
カナダ日系文化会館が主催する第1回バンクーバー日本映画祭が9月11日から13日まで開催される。
これまでトロント市にある同会館で15年間続いている「トロント日本映画祭」がバンクーバーにやってくる。
今年紹介する映画は日本を代表する実力派俳優陣が出演する珠玉の7作品。6月11日から26日まで開催されたトロント日本映画祭でも上映された作品が揃った。バンクーバーでのオープニングは、倍賞千恵子、木村拓哉主演の「TOKYOタクシー」。
同会館によると「どの作品も観客から高い評価を受け、上映後のアンケートでは全ての作品が88%以上の支持を集めました。こうした観客の反応はバンクーバーで上映する作品を選ぶうえでも重要なポイントとなっています」という。トロント日本映画祭の最優秀作品賞(Grand Jury Prize for Best Film)受賞作も含まれている。
バンクーバー日本映画祭ディレクター兼プログラマーのジェームス・ヘロンさんは、第1回日本映画祭をバンクーバーで迎えることに、「心より光栄に思います」と語る。「第1回となる今回のプログラムでは、今日の日本映画が持つ驚くほど幅広い魅力をご紹介します」と上映作に自身をのぞかせる。「楽しく、心を動かし、ときに私たちに問いを投げかける、人間味あふれる作品ばかりです。それぞれの映画は日本ならではの文化や感性を映し出していますが、そこで描かれる愛、喪失、家族、アイデンティティ、困難を乗り越える力、そして人と人とのつながりといったテーマは、国境を越えて私たちの心に響くものです」
カナダ日系文化会館は1963年創設。「独自の文化、歴史、そして日系カナダ人のレガシーを全カナダ人に向け発信、提供している」非営利団体。会員数は約5,200人。各種プログラムやイベントなどで約21万人が同館を訪れて、日本文化に触れているという。
その中でもトロント日本映画祭は最大級のイベントで、今年は24作品が上映された。ヘロンさんは「カナダ日系文化会館(JCCC)は15年以上にわたり、映画を通して人と人をつなぎ、日本映画の豊かさと多様性をカナダの観客の皆様に紹介するとともに、日本とカナダの相互理解を深める機会をつくってきました」と自負する。
「映画祭とは、単にスクリーンに映し出される作品だけではありません。映画をきっかけに生まれる会話や、そこから育まれる人と人とのつながりもまた、映画祭の大切な一部です。JCCCが長年大切にしてきた理念は『文化が分かる。心が通う。(Friendship Through Culture)』です。まさにその精神のもと、私たちはこの新しい映画祭をバンクーバーでスタートします。第1回バンクーバー日本映画祭の実現に力を貸してくださったパートナー、スポンサー、映画関係者、配給会社、ボランティア、そして観客の皆様に、心より感謝申し上げます。
この映画祭が長く続く新たな歩みの第一歩となり、これから皆様とともにバンクーバー日本映画祭を育てていけることを心から楽しみにしています」とメッセージを送った。
開催期間中、9月12日には上映作「あるく」の片岡志帆監督が登壇する。
第1回バンクーバー日本映画祭
期間:2026年9月11日~13日
会場:VIFFセンター(1181 Seymour St, Vancouver, BC)
チケット:大人19ドル、シニア17ドル、学生・ユース・アクセシブル14ドル、VIFF+メンバー16ドル(GST別途加算)購入は各上映作VIFFサイトから。
情報:日系文化会館バンクーバー日本映画祭ウェブサイト https://jccc.on.ca/ja/films/vancouverjff
上映作品
全作品バンクーバープレミアとして上映。英語字幕付き。
TOKYO タクシー

タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を東京・柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。すみれの「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがある」という頼みを受けた宇佐美は、すみれの指示で各地へタクシーを走らせる。旅を共にするうち、次第に心を許したすみれから語られたのは、彼女の意外な過去だった。タクシーの運転手と客として偶然出会った2人の心、そして人生が大きく動き始める。
91本目の作品となる名匠・山田洋次監督が、2022年製作のフランス映画「パリタクシー」を原作に人生の喜びを描いたヒューマンドラマ。
9月11日(金)7:30pm
https://viff.org/whats-on/tokyo-taxi
かくかくしかじか

宮崎県に暮らす、お調子者でぐうたらな女子高生の林明子(永野芽郁)は、幼い頃から漫画が大好きで、将来は漫画家になりたいという夢を抱いている。その夢をかなえるべく美大進学を志す明子は受験に備えて地元の絵画教室に通うことになった。そこで出会ったのが竹刀片手に怒号を飛ばすスパルタ絵画教師の日高先生(大泉洋)だった。何があっても、どんな状況でも、生徒たちに描くことをやめさせない日高。一方の明子は、次第に地元の宮崎では漫画家になる夢をかなえることはできないと思うようになっていき、日高とすれ違っていくが……。
笑いと涙で人生を描き、日本中を励まし続ける伝説の漫画家・東村アキコが描いた自身の実話を映画化した作品。監督は関和亮。
9月12日(土)1:00pm
https://viff.org/whats-on/kaku-kaku-shika-jika
ブルーボーイ事件

1965年、オリンピック景気に沸く東京。警察は街の国際化に伴う売春の取り締まりを強化していたが、性別適合手術を受けた「ブルーボーイ」と呼ばれる者たちの存在に頭を悩ませていた。戸籍は男性のまま女性として売春をする彼女たちは、現行の売春防止法では摘発対象にならないのだ。そこで警察は、生殖を不能にする手術が「優生保護法」に違反するとして、ブルーボーイたちに手術を施した医師・赤城(山中崇)を逮捕し裁判にかける。一方、東京の喫茶店で働くサチ(中川未悠)は、恋人にプロポーズされ幸せの絶頂にいた。
高度経済成長期の日本で実際に起きた「ブルーボーイ事件」を題材に、自らもトランスジェンダーであることを公表している飯塚花笑監督が、性別適合手術の違法性を問う裁判に関わった人々の姿を描いた社会派ドラマ。主人公のサチをはじめ実際のトランスジェンダーが出演している。
9月12日(土)4:00pm
https://viff.org/whats-on/blue-boy-trial
2026年トロント日本映画祭でGrand Prize Jury – Special Mention受賞
あるく

毎年、四国には「四国遍路」を目指して何千人(15万人〜20万人)もの旅人が訪れる。900年以上にわたり、人々は日本仏教に大きな足跡を残した弘法大師・空海の足跡をたどり、88の札所を結ぶ約1200キロの道のりを歩いてきた。この作品は、そうした巡礼の道を現代に歩む4人の姿を見つめた、静かな瞑想性をたたえるドキュメンタリー。疲労、孤独、あるいは言葉にならない幻滅をそれぞれに抱えた彼らの歩みを、片岡志帆監督が四国の穏やかな風景と寺々のたたずまいの中に美しく映し出す。
9月12日(土)7:00pm
https://viff.org/whats-on/aruku-i-walk
上映当日には片岡志帆監督が登壇し、Q&Aに応じる。
ふつうの子ども

唯士(嶋田鉄太)は、放課後に毎日虫取りをするのが大好きな典型的な10歳の少年。クラスメイトの心愛(瑠璃)が「大人が引き起こした気候危機の負担を子どもが背負う不公平さ」についてスピーチをしたことをきっかけに、唯士は心愛に淡い恋心を抱くようになる。やがて、クラスの問題児・陽斗(味元耀大)も仲間に加わり、3人は町の環境への無頓着な習慣を暴くため、遊び心あふれる抗議活動を思いついていく。しかし、彼らの「エコ作戦」がエスカレートするにつれ、自分たちの行動がもたらす本当の結果を理解し始め、そして自分たちの動機と向き合わざるを得なくなる。
監督はバンクーバー国際映画祭で「ぼくが生きてる、ふたつの世界」が上映された呉美保。独特の鋭いユーモアセンスと若いキャストから自然な演技を引き出す才能で、大きな倫理的問いと子どもたちの静かな感情の芽生えを丁寧に描きながら、あらゆる世代の観客に向けた観察力に満ちたほろ苦い警告の物語に仕上げている。
9月13日(日)1:00pm
https://viff.org/whats-on/how-dare-you
2026年トロント日本映画祭で最優秀作品賞(the Grand Prize Jury for Best Film)受賞
人はなぜラブレターを書くのか

2024年、定食屋を営む寺田ナズナ(綾瀬はるか)は、ある青年に宛てて手紙を書く。24年前、17歳のナズナは、いつも同じ電車で見かける高校生・富久信介(細田佳央太)にひそかな恋心を抱いていた。信介は進学校に通いながらプロボクサーを目指し、学校帰りにボクシングの練習に打ち込む日々を送っていた。そんな彼らに、運命の日である2000年3月8日が訪れる。そして2024年、信介の家族の元にナズナからの手紙が届く。父・隆治(佐藤浩市)は手紙の中に亡き息子の生きた証を確かに感じ、息子の知られざる青春の断片と成長を知る。
2000年3月に発生した地下鉄脱線事故にまつわる奇跡のような実話をもとに描いたドラマ。監督は石井裕也。
9月13日(土)4:00pm
https://viff.org/whats-on/one-last-love-letter
木挽町のあだ討ち

時は江戸時代。ある雪の降る夜に起きた大事件として、語り草となった見事な仇討。しかし、そこには誰も知ることのなかったもう一つの物語が隠されていた。木挽町の芝居小屋「森田座」のすぐ近くで、美しい若衆・菊之助(長尾謙杜)が父の仇討ちを見事に成し遂げた。その事件は多くの人々に目撃され、美談として語られることになる。1年半後、菊之助の縁者だという侍・総一郎(柄本佑)が、仇討ちの顛末を知りたいと森田座を訪れる。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞くなかで徐々に事実が明らかになり、やがて仇討ちの裏に隠された「秘密」が浮かび上がる。
直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子による同名小説を映画化したミステリー時代劇。監督は源孝志。
9月13日(土)7:00pm
https://viff.org/whats-on/samurai-vengeance

(記事 編集部)
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