「大麻とベープ」知ることから始めよう ‐ S.U.C.C.E.S.S.リッチモンド・オンラインワークショップ

 日本では大麻(キャノビス)は違法薬物とされているが、ここカナダでは所持も使用も合法だ。そこで今回は、3月7日、S.U.C.C.E.S.S.リッチモンドが主催したオンラインワークショップ「大麻とベープ」を紹介。連邦警察(RCMP)リッチモンドのジェイス・ロナリオ巡査が大麻の基礎知識や体に与える影響、法制度について解説した。

 大麻は人の体にどのような影響を及ぼすのか、子どもたちから遠ざける方法はあるのか。ロナリオ巡査の解説から学んだことを紹介する。

100種類以上の化学成分を含む大麻

 ワークショップは大麻についての知識の確認から始まった。大麻にはキャナビノイドという脳の細胞や体に作用をおよぼす成分を含む100種類以上の化学成分があり、インディカやハイブリットといわれる大麻草のことを指す。その中でも有名な成分がTHCとCBD。

  • THC:いわゆるハイと呼ばれる状態や、酩酊状態を及ぼす作用を持つ成分。
  • CBD:酩酊状態を起こす作用を持たない成分。THCの作用を抑えたり阻止したりするデータもあり、医療目的で使うための研究も行われている。

 ほとんどの大麻は葉っぱや花から作られており、生のもの、乾燥させているもの、オイル状のものがある。とくにオイル状のものには酩酊作用のあるTHCが3%以上含まれており、より濃縮された石油ベースのものには90%以上ものTHCが含まれる。

どのような方法で体に取り入れるのか?その影響は?

 大麻を使用する際に用いられる主な方法として4種類が挙げられた。1つ目はジョイントと呼ばれる道具を使ってタバコのように煙を吸う方法。2つ目はオイル状のものをクッキーなどの材料に加えて食べたり飲んだりする方法。3つ目はベーピングといい、乾いたものや液体のものを熱して蒸気を体に取り入れる方法。最後に濃縮された効果の強いものを吸うダビングという方法があると説明した。

 その中でもベーピングが、大麻を使用する若者のあいだで人気だという。ロナリオ巡査はブリティッシュ・コロンビア(BC)州では5人に1人の若者がベーピングを試したことがある、もしくは使用していると話した。

若者に人気のベーピングとは?

 ベーピングとは煙の出ないニコチンを、蒸気を発生させて吸い込む方法。ペンタイプの持ち運びやすい形状で複数のフレーバーから選ぶことができるため、社交の手段として使われているのも人気の理由の一つ。使用の理由はソーシャルネットワーク上でかっこいいと評判になっていることや、タバコの代わりに吸う、不安や抑うつ感と闘うため、単に暇だからとさまざまだった。

大麻使用で体にはどんな影響が?

 大麻を使用することで起こりうる短期的、長期的な影響について、次のようなものが挙げられた。

  • 短期的な影響:口の渇き、食欲増進、体重の減少、短期記憶障害、リラックス作用。人によっては心拍数を上げる作用も。アルコールで酔ったときのような集中力や反応の鈍り。精神病、幻覚幻聴の作用をもたらすこともあり、不安や抑うつ感を悪化させることもある。
  • 長期的な影響:上記の症状に加え、すでに精神的な病気がある人には悪化の可能性がある。自殺動機、統合失調症や肺へのダメージ。知能や記憶力、IQ にも悪影響があることから発達途中の子どもや若者の知能を低下させることがある。依存症になるリスクが高く、日常的に大麻を吸っている25~30%の人が薬物依存に陥りやすいと言われている。

合法と違法の境界線は?

 医療用大麻は2001年に合法化され、2018年の大麻法の施行により19歳以上の成人の嗜好目的での使用も合法化された。では、どこまでが合法でどこからが違法になるのか。

 30グラムまでの所有や購入、販売(州政府からライセンスを取っている店に限られる)が許可されており、合法的に手に入れた苗や種も1家族につき4鉢までであれば栽培が可能。規定量を超えると違法になる。

 カナダ国内では合法化されているが、他国への持ち出し、海外からの持ち込みは違法。車でアメリカへ入国する場合でも車内に保管することはできない。帰国の時に所持する場合は国境での申告、医療目的での所持でも公的な書類を用意する必要がある。

リスクを減らすために

 オンラインで購入する場合、ライセンスを取っていない店から購入する可能性があることや、犯罪集団に個人情報を盗まれる可能性もあるとして注意を促した。

 ロナリオ巡査は、大麻の使用により起こりうるリスクを減らすために、脳が発達を続ける25歳までは使用をしないことを推奨した。子どもを持つ親にはよく話し合うこと、家で栽培・保管する場合は手の届かないところに置くことも勧めた。

 また、薬物過剰摂取(オーバードーズ)による最悪の事態を防ぐために「The good Samaritan law」という2017年に施行された法律を紹介した。近くにオーバードーズに陥っている人がいても捕まることを恐れて救急車を呼ばない、ということを避けて命を守るための法律である。

 オーバードーズの特徴として、意識がもうろうとしている、爪や唇が青い、喉が詰まって呼吸が遅い、反応がない、皮膚が冷たいなどの状態を挙げ、「見つけた場合は迷わず救急車を」と呼びかけた。

S.U.C.C.E.S.S.
1973年に設立。定住サービス、言語、雇用、コミュニティサービス、家族および若年世代向けビジネス健康サービス、各種ケア、ハウジング、出版などを行っている。永住権を持っている人、住み込みケアギバー、難民指定を受けている人、カナダ政府から保護認定を受けて在住している人を対象に無料でサービスを提供。ウェビナーや対面のワークショップの実施やコミュニティとのボランティア活動も企画している。

次回は4月に薬剤師による薬局システムや予防接種、薬剤師の近年の役割についてのワークショップを予定。ウェブサイト:www.successbc.ca

大麻とベープに関する参考情報

(取材 池田茜音)

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