「恩師への感謝とクラスメートとの友情を胸に」2023年度バンクーバー日本語学校卒業式

2023年度バンクーバー日本語学校卒業式。卒業生と先生たちと一緒に。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
2023年度バンクーバー日本語学校卒業式。卒業生と先生たちと一緒に。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 バンクーバー日本語学校2023年度(2023年9月~24年6月)卒業式が6月22日にバンクーバー日本語学校並びに日系人会館で行われた。今年度、小学科、中学科、高等科、基礎科、Youthを卒業したのは合わせて29人。ドレスや着物に身を包んだ卒業生たちは名前を呼ばれると「はい」と返事をして舞台に上り、一人ひとり藤井清子校長から卒業証書を受け取った。

 会場には、これまで生徒たちを支えてきた家族や友人が駆け付け、先生たちと共に門出を祝った。

「漢字をがんばりたい」次の目標に向かって

 卒業証書を受け取った生徒たちは、学校での思い出を一人ひとり日本語で発表した。2歳や3歳から通っている生徒も多い。

 楽しかった思い出には、お正月、節分、運動会、ひな祭り、かるた遊び、中学科になると百人一首と、日本の伝統イベントが印象に残っていた。一方で大変だったのは「漢字テスト」。それでも、「日本語は難しいですが学校は楽しいです」「私は日本語が大好きです」「毎週早起きして日本語学校に行ってとても良かったと思います」と楽しかった思い出が多かった。

 基礎科のキャツァフロス・フェイスさんは「この学校で学んだことは私の宝物です。特にスピーチコンテストは私の人生を大きく変えました」と話す。9歳から日本文化に興味を持ち始めたと言うYouthのベアス・ビクトルさんは「最初はアニメを見るだけでした。でも時間がたつにつれて日本の文化全般に興味を持つようになりました。国、風景、伝統、食べ物、音楽、そして言葉。日本の文化が大好きです。日本について新しいことを学ぶたびに僕は魅力的だと思います」と話した。

 小学科や中学科の生徒たちは多くが継続して次の科へ進む。「これからも日本語の勉強を目標を決めて達成できるようになりたい」「日本語の漫画を読んだり、アニメを見たりできるようになりたい」「高校生になっても日本語の勉強をがんばり、もっと日本の文化を学びたい」と次の目標を発表した。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインだった授業が対面に変わったことを振り返る生徒も多く、「先生やクラスメートと会えるようになったことがうれしかった」と言う。そして、毎週土曜日に送り迎えをしてくれた両親に感謝の言葉を添えていた。

先生や家族に感謝、クラスメートとの楽しかった思い出を胸に

 高等科の生徒にとってこの日は学校を卒業する日。田村夢楓さんは「今日はこのバンクーバー日本学校に通う最後の日です。やっと卒業だという思いもありますが、振り返ると本当に忘れられない思い出があります」と高等科卒業生8人全員の思いを代弁した。

 それぞれに思い出を話し、先生・両親への感謝の気持ちを語った。入学して過ごしたのは2年半だったという大久保暁理さんは「カナダに来たら日本を話せなくなると思っていましたが、この学校に通い始めたら地球の反対側にいても、まだ日本語を練習できて、日本語で話せる友達を作れることが分かりました。バンクーバー日本語学校のコミュニティには本当に感謝しています」と短くて楽しい学校生活を振り返った。

 12年間1日も休まず12年間皆勤賞のワーナー華耶さんは「土曜日が楽しみでした。みんなと話したり、笑ったりしたことを私はずっと忘れないと思います。卒業してみんなに会えなくなるのがさみしいです。2歳から通い続けてきた日本語学校は私の中で特別な場所になりました」、いつか日本に留学したいという目標を持っているという。

 クラスの友達がいたから学校に通い続けられたという三島愛子さんは、「この学校で過ごした時間は私にとって非常に貴重なものになりました。ここでの経験は私の人生にこれからも大きな影響を与えると思います。卒業後も日本語の学習を続け日本文化に関わっていきたいと思います」。

 そして高等科卒業生が必ず口にしたのが担任「土屋(拓大)先生」への感謝の言葉。富永誠志朗さんは「クラスがこんなに仲良くなるとは最初は想像できませんでした。考えると土屋先生の存在がとても大きかったように思います」と振り返った。畠中凛さんは「土屋先生とはたくさんの楽しい思い出があります」とイチゴ大福作りや羽根つきでの罰ゲームを紹介し「土屋先生が担任でよかったです」と感謝した。

 人見遙さんはオンラインから対面授業に変わった時に静かだった教室が「土屋先生が明るくよく話すので賑やかなクラスになったと思います」と振り返り、オンラインではできなかったかるた大会や書道の授業、イチゴ大福やパフェ作りの楽しい思い出を話した。

 小学生の頃には日本語学校に行くのが「ちょっと嫌になり始めた頃もあった」と振り返った有浦弓さんは、「小さい頃に見たドラマの影響で日本の先生に憧れを持つようになりました。日本の大学で学んで日本で暮らしたい、それが私の夢です。そして、将来は土屋先生のような先生なりたいです。その夢を叶えるためにも卒業した後も日本語の勉強を続けたいと思います」と夢を語った。

 バンクーバー日本語学校で学んだことを胸にそれぞれが次の一歩へと踏み出していく。その夢を応援し続け、支えてきた、家族への感謝も忘れなかった。

「日本とカナダをつなぐ大切な架け橋」

卒業する生徒たちに祝辞を贈るバンクーバー総領事館・丸山総領事。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
卒業する生徒たちに祝辞を贈るバンクーバー総領事館・丸山総領事。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は「ご卒業おめでとうございます。各過程を終えて卒業される皆さんがこの学校でたくさんの努力を重ねていらっしゃったことに心からの敬意を表します」と卒業生たちを祝福。「日本語を学び、これからも学び続ける皆さんは日本とカナダをつなぐ大切な架け橋でもあります。日本とカナダのこのすばらしい関係をさらに強化していくために、そして世界中に友情が広まっていくように一緒に取り組んでいければうれしく思います」とあいさつした。

バンクーバー日本語学校卒業生という町田理事長。卒業しても日本語の勉強は大切と経験を語る。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
バンクーバー日本語学校卒業生という町田理事長。卒業しても日本語の勉強は大切と経験を語る。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 同校の卒業生という町田友成理事長は「20年以上前に高等科を卒業しました。これで日本語学校の宿題がなくなると喜んでいました」と笑い、日本語学校の宿題はなくなったが現在は日系コミュニティとかかわりを持ち、日本語の勉強は続けていると話す。「皆さんには卒業しても日本語の勉強を続けて、日系コミュニティとの関りを持ち続けてほしいと思っています」と想いを込めた。

バンクーバー日本語学校を卒業する生徒たちをお祝いの言葉で送り出す藤井校長。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
バンクーバー日本語学校を卒業する生徒たちをお祝いの言葉で送り出す藤井校長。2024年6月22日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 卒業生に「日本語と英語で書かれたユニークな」卒業証書を渡し「おめでとうございます」と一人ひとりに声をかけた藤井校長は、2歳の時から通っている高等科卒業生、一度も休まず通学してきた卒業生ワーナー華耶さんを紹介し、「本当にすごい快挙だと思います。継続は力なり。みなさんにはこれからの人生を自信を持って進んでいってほしいです」と卒業生にエールを送った。

(取材 三島直美)

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