
カナダの航空最大手エア・カナダが、札幌(新千歳空港、CTS)とカナダ西部ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー国際空港(YVR)を結ぶ直行便を2026年12月17日に就航する。カナダと北海道の直行便開設は初めてかつ唯一となり、好調に推移しているカナダとアメリカの北米からのインバウンド(訪日客)らを取り込む狙いがある。
日加トゥデイのインタビューに応じたエア・カナダの伊藤正彰・日本地区カントリーセールスマネージャーは「訪日客の期待に応えるだけではなく、飛行機は双方向の需要が非常に大事なため北海道発北米行きなどの需要もつくり出したい」と語り、訪日客に加えて日本からの海外旅行客の獲得にも意欲を示した。
(共同通信社経済部次長・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者・大塚圭一郎)

【エア・カナダの札幌―バンクーバー線】エア・カナダが、バンクーバー国際空港と札幌(新千歳空港)の間に開設する路線。初便はバンクーバーを2026年12月17日に出発し、新千歳発の初便は翌18日となる。週に3往復する。バンクーバー発は月曜・木曜・土曜で、午後2時25分にバンクーバーを出発し、新千歳着が翌日の午後3時35分。新千歳発は日曜・火曜・金曜で新千歳を午後7時35分に出て、バンクーバーに同じ日の午前11時50分に到着。期間は26~27年の冬ダイヤ終了までとなり、最終便はバンクーバー発が27年3月25日まで、新千歳発が翌26日まで。
新千歳―バンクーバー線は、北海道と北米を結ぶ最速・最短の直行便となる。運航期間中に使うのはボーイングの中型機787で、標準型の787―8型と、胴体を少し延長した787―9型の両方を用いる。当初数週間に使用予定の787―9型(298席)はビジネスクラス「シグネチャークラス」が30席、プレミアムエコノミークラスが21席、エコノミークラスが247席。787―8型(255席)はそれぞれ20席、21席、214席。
シグネチャークラスで提供する機内食の日本食は、グルメ本「ミシュランガイド・トロント」で2025年まで4年連続一つ星を獲得しているカナダ最大都市トロントの懐石料理専門店「Kaiseki Yu-zen Hashimoto(懐石遊膳橋本)」のオーナーシェフ、橋本昌樹氏が監修する。
▽「北米からの旺盛な需要」と伊藤氏
日本政府観光局によると、2026年1~5月のカナダからの旅行者数は前年同期比8・5%増の31万8900人。けん引力の一つとなっているのが日本の良質なパウダースノーを求めるスキー客で、北海道ニセコ町などのスキーリゾートに外国人が押し寄せている。

エア・カナダが冬ダイヤも含めて通年運航している日本路線にはバンクーバー―成田空港線、カナダ最大都市の東部オンタリオ州トロントと羽田空港、成田をそれぞれ結ぶ路線、東部ケベック州モントリオール―成田線がある。伊藤氏は「中でも北海道はスキー需要に加えて食事、温泉などのいろいろな魅力があり、北米からの旺盛な需要がある」とした上で、バンクーバーと札幌(新千歳空港)を行き来するには成田または羽田でエア・カナダと同じ航空連合の「スターアライアンス」に加盟する全日本空輸(ANA)の旅客便と乗り継ぐ必要があると指摘。
そこでエア・カナダは、新千歳―バンクーバー線を就航させることを決断。伊藤氏は「需要に応える方法として直行便を運航することが最も利便性が高く、カナダと日本を結ぶ最速かつ最短の路線にできる」と説明した。
▽同じ日の乗り継ぎ便も豊富
これに対し、日本の消費者にとっては外国為替市場での円安ドル高傾向が海外旅行の大きな壁となっている。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃に端を発した中東紛争で原油価格が高騰し、2026年5月発券分からエア・カナダを含めた燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)がはね上がったことも消費者心理を悪化させた。
アメリカとイランは暫定和平合意を結んだものの、その後両国の戦闘が再燃して事実上の機能停止に追い込まれた。大手旅行会社関係者は「海外旅行は円安ドル高と燃油サーチャージ上昇によって割高感を持たれており、国内旅行のプロモーションに力を入れている」と打ち明ける。

それでも、伊藤氏は航空便の運航には双方向の需要が不可欠だとして「日本からの旅行者の潜在需要も掘り起こしていかなければならない」と力説する。そのために新千歳からバンクーバーへ向かう日本人旅行者の利用を取り込むのはもちろん、「エア・カナダのハブ(拠点)空港の一つであるバンクーバーでカナダ国内とアメリカ、さらにメキシコ、ヨーロッパ、南米と結ぶ多くの路線と同じ日に乗り継ぐことができる」と説明する。
バンクーバーで同じ日に乗り継げる渡航先として、豊かな自然とオーロラ観賞で人気のあるカナダ北西部ユーコン準州の州都ホワイトホース、ノースウエスト準州の主要都市イエローナイフとそれぞれ結ぶ路線を例示。


原油や天然ガスなどの天然資源を産出している西部アルバータ州の州都エドモントンや、毎年7月に10日間開催されているカウボーイの祭典「カルガリー・スタンピード」 で有名な大都市カルガリーへの乗り継ぎも便利だとして「しっかりと需要を取り込めるような営業活動を進めていく」と意気込む。
▽北海道の26自治体がカナダと姉妹提携
また、伊藤氏は姉妹提携を結んでいる北海道とカナダの自治体関係者らの利用も大きなターゲットだとして「カナダの自治体と姉妹提携を結んでいる北海道の自治体は26もある」と強調した。一例として北海道がアルバータ州と、函館市が東部ノバスコシア州ハリファックス市とそれぞれ結んでいる。
交流を阻んでいた新型コロナウイルス禍が収束したことで自治体関係者が姉妹提携先を訪問したり、学生らが語学研修に赴いたりする動きも出ているのを背景に、伊藤氏は「各自治体への働きかけもしっかりしながら、姉妹提携先との交流を強く深めてもらうようにしたい」との方針を示す。


釧路市とブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市も姉妹都市提携をしており、提携60周年を迎えた2025年にさまざまな記念イベントが開催された。
▽新千歳空港がゲートウェイに
伊藤氏は新千歳―バンクーバー線の運航期間中には「新千歳がゲートウェイ(玄関口)の一つになる」とし、北海道以外と結ぶ国内線との乗り継ぎ需要にも期待を込める。

東北地方の空港ならば新千歳―バンクーバー線と乗り継ぎやすい便もあるため「東北を含めて需要の掘り起こしになり、お客さまと旅行会社の選択肢が増える」とし、仙台空港は新千歳線が多く飛んでおり、青森空港も往復ともに乗り継ぎやすい時間に結んでいると例示した。
さらに新千歳―バンクーバー線の発着時刻は、新千歳―大阪(伊丹)線、新千歳―福岡線とも乗り継げるため「成田―バンクーバー線を補完することができ、成田線が混雑している場合や、顧客が札幌に寄りたい場合に活用してもらえるかもしれない」との見方を示した。
▽運航期間終了後はどうなる?
新千歳―バンクーバー線の運航が決まっているのは、今のところバンクーバー発が27年3月25日まで、新千歳発が26日までだ。果たして27~28年以降の冬ダイヤの運航や、通年運航は可能なのだろうか。
伊藤氏は「一番大事なのは初年度なので、初年度にしっかりと結果を出し、利便性が高くなるような努力を当然していくことでしっかりと成長、発展させていきたい」とし、手本として2022年12月に開設したバンクーバーとタイの首都バンコクを結ぶ路線を挙げた。カナダ人が冬の間に温暖なタイを訪れる“避寒地”需要を見込んで就航し、当初は冬ダイヤ限定だったものの「利用が堅調なため26年からは夏ダイヤも含めた通年化された」という。
エア・カナダは新千歳―バンクーバー線の利用者獲得に向け、北海道や東北地方の旅行会社、自治体、学校への説明会を順次開催しており「新千歳―バンクーバー線を利用した旅行商品もこれから売り出される」と手応えを示す。
旺盛な訪日客需要にとどまらず、日本からの潜在需要も掘り起こすことで、北海道とカナダを直行する史上初かつ唯一の路線を軌道に乗せられるのか。開設に向けて注目度が一段と高まりそうだ。




























