真夏の太陽が照りつける「パウエル街」で、今年も日系の祭り「パウエル祭」が盛り上がった。
バンクーバーのコミュニティイベントとしては最も長い歴史を誇るパウエルストリート・フェスティバル。第47回も大盛況の2日間となった。
47回も続いているのはコミュニティの力
エドワード高柳パウエルストリートフェスティバル・ソサエティ会長は、毎年この場所で開催できるのはコミュニティの結束力だと語った。「パウエル祭は日系カナダ人のお祭りで、非常にユニークなイベント。日本の文化を基本にして、カナダ文化をブレンドし、そこに先住民の文化なども取り入れて、この場所で大きくすばらしく発展してきたお祭りです」と、フェスティバルに参加する人、関係者、そして、普段はオッペンハイマー公園を住み家としている人々への協力に感謝した。
開会式は先住民族メリー・ポイントさんのオープニング・ブレッシングで始まった。ポイントさんはあいさつで友人がいま台風のせいで沖縄に足止めされているエピソードを紹介。沖縄に自身の親友が暮らしていると話し、自分が今日ここでパウエル祭にいることを知らせたと笑いながら、日本とバンクーバーがつながっているとうれしそうに語った。
「私はピーター・フライです」と日本語であいさつしたバンクーバー市議は大の日本好きで、日本も何度も訪問し、パウエル祭にはもう30回以上来ていると自慢する。パウエル祭が47回も続くのは「全てのバンクーバー市民たちのお祭りだからで、この先47年続くよう祈っています」と祝福した。
連邦政府からはジェニー・クワン議員が出席。「毎年パウエル祭に来るのが楽しみで、私も30回は来ていると思います」と言う。人々を一つにするフェスティバルの1つで、日系人のプライドを示すフェスティバルでもあると思うと語り、ソサエティ、ボランティア、参加する全ての人に感謝の言葉を述べた。
「日系社会とカナダの多文化主義の接点のようなお祭り」
今回が初めてという在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は「お話は聞いていたんですけれども、実際来て、この場所と歴史とを改めて感じる機会になっています。日系社会がずっと努力されて、色んな文化を受け入れるカナダとの、その接点のようなところに、このフェスティバルがあって、大事にされていて、色々な方々が参加されてる姿が本当にいいなと思いました」と日本文化が多文化主義と融合していることに目を細めた。
もうすぐ着任1年を迎える丸山総領事は、これまでにさまざまな日系のフェスティバルに参加。7月にはサーモンフェスティバルに出席。リッチモンド市と姉妹都市の和歌山にも最近訪れ、「着任して、もうすぐ 1 年っていう時期に双方にお邪魔できて、繋がることが実感できたいい時間だったなと思っています」と、日本とBC州の文化交流を喜んだ。
あいさつでは、「このフェスティバルを通して全ての人が日本文化を堪能し、相互理解を深めてくれると思います」と語り、ここにあるような友好な相互理解や友情の力が、現在の複雑で対立的な状況を解消できると信じていると文化の力に期待した。
「新しい文化もできつつあるような気がして、すごく素敵だなと思います」
日本から参加した大神楽の鏡味味千代(かがみ・みちよ)さんは、初日はten tenと舞台でのコラボのほか各ブースにも一緒に回り、神輿にも大神楽で参加。2日目にはファイアーホール・アートセンターで公演した。パウエル祭について「ここまで大きいと思ってなかったんでびっくりしました」と笑った。参加するきっかけは2019年、春に開催されるジャパンフェア桜まつりへの出演だった。その時に色々な人とつながり「パウエル際にも来れたらいいね、みたいな話をしてたんです」
しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外公演はできない状況に。今年になってパウエル祭実行委員会の代表と日本で会う機会があり、ようやく実現。普段は大神楽の曲芸の部分だけをやっているが、「大神楽って元々は獅子舞と一緒に色々セッションっていうか、色んなお家を訪ねて回った芸なんだよって話をしたら、それおもしろいねって言うことになって」。今回はトロントから参加したten tenとのコラボが実現した。
楽一の獅子舞をジャパンフェアで見ていてためコラボできればと思ったそうだが、残念ながら予定が合わなかった。しかしten tenの「和楽器奏者の方たちが獅子舞できるよっていうことだったので、楽一さんに獅子舞をお借りして。笑。コラボレーションできたので、すごくうれしかったです」と目を輝かせた。
来る前にはパウエル祭について調べてきたという。それでも想像以上に大きく「日本人の方がバンクーバーに移ってきて、歴史を作って、なんかそれが今こういう形で新しい文化もできつつあるような気がして、すごく素敵だなと思います」と鏡味さん。
「日本の文化を海外に伝える仕事をしたい」という夢を、それまでの会社勤めではなく大神楽に見出した。「大神楽を見た時に、私がこの大神楽を自分でやって、色んな所で披露すれば、夢が叶うなぁって思って」。今年になって海外公演も再開し始めたと話す。バンクーバーの前にはサウジアラビアで、後にはビクトリアでも公演する。この日、見た人からは「すごいよかったって言っていただいて」と笑う。「ただ大神楽をやるだけじゃなくて、みんなに色んな話をしてもらえるというのがすごいいい機会でした」と語った。
メインイベント相撲大会、今年は男女混合で大接戦
パウエル祭のイベントはすべて無料。オッペンハイマー公園のステージで、デモエリアで、バンクーバー仏教会で、ストリートエリアで、バンクーバー日本語学校で、そして、ファイアーホール・アートセンターでと、2日間ではとても回り切れないイベントが今年も開催された。
1日目の神輿では子ども神輿や山車も復活。日本の夏を思わせる涼しげな音色と神輿を担ぐ掛け声に、オッペンハイマー公園はしばし日本の夏に包まれた。
どの会場もにぎわっていたが、2日目に行われた相撲大会は今年も大盛り上がり。例年と違って、今年はA上級者、B初級者と2つのグループに分け、男女混合で対戦し、各グループで優勝者を決定。性別、体の大きさに関係のない取組に、観衆から大きな声援が湧き起こっていた。
8月5日、6日に開催された第47回パウエルストリート・フェスティバルは、大成功のうちに幕を閉じた。
(取材 三島直美)
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