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グラッドストーン日本語学園、第55回卒業式開催される

努力を積み重ねて卒業の日を迎えた47人の生徒と、彼らを支えた教職員と一緒に。2026年5月30日、バーナビー市。写真提供 グラッドストーン日本語学園
努力を積み重ねて卒業の日を迎えた47人の生徒と、彼らを支えた教職員と一緒に。2026年5月30日、バーナビー市。写真提供 グラッドストーン日本語学園

 グラッドストーン日本語学園の卒業式が5月30日、バーナビー市の日系文化センター・博物館で行われた。同校は今年で創設55周年。晴れの日にふさわしい青空の下、今年は47人の生徒が卒業した。

「初心に戻ること」──髙橋総領事からの祝辞

 卒業式は、日本とカナダ、両国の国歌、そして同校の校歌を全員で斉唱したあと、卒業証書授与へと移った。小学科、中学科、基礎科の生徒たちは、教師が名前を読み上げると「はい」と答えて起立。代表者2人が村上陽子学園長から卒業証書もしくは基礎科修了証書を受け取った。高等科の生徒は村上学園長が一人ひとり卒業証書を手渡した。

 続いて、在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事があいさつ。「成長は1日で成し遂げられるものではありません。授業、宿題、発表、友達との会話など、毎日の一つひとつの積み重ねだと思います」と、卒業後も学園で学んだ日々を振り返ってほしいと語りかけた。「初心に戻ることは、自分自身の成長を確認する機会です。そして、それが将来、みなさんの力の源になることと思います」と祝福した。

学園生活を振り返る「卒業生の言葉」

 「卒業生の言葉」では、まず小学科の生徒が全員でステージに立った。「テストで悪い点数を取りました。『失敗は成功のもと』です。次のテストでは100点を取れました」「テスト勉強を手伝ってくれようとするお母さんのことを、しつこいと思ってしまいました。『親の心、子知らず』でした」など、各生徒とも、ことわざと時にユーモアを交え、ハキハキとした口調でこれまでの学習を振り返った。

 中学科の生徒は、より長く、より具体的な「言葉」で学園生活について語った。プレゼンテーションの思い出や習字クラブでの取り組みなど楽しい思い出とともに、宿題の増加や現地校との両立に悩んだという声も。同時に、クラスメートや先生との交流を励みに、高等科に入ってもがんばりたいと言う生徒が多く、日本語学習への意気込みが見られた。

 高等科の生徒は一人ひとりがスピーチした。学年が上がると、日本語学習以外の活動も忙しくなる。チアリーディングとの両立のため振替授業を利用したという女子生徒。また、サッカーにピアノにと忙しい毎日だったという男子生徒は「もう少し、もう少しだけと、歯を食いしばりながらがんばってきました」と語り、在校生に向けて「くじけず、前を見て一歩一歩進んでください」とエールを送った。

 勉強は大変でも、生徒たちの言葉には、学園が大好きだという思いがあふれていた。「一番心に残っているのはここで育んだ友情です」と話した女子生徒は、切磋琢磨してきた友達と一緒に卒業の日を迎えられてうれしいと喜んだ。

 卒業生には幼少の頃から通っている生徒も多い。2歳から通っていたという女子生徒は「この学園は、気がつけば、私の生活の一部になっていました」と話した。また別の女子生徒は、これまでずっと先輩の言葉に励まされてきたが、今日は自分が卒業生としてスピーチをすることについて感慨深げだった。

村上学園長、はなむけに贈る「『あ』のつく言葉」

 卒業生のスピーチを聞き終えた村上学園長は「胸がいっぱいになりました」と生徒たちのがんばりを称えた。そして、1年生で習った「『あ』のつく言葉」──「あいさつ」「ありがとう」「あきらめない」をはなむけの言葉とし、これまでずっと日本語学習を続けてきた卒業生を「これからもあきらめずに自分のやりたいことを続けてください。きっと良い結果が出ます」と激励した。

 最後は中等科2年と高等科初級による「ソーラン節」。グラッドストーン日本語学園の名前の入った法被を着て、威勢のいいダンスで卒業生たちを見送った。

 55年にわたって生徒を見てきた村上学園長。今年の卒業生には同校の卒業生の子どももいたという。「毎年、教え子の子どもが来てくれるんですよ。もう50人以上になります。私はおばあちゃんみたいな気持ちですね(笑)、孫が来てくれたって」。

 一方で、同学園では質の高い教育を行うため、卒業生からは「勉強が大変だった」という声も聞かれた。モチベーションの持続について聞くと、村上学園長は「褒めることですね」と即答。「生徒たちは自信をつけ、向上心を持ちます。『良い声で本を読めたね』『元気よく読めたね』など、私は常に生徒の良いところを探しているんです」。

 クラスメートとの友情、そして教員との温かいコミュニケーションに支えられ、学習に励み、卒業の時を迎えた生徒たち。村上学園長は「大変なことも多いですが、生徒は本当にかわいいです。教師冥利に尽きます」と笑顔で話した。

「よさこい」で卒業生を見送った中等科2年と高等科初級の生徒たち。2026年5月30日、バーナビー市。写真提供 グラッドストーン日本語学園
「よさこい」で卒業生を見送った中等科2年と高等科初級の生徒たち。2026年5月30日、バーナビー市。写真提供 グラッドストーン日本語学園

(取材 宗圓由佳)

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海上保安大学校練習船「いつくしま」約40年ぶりにカナダ寄港

バンクーバー市ダウンタウンを背に、ノースバンクーバーのピアに入港する「いつくしま」。Japan Coast Guardの文字も。(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
バンクーバー市ダウンタウンを背に、ノースバンクーバーのピアに入港する「いつくしま」。Japan Coast Guardの文字も。(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 すがすがしい初夏の空が広がるバンクーバーに、5月17日、海上保安大学校練習船「いつくしま」が寄港した。専攻科生の遠洋航海実習の途中で、ブリティッシュ・コロンビア州の州都ビクトリアに次ぐ2つ目の寄港地となる。

バンクーバー総領事館による歓迎式典

 実習生68人、乗組員55人を乗せたいつくしまは、5月1日に広島県呉市の海上保安大学校を出港、約2週間かけてカナダに到着した。海上保安庁所属船のカナダ寄港は1987年以来だという。

 バンクーバーではノースバンクーバー市バラード・ドライ・ドック・ピアに入港し、船上で在バンクーバー日本国総領事館による歓迎行事が行われた。バンクーバー日本語学校、バンクーバー補習授業校の生徒や保護者も集まり、賑やかな催しとなった。

 髙橋良明総領事があいさつに立つと、制服に身を包んだ実習生たちは「Salute!」の掛け声で敬礼。総領事は歓迎の言葉とともに、海に囲まれた日本における海上保安庁の重要性や日本とカナダとの海を通じた交流の歴史に触れながら、バンクーバー在住の人々がいつくしまを見学し、海上保安庁を知ることの意義を語った。

青空のもと、あいさつする溝口直樹船長(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
青空のもと、あいさつする溝口直樹船長(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 いつくしま船長で海上保安大学校教授の溝口直樹氏は歓迎に感謝の意を表し、「海の警察、海の消防」としての海上保安庁の役割について説明。「8,000キロ以上離れていますが太平洋を挟んで日本の隣はカナダです」と、広い海域の安全安心を守るために周辺諸国との連携は欠かせないことを語った。

 今回カナダとの連携の一環として、いつくしまにはカナダ沿岸警備隊(Canadian Coast Guard)の実習生4人も乗船している。ビクトリアから乗船し、この後ホノルルまで一緒に航海するという。

花束を受け取った海上保安大学校実習生や白いシャツを着たカナダ沿岸警備隊の実習生と一緒に。この後、アメリカの実習生も乗船するという(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
花束を受け取った海上保安大学校実習生や白いシャツを着たカナダ沿岸警備隊の実習生と一緒に。この後、アメリカの実習生も乗船するという(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 厳しい訓練が続く航海だが、バンクーバー寄港は約40年ぶりということで、溝口船長はバンクーバーでの滞在を楽しみにしていると笑顔を見せた。

実習の様子が垣間見える船内見学会

 式典後には船内見学会が行われた。まずは実習生たちが学ぶ教室、そして生活の場である実習生居住区を見学。2段ベッドが2つ置かれた4人部屋やシャワーがずらりと並んだ浴室など、船内での生活が垣間見える空間を大人も子どもも興味深そうに眺めていた。

実習生の寝室。清潔だがスペースはかなり狭い(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
実習生の寝室。清潔だがスペースはかなり狭い(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
浴室は実習生たちが1日の疲れを癒やす場所(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
浴室は実習生たちが1日の疲れを癒やす場所(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 船内は揺れに備え、廊下のいたるところに手すりがついている。食堂の椅子も床から伸びた鎖につながれていた。見学コースには各所に生徒が立って、見学者の質問に答えていた。

食堂の椅子は鎖で繋がれている(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
食堂の椅子は鎖で繋がれている(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 船を操縦する場は船橋(ナビゲーションブリッジ)と呼ばれる。中央には舵があり、子どもたちは大喜び。記念撮影をする親子もたくさんいた。船橋後方にはノースバンクーバーとビクトリア周辺の海図があり、いずれもたくさんの書き込みが入っていた。

船橋の中央には舵が(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
船橋の中央には舵が(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
本物の船橋よりシンプルな実習生用の船橋(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
本物の船橋よりシンプルな実習生用の船橋(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 いつくしまには実はもうひとつ船橋がある。それは実習生用の船橋だ。ここでは切替操作によって、実習生用船橋から実際に船を操ることも可能だ。海上保安庁の船で2つ船橋があるのは、教育訓練に特化したいつくしまだけだそうだ。

国際的な視野を持つ海上保安官を目指して 

 歓迎行事後、溝口船長に実習の様子を聞くと、実習生についてはまだ2週間ということで「まだまだこれからがんばって勉強してほしいです」と笑う。実習生は国内での航海実習は経験しているが海外への遠洋実習は初めてという。

 「(この遠洋実習は)これまでの総仕上げという位置づけです。さらに我々の仕事は外国とのつながりが多いので、国際的な視野を広げることが必要です。海外は初めてという実習生もいるのですが、日本と外国との関係を学んだり、また苦手意識を持つ人が多い英語でのコミュニケーションについても『なんとかなるんだな』ということを実感してもらいたいです(笑)」

杉藤希洸さん(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
杉藤希洸さん(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 実習生にも話を聞いた。小学3年生までトロントやバンクーバーに住んでいたという通信科の杉藤希洸(ひかる)さんは、15年ぶりのカナダ再訪を楽しみにしていたという。通信士の英語のアクセントに耳馴染みがあったり、ふとしたところで懐かしさを覚えると話す。

 一方、海外への航海は初めてで「最初の方は波に揺られて大変でした」と振り返る。「無線が全く聞こえなくなるのも新鮮で、太平洋の真ん中にいるんだなと実感しました」。今回の実習では、通信士としての職務の向上はもちろん、国際交流を通じて対外的にも信頼される海上保安官を目指したいと抱負を語った。

早川莉央さん(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
早川莉央さん(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 機関科の早川莉央さんは日本国外に出たのが初めて。最初の寄港地ビクトリアでは、建物から英語でのコミュニケーションまで全てが新鮮だったと話す。実習について聞くと「この2週間は、今まで生きてきた中で一番長い2週間でした(笑)」という答えが。「夜も当直があるので生活リズムが崩れるんです。また機関科の実習が忙しくて、外の景色を見る機会も少ないので、その分お昼の体操時間が楽しみでした」

 もともと海に関わる仕事がしたかったという早川さん。高校時代、進路を調べる中で「海の警察、消防という海上保安官の仕事を見つけ、かっこいいなあと思いました」。憧れの仕事に向けて、総仕上げの場となる今回の遠洋航海実習。「現場に出る前の最後の実習なので学ぶべきことはたくさんあるのですが、それ以外にもいろいろな文化を学んだり、コーストガードの方とコミュニケーションを取ったり、初めての環境で自分の力が発揮できるようにがんばりたいと思います」と話した。

 いつくしまは5月20日にバンクーバーを出港後、サンフランシスコ(アメリカ)、ホノルル(同)、シドニー(オーストラリア)、シンガポール、マニラ(フィリピン)へと航海を続け、7月28日に海上保安大学校に戻る予定。実習生たちは12月から現場に配置され、新たな一歩を踏み出すことになる。

いつくしまがノースバンクーバーのピアに接岸する様子(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
いつくしまがノースバンクーバーのピアに接岸する様子(2026年5月17日、ノースバンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

(取材 宗圓由佳)

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「名作絵本の劇から動物クイズ、アニメ聖地ガイドまで!」バンクーバー日本語学校で学習発表会開催

高等科2年「2025年〜26年のまとめ 世界三大ニュース」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
高等科2年「2025年〜26年のまとめ 世界三大ニュース」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 バンクーバー日本語学校で5月23日、学習発表会が行われた。毎年学年末を前に行われる恒例行事。2026年もキンダークラスから高等科3年までの生徒が、保護者や教職員、ほかの生徒を前に、それぞれの学習成果を披露した。

楽しみながら日本語を学ぶ、低学年の生徒たち

 トップバッターを務めたのはキンダークラス。幕が開く前に、先生や観客席の生徒・保護者が、準備ができたか声をかけると、幕の後ろから「もういいよー!」の元気な声が。総勢40人の生徒は、まずは楽器で「せんろはつづくよ どこまでも」を合奏。続いて「ありがとうのはな」を手ぶりを交えながら元気よく歌った。

 同校には外国語として日本語を学ぶ生徒向けの基礎科もある。基礎科Aは授業で習った「数の数え方」を発表。みんなで「ふしぎなぽけっと」を歌いながら、「ひとつ」「ふたつ」とビスケットの数を数える。緊張のせいか詰まってしまう生徒もいたが、会場からの温かい手拍子に励まされ、みんなで10まで数え上げた。

 小学科1年は「おおきなかぶ」の劇。おじいさんや孫、動物、そしてかぶに扮した子どもたちが、おなじみの台詞を交代で言いながらかぶを引っ張る。最後の「とうとう、かぶはぬけました」で子どもたちがバンザイをすると、大きな拍手が起こった。

 日本語学習の中でもなかなか難しい「日付の読み方」を学習したのは小学科2年。1月1日の正月から12月25日の「ハッピーホリデイ」まで、さまざまな1年の行事に触れながら、正しい読み方で日付を言うことができた。

小学科5年「俳句を紹介しよう」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
小学科5年「俳句を紹介しよう」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 学年が上がるにつれ、内容は高度になる。小学科4年は、古くから親しまれている名作「お手紙」の劇を、小学科5年はさらに一歩進んで自作の俳句をもとに、そのシーンを寸劇で再現した。

中学科1年「夏休みの旅行プラン」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
中学科1年「夏休みの旅行プラン」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 中学科1年のテーマは「夏休みの旅行プラン」。北海道や高知、沖縄といった地域の祭りや名物を挙げながら生徒同士で旅行先を考えるという内容で、観客席からは「行ったことある!」などの声が上がった。話し言葉やユーモアを交えた発表は、生徒の日本語能力の高さを示した。

SNSにアニメ、時代を映し出すテーマも

 毎年行われている学習発表会だが、時代を反映したテーマもある。ユースBが選んだのは「SNSきんし」。オーストラリアで16歳以下のSNS(ソーシャルメディア)使用禁止の法律が定められたことを紹介し、それに対する賛成と反対の意見を発表した。

中学科2年「アニメ・漫画聖地巡礼ガイド」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
中学科2年「アニメ・漫画聖地巡礼ガイド」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 また、子どもや若い世代にとって人気の日本文化といえば、やはりアニメ。中学科2年の「アニメ・漫画聖地巡礼ガイド」では「役に立つガイドです」の触れ込み通り、「呪術廻戦」「ハイキュー!」など人気アニメの「聖地」を詳しく紹介。ほかにもユースCの「ドラえもんの魅力」、ユースDの「日本のキャラクタークイズ」など、今年はアニメに関するテーマが目立った。

ユースD「日本のキャラクタークイズ」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
ユースD「日本のキャラクタークイズ」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 さらに今年は教員による合唱「夢をかなえてドラえもん」も。トロンボーンの生演奏に合わせて教員たちがマーチングしながら登場というサプライズで始まり、ステージではドラえもんが指揮棒を振るという演出で、生徒は大喜びだった。

会場を沸かせた上級生の発表

 2時間半という長丁場にもかかわらず、生徒たちは最後まで発表を熱心に聞いていた。その理由のひとつは発表内容にあるようだ。「上級生の発表には、小さな子どもたちにも分かるようにとか、みんなを巻き込んで盛り上がろうという気持ちが感じられました」と久田琴絵校長は話す。

 中学科3年のテーマは「森へ〜動物クイズ〜」。カナダカワウソやホッキョクグマなど、カナダの動物の生態について説明し、会場に向かってクイズを投げかける。質問を聞く生徒は、低学年も高学年もみんな真剣な表情。答え合わせの時には「イエーイ!」とガッツポーズする生徒や「え〜!」とびっくりしている生徒など、さまざまに楽しそうだった。

高等科2年「2025年〜26年のまとめ 世界三大ニュース」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
高等科2年「2025年〜26年のまとめ 世界三大ニュース」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

 「2025年〜26年のまとめ 世界三大ニュース」という一見、堅そうなテーマながら、大爆笑を誘ったのは高等科2年。「バンクーバーでゴールデンレトリバー・コンテスト開催」のニュースでは、かわいらしい(?)ゴールデンレトリバーに扮した生徒たちが登場。それぞれの犬にスコアをつけるという寸劇で、会場は大盛り上がりだった。

 久田校長によると、普段は別々に学んでいる違う年齢の生徒が一堂に会するという意味で学習発表会は特別な行事だという。冒頭では、生徒会の生徒が「発表の聴き方」を指南する場面も。「こういう機会に、上級生が小さな子どもたちのロールモデルになってくれればいいですね」と目を細める。

 閉会を前にあいさつに立った久田校長が生徒たちのがんばりをねぎらい「みんな、自分を褒めてあげてください」と言うと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。生徒たちが一生懸命やっている姿を見ることができてうれしかったと言う久田校長。「上手にできた生徒も、失敗しちゃったという生徒もいますが、それを思い起こしながら、今後の日本語学習につなげていければと思っています」と笑顔で話した。

教員合唱「夢を叶えてドラえもん」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)
教員合唱「夢を叶えてドラえもん」(2026年5月23日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ)

(取材 宗圓由佳)

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「『の』の字さがし」から「紙ひこうきとばし」まで、「JALTAチャレンジ」開催される

「ゾロ目出し」。1組でも多くゾロ目を出そうとがんばってサイコロを振る子どもたち。2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ
「ゾロ目出し」。1組でも多くゾロ目を出そうとがんばってサイコロを振る子どもたち。2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ

 JALTA日本語教育振興会主催「JALTAチャレンジ にほんごでゲームにちょうせん!」が11月30日、日系文化センター・博物館で行われた。これは、JALTA加盟校で日本語を学ぶ子どもたちに向けた、日本語でゲームを楽しむという初のプログラム。1年生から7年生までが対象で、8年生以上の生徒はボランティアとして参加した。

ラジオ体操でリラックス

 JALTA会長ベイリー智子さんによると、当日は約50人の生徒たちが集まった。会場は日系文化センターの広々とした玄関ホール。さまざまな日本語学校からきた生徒の集まりということで、最初は子どもたちも少し緊張しているようだった。

 まず「アイスブレーカー」として行われたのがラジオ体操。おなじみの音楽と先生の手本に合わせ、子どもたちはのびのびと体を動かした。続く「もうじゅうがりゲーム」は、スクリーンに映し出された猛獣の字数と同じ人数でグループを作るというもの。ライオン、トラ、パンダと進むうちに、子どもたちに次第に笑顔が見えてくる。

 そして、いよいよプログラム開始!8~9人のグループに分かれ、順番に6つのステーションをまわり、日本語を使ったゲームを行う。子どもたちは首にチームカラーの「パスポート」を下げて、ひとつゲームを終えるごとにその結果を記入する仕組みだ。

真剣に、そしてはしゃぎながらゲームに取り組む子どもたち

「『の』の字さがし」。いくつ「の」を探せたかな?2025年11月30日、バーナビー市。宗圓由佳/日加トゥデイ
「『の』の字さがし」。いくつ「の」を探せたかな?2025年11月30日、バーナビー市。宗圓由佳/日加トゥデイ

 今回、参加した子どもたちの日本語レベルはさまざま。グループは「あえて学校も年齢もバラバラにしました。大きな子が小さな子を手伝うなどの経験をしてもらいたかったのです」とベイリー会長は話す。

 ゲームにも全員が楽しめるような工夫があった。そのひとつが「『の』の字さがし」。プリントの日本語の文章に、ひらがなの「の」の字がいくつあるか、時間内にできるだけ多く見つけるという内容だ。文章は日本のニュースだが、読める読めないに関わらず、子どもたちは「の」の字を探してはペンでマークしていく。

「豆つまみ皿うつし」。練習をして、いざ本番!2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ
「豆つまみ皿うつし」。練習をして、いざ本番!2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ

 昔ながらの日本の遊びも登場した。「豆つまみ皿うつし」は、紙皿の大豆を箸でひとつずつつまんで隣の皿へ移動させる、おなじみのゲームだ。鉛筆のように箸の下の方を持つ子、逆に上の方を持つ子、なかなかつかめない子とさまざまだが、どの顔も真剣。「豆をすくわない」「皿にさわらない」などのルールも、きちんと理解していた。

「おはし落とし」。ペットボトルの小さな穴に割り箸を落とすのは至難の業!2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ
「おはし落とし」。ペットボトルの小さな穴に割り箸を落とすのは至難の業!2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ

 大人でも難しそうなのが「おはし落とし」。床の上に置かれたペットボトルの前に子どもは直立し、手に持った割り箸を腰の辺りから落としてペットボトルに入れる。「難しすぎる〜!」「できなーい!」と叫びながらも楽しそうな子どもたちに、「できるよ〜!」とボランティアが励ます場面も。時間終了になると、何本の割り箸を入れられたか、パスポートに記録する。ゲームが終わった後、子どもたちが落とした割り箸をきちんと片付けていたのが印象的だった。

 生徒たちが思い切り駆け回っていたのが「紙ひこうきとばし」。あらかじめ作っていた白い紙飛行機をステッカーでデコレーションし、まずは玄関ホールでトライアル。かなりの距離を飛んだのを見て子どもも保護者も驚いていた。そして前庭に出ていよいよ本番。肌寒いなか、みんな思い切り飛行機を飛ばし、小さな子はもちろん、大きな子たちも大はしゃぎ。制限時間が来るまで何度も挑戦していた。

「カップつみ」。積んだカップの数を数えるのも日本語の練習。2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ
「カップつみ」。積んだカップの数を数えるのも日本語の練習。2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ

 このほか、小さな紙コップをピラミッド型に積み上げる「カップつみ」、ふたつのサイコロを同時に振って同じ数のゾロ目が何度出せたかを数える「ゾロ目出し」も。締めくくりの「片足立ちゲーム」まで、1時間半はあっという間に過ぎた。

 ベイリー会長によると、今回の「JALTAチャレンジ」は国際交流基金の助成によって実現したという。「いつも、一生懸命日本語の勉強をがんばっている子どもたちが、楽しく遊べるような企画をと思いました」。初めての試みということで、どのくらいの人数が集まるか、場所の選定など手探りだったというが、生徒たちは日本語学校の授業とは違う内容を充分に楽しんだようだった。また、JALTAはボランティアによる運営ということで、ベイリー会長は「ボランティアのみなさんの力なしには実現できませんでした」と感謝した。

「紙ひこうきとばし」。前庭で思いっきり飛行機を飛ばしては駆け回る子どもたち。2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ
「紙ひこうきとばし」。前庭で思いっきり飛行機を飛ばしては駆け回る子どもたち。2025年11月30日、バーナビー市。撮影 宗圓由佳/日加トゥデイ

(記事 宗圓由佳)

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「日本語学習を通じて成長を」バンクーバー日本語学校で入学式

2025年度バンクーバー日本語学校入学式。2025年9月6日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
2025年度バンクーバー日本語学校入学式。2025年9月6日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

 バンクーバー日本語学校の2025年度入学式が9月6日に同校で行われた。今年度は、キンダー、小学科1年生、基礎科Aのクラスに、合わせて87人が入学した。

 広々としたホールで行われた入学式は新入生入場でスタート。拍手の中、最初に入ってきたのはキンダーの生徒たち。先生の誘導で整列する初々しい姿の中にもちょっぴり不安そうな表情をのぞかせていた。続いて入場したのは小学科1年生と基礎科Aの生徒。笑顔が多く、余裕が感じられる入場となった。入学式のすぐあとに始業式が行われるため、続いて在校生が入場。今年度は330人以上になるという生徒が一堂に会し、新しい年度を共に迎えた。

新入生に祝辞を贈る髙橋バンクーバー総領事。2025年9月6日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
新入生に祝辞を贈る髙橋バンクーバー総領事。2025年9月6日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

 在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事は祝辞で新入生に、「今回、入学されるみなさんの中には、初めて日本語に触れる方もいれば、すでに日常会話として日本語を話している方もいると思います。みなさんが新しい気持ちで、それぞれ目標を目指してがんばろうとしていること、それだけで充分にすばらしいことだと思います」と述べた。

 日本語は簡単な言葉ではなく途中でやめたくなることもあるかもしれないが、「自分のことを信じて進めば、いつかその困難を克服できると思います。将来、日本語で動画を楽しんだり、友達にすごいねと驚かれたり、うらやましがられたりすることを想像しながら勉強に励んでください」と激励した。

 バンクーバー日本語学校並びに日系人会館の町田友成共同理事長は「今日からみなさんは、このコミュニティの一員です」と新入生とその保護者を暖かく迎えた。「新しい環境に入ることは不安もあると思いますが、この学校は日本語や日本文化を学ぶだけではなく、友情を育み、思い出を作る場所でもあります。どうぞ安心して楽しんでください」と語りかけた。

今年度から校長に就任した久田琴絵氏。2025年9月6日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
今年度から校長に就任した久田琴絵氏。2025年9月6日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

 最後に今年度より校長に就任した久田琴絵氏があいさつ。18年間同校の教壇に立ってきた「こと先生」が壇上に現れると、在校生たちから歓声が上がった。「新しく入学したみなさん、おめでとうございます」と元気な声で生徒たちに語りかけた久田校長。初めての校長としての職務に「少しどきどきしています」としつつ、「この学校は、みなさんが安心して楽しく勉強できる場所です。そして、ただ新しい言葉を学ぶだけではなく、友達を作ったり、助け合ったりしながら、みんなで成長していけるといいなと思っています。みなさんと一緒に楽しい学校を作っていきたいと思っています」と初々しいあいさつとなった。

 始業式では、教師紹介のほか、理事会、オフィススタッフ、ボランティア活動も紹介された。来年120周年となる歴史と規模を誇る同校では多くの人々が生徒たちの学びを支えている。

 入学式後に久田校長は「来年は120周年を迎える歴史ある学校ですから、今までの歩みを継続しつつ、みなさんの考えやお知恵を拝借しながら進んでいきたいです」と意気込みを語った。これからは直接生徒を指導することはなくなるが、「保護者の方とのつながりを大切に、コミュニティとしてみんなで協力しあっていければと思っています。私はいつも職員室にいますので、いつでも気軽に立ち寄ってほしいですね」と笑顔を見せた。

(取材 宗圓由佳)

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「歌にクイズ、百人一首の現代バージョンも!」バンクーバー日本語学校で学習発表会開催

小学科1年は「おおきなかぶ」の劇を披露。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳
小学科1年は「おおきなかぶ」の劇を披露。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳

 バンクーバー日本語学校(VJLS)で5月24日、毎年恒例の学習発表会が行われた。キンダークラスからアダルトクラスまでの生徒たちが、歌やスピーチ、劇などを通して、1年間の学習成果を披露した。

発表から見える日本への関心

 今年はキンダークラスの生徒による合奏で幕を開けた。アニメ「まんが日本昔ばなし」でおなじみの曲「にんげんっていいな」を、太鼓やトライアングルなどの楽器で演奏。続いて「にじのむこうに」を元気いっぱい歌った。

 小学科1年クラスは子どもたちが大好きな絵本「おおきなかぶ」の劇を披露。おじいさんやおばあさん、動物、そしてかぶに扮した子どもたちが「うんとこしょ、どっこいしょ」の掛け声で一生懸命に綱を引く姿に歓声が上がった。

 VJLSには外国語として日本語を学ぶ生徒向けの基礎科もある。基礎科Bの発表テーマは「大きくなったら」。医者、数学者、画家、シェフ、サッカー選手と、子どもたちは胸を張って自分の夢を披露した。

隠れている言葉を探せ!小学科2年「ことばを見つけよう」。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳
隠れている言葉を探せ!小学科2年「ことばを見つけよう」。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳

 発表からは、カナダで暮らす生徒たちが、日本のどんなところに関心を持っているかが垣間見えて興味深い。基礎科EFの生徒による「日本のすきなところ」では、焼肉やすし、ラーメンなど食べ物が目立つなか、新幹線やキャラクターという声もあった。また、ユースCDによる「私の目標」では、それぞれの生徒が「『ワンピース』の漫画を(日本語で)読みたい」「日本の美容学校に行きたい」「子どもの頃は日本語の勉強が好きじゃなかったけれど今は楽しい。将来は日本中を旅行してたくさん友達を作りたい」など、日本語の勉強への目標や思いを語った。

 ユニークだったのは中学科1年クラスによる「VJLSのオススメポイント」。畳の部屋、図書館、ホールなど、施設が充実している同校の魅力がいきいきと伝わってきた。「畳の部屋は広くてゲームをすると最高です。小学生の時は先生に畳の部屋に連れて行ってと頼んでいました」と、思い出を語る生徒もいた。

お店クイズから古典劇まで、テーマは幅広く

小学科6年によるクイズ「気になる都道府県」。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳
小学科6年によるクイズ「気になる都道府県」。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳

 学年が上がるにつれて発表内容は高度になっていく。小学科4年クラスは「お話のさくしゃになりました」と題し、「いたずら好きの猿と帽子をかぶった女の子」や、「孫にセーターを編むおばあさん」のオリジナル・ストーリーを披露した。また基礎科Dでは「私を表す言葉」を各自が発表したが、「個性的」「勇敢」など、高度な単語も見られた。さらにユースAによる「ここはどこの店ですか?」クイズでは、ルルレモンやMUJIなどよく知られた店を取り上げつつ、それぞれの企業の概要についても解説した。

 中学科2年のテーマは「平家物語」。バックグラウンドとなる源平合戦について簡潔に分かりやすく説明した。そして、源氏側の那須与一(なすのよいち)が平家側の扇を弓で射落とす、有名な「扇の的」の場面を劇で演じた。

「平家物語」の「扇の的」を演じた中学科2年。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳
「平家物語」の「扇の的」を演じた中学科2年。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳

 同じ古典でも会場の爆笑を誘ったのが、高等科1年クラスによる現代版「百人一首」。清原元輔の「契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末(すゑ)の松山 波越さじとは」を、「永遠の愛を語り合い、将来を誓いあった相手に振られて、いつまでも未練がましく思っている歌です」とユーモアたっぷりに解説。さらにボーイフレンドに振られた女の子がスマホに向かって怒りをぶつける寸劇に笑いと歓声が上がった。

 藤井清子前校長によると、この学習発表会は例年、生徒会が主催しているという。中・高等科の生徒からなる生徒会役員たちは、当日、司会進行からドア係、大道具係までを務めた。冒頭では、オーディエンスの生徒たちに向けた笑いを交えた「正しい発表の聞き方」の説明も行われた。

 発表を終えて「生徒たちには日頃の練習成果を発揮してほしいと願っていましたが、それがきちんとできて良かった。ステージに立つことに緊張していた生徒も克服することが出来ました」と笑顔で語った。

高等科1年は百人一首の現代バージョンを寸劇で。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳
高等科1年は百人一首の現代バージョンを寸劇で。2025年5月24日、バンクーバー市。撮影 宗圓由佳

(取材 宗圓由佳)

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「簡単に高収入」に騙されないで!オンラインの「タスク詐欺」がカナダでも急増中

 在バンクーバー日本国総領事館から2月上旬に「タスク詐欺に関する注意喚起」のメールを受け取った人も多いだろう。最近増えているというタスク詐欺とは具体的にどんな詐欺か。被害に遭わないためにはどうすればいいのか。その現状と対策について取材した。

簡単なタスク・作業で稼げるはずが…詐欺の手口

 タスク詐欺とはどういう形の詐欺なのか。バンクーバー総領事館によると、「『パソコンや携帯電話を使って、商品の評価など簡単な作業(タスク)を行うことで高額収入が得られる』という求人広告に引かれて応募したものの、多額の支払いをさせられたケースが『タスク詐欺』、あるいはそれに類する被害として確認されている」という。

 総領事館ではタスク詐欺に関する相談が急増しており、今年に入りすでに4件の相談があったそうだ。

 2月6日付けの同館の注意喚起メールでは、「情報サイトの掲示板で『在宅で簡単に稼げる』との求人に応募して被害にあった事例」が挙げられていた。人定事項の提供や報酬を受け取るためのアプリのインストールを勧められたのち、単純な入力作業の業務(タスク)が与えられ、初日の成功報酬として数百ドルが振り込まれる。しかし、翌日以降のタスクで自分の認識しないエラーにより損失が発生したとして費用の支払いを要求され、数百ドル~数千ドルを相手方へ送金してしまったというケースだ。

 総領事館に寄せられた相談については、事業者とのやりとりは日本語と英語、いずれのケースもあるという。事業所の所在地とされる場所も、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパなど各国に分布しているそうだ。

 日本の消費者庁でも、SNSの広告を使った「動画のスクリーンショットを撮らせるタスク詐欺」の事例を挙げ、注意喚起している。事業者とのメッセージのやりとりの画像なども載っているので、一読しておきたい。 https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms103_250206_01.pdf

 カナダ政府のカナダ詐欺対策センター(Canadian Anti-Fraud Centre)のウェブサイトでも “Job Fraud”としてタスク詐欺を紹介している。同センターでは、仮想通貨を使ったケースが増えていると警告している。

 その典型的なパターンは、求職サイトに履歴書や連絡先を共有した後に、テキストメッセージやチャットアプリ、メールなどで事業者が連絡してくるというものだ。相手は、実在するカナダの企業を名乗り、「フリーランスとして製品やアプリ、動画のプロモーションをする仕事」を持ちかけてくる。

 その事業者が作成したソフトウェアをインストールし、アカウントを作成すると、「注文」や「タスク」が与えられる。タスクを完了すると、最初に少額の報酬やコミッションが支払われるが、これは事業者が信用を得るためのものだ。その後、事業者はより多くの製品をプロモーションして「より高額な報酬」や「レベルアップ」することを持ちかけてくる。そして、そのために手数料を支払うように要求してくる。

 報酬は仮想通貨のアカウントやウォレットに入金される。しかし、アカウント上では残高が表示されていても、実際に引き出すことはできないという手口だ。

被害に遭わないために

 総領事館によると、タスク詐欺の被害者の多くは、最近カナダに来た求職中の人だったという。「経験がなくても高額収入が可能という言葉に引かれてしまうのかもしれませんが、簡単に稼げると称する副業を信用しないよう気をつけてください」と担当者は話している。

 被害に遭わないための対策として総領事館では注意喚起のメールに、「『簡単に稼げる』『儲かる』ことを強調する広告は詐欺の可能性があるのでうのみにしない」「電話番号や正確な所在地が載っていない、あるいはGmailなどのフリーメールを連絡先として使っている会社は特に注意する」「収入を得る目的のはずが、逆に相手から振り込みを求められた時点で詐欺の可能性を疑い、警察や知人、友人などの第三者に相談する」「インターネット、ニュース、公的機関などから最新の詐欺の手口を知っておく」ことを挙げている。

 カナダ詐欺対策センターでは、なんらかの行動を起こす前に必ず相手となる事業者をリサーチすること、実在の企業からテキストやメールを受け取った場合は記されている連絡先ではなく自分でその企業の連絡先を調べて直接コンタクトを取るように呼び掛けている。

 それでも被害に遭った場合は地元の警察に連絡を。さらにカナダ詐欺対策センターでは、同センターへの報告を奨励している。詐欺についての捜査をするのは警察だが、同センターに蓄積されたデータが警察の取り調べの助けとなるからだ。

 総領事館では、被害者が警察やカナダ詐欺対策センターに被害届を提出する方法について案内したり、クレジットカードやデビットカード情報を業者に渡してしまった場合の対応についてアドバイスを行っている。また、カナダ詐欺対策センターへの報告については「電話で被害報告を行うことが困難な場合には、書面による報告も可能です。同センターのウェブサイトにアクセスし、オンラインによる報告手続きをお勧めします。翻訳ソフトなどを利用して容易に提出することができます」と話している。

在バンクーバー日本国総領事館
https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

在バンクーバー日本国総領事館(タスク詐欺に関する注意)
https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/files/100791668.pdf

Canadian Anti-Fraud Centre
https://antifraudcentre-centreantifraude.ca/index-eng.htm

(取材  宗圓由佳)

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歴史に隔てられた兄弟の「距離」を体験し、明日へとつなぐ 「13’2” Between Us」シンディ望月さん

"13’2” Between Us”より。Photo by The Powell Street Festival Society
"13’2” Between Us”より。Photo by The Powell Street Festival Society

 ある日系人兄弟の人生を通して探求する、別離、記憶、追放、そして夢。日系アーティストのシンディ望月さんと地元アーティストとのコラボレーションによるマルチメディア・パフォーマンス「13’2” Between Us」が、3月1日と2日にバンクーバー仏教会で行われる。

シンディ望月さん。Jessica Jacobson Photography
シンディ望月さん。Jessica Jacobson Photography

 パウエル・ストリート・フェスティバル協会主催の同作品について、シンディさんに話を聞いた。

引き裂かれた日系人兄弟の物語

 シンディさんはこれまで、日系カナダ人の歴史をテーマとした数々の作品を発表してきた。今回の「13’2” Between Us」で取り上げているのは、シンディさんの父方の祖父、望月多次郎(たじろう)さんと弟の望月倭夫(しずお)さんだ。

 「望月倭夫は棒高跳びの選手でした。13フィート2インチというのは、1932年のロサンゼルス夏季オリンピックで5位となった、彼が残した記録なんです」

 兄の多次郎さんは1925年にカナダに渡ったが、第二次世界大戦中に強制収容され、ブリティッシュ・コロンビア州のサンドンやポポフなどを転々とした。一方の倭夫さんはアメリカ・ロサンゼルスの大学に進んだが、開戦前に軍隊入りするために帰国した。日本では軍の通訳を務めたという。そんな兄弟の間の「距離」を「13’2” Between Us」は描き出す。

ラジオ、ダンス、アニメーション、兄弟の生きた世界が蘇る

 「13’2” Between Us」について、シンディさんは「ラジオ音声、コンテンポラリー・ダンス、アニメーション、4Dサウンドを組み合わせた、40分間のマルチメディア・エクスペリエンス」と説明してくれた。第二次世界大戦、そして広大な太平洋に隔てられた兄弟の関係が、手紙、詩などさまざまな形で、実在とフィクションを交えて紡がれる。

 観客は40人と限られた人数となっている。見ている人は、再現された歴史的空間、夢、そして第二次世界大戦の転換期においてアイデンティティを喪失し、周囲に誤解されてきた人々の人生に入り込み、それを文字通り体験するのだ。

 「13’2” Between Us」には、望月兄弟とは別の日系人も登場する。1人は坂西志保で、アメリカ議会図書館の翻訳者、司書を務め、評論家でもあった。もう1人は、東京ローズことアイバ・戸栗・ダキノ。東京ローズとは、日本政府の英語によるプロパガンダ・ラジオ放送の女性アナウンサーにつけられたニックネームで、アイバはその1人だった。2人はともに「敵国人」「スパイ」として非難されたという。

 「第二次世界大戦の影響で追放された、(望月兄弟と)同様の歴史を持つ人々を取り上げたいと思いました」とシンディさん。彼女たちは同作の主要人物ではないものの、その音声が作品の一部として登場する。

写真から生まれたアイディア

 「13’2” Between Us」が生まれたきかっけは、1枚の写真だったそうだ。

 「それは、若い頃の望月倭夫を写した写真で、裏には多次郎への手紙がつづられていました。もしかしたら、倭夫がまだ日本にいた頃、すでにカナダに移民していた多次郎に書いたものかもしれないと思いました」

 シンディさんは実際に2人に会ったことはないという。「祖父の多次郎は私が生まれる前に亡くなり、倭夫についてはその存在も知りませんでした」。2002年に日本に住む大叔母に倭夫について話を聞いた。大叔母によると、多次郎と倭夫は2人でカナダに移住しようとしたが、倭夫はかなわず、多次郎だけがカナダに来たという。

 「私は、2人の兄弟とその間に横たわる距離、2人の物語を、アートのかたちで創造したいと思ったんです。ただ、実現するのに今に至るまでの時間がかかりました」。

 シンディさんの作品は綿密な歴史研究に基づいている。「インタビュー、アーカイブ写真、記事などを利用しますが、対象となる人々が存命していない場合は難しい」とシンディさん。「13’2” Between Us」で使われた倭夫さんが跳躍する映像の入手も困難を極めた。知り合いに頼んだものの、新型コロナウイルス禍で連絡が途切れてしまったり、偶然ネットで販売されているのを見つけたのに購入期限に間に合わなかったりと、紆余曲折を経て手元に届いたという。

 また、「13’2” Between Us」の制作には多くのアーティストが関わっている。「なかには何年もの間、一緒にやってきた人々もいます。その情熱と献身には、心から感謝しています」

過去を掘り起こし、未来へと繋ぐ

 シンディさん自身は日系四世。三世の父(故人)と日本で生まれ育った母との間に生まれた。「こうした生い立ちのおかげで、私は環太平洋的な視点を持つことができ、また日本とカナダを結ぶ複雑なストーリーに携わることができたと思っています」

 これまで映画、アニメーション、インスタレーション、舞台デザインなど、さまざまな種類のアートを制作してきたシンディさんだが、その活動の大部分は、日系カナダ人の体験、そして「見えない歴史」を蘇らせることに重点を置いてきた。

 過去に光を当てる一方で、シンディさんの視線は未来にも注がれている。「私たちは今、再び困難な時代に生きていると思います。これらの物語を通して、過去から学ぶことができれば、そして、忘れられていくもののなかに、希望や確固たるものを見出せればと思っています」

「13’2” Between Us」

期間:2025年3月1日(土)、2日(日) 午後7時(開場午後6時45分)
会場:バンクーバー仏教会(220 Jackson Ave, Vancouver)、当日はバンクーバー仏教会の正面入り口が閉鎖されているため、ボランティアが付近で案内する。車椅子での入場などの問い合わせは、access@powellstreetfestival.com
料金:15ドルから50ドル(スライディング・スケール制)
詳細はウェブサイトを参照:https://powellstreetfestival.com/123-between-us/

“13’2” Between Us”。Poster by The Powell Street Festival Society
“13’2” Between Us”。Poster by The Powell Street Festival Society

(取材 宗圓由佳)

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「大好きなアニメ、スポーツ、日系人の誇り…」JALTA第25回お話発表会が開催される

第25回の節目を迎えたJALTA主催「お話発表会」。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
第25回の節目を迎えたJALTA主催「お話発表会」。参加生徒、前列中央に髙橋総領事、その左横(左端から5番目)にベイリー会長、各学校の先生と一緒に。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 JALTA日本語教育振興会主催「第25回お話発表会」が2月9日、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館で行われた。これは同会加盟の日本語学校で学ぶ生徒たちが「お話」を披露する毎年恒例のイベント。学校間の垣根を超えて学習成果を発表する。

 当日は在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事も出席。開会にあたり「カナダの学校に通いながら日本語の勉強を続けるのは、決して簡単なことではないと思います」と語り、「日本語を学べばアニメや小説を深く味わったり、日本での楽しみも増えるでしょう。今日の発表は大切な一歩だと思います。ぜひがんばってください」とエールを送った。

「給食の匂いでお腹が空いてしまいました」と体験入学について話したアルデザ瑳蘭さん。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
「給食の匂いでお腹が空いてしまいました」と体験入学について話したアルデザ瑳蘭さん。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 「お話」は最初に小学科の生徒たちが発表。アルデザ瑳蘭(さら)さんは、お母さんが通った日本の小学校での体験入学について話した。一番びっくりしたのは学校にプールがあったこと。ほかにも毎日温かいご飯が食べられる給食がうれしかったなど、カナダで育った子どもならではのいきいきとした視点が盛り込まれていた。

アニメ「ワンピース」について熱心に話す増永太陽君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
アニメ「ワンピース」について熱心に話す増永太陽君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 「ぼくのすきなもの」で、大好きな日本のアニメについて話したのは増永太陽君。特に「ワンピース」がお気に入りで、その魅力について話した。どんな困難にも仲間と一緒に力を合わせて前に進む主人公たちの姿を見て、自分も「諦めずにがんばる人になりたい」という太陽君に、会場から大きな拍手が送られた。

サッカーからたくさんのことを学んだという佐藤かいと君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
サッカーからたくさんのことを学んだという佐藤かいと君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 サッカーの日本代表になるのが夢だという佐藤かいと君は、「ファイト!」というテーマでサッカーから学んだことを発表した。あるトーナメントで敗北寸前で意気消沈しているチームに「まだ終わりじゃないぞ!」と声をかけたというかいと君。その言葉でチームメートは元気を取り戻し、逆転勝ちを果たしたという。このトーナメントで、ファイトという言葉には「最後まで諦めないことや全力を出す」という意味も含まれていることを学んだと話した。

スピーチ前に礼儀正しく一礼した永井フィオ君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
スピーチ前に礼儀正しく一礼した永井フィオ君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 基礎科では5人が発表した。赤い野球のユニフォームで登場した永井フィオ君は、戦前にバンクーバーで活躍した日系カナダ人野球チーム「バンクーバー朝日」について話した。2014年に誕生した「新朝日」メンバーのフィオ君は「日系カナダ人として誇りを持って練習や試合をがんばっています」と胸を張った。

ジブリ映画が大好きだというチューひびきさん。堂々とした話しぶりと豊かなジェスチャーが印象的。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
ジブリ映画が大好きだというチューひびきさん。堂々とした話しぶりと豊かなジェスチャーが印象的。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 最後の中高等科の発表は、身近な題材ながら深く掘り下げた内容だった。チューひびきさんは宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」を取り上げ、コミュニケーションや現実の世界に向き合うことの大切さを話した。

 発表後のあいさつでJALTAのベイリー智子会長は「みなさんが強く強く日本に繋がっていることが伝わって、先生の心に響いてきました」と生徒たちに語りかけた。日加トゥデイの取材には「トピックがバラエティに富んでいて、さらに私たちが気づかないような分析もあったりと、とても楽しかったです。生徒たちは、ほかの人の発表も素晴らしい態度で聴いていましたね」と笑顔を見せ、発表会の成功には保護者や先生たちのサポートが欠かせなかったと感謝した。

参加生徒と「お話」タイトル

小学科

  • 「たいようけいの ほし」コスコありさ(Arisa Cosoco)
  • 「ピアノ」古市泰(Ty Furuichi)
  • 「中新井田小学校でたいけんしたこと」アルデザ瑳蘭(Sara Aldeza)
  • 「ぼくのすきなもの」増永太陽(Taiyo Masunaga)
  • 「フランスのおもい出」渡部乃仁香(Nonika Hall)
  • 「カナダにあったらいいなと思う日本のもの」山本依真(Emma Yamamoto)
  • 「ファイト!」佐藤かいと(Kaito Sato)
  • 「47都道府県」木川恵莉花(Erika Kikawa)
  • 「ホッケー」松尾恵実(Emi Matsuo)
  • 「カナダと日本の小学校のちがい」堀谷翼(Tsubasa Horiya)

基礎科

  • 「バンクーバーあさひ」永井フィオ(Fio Nagai)
  • 「いぬとねこ」グエン・ハアン(Ha-An Nguyen)
  • 「バンクーバーで一番好きな場所」ブラックモア・マーカス(Marcus Blackmore)
  • 「日本の思い出」セン・ステファニー(Stephanie Cen)
  • 「日本とカナダの文化の違い」カプール・ケシャブ(Keshav Kapoor)

中高等科

  • 「日本語の鉄道について」高岡健太(Kenta Takaoka)
  • 「私たちはどう生きるか」チューひびき(Hibiki Chu)
発表後には劇団「座・だいこん」がステージに。まどみちおの「ちがいくらべ」を、赤鬼や青鬼たちがコミカルに演じた。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
発表後には劇団「座・だいこん」がステージに。まどみちおの「ちがいくらべ」を、赤鬼や青鬼たちがコミカルに演じた。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

(取材 宗圓由佳)

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「伝統を蘇らせ、未来へ繋ぐ」ハイダ族アーティスト、クリスチャン・ホワイトさん回顧展

クリスチャン・ホワイトさんの作品「Reprica Bentwood Box」(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
クリスチャン・ホワイトさんの作品「Reprica Bentwood Box」(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 モニュメント彫刻、緻密なアージライト(粘土質岩)彫刻、ジュエリーなど多彩な作品で知られる先住民ハイダ族のマスター・アーティスト、クリスチャン・ホワイトさん。その50年の軌跡をたどる回顧展「Kihl ‘Yahda Christian White: Master Haida Artist」が、現在バンクーバー市ダウンタウンにあるビル・リード美術館で開催されている。

 ハイダ族はブリティッシュ・コロンビア(BC)州北西部にあるハイダ・グァイ(旧クイーン・シャーロット島)周辺に居住する先住民族。独自の言語を持ち、優れた工芸品や航海術などで知られている。

 ホワイトさんの作品の多くはハイダ族の伝統的なストーリーから生まれたもの。「私の作品には祖先の精神が宿っている。彼らが作ったものにインスパイアされている」と話す。

 その一端が垣間見える作品が「Reprica Bentwood Box」だ。これはハイダの伝統的な文様を施した木の箱。美しく彩られた箱はハイダの人々の生活になくてはならないもので、食料を保存したり、衣装を入れたり、カヌーに積み込んだり、まさに「生まれてから埋葬されるまで(使う)」と言われてきた。

 その隣には似たような文様を持つ古い箱の一部が展示されている。ホワイトさんの「Reprica Bentwood Box」は、この二つの面しか残されていない箱からインスピレーションを受けたものだという。

 「これを基に新しい図柄を作成しました。元の文様は完全に左右対称ではなかったので、片側をトレースし、それを反転させたのです」とホワイトさん。

 作品の背景には先住民ハイダ族の辛い過去がある。この古い箱は、宣教師たちの眼を避け、壊れた家屋の壁の後ろに隠されていたものだった。同展のゲスト・キュレーターで自身もハイダ族のルーシー・ベルさんは「私たちの祖先はポトラッチ(祭りの儀式)を禁止され、いろいろなものを隠さなければならなかったのです」と語る。

壁に隠されていた古い箱。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
壁に隠されていた古い箱。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 苦難の歴史を経て、ホワイトさんは長年ハイダ文化の興隆に力を入れてきた。

 彼のアートも、その独自の文化の中に息づいている。会場でひときわ目を引く天井から吊り下げられた巨大なレイバン(ワタリガラス)のマスクは、2022年のポットラッチに登場したものだ。

 「大勢の人々の前にこのマスクが現れた瞬間…それはパワフル・モーメントでしたね。私も自分のドラムを激しく叩いていました」

 レッドシダーを使ったマスクは長さ約8フィート(約2メートル43センチ)にも及ぶ。

巨大なレイバンのマスク、くちばしの部分は開閉する。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
巨大なレイバンのマスク、くちばしの部分は開閉する。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 「Raven Transformation」も見る者を圧倒する大型のマスクだ。大きく広がった羽根の裏側は黒く塗られており、閉じたときにはレイバンになるが、開くと擬人化された月に変身する。オックスフォード大学の博物館に所蔵されているハイダ・アーティストのチャールズ・イーデンショーの作品に影響を受けたものだという。

レイバンから月へと変身する「Raven Transformation」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
レイバンから月へと変身する「Raven Transformation」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 作品の他には再現されたホワイトさんの「作業机」も展示されている。机の前には家族の写真と共に釣りのための海図や潮見表が貼られ、ハイダ族の暮らしと自然との繋がりを彷彿とさせる。

主にアージライトの彫刻を作っているというホワイトさんの自宅の作業机。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
主にアージライトの彫刻を作っているというホワイトさんの自宅の作業机。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 同展の開催にあたりホワイトさんには「自分だけの展覧会にはしたくない」という意向があったとベルさんは話す。それを受けて、展示は父の故モーリス・ホワイトさんやホワイトさんが指導する次世代のアーティストなどにも焦点を当てている。

 ホワイトさんは父のモーリスさんの影響で14歳から彫刻を始めた。同展ではモーリスさんの手によるアクセサリーも展示されている。ペンダントはホワイトさんがアンティークショップで見かけて買い戻したものだという。また後進の育成にも力を入れ、多くの作品で弟子が制作に関わっている。

父モーリス・ホワイトさんによるイーグルのペンダント(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
父モーリス・ホワイトさんによるイーグルのペンダント(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
弟子のダニエル・ルイーズ・アラードさん(右)が着色を手掛けた「Ts’aan Xuujii (Sea Grizzly)」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
弟子のダニエル・ルイーズ・アラードさん(右)が着色を手掛けた「Ts’aan Xuujii (Sea Grizzly)」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 一方で、ハイダでは「新しい文化」も生まれている。会場の中ほどに置かれたレイバンやサンダーバードをあしらった鮮やかな黒と赤のローブ。これはホワイトさんの姪のハイスクール卒業を記念して、ホワイトさんが図柄をデザインし、彼の姉妹が作ったものだ。

 「高校卒業にローブを贈り、小さなポトラッチを開催するのが、ここ数十年のハイダの伝統になっています。これは他のコミュニティにも広まっているんですよ」

 過去に新たな命を吹き込み次世代へと繋げていくホワイトさんとハイダの人たち。そのエネルギーとハイダ族の今を感じられる同展は来年2月1日まで開催されている。

Kihl ‘Yahda Christian White: Master Haida Artist

期間:2025年2月1日〜2026年2月1日
時間:冬期間(10月~5月)火曜から土曜 10時~5時
会場:Bill Reid Gallery of Northwest Coast Art(639 Hornby St, Vancouver)
入場料など詳細はウェブサイトを参照:https://www.billreidgallery.ca/

高校を卒業したハイダの若者に贈る手作りのローブを説明するホワイトさん。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
高校を卒業したハイダの若者に贈る手作りのローブを説明するホワイトさん。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

(取材 宗圓由佳)

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