道なにコレ!?」の第57回から始まった新シリーズ「カナディアン乗車記」でご紹介していきます。シリーズの第1回「終点まで丸4日をかけて北米大陸を横断」のリンク先は、https://www.47news.jp/10587334.html。そちらの連載もご高覧いただければ幸いです。

 今回で第10回を迎えた本コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」を引き続きご愛読賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

共同通信社ワシントン支局次長で「VIAクラブ日本支部」会員の大塚圭一郎氏が贈る、カナダにまつわる鉄道の魅力を紹介するコラム「カナダ “乗り鉄” の旅」。第1回からすべてのコラムは以下よりご覧いただけます。
カナダ “乗り鉄” の旅

大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社ワシントン支局次長・「VIAクラブ日本支部」会員

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科を卒業し、社団法人(現一般社団法人)共同通信社に入社。大阪支社経済部、本社(東京)の編集局経済部、3年余りのニューヨーク特派員、経済部次長などを経て2020年12月から現職。運輸・旅行・観光や国際経済の分野を長く取材、執筆しており、VIA鉄道カナダの公式愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員として鉄道も積極的に利用しながらカナダ10州を全て訪れた。

優れた鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を13年度から務めている。共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)などがあり、CROSS FM(福岡県)の番組「Urban Dusk」に出演も。他にニュースサイト「Yahoo!ニュース」や「47NEWS」などに掲載されているコラム「鉄道なにコレ!?」、旅行サイト「Risvel」(https://www.risvel.com/)のコラム「“鉄分”サプリの旅」も連載中。

ホワイトキャップス50周年シーズンが幕開け、GK高丘のスーパーセーブで流れを変え引き分けに

GK高丘、今季から背番号1に。2024年3月2日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
GK高丘、今季から背番号1に。2024年3月2日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 今年創設50周年を迎えたバンクーバー・ホワイトキャップスFCのシーズンが3月2日、BCプレースで幕を開けた。GK高丘陽平にとってはMLS2年目のシーズンとなる。この日は約3万人のファンが詰めかけ、大声援を送った。

3月2日(BCプレース:29,624)
ホワイトキャップス 1-1 シャーロットFC
 前半はやや押され気味の中で31分に先制される。41分にはシャーロットFW Copettiが抜け出しGK高丘と1対1に。ここで高丘がゴールを許さずセーブするとホワイトキャップスが流れを引き寄せる。そして前半終了間際MF Raposoが放った鋭角のシュートが決まり同点となった。後半はホワイトキャップスが猛攻するも得点できず引き分けた。

「3万人のファンの前で勝ちたかった」高丘

シャーロットのFW Copettiとの1on1対決でシュートを止めるGK高丘。2024年3月2日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
シャーロットのFW Copetti(右端)との1on1対決でシュートを止めるGK高丘。2024年3月2日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 自分たちが主導権を握れると思っていた試合の中でも「相手のワンチャンスは90分の中であると思っていたので、そこを分かっていながら失点してしまったのは、個人としてもチームとしても改善していかないといけない」と失点を反省した。

 しかしその後シャーロットのフォワードCopettiと1対1となった場面では、「味方のディフェンダーから(Copettiが)ボールをさらってドリブルしてくるあたりから僕の中では良い準備といい予測ができたのもありますし、ちょっとギャンブル的な感じにいったんですけど、最後の曲面のところで自分の中で判断を変えれたので、それがあの場面で (相手を)止められた一つの要因かなと思います」と振り返った。

 そこから流れはホワイトキャップスに傾き、同点ゴールへとつながった。ただ後半に入って何度も得点好機があったにもかかわらず追加点を取れなかったことは、「勝ち点1を取れたというのは評価できる部分はあると思いますけど、勝ち点3を取りきって、こういうたくさんサポートが来てくれた試合こそ勝ち切らないと思います」と開幕戦で勝ち切れなかったことを反省した。

 それでも「去年のプレーオフで悔しい負け方した中で、またこうやって3万人近い人が来てくれたっていうのはすごいうれしいです」と開幕戦ではキャップス史上最高観客数を記録したファンの応援にうれしそうだった。

 今季はホワイトキャップス創設50周年という記念すべきシーズンとなる。「クラブにとって特別な年だっていうのは分かってますし、そういった1年で僕もできる限りのベストを尽くして、50 周年でスペシャルな年に良い結果を出せるようにチームに貢献したいと思っています」と今季への意気込みを語った。

背番号18から1に「悪くないかなと…」

 今季から背番号が昨季の18から1に変わった。変更はチームからシーズンオフに打診されたという。これまでにホワイトキャップスで1を付けたゴールキーパーがキャプテンを務めたこともあった。高丘への背番号1はチームの期待の表れだろう。横浜F・マリノス時代にも1を付けていた。2022年のJリーグでの活躍は言うまでもない。

 「ちょっと悩んだんですけどね。まあつけてみようかなと思って」と笑顔を見せる。「18も好きな番号だったんで、思い入れというか気に入ってはいたんですけど」と言いながらも、「心機一転、悪くないかなと思って付けました」と笑った。

3月、4月のホームゲームhttps://www.whitecapsfc.com/
3月23日(土)4:30pm リアル・ソルトレイク戦
3月30日(土)7:30pm ポートランド・ティンバーズ戦
4月6日(土)4:30pm トロントFC戦
4月13日(土)7:30pm LAギャラクシー戦

ホワイトキャップス50周年、2024年シーズン開幕イレブン。今年からゴールドを基調としたユニフォームに。2024年3月2日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
ホワイトキャップス50周年、2024年シーズン開幕イレブン。今年からゴールドを基調としたユニフォームに。2024年3月2日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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