優れた鉄道旅行に贈られる代表的な賞「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」の第15回の授賞式が2026年4月15日に鉄道博物館(さいたま市)で開かれ、ユニークな列車に乗って四国を3日間かけて周遊するクラブツーリズムの旅行商品がグランプリに輝いた。人口減少で経営環境が厳しい四国のローカル線の魅力を発信するとともに、旅行者を呼び込んで経済効果をもたらしたことが高く評価された。(共同通信社経済部次長・連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者 大塚圭一郎)
▽七つのローカル列車に乗車
2011年度から毎年実施されている鉄旅オブザイヤーは、旅行業界でつくる鉄旅オブザイヤー実行委員会が主催。後援にJR旅客6社全てと日本民営鉄道協会、日本旅行業協会といった鉄道・旅行業界の主要団体がそろう「鉄道旅行のオールスター戦」となっている。
第15回の旅行部門は2025年に催行または予定されたツアーを募集。応募は89件と前回を4件上回った。審査委員長の山口昌彦・月刊「旅の手帖」編集長や、筆者ら計11人の外部審査員が一次選考を通ったツアーを対象に、旅行のプロとしての企画力が感じられるか、独創性、乗車する列車や路線の魅力度などを60点満点で採点。得点が上位三つのツアーが優秀賞となり、授賞式当日の決選投票でグランプリを決めた。

四国周遊の商品は、線路と道路の両方を走ることができる徳島県の第三セクター鉄道、阿佐海岸鉄道のデュアル・モード・ビークル(DMV)や、高知県の三セク鉄道の土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の観光列車「やたろう号」、先頭部に「団子鼻」を取り付けて東海道・山陽新幹線の初代営業用車両0系を模したJR四国予土線のディーゼル車両「鉄道ホビートレイン」など計七つのローカル列車に乗った。
私は60点満点中56点と2番目に高い点数を付け、審査員コメントに「人口減少と過疎化が深刻な四国のローカル線の生き残りが厳しさを増している中で、阿佐海岸鉄道のDMVや、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の観光列車『やたろう号』など『潜在的な魅力がたくさんある』目玉列車へいざなって地域経済を盛り上げる好企画です。2026年度以降も継続し、息長く四国を応援してくれることに元松山市民として感謝しています」とのメッセージを寄せた。

企画したクラブツーリズムの山野井眞史さんは「今後も企画をパワーアップし、四国を盛り上げたい」と意気込んだ。
▽明治時代の団体旅行を「現代風に復刻」
日本旅行が2025年12月6、7両日に催行し、16年3月に消えた当時のJR在来線最長昼行特急と同じルートを約10年ぶりに“復活”させたツアー「大阪~長野 直通団体貸切列車『日本旅行創業120周年記念号』で行く 長野・善光寺」は優秀賞を受けた。

JR西日本子会社の日本旅行は、2025年に創業120年を迎えた日本で最も歴史のある旅行会社。日本旅行は創業3年後の1908(明治41)年に現在の滋賀県草津市から善光寺へ貸し切り列車で向かう団体旅行を実施していた。それを「現代風に復刻した」(日本旅行)という触れ込みのツアーは、「日本旅行創業120周年記念号」と名付けた団体臨時列車で大阪駅と長野駅の間を往復し、参加者は長野市の善光寺を参拝した。
この行程は、現在は全ての列車が名古屋と長野を結んでいる特急「しなの」が、1971年4月~2016年3月に1日1往復が東海道本線を西進して大阪駅を発着していた通称「大阪しなの」と同じ。大阪、京都、滋賀、岐阜、愛知、長野の2府4県を通る441・2キロの走行距離で、「大阪しなの」で終盤に使っていたのと同じ特急形車両383系で運転した。所要時間は片道7時間を超えた。

鉄道愛好家として知られるホリプロの南田裕介マネージャーは「目の付け所と、社をまたいだ調整などのご苦労がにじみ出た名作です」とコメントした。
残る一つの優秀賞は、阪急交通社の大阪(伊丹)空港を発着し、JRの始発・終着駅として最南端の枕崎(鹿児島県)から最北端の稚内(北海道)まで向かう4泊5日の「5つの特急と3つの新幹線でつなぐ鉄道でめぐる日本縦断の旅5日間」。参加者が楽しめるように随所で旅程を工夫しており、参加後のアンケート回答者(428人)のコース満足率は95%に上ったという。


行程の工夫が随所に見られ、利用したJR九州指宿枕崎線はJR最南端駅の西大山(鹿児島県)の停車時間が短いため、観光バスで訪れることで約20分間見学できるようにした。また、走行距離が378・1キロと昼行在来線特急としては本州で最も長いJR西日本の「スーパーおき」(鳥取―新山口)と、396・2キロと全国2位のJR北海道の「宗谷」(札幌―稚内)のそれぞれ一部区間に乗車。出雲市(島根県)から東京への移動には、人気のある寝台特急列車「サンライズエクスプレス」の「サンライズ出雲」を組み込んだ。
鉄道写真家の櫻井寛さんは「鉄道旅行好きなら誰しもが夢見る究極の鉄道旅」と評価した。
▽ベストアマチュア賞は豪華寝台列車満喫のプラン
他に「国土交通省鉄道局長賞」に輝いたのは、クラブツーリズムの旅行商品「飯坂電車・山形鉄道・由利高原鉄道・秋田内陸縦貫鉄道 4つのローカル列車を貸切運行!列車内では沿線にちなんだ地酒をお楽しみ!!『東北ローカル列車めぐり』と『東北地酒めぐり』のマリアージュ」。東北地方は積雪が多い冬季の旅行が敬遠されがちなのを受けて企画担当者が「少しでも地域活性化に貢献したい」と思い立ち、東北地方の豊富な酒蔵で醸造されている日本酒を貸し切り列車で堪能できるようにした。

国土交通省鉄道局は「地域の鉄道会社が連携し、福島県、山形県、秋田県をめぐる貸し切り列車で日本酒などの地域の魅力を発信するとともに、地元の酒蔵スタッフなどによる『おもてなし』を感じる企画が地域活性化にもつながる点を評価した」としている。
「審査員特別賞」は、JTBの「歴代編集長と行く JTB時刻表100周年記念号 首都圏貨物線の旅」が受けた。旅客列車が普段走らない貨物線を貸し切り列車に乗って楽しみ、運行する時刻表は発行されている「JTB時刻表」のフォーマットと同じ体裁で作成するなど趣向を凝らした。
私は「2025年に創刊100年を迎えたJTB時刻表が監修し、歴代編集長が時刻表の世界へといざなうストーリー性を売りとしつつ、JTB時刻表には掲載されない貨物線を貸し切り列車で楽しむことができる鉄道ファンや時刻表好きにはたまらない企画です」とのメッセージを寄せた。
一般から「夢の鉄道旅行企画」を募る一般部門には55件の応募があり、最優秀の「ベストアマチュア賞」は2026年度のデスティネーションキャンペーン(DC)開催地全てを網羅した栃木県那須町の自営業、橋本ちひろさんの作品「豪華3大クルーズトレイン(四季島・瑞風・ななつ星)で巡る日本一周14日間の旅~9つの観光列車にも乗車します~」が受賞。

JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」とJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」、JR九州の「ななつ星in九州」を乗り継いで14日間かけて日本を一周し、全てを車中泊にするなど夢のある作品なのが支持された。
一般部門の審査員を務めたお笑い芸人の吉川正洋さんは「1つ乗るだけでもすごいことなのに、3大クルーズトレインに乗れて、さらに観光列車にもたくさん乗れちゃう『てんこ盛り感』が素晴らしかったです」とコメントした。

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