
「海の貴婦人」とも呼ばれる日本の練習帆船「海王丸」が5月1日、スティーブトン(ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市)に寄港した。9年ぶりのこと。紺碧の空に、高さ46メートルのマスト4本全部に36枚の純白の帆を張ったその美しい姿には、誰もが感動せずにはいられない。
前回のスティーブトン港への寄港は2017年、カナダ建国150周年記念だった。その感動を再び、と今回もリッチモンド市民あげて歓迎。5月2日、3日にフェスティバル「シップス・トゥ・ショア:ギャリーポイント公園に海王丸寄港」を開催。地元リッチモンド市民をはじめ、バンクーバーなどからの帆船ファンでにぎわった。
「海王丸へようこそ・・・」

5月1日、30人前後のメディア関係者を案内したのは、三等航海士の山口雅(やまぐちみやび)さん。
「船内は、狭い場所や急な階段もあります。どうぞお気をつけてご覧ください。また、ご質問などお気軽にお申し出ください」とウェルカムスピーチが終わると、さっそく記者から「海王丸の最も美しい場所は?」の質問。「帆を張るときに使うヤードと呼ばれる横棒の全てが並んで見えるのはきれいです」と繊細なポイントをあげた。
帆を降ろし停泊中の海王丸の船内は、マストとヤード(横棒)、そして無数のロープで織りなすさまが、まさにアブストラクトな美しさだった。
太平洋を渡り、男女問わずにたくましく成長
東京港を出港したのが4月5日、スティーブトン港に着岸したのが5月1日。この約1カ月、実習生86人を太平洋の波と風が相当に鍛えあげたという。

海王丸次席一等航海士の伊藤洸太郎さんは、「今回は荒れた航海で、7メートルの波に遭い、33度に傾いたこともありました。皆怖かったと思いますが、日常の訓練どうりに乗り越えました」。
伊藤さんは教官であると同時に、実習生の安全を守り、どんな状況になっても頼りになる存在だ。当然、「船酔いも?」と聞いてみると、「出航して1週間もすれば、みんな慣れます」と、船乗りにはどこ吹く風のようだった。
海王丸は帆船ならではの練習船でもある。帆をあげたり、降ろしたり、風や波に合わせて絶えず操作しなければならない帆船だからこその教育ができるという。
複雑な操作を大人数で安全に行うには「あうんの呼吸」でつながるコミュニケーション術が不可欠。それは、実際の船上ではもちろん、さまざまな社会生活でも生かせる術が身に付くということのようだ。
デジタルデトックス?実習生たちの声

日本を離れてしばらくすると電波がとどかず携帯電話もネットにもつながらず。「辛かった。そのかわり本が読めたり、甲板を走ったり、アスレチックに精を出すなどしているうちに気にならなくなりました。デジタルデトックスできたかな?」「男女の違いなく、さまざまな作業をします。先輩の指示は絶対です。何か、一般社会とは違う価値観があります」。
太平洋を渡ったことで実習生それぞれに成長した実感があるようだ。
海運の重要性が見直される今…
今回の実習生は、神戸大学(海洋政策科学)と東京商船大学の4年生。即戦力となって海運の分野で活躍できる人材だ。
海王丸一等航海士の山岸拓央さんは「1日1日実習生がたくましくなっていくのを見るのは、ほんとうに楽しいものです。最近は、女性の成長が目覚ましいです。体力も、精神的にも着実に成長します」と誇らしく語る。
最近、ホルムズ海峡の閉鎖などに伴い海運の重要性が改めてクローズアップされている。実習生たちは、航海士や機関士を目指し、日本の海運を担っていく。帰路は、5月6日にスティーブトン港を出港。その後、ホノルルに寄港し神戸に帰港する。
海王丸寄港にあわせフェスティバル開催!

寄港中の5月2日と3日、「ショプス・トウ・ショア:ギャリーポイント公園に海王丸寄港」フェスティバルが開催された。
巨大な船上に乗り、帆船の複雑な構造を間近に見るのは圧巻。チケットの事前購入ができた幸運を実感することに。もちろん、地上から眺める迫力もただならない。それぞれに飽きることのない時を過ごせたようだった。
日系人移民ゆかりの地として知られているスティーブストンで開催されたフェスティバルでは、史跡案内コーナーにさまざまな史跡のパンフレットなどが用意され、多くの日本人が働いた缶詰工場跡や戦前村上家が暮らしたムラカミ・ハウスなどについて詳しく紹介していた。また、伝統の船大工のコーナーも併設。ノスタルジックな世界のひとときに誘った。



(取材 笹川守)
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