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Maple Hiroba

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モントリオールからのアルバム8月

夏のアルバム

写真と文:鎌田淳平
Instagram:junpeke1984

YATAI MTL

去る2026年6月7日、日本文化の祭典「Yatai MTL」にて、JCCCMの和太鼓グループ「嵐太鼓(Arashi Daiko)」と、三線奏者のShoさんがパフォーマンスを披露した。

嵐太鼓はパワフルな演奏で地響きのような重低音を響かせ、会場を熱気で包み込んだ。続いて登場したShoさんは、名曲「童神」を美しい歌声で歌唱。さらに「島人ぬ宝」や「ハイサイおじさん」といったおなじみの沖縄ソングを三線で奏で、観客を魅了した。日系コミュニティの情熱が光る、贅沢なステージとなった。 

三線を手に歌声を届けるShoさん
三線を手に歌声を届けるShoさん
日頃の練習の成果を笑顔で披露する生徒のRさん
日頃の練習の成果を笑顔で披露する生徒のRさん

FESTIVAL INTERNATIONAL JAZZ FESTIVAL

“子供たちを見守るお父さん”
“子供たちを見守るお父さん”

2026年6月26日に開幕した、世界中から音楽ファンが集まる「Festival International de Jazz de Montréal」は、今年も大盛況となった。

特設ステージでは、高名なトランペット奏者Avishai Cohen氏が叙情性に満ちた圧巻のソロを響かせ聴衆を圧倒。一方、地元の若手実力派グループLucky Chemistryは、観客にぐるりと囲まれたアットホームな特設ステージで演奏を披露。ジャズとヒップホップが交錯するエネルギッシュな集団演奏で、至近距離に集まったファンを熱狂させた。

昼夜を問わず街のあちこちで極上の音楽が溢れ、訪れた人々を魅了する贅沢な期間となった。

“繊細かつ情熱的なソロを響かせるAvishai Cohen”
“繊細かつ情熱的なソロを響かせるAvishai Cohen”
”特設ステージで熱演するLucky Chemistry ”
”特設ステージで熱演するLucky Chemistry ”

2026年7月4日、国際サーカスフェスティバル「Festival Montréal Complètement Cirque」の無料屋外イベントが開催された。広場では音楽に合わせたアクロバットや、優雅な空中パフォーマンス、足を使ったジャグリングなど多彩な技が披露され、観客を釘付けにした。

その中で、ディアボロ(中国ゴマ)の腕を磨くために日本から留学中のの若者が、忍者の格好で登場。背中に家紋が刻まれた衣装をまとい、糸とコマをその中で、ディアボロ(巧みに操る華麗な大技を連発すると、会場からは鳴り止まない拍手と喝采が送られた。

忍者の格好でディアボロを操る日本人留学生 Tくん
忍者の格好でディアボロを操る日本人留学生 Tくん
”空中ブランコで宙を舞うペア”
”空中ブランコで宙を舞うペア”

Parc Olympique

写真と文:鎌田珠代

1976年の夏季オリンピックの主会場として知られるオリンピック・スタジアムと世界で最も高い傾斜塔(165m)のモントリオール・タワーです。隣接してバイオ・ドームとプラネタリウムなどの自然科学ミュージアムがあります。

モントリオールのラテン地区(Quartier Latin)にあるケベック大学モントリオール校(UQAM)のパスツール広場(Place Pasteur)で開催された屋外サーカスイベント【Cirqu’Easy】とその周辺の風景です。

夏の彩り♪

この夏は、いつも楽しませてくれる花々があまり咲かなかったり、菜園の青紫蘇は育たず、トマトの味も今ひとつ。。という感じで、ちょっと違和感のある夏です。

日本だけでなく、世界各地で大きな地震や集中豪雨の被害が報道されていますが、地球で暮らす私達人間のストレスや不調和や争いが、自然に影響し反映しているのではないかと、ふと思ったりしています。

8月の中旬を過ぎ、朝夕もずいぶん涼しく感じられるようになりました。

国境を越えて—カナダで見た「命の物語」森と海が教えてくれた「共に生きる」ということ | 第3弾

研修最終日のシェアリングサークルで生徒たちと研修に関わった人が手を取り合い一つになる様子(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研修最終日のシェアリングサークルで生徒たちと研修に関わった人が手を取り合い一つになる様子(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

森と先住民の歴史から見る人と自然の共存

連載でお届けしている武庫川女子大学付属高等学校のカナダ海外研修レポート。

シリーズ最終回となる今回の記事では、The University of British Columbia(UBC)のFaculty of Forestry and Environmental Stewardship(森林学部)の多大な協力を得て、様々なLabでの体験を通じて森に対する新たな視点を学びました。また、先住民との対話を通して2週間の研修を振り返る機会にもなりました。

森林保護の意識変化

この日の午前中は、Faculty of Forestry and Environmental StewardshipのNature VancouverのDirectorであるLauraさん主導のもと、UBCキャンパス内の森林ウォーキングツアーに参加しました。木々の種類や森の中で果たす役割などの視点から、先住民がいかに森と共存してきたのか、そこから何を学べるのかを体験的に学習することができました。

ツアーの中で生徒たちが驚いたのは、森を守るための「引き算」の視点です。一見、豊かな緑に見える場所でも、本来の生態系を脅かす外来種を適切に管理・駆除することが、森の多様性を守るために不可欠であることを学びました。

また、地面に横たわる「亡くなった木」をあえてそのまま残している光景も印象的でした。これらは単なる朽ち木ではなく、数十年、数百年かけて他の生物の住処となり、次の命を育む貴重な栄養源(ナース・ログ)となります。「死」が「生」へと繋がっていく循環の仕組みを目の当たりにし、生徒たちは自然界の無駄のない美しさに深く見入っていました。

当日はUBCの学生たちもボランティアとして同行。年齢の近い彼らから語られる、先住民の「森と共生する知恵」や科学的な保全の意義に、生徒たちは真剣な面持ちで耳を傾けていました。

サークルになってLauraさんの説明を聞く様子。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
サークルになってLauraさんの説明を聞く様子。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBC学生ボランティアと森林ウォーキングをする様子。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBC学生ボランティアと森林ウォーキングをする様子。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

刻まれた「痛み」と「和解」への歩み|先住民迫害の歴史

UBCのキャンパス内、Faculty of Forestry and Environmental Stewardshipの建物の前に、17メートルの「Reconciliation Pole(和解の柱)」があります。私たちは、先住民の子孫でサーモンフォレストの研究家でもあるDr. Teresa Ryanをお招きし、柱が意味するカナダの先住民の思いや歴史ついて貴重なお話を伺いました。

Teresaさんの先住民の歴史のお話に聞き入る生徒たち。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Teresaさんの先住民の歴史のお話に聞き入る生徒たち。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

かつてカナダでは1800年代から1996年に至るまで、先住民の子どもたちを家族から引き離し、独自の言語や文化を禁じる「寄宿学校(Residential School)」制度が存在しました。この柱の中ほどには、当時を象徴する「寄宿学校の校舎」と、手を取り合う子どもたちの姿が刻まれています。

先住民が迫害され、自分たちの言語や文化を守ることが許されなかったこと。Residence Schoolに追いやられて家族が離散したこと。未だに当時の行方不明者が発見されていないこと。長年守り続けてきた土地を取り返すことができておらず、今もなお、国とのわだかまりが解消されていないことなど。

UBC Faculty of ForestryのReconciliation Pole(和解の柱)。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBC Faculty of ForestryのReconciliation Pole(和解の柱)。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

歴史として語るにはあまりに日が浅く、ほとんどが現在進行形で進んでいる衝撃的な内容。これに生徒たちも息を呑み、途中雨が降ってきても集中を切らさず聞き入っていた様子が見られました。

移民国家ならではの社会問題を目の当たりにし、生徒たちは現状の日本が民族的な観点で安定している理由を学ぶことができました。これからの日本を考える若者の世代として、非常に大切なことを知る大きな機会となりました。

Reconciliation Poleでのお話の後は、Teresaさんが主に研究されているカナダにおけるサーモンと森の関わりについて詳しくお話を伺うことができました。

サーモンを基点として和のように繋がる森の生態系。そしてその森の中で様々な生き物と一体に生きてきた先住民のコンセプトがあり、今後の保護とさらなる繁栄のために研究されている内容をご教授いただきました。

Faculty of Forestryのラボ体験

この日の最後は、Faculty of Forestry and Environmental Stewardship内のラボを実際に訪れて様々な体験を行いました。訪れたのは、病理学とゲノム科学に関するラボ、森林セラピーに関するラボです。

病理学とゲノム科学のラボでは、普段目に見えている森林はその内部でどのような科学が成り立っているのか、顕微鏡を用いた観察などを通して感じる機会となりました。

日本には存在しない種類の植物や虫の細胞を観察する中で、生徒の楽しむ姿やありありとした虫の姿に腰がひける姿なども見られました。

病理学とゲノム科学に関する研究室で顕微鏡を観察する様子。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
病理学とゲノム科学に関する研究室で顕微鏡を観察する様子。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

森林セラピーのラボでは、これまでの歴史的文化的に見る研修内容とは少し変わって、比較的生徒たちにも身近な内容でした。

森林セラピーを実施したFaculty of Forestryのラボ。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
森林セラピーを実施したFaculty of Forestryのラボ。(2026年3月26日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

実際に森林の木々から抽出したアロマオイルの香りを体験したり、森林の環境を再現したラボで擬似森林浴を体験したりなど。

研修の疲れもピークに達していたのか、生徒たちはこのリラックス体験に没入しており、擬似森林の中で気持ちよさそうに眠っている姿も印象的でした。

UBCのラボ見学という貴重な機会を通して、生徒たちは森林の新たな顔を知ることができただけでなく、大学進学の選択肢として新たな可能性も見出すことができました。

これから本格化する日本の受験シーズンを前に、今一度自分の将来の可能性の大きさについて考えてくれることを祈っています。

また、筆者としてもこの研修を通して様々なものを実際に目にし、耳にする中で、森・人・動物たちは輪の中で繋がっているということを深く再認識することができました。世界の生き物がお互いに支え合って生命活動が今日も回っていることを感じるほどに、独占欲や無知の浅ましさを感じてなりません。カナダの悲しい歴史にも見られるように、輪の存在を認知せずに自分の利益のみを追求することは、年月をかけて多くのものを破壊する行為であると知るべきです。

私は日本に帰国後、もう一度教師としての道を進んでいきます。日本の教育だけでは伝えることのできない世界の広さ、人間という生き物の小ささ、動物や自然の偉大さ、そして我々が生きる1日1日の価値を、日本の生徒たちにしっかりと伝えてあげたいと強く思います。そして、ネット検索だけで世界を知ることはできないことを伝え、自分たちの目でこの素晴らしい世界を味わってもらえるような、そんな夢ややる気を与えてあげられるような教師を目指したいと思います。

寄稿者:田部 勇樹

島根大学教育学部を卒業後、民間の教育会社に入社。国際事業を統括する部署で海外の教室運営の管理を担当。各国の教育事情や企業について学んだのち、地元の私立高校へ転職して英語教員として従事。現在はカナダへワーキングホリデーで滞在し、英語教授法の新たな資格を取りつつ自身の英語運用力向上のため奮闘中。

感情が噴水のように湧き出たシェアリングサークルを生み出す

私は、カナダ海外研修最終日に実施された先住民長老であるNorm Leechさんとの対話、そしてシェアリングサークルに参加させていただきました。シェアリングサークルは先住民の方々の手法をモデルにした対話の方法です。ここで私はファシリテーションを担当しました。

大地との繋がりを大事にする先住民長老Normさんとの対話を通じて、生徒さんがこの2週間で感じたことが湧き出た様子をお届けします。

先住民の価値観「すべてはつながっている」

先ずは先住民長老のNorm Leechさんから先住民の世界観についてのお話がありました。「大地と人間はつながっていて、人は皆、大地に愛されている。すべてのものは繋がっている。だから、先住民の世界には孤独は存在しない。」「大地は人間の所有物ではなく、自分自身の一部でもある。私たちは何千年も、この大地を大切にしてきた。」

Normさんの優しい語り口から発せられる言葉に、私も生徒さんも真剣に耳を傾けました。普段、日本で学生生活を送っている生徒さんの心にNormさんの言葉がどのように響いたのでしょうか。

一つの大きなサークル(輪)を作って先住民のお話しに耳を傾ける様子(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
一つの大きなサークル(輪)を作って先住民のお話しに耳を傾ける様子(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
シェアリングサークルで研修の振り返りをする生徒たち(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
シェアリングサークルで研修の振り返りをする生徒たち(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

シェアリングサークルがもたらすもの

休憩を挟み、後半のシェアリングサークルでは、生徒さんが約10人ずつに分かれ、輪になって座ります。そして一人ひとりが順番に感じたこと、共有したいことを他の参加者に話していきます。話した内容は誰かに評価されることもなく、他の参加者はじっくりと耳を傾けます。これにより、それぞれが安心して想いを共有できる空間が生まれます。そこで共有された言葉には、2週間にわたって慣れない英語環境に触れた不安、そしてそれを乗り越えるのに必要だった、友人や家族との大切な関係が、皆の心の中に共有される時間となりました。

新たな学びを得た生徒たちの未来

生徒たちがこの研修を通して学んできた、森と海とサケと人はすべて繋がっているという学びが、Normさんのお話と、シェアリングサークルとも呼応しているように感じました。私自身はこの日だけのお手伝いでしたが、生徒たちの2週間を陰で支えていたスタッフの皆様のご苦労はいかほどであったかとお察しいたします。無事に日本に帰って行った生徒たちが、バンクーバーで学んだグローバルな視点をさらに広げて行ってくれることを願うばかりです。

寄稿者:田村 禎史
横浜は黄金町に「話し聴き屋」を設立して以来、コミュニティのレベルで様々な声に耳を傾けてきた。2013年バンクーバーに移住。現在は日系ボランティア団体「隣組」で男性のピアサポートグループ「メンズクラブ」のコーディネイターを担当している。

「森は海の恋人」気仙沼の活動にカナダで出会う。

今回は、再度本研修の原点であった森は海の恋人の環境哲学に話題を戻します。約2週間の研修がどのように形づくられていったのか、その舞台裏に迫ります。日本とカナダ、二つの自然観が思いがけない形でつながり、プログラムの構想が広がっていった過程を追いました。

日本の森、そしてカナダの森のつながりとは

今回の研修が始まる約1年前のこと。研修プログラムで訪問予定としていたUBCの森林学部、Faculty of Forestry and Environmental Stewardship について調べていたとき、私はふと日本での森林保全活動を思い出しました。当時研修プログラムを練っていたのですが、AK Jump Educational Consulting Inc.の高林さんと構想していた最中のことです。「森林」というキーワードから、20年前に出会った、「森は海の恋人」の活動が自然と頭に浮かびました。

約20年前大学生だった私は、SOMPO環境財団の行う「CSOラーニング制度」を通じて、気仙沼の牡蠣養殖漁師・畠山重篤氏が取り組む「森は海の恋人」活動に出会いました。CSOラーニング制度とは、大学生がCSO団体(NPOなど)でインターンシップをし、現場で環境保全・地域づくりを学ぶプログラムです。その中で出会った森は海の恋人活動とは、海の健康を守るためには、その海に流れ込む川の上流の森が健康でなければいけないという考えのもと、漁師さん達が森に植林活動を行ったのが始まりでした。気仙沼の牡蠣養殖漁師だった畠山氏は、高度経済成長期に、赤潮により牡蠣が赤く染まる被害により牡蠣が採れなくなった原因は陸にもあるのではないかと感じ、気仙沼湾に流れ込む大川の上流の里山に植林することを始めました。当時、大川を通して生活排水が海に流れ込み、川の上流では針葉樹林が放置され、保水力が低下し、表土が流れ出していました。また、当時大学の協力により調査したところ、海を育てる鉄・リン・窒素などの栄養が川から供給されていることが科学的に示されたそうです。それ以降、「森は海の恋人」という標語とともに、海を守るために、森に木を植えるという活動が始まったそうです。

2005年に私はその活動を知り、実際に気仙沼を訪れ牡蠣棚の見学や里山での植樹活動に参加しました。船に乗せていただき、牡蠣やホヤを見せていただいたこと、そして海を味わったこと(海からとれたての牡蠣はまさに海の塩辛い味でした)、そして静かな海の凪と共に、海水がとても透き通っていたことも今も鮮明に覚えています。

その後、畠山氏は2012年に国連からアジア地域のフォレストヒーローズに選出され、TEDxTohoku2012 でもその思想を世界に発信しました。漁師がフォレストヒーローに選ばれるという事実は、自然のつながりの深さを象徴しています。

武庫川女子大学付属高等学校カナダ海外研修の事前学習ページ

武庫川女子大学付属高等学校の事前学習ページでは畠山氏 のNPOとTEDトークについて紹介した。
武庫川女子大学付属高等学校の事前学習ページでは畠山氏 のNPOとTEDトークについて紹介した。

カナダで出会った「逆向きのつながり」

日本の森を思い出したあと、私はふと疑問を抱きました。

では、森の豊かなカナダでは、森と海はどのようにつながっているのだろう?

気候も植生も異なるカナダの森について、私はほとんど知識がありませんでした。その問いを高林さんに投げかけたとき、「サーモンフォレスト」というカナダ独自の概念を教えていただきました。

サーモンフォレストとは、サケが海から川を遡上し、産卵後にその川で命を終えることで、その亡骸が森の栄養となり、森林生態系を支えているという考え方です。UBCのサーモンフォレストプロジェクト研究映像では、クマがサケを森へ運び、その亡骸が土壌の栄養となり、森全体を豊かにする様子が紹介されています。

武庫川女子大学付属高等学校の事前学習ページではカナダのサーモンプロジェクトについて紹介した。
武庫川女子大学付属高等学校の事前学習ページではカナダのサーモンプロジェクトについて紹介した。

日本では「森が海を育てる」。

カナダでは「海の生き物が森を育てる」。

矢印の向きは逆でも、森と海が川を介して深く結びついているという事実に、自然の大きな循環を感じ、とても面白く感じたのを覚えています。そして高林美樹さんとの問いかけから始まったこの気づきが、両国の自然観を比較しながら学ぶ探究プログラムの構想につながりました。

震災を越えて続く活動と、つながりの力

久しぶりに「森は海の恋人」を検索すると、畠山氏は2025年に亡くなられていました。その知らせは胸に迫るものでしたが、今では活動が多くの人に受け継がれ、全国へ広がっていることを知り、深い感動を覚えました。教科書にも数多く掲載されNHKの朝ドラのモデルにもなったと知ったとき、改めてその歩みの大きさを感じました。

2011年の震災では気仙沼も大きな被害を受け、私自身も仙台で被災しました。2015年に訪れた際も、街はまだ復興の途中という印象が残っています。あれから約10年が経ちますが、震災のあとも活動が途切れることなく続いていることをホームページで拝見し、強く心を動かされました。そして畠山氏の思いを受け継ぎ、今も多くの人が活動を続けている姿には、人と人とのつながりが持つ力を深く感じます。

自然の循環が教えてくれた、世界を見つめる新しい視点

今回の研修で高校生たちは、日本の「森は海を育てる」と、カナダの「海の生き物が森を育てる」という二つのアプローチを往復する中で、自然の循環の大きさとそのバランスを守る人の役割に気づいていったように思います。

生徒たちの言葉には、

“つながっていないようでつながっている” 

“共存にはバランスが必要” 

“そのバランスを守るのが Stewardship” 

といった感想が聞こえました。

また、カナダの現場で生徒たちと話していると、日本の学校で自分の課題研究というものを各自がもっており、それぞれが一つのテーマで研究を行っていることも教えてくれました。「みんなどんな研究をしているの?」と聞いてみると、「廃棄される玉ねぎの皮を塗料にする研究」、「川の水を飲めるようできないか浄化する研究」、「言語の進化の歴史をたどり、これからどのように変化していくかを予測する研究」など、始めは控え目でしたが、対話を進めていくうちに生徒たち皆が自信をもって自分の研究を話してくれました。日本で研究しているこれらの活動に対し、「じゃあカナダではどうなっているんだろうね?」という問いかけをしてみると、生徒たちも「どうなんだろう?」と新たに考えるきっかけとなっているようでした。

日本から遠く離れたカナダで、高校生たちが畠山さんの活動を学ぶことから始まり、両国の自然や様々な事象を比較することで、これからの世界を考えるきっかけになればと願っています。そして、この体験が10年後、20年後にふと生徒たちの心に戻り、新たなつながりや創造へとつながっていくことを願っています。

寄稿者:佐々木千晶

宮城県仙台市出身。高校時代のオーストラリア留学をきっかけに、海外と環境問題への関心を深める。大学卒業後はフランス企業の製品開発部で約10年間エンジニアとして勤務。その後、カナダ・バンクーバーへ移住。現在は AK Jump Educational Consulting の研修プログラム作りをサポートし、日本とカナダをつなぐ学びの機会づくりに携わっている。

森と海とサケと人のつながりと循環に目覚めた2週間 ― 未来への一歩

この2週間で、生徒たちは自ら問い、語る姿へと変化しました。最終日の傾聴や共感をするためのシェアリングサークルでは思いがあふれ、笑顔も涙も溢れだし、人とひとのつながりを実感した瞬間がありました。『生命体系ー森・川・海・サケ・人は一つの循環の中にある』大地と共に生きるこの気づきが、地球を守り、資源を平和に分け合い、共存へとつながる一歩となることを願いながら研修を終えました。

つながりを実感ー森・川・海・サケ・人は一つの循環の中にある

はじめは緊張や不安から涙を見せたり、乗り越え方がわからずフラストレーションを抱えたりする生徒もいました。また、どのようにサポートすべきか戸惑う先生やスタッフの姿も見られました。しかし、日々の学びや対話を重ねる中で、生徒たちは新しい環境や関係性に少しずつ慣れ、信頼関係が育まれ、コミュニケーションも次第に円滑になっていきました。

本研修を通して繰り返し伝えてきたのは、「森や川、海、そして人もすべてつながっている」という視点です。自然とともに生きること、そしてその関係性を大切にすることの重要性を感じる機会となることを願ってプログラムを構成しました。

最終日のシェアリングサークルの終わりには、約50名の参加者全員が輪になり、年齢や国境、民族を超えた人と人とのつながりを体感する時間となりました。それぞれが感じたことや気づきを率直に共有する中で、感極まり言葉にして思いを伝える生徒の姿も見られました。互いの話に丁寧に耳を傾けるその場は、人とのつながりの大切さを改めて実感する、非常に意義深い時間となりました。

本研修は、多くの方々の協力によって実現しました。武庫川女子大学附属高等学校カナダ研修担当の田辺瑞歩先生に引率の先生方、フィールドワークのナビゲーター、ファシリテーター、登壇者および語学学校関係者の皆様、大学ラボのスタッフ、AK Jump Educational Consulting Inc.のスタッフ、そして現地の高校生・大学生ボランティアの皆様の支えがあったからこそ、生徒たちは安心して学ぶことができました。特に、年齢の近い学生ユースリーダー山下樹春さんが率いたボランティアグループの存在は、生徒たちがリラックスして自分の思いを表現できる環境づくりに大きく貢献してくれました。

また、この研修を通して多くの新たな出会いや友情も生まれました。現地で学び、働く方々の姿は、生徒たちにとって進路を決めていく上で大きな刺激となったことと思います。

最後に、本研修を支えてくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。また、本体験を掲載してくださった『日加トゥデイ』様にも深く御礼申し上げます。本研修が単なる海外体験にとどまらず、生徒一人ひとり、そしてそれを支えてくださったすべての方々にとって、内面に何らかの変化をもたらす機会となっていたことを願い、本寄稿文シリーズの締めくくりといたします。

なお、「森と海とサケと人は繋がっている」カナダ研修プログラムは、2027年春にも再び実施を予定しています。

研修最終日のシェアリングサークルで生徒たちと研修に関わった人が手を取り合い一つになる様子(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研修最終日のシェアリングサークルで生徒たちと研修に関わった人が手を取り合い一つになる様子(2026年3月27日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

寄稿者:カナダ・バンクーバーを拠点に活動する教育コンサルタント。
AK Jump Educational and Consulting Inc. 代表 高林美樹。

留学支援、探究型研修プログラムの企画・運営、アカデミックキャリア相談、メンターシップの提供などを通じて、日本とカナダをつなぐ教育活動に従事。特にインクルーシブ教育の推進や、多様な学びを支えるコミュニティづくりに力を入れている。

カナダの公立学校・図書館・NPOなどと連携した教育視察プログラムを企画し、日本の教育関係者や学生に対して実践的な学びの機会を提供。また、移民支援や日系コミュニティ活動にも関わり、セミナーやワークショップの企画・運営を通して、多文化共生社会の実現に貢献している。

さらに、日系史や文化の継承に関するプロジェクトや、ユース育成・国際交流プログラムの企画にも携わり、次世代の育成と国際的なつながりの創出を推進している。

本研修プログラムの実施・協力組織

UBC Faculty of Forestry(ブリティッシュコロンビア大学 森林学部)

カナダ・バンクーバーにあるThe University of British Columbiaの主要学部の一つで、森林科学や木材工学、持続可能な資源管理の分野で世界的に高い評価を受けています。気候変動対策やサーキュラーエコノミーの推進に貢献する研究・教育を行い、産学連携や実践的なプロジェクトを通じて、持続可能な社会の実現を担う人材を育成しています。

Norm Leech ノーム・リーチ Stat’imc Nation の T’it’q’et コミュニティにルーツをもち、先住民の元酋長(元チーフ)/管理者としての経験を持つリーダーです。 現在は、カナダ・バンクーバー東部の Frog Hollow Neighbourhood House(コミュニティハウス)のエグゼクティブ・ディレクターを務め、地域の子ども、家族、シニア、移民・難民、若者支援、女性支援など多様なプログラムを指揮しています。

鹿毛 真理子 東京出身。10代でカナダへ移住し、異文化の中でアイデンティティを模索する経験を通じて多様性と人権への関心を深めています。ロサンゼルスでの生活や、帰国後に日系コミュニティ(JCCA/HRC)での支援活動を経て、先住民族の家族と共に暮らし、自然や文化、祈りの中にある「つながりの力」を学ぶ。現在は教育・青少年支援・地域づくりに携わりながら、日系と先住民の歴史をつなぐ活動を続けています。

武庫川女子大学附属高等学校 「高い知性」「善美な情操」「高雅な徳性」を兼ね備えた有為な女性の育成を理念に掲げ、グローバルな視野を持って社会に貢献できる女性の育成に力を入れています。本研修を通じて、自発的な探究心と国際感覚を育んでいます。

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国境を越えて—カナダで見た「命の物語」森と海が教えてくれた「共に生きる」ということ | 第2弾

UBC Research Forestでの散策とガイドによる解説 (2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBC Research Forestでの散策とガイドによる解説 (2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

カナダの「森」で学ぶ持続可能な社会と自然の関係性

連載でお届けしている武庫川女子大学付属高等学校のカナダ海外研修レポート。

シリーズ2回目となる今回の記事では、The University of British Columbia(UBC)の研究機関である森林やUBCキャンパスツアー、Douglas Collegeでの模擬授業、エコビジネスに取り組む企業見学の様子をお届けします。

生徒たちは自然環境と人間社会のつながりを体感的に理解。問いを軸にした学びと英語での対話を通して、主体的に考える力が育まれました。

森で深まる自然と社会のつながり

この日は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州に位置するUBCの研究林「Malcolm Knapp Research Forest」 にて、自然と社会の関係性をテーマとしたフィールドワークを実施しました。

あいにくのAtmospheric rivers(大気の川)の影響で、大雨に見舞われる中での活動となりました。しかし、生徒たちは森の中での体験に強い関心を示し、自然環境に身を置きながら積極的に学びに参加しました。木々や土、川の流れといった五感を通した体験が、教室では得られないリアルな理解へとつながっています。

講師による問いかけを中心とした進行により、生徒は「知識を受け取る側」ではなく、「考え、発信する側」として参加する姿勢を見せました。英語での質問や発言も自然と生まれ、言語を“使う場”としての価値も高い時間となりました。

UBC Research Forestでの散策とガイドによる解説 (2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBC Research Forestでの散策とガイドによる解説 (2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
森の中を歩きながら学ぶ生徒たちの様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
森の中を歩きながら学ぶ生徒たちの様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

環境問題を「自分ごと」として捉える学び

本プログラムでは、環境問題を単なる知識としてではなく、「自分たちの生活とつながるテーマ」として捉えることが重視されました。

・森林を守るとは具体的に何を指すのか
・木を伐採する経済的・生態的な意味と役割とは
・自然の変化と人間活動の関係はどう影響し合っているのか

こうした多角的な問いの中で、生徒は持続可能な社会の構造を理解していきました。

特に印象的だったのは、「変化そのものではなく、“急速な変化”が問題である」という視点です。この考え方を通して、生徒は環境問題を感覚的ではなく、構造的に捉える力を育んでいました。

また、実際の森林内で樹木の種類や特徴を観察することで、知識と体験が結びつき、一段と深い理解へとつながっていました。

ガイドさんから木の種類について学ぶ生徒たち。(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ガイドさんから木の種類について学ぶ生徒たち。(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研究林に併設された森林工場を見学する様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研究林に併設された森林工場を見学する様子(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

体験・対話・振り返りによる学びの深化

見学後の集合写真(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
見学後の集合写真(2026年3月19日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

本プログラムは、「体験 → 対話 → 振り返り」の流れで構成されており、学びの定着を高める設計となっていました。

森林内での体験後には、Forest Buildingにて振り返りの時間が設けられ、クイズ形式での理解確認が行われました。このプロセスにより、生徒は自身の学びを言語化し、整理する機会を得ています。

また、安心して発言できる環境の中で、生徒たちは英語でのアウトプットにも挑戦し、「伝えること」への自信を少しずつ高めていきました。

本研修は、自然環境への理解を深めるだけでなく、
・主体的に考える力
・問いを持つ力
・言語を通して表現する力
を育む機会となりました。

日本だと行く機会の少ない森の研修に生徒たちからは、

「鳥の鳴き声や雨の音など自然がのどかでないと聞くことのできない事を感じることができました。」
「これまで繋いできた歴史がある木であり、古くからのDNAが存在しているので昔から生えている木こそ大切にしなければいけないという事を知りました。」

環境問題を「正解を知るもの」ではなく、「考え続けるテーマ」として捉え始めており、その姿勢こそが本プログラムの大きな成果といえます。

大自然の中での体験と対話を通して得られた学びは、今後の探究活動やグローバルな視点の育成にもつながる重要な一歩となりました。

寄稿者:山下 樹春 カナダ在住7年目。University of VictoriaにてChild & Youth Care分野を学びながら、留学中の小学生・中高生を対象とした英語学習支援、生活面のメンタリング、国際交流プログラムの引率を行っている。

UBCで体感した「日常の自然」

さて、研修の折り返しであったこの日は、世界的な学術拠点であるUBCを訪問しました。広大なキャンパスと博物館でのミッションをこなしながらUBC内をツアーしました。生徒たちは森・海・川、そして先住民の知恵が織りなす「循環」を体験しました。未来を創る主体者へと成長していく様子を追います。

今回は、ウエストバンクーバーの公立高校に留学をする二人の生徒さんに寄稿文をお願いしています。研修参加者の生徒さんと同年代の二人が、研修をどう捉えたかも注目です。生徒同士が留学体験についての情報交換したり、友情も育んだ研修期間ともなりました。

森と海に囲まれたキャンパス

この日はUBCに行きました。春を迎えたキャンパスには桜が満開に咲き誇っていました。キャンパスは想像していたよりもずっと広く、学生がたくさんいて、「大学ってこんなに大きいんだ!」とみんな驚いていました。

カナダでの研修もいよいよ残り1週間です。
研修が始まったばかりの頃は、時差ぼけで疲れていたり、ホストファミリーとうまく話せなかったりして、不安そうな様子もありました。でも、毎日英語で話したり、新しい文化に触れたりする中で、少しずつ生活にも慣れてきて、笑顔で過ごす時間が増えてきました。

また、私たち現地のユースボランティアとも仲良くなり、研修が終わった後に気軽に話せるようになったことも、とても良い思い出です。
生徒たちと過ごしていると、私たちが初めてバンクーバーに来た頃の気持ちも思い出しました。

最初は、お互いに助け合いながら行動することが多かった生徒たちですが、だんだんと「まずは自分で考えて行動してみよう」という姿勢が見られるようになりました。海外での生活を通して、自分で挑戦する大切さを学んでいるように感じました。

UBCは、森と海に囲まれた自然豊かな場所にあります。実際に歩いてみると、校舎のすぐ近くに大きな木々があり、その先には海も見えました。自然がとても身近にあることに驚きました。日本では自然を特別な場所として感じることが多いですが、カナダでは自然が生活や学びの一部になっているように感じました。また、森や川、海はそれぞれ別々ではなく、すべてがつながっていることも実際に見て学ぶことができました。自然はそれぞれ独立しているのではなく、一つの大きな循環の中にあるのです。

UBCのキャンパス内の写真(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
UBCのキャンパス内の写真(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

標本が教えてくれた自然のつながり

次に訪れたのは、UBCにある「Beaty Biodiversity Museum(ビーティ生物多様性博物館)」です。
館内にはたくさんの動物や植物の標本が展示されていて、その数は200万点以上あるそうです。

特にサーモンの展示では、海で育ったサーモンが川に戻って産卵し、その命が森の栄養になるという話を学びました。海・川・森はすべてつながっていて、一つでもバランスが崩れると自然全体に影響が出ることを知り、とても驚きました。展示を見ている生徒たちも、「もし人間が自然を壊してしまったらどうなるんだろう」と考えている様子でした。

Beaty Biodiversity Museumの標本に興味を示す生徒たち(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Beaty Biodiversity Museumの標本に興味を示す生徒たち(2026年3月21日撮影/提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

先住民の考え方から学んだこと

展示では、具体的な先住民の文化や自然との関わりについても紹介されていました。先住民の人々は、自然や生き物を資源としてだけでなく、「共に生きる存在」として大切にしてきました。

例えばサーモンも、食べ物というだけではなく、文化や生活に欠かせない大切な存在です。そして、「自然のバランスを崩さない程度に、自然に感謝して受け取る」という考え方を大切にしているそうです。この考え方は、今の環境問題について考えるときにも大切なことだと思います。生徒たちと私たちは、自然と人は別々ではなく、お互いにつながりながら生きていることを学ぶことができました。

生徒たちの変化する「問い」

今回の研修では、生徒たちの考え方にも少しずつ変化が見られました。
最初は「きれい!」「すごい!」という感想が多かったのですが、だんだんと「どうしてこの自然は守られているのだろう」「自分たちにできることは何だろう」と考えるようになりました。

博物館で生き物の展示を見たことで、生き物は環境に合わせて生きていることを実感しました。そして、人間の行動によってその環境が変わってしまうことにも気づきました。

環境問題は遠い世界の話ではなく、自分たちにも関係があることなのだと感じた生徒も多かったと思います。

今回カナダで学んだ「自然とのつながり」を日本でも思い出しながら、日常生活の中で自分にできることを考え続けていきたいです。一人ひとりの小さな行動でも、それが積み重なれば未来の社会や自然を守ることにつながるのではないかと思いました。

寄稿者:近藤 彩名 

福岡出身の14歳(中3)小学校1・2年生はフィリピンのセブ島の現地小学校に通いのびのびと育つ。日本の小学校卒業後、12歳で母と共に渡加。バンクーバー公立高校のG9に在籍中。ゴルフとSUPに挑戦中。

佐藤千菜津 

東京都出身17歳(高2)2歳から英語に親しみ、インターナショナルの幼稚園で教育を経て成長。日本の小中学校卒業後、16歳で単身カナダへ渡り、現在はバンクーバーの公立高校G11に在籍。趣味はダンス、料理。

日本にはないコミュニティカレッジに挑戦!ダグラスカレッジ サイエンス模擬クラス体験

今回は、ダグラスカレッジでコンピューターサイエンスと環境科学の模擬授業に挑戦。留学を視野に入れる生徒たちが、大学とは異なる日本にはない、コミュ二ティカレッジの魅力とその役割の重要性に気づく機会となりました。

留学生にとって カレッジの魅力とは

最初に、海外マーケティング担当のHanaさんより、ダグラスカレッジの魅力についてお話をいただきました。広いキャンパスを持つ大学への留学に憧れる人は多い一方、英語力などの理由から途中で学業を断念してしまう学生が多いのも現状です。

そうした中、ダグラスカレッジの魅力の一つが、教授と学生の距離の近さです。大学では400人規模の大講義や、教授ではなくTA(ティーチングアシスタント)による授業も珍しくありませんが、ダグラスカレッジでは1クラス最大35名で、すべての授業を教授が担当します。研究機関大学での指導経験を持つ教授も多く在籍しています。慣れない環境での留学において、教授と密にコミュニケーションを取れる環境は大きな魅力です。

また、学費の面でもカレッジに通うメリットがあります。大学に4年間通う場合と比べて、学費は半分から三分の一程度に抑えられるとのことでした。カレッジに2年間通った後に大学へ編入した場合でも、約15,000ドルの節約になるそうです。

ブリティッシュコロンビア州では、BC Transfer Guideに示されているように、高等教育機関間で単位互換が可能なシステムが整備されています。そのため、ダグラスカレッジからUBCやSimon Fraser University(SFU)などの大学への編入も、余分な単位を取得することなくスムーズに行えるのが特徴です。

英語が母語でない学生にとっては語学面の不安もありますが、ダグラスカレッジでは学内に英語コースを備えているほか、提携する私立の語学学校で学んだ後、IELTSを取得して入学することも可能です。さらに、学内外でのクラブ活動やスポーツチームも充実しており、留学生向けの奨学金制度も整っています。

今回の研修スタッフの中には、ダグラスカレッジからカナダやイギリスの大学へ進学した方もおり、カレッジは留学生にとって安心してスタートを切れる場であることを実感できるお話でした。

海外マーケティング担当のHanaさんによる、ダグラスカレッジの説明(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
海外マーケティング担当のHanaさんによる、ダグラスカレッジの説明(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

模擬クラス1:コンピューターサイエンスのクラスでゲームとVR体験

コンピューターサイエンスのクラスでは、最初に、ダグラスカレッジの生徒が作ったゲームを実際に体験させていただきました。ライオンが障害物をよけながらShahriar Khosravi教授を追いかけるという内容で、Shahriar Khosravi教授はとても陽気な方でした。生徒たちも楽しそうにゲームをしながら英語でコミュニケーションを取っている姿が印象的で、高得点を取った生徒には賞品も用意されていました。

後半では、VRゴーグルを装着して弓を的に射るゲームを体験しました。慣れるまでは下に落ちている弓を拾うことすら難しい生徒もいましたが、徐々に慣れると、皆楽しそうにプレイしていました。

将来ゲーム制作に興味のある生徒も、そうでない生徒も、和気あいあいとした雰囲気の中でアクティビティを楽しんでいたのが印象的でした。

VRゴーグルを使ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
VRゴーグルを使ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ダグラスの学生が作ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ダグラスの学生が作ったゲーム体験。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

模擬クラス2:環境科学のクラスで地質学について学ぶ

2つ目の模擬クラスでは、Environmental Science(環境科学)の授業を担当しているNathalie Vigouroux-Caillibot教授から、地質学について講義をしていただきました。まず、日本とカナダの気候や地質の違いについて説明があり、バンクーバーと長野県が気候や地質の面で似ていることも紹介されました。

また、サーモンが私たちの生態系にとって鍵となる種(keystone species)であるというお話もしていただき、前週に学んだ内容ともつながる授業となりました。

その後、実際の岩石サンプルを見せていただき、火山の噴火で地表に噴出した石と地中に堆積した石の違い、さらに地質学の専門用語について、ワークシートを使って生徒たちも奮闘しながら問題に取り組みました。

内容が難しかったという声もありましたが、教授の穏やかでゆっくりとわかりやすい英語を使った授業は、英語を母語としない学生にとって非常にありがたいものでした。また、学校スタッフのマイケルさんが日本への留学経験者であったことから、わかりやすい日本語で通訳してくださる様子にも、生徒たちは興味を持っていたようでした。

これまでは分からないことがあっても発言するのに躊躇していましたが、教授やスタッフのマイケルさんに積極的に質問をしている様子でした。

この生徒たちの変化は、わからないことを「壁」として諦めるのではなく、「理解できるもの」として捉え直す。「思考の粘り強さ」こそ、本研修が引き出した大きな魅力です。

実際の鉱石に触れながらの活動。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
実際の鉱石に触れながらの活動。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Nathalie Vigouroux-Caillibot教授によるサーモンの重要性についての説明。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Nathalie Vigouroux-Caillibot教授によるサーモンの重要性についての説明。(2026年3月23日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

寄稿者:宮本 麻里
東京都世田谷区出身。現在は、West Vancouver Secondary SchoolとSentinel Secondary Schoolで日本語を教えている。

割り箸を価値に変えるChopValueの挑戦:ドイツからの留学生が起業し世界を揺るがす

自然の繋がりをテーマとする今回の海外研修では、エコビジネスに熱心に取り組む企業にも訪問しました。身近な「割り箸」がどのように洗練された家具へと生まれ変わるかの工程を見学。また、エコビジネスの可能性や仕組み、企業の社会的責任を深く学びました。

2億8千万本の割り箸を再利用|サーキュラーエコノミーの衝撃

皆さんは、世界中で一年間にどのくらいの「割り箸」が廃棄されているか知っていますか?

その数はなんと、年間約800億膳とも言われています。私たちは食事のあとのわずかな時間でそれらを「ゴミ」として手放してしまいますが、その裏側にある豊かな森林資源にまで思いを馳せることは、日常生活の中では難しいかもしれません。

バンクーバーの街角にある工場「マイクロファクトリー」を構えるChopValue社。ここで私たちが目の当たりにしたのは、その常識を覆す驚くべき数字でした。これまでに再利用された割り箸の本数は約2億8,000万膳。それによって抑制されたCo2排出量は約1,344万kgにのぼります。

創立者のFelix Böck氏は、ドイツ出身でUBC森林学部の博士課程在学中に大量に捨てられる割り箸に着目。研究者としての知見を活かし、割り箸を高密度な木質素材へと再生する技術を開発しました。捨てられるはずだった割り箸を、再び社会の中で循環させる仕組みを作り上げました。

割り箸を再利用して作られたChopValueのロゴ(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
割り箸を再利用して作られたChopValueのロゴ(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

地域で完結する「マイクロファクトリー」|輸送による負荷を最小限に

ChopValueのモデルが画期的なのは、巨大な工場を一つ作るのではなく、都市ごとに小さな「マイクロファクトリー」を展開している点にあります。

「回収 → 加工 → 利用」をすべて地域(ローカル)で完結させる。これにより、素材を運ぶための長距離輸送を省き、輸送に伴う二酸化炭素(Co2)排出を徹底的に抑えています。これは、グローバル化が進んだ現代社会において、あえて「地域とのつながり」を重視することで環境負荷を減らす、持続可能なビジネスモデルです。

創業の想いや地域循環の仕組みについて、説明に聞き入る生徒たち。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
創業の想いや地域循環の仕組みについて、説明に聞き入る生徒たち。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

高度な再生技術と「自然」の再定義

実際に、バンクーバー市内の飲食店で回収された箸の加工プロセスを見学した生徒たちの目は、驚きに満ちていました。回収された割り箸は、人体に有害な化学物質を一切使わずに乾燥・滅菌され、樹脂を浸透させた後、高温で一気にプレスされます。

1枚のタイル(約20cm四方)に使われる割り箸は約300本。細く、折れやすかった割り箸が、重厚感と強度を持つ美しい木材へと生まれ変わる。そのようなプロセスを目の当たりにし、生徒たちは「自然」を単なる材料として消費するのではなく、知恵を使って「価値」を維持し続けることの重要性を学びました。

バンクーバー市内の飲食店で回収された割り箸。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
バンクーバー市内の飲食店で回収された割り箸。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
割り箸を再利用して作られたタイルや小物。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
割り箸を再利用して作られたタイルや小物。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

日本の「200億膳」という現実|未来へ繋がる心の種

ここで生徒たちは、一つの厳しい事実に直面します。日本では年間約200億膳もの割り箸が消費され、その大半が焼却処分されているという現実です。日本の方が圧倒的に多くの箸を使用しているにもかかわらず、なぜこの取り組みが広がらないのか。そこには、廃棄物処理に関する「法律の壁」や、衛生面への意識、そして「使い捨て」を前提とした社会構造がありました。

ある生徒が、「今まで、ゴミ箱に捨てる瞬間に何も考えていなかった。でも、これからは一度踏みとどまって考えたい」と語りました。

今回の見学を経て、生徒たちの意識は「自分たちの課題」へと変わりました。「日本の方が資源があるのに、活用できていないのはもったいない」「私たちができる具体的なアクションは何だろう?」。生徒たちの目は、自分たちの足元にある日本社会の現状をどう変えていけるかという、当事者としての熱い視線でした。

私自身、今回の見学を通して「資源は無限ではない」という、当たり前ながらも忘れがちな真理を改めて胸に刻むことができました。
普段の生活の中でつい見落としてしまいそうな、私たちの些細な選択。しかし、今日「何を選び、どう捨てるか」という一人ひとりの行動の積み重ねこそが、確実に未来の環境を形作っていきます。この研修で得た実感を、一時の思い出で終わらせるのではなく、私自身もまた、未来への責任を繋ぐ一人として歩んでいきたいと感じています。

見学後、地元バーガーチェーン「A&W」へ。店舗のテーブルとして実際に使われている製品を見学。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
見学後、地元バーガーチェーン「A&W」へ。店舗のテーブルとして実際に使われている製品を見学。(2026年3月24日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

次回のシリーズ最後の記事では、UBCのFaculty of Forestry and Environmental Stewardship(森林学部)協力のもと、森の中でのアクティビティやラボ見学。研修最終日の先住民との対話の様子をお届けします。

寄稿者:齊藤 紗織

カナダ在住3年目。日本では地元の自動車メーカーで総務部を経験。その後、Coop留学でバンクーバーに留学し、現在はワーキングホリデーで滞在中。AK JUMPでの国際交流プログラムの企画や運営を担当している。

本研修プログラムの実施・協力組織

UBC Malcolm Knapp Research Forest(マルコム・ナップ研究林) The University of British Columbia(UBC)森林学部が管理する、5,000ヘクタールを超える広大な研究用森林です。1949年の設立以来、森林管理、生態系保護、気候変動に関する世界最先端の研究拠点として活用されています。同時に、次世代への環境教育の場としても重要な役割を担い、自然界の複雑な相互作用を体感的に学べるプログラムを提供しています。

Beaty Biodiversity Museum(ビーティ生物多様性博物館)The University of British Columbia(UBC)内に位置する、カナダを代表する生物多様性の研究・教育拠点です。200万点を超える膨大なコレクションを誇り、生命の歴史や進化、生態系の保全について発信しています。研究者と一般市民を繋ぐ架け橋として、地球上のあらゆる生命の「つながり」を深く理解するためのプログラムを提供しています。

 Douglas College(ダグラスカレッジ) ブリティッシュコロンビア州最大規模の公立カレッジであり、大学レベルのアカデミックな教育と、実践的なキャリア教育を融合させた独自のカリキュラムで知られています。「本研修では、現地の学生との交流や実際の模擬授業を通じ、生徒たちの多角的な視点と探究心を刺激する学びの場を提供しています。

ChopValue(チョップバリュー) カナダ・バンクーバー発のサーキュラーエコノミー企業。UBCの博士号を持つFelix Böck氏により設立され、世界で初めて「使い捨ての割り箸」を高品質な家具や建材へと再生する技術を確立しました。世界各地に小規模な加工拠点「マイクロファクトリー」を展開し、資源の回収から製品化までを地域内で完結させる、環境負荷の極めて低い持続可能なビジネスモデルを世界中に広めています。

武庫川女子大学附属高等学校 「高い知性」「善美な情操」「高雅な徳性」を兼ね備えた有為な女性の育成を理念に掲げ、グローバルな視野を持って社会に貢献できる女性の育成に力を入れています。本研修を通じて、自発的な探究心と国際感覚を育んでいます。

AK Jump Educational Consulting Inc. カナダ・バンクーバーに拠点を置き、年齢・障害・バックグラウンドを越えて、カナダでの留学・進学、そして多角的な学びへの挑戦を、インクルーシブなチームで支えます。小中高生の留学から、教育専門家・政策関係者・カウンセラー向けの研修まで。対話を通して問いを深め、思考を広げる学びをデザインします。

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国境を越えて—カナダで見た「命の物語」森と海が教えてくれた「共に生きる」ということ

ウェルカムスピーチの様子 (2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ウェルカムスピーチの様子 (2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

<プロローグ>
 2026年3月14日、神戸・武庫川女子大学附属高等学校グローバルサイエンスコースの生徒34名がカナダ・バンクーバーへ渡りました。
彼女たちが追いかけたのは、海から川、そして森へと繋ぐ命の循環。日本とカナダ、場所は違えど共通する「自然との共生」というテーマに向き合い、知的好奇心と感情が揺さぶられる2週間の軌跡を3回のシリーズで辿ります。 本シリーズでは、多様な背景を持つ研修リーダーやピアサポーターたちだからこそ見えた、生徒たちの表情や気づき、そして成長を、それぞれの視点から綴ります。カナダで紡がれた「命の物語」を、それぞれの思いとともにお届けします。

「森は海の恋人」という視点を学ぶ事前交流会

今回のカナダ海外研修前に、生徒たちは、現地バンクーバー近郊の現地の高校生や大学生7名とオンラインで3回つながり、日本とカナダで活気的な対話の場が生まれました。

同世代ならではの視点でカナダを語る現地生が、大学や高校生活を紹介する横で「普段どんな自然の中で過ごしているのか」「森や海、川との関わりはどのくらいあるのか」といった対話を重ねました。アクティビティリーダーとして、これを通してカナダの人々にとって、自然とともに生きることは特別なことではなく、日常の一部であることを伝えていきたいと願いました。

カナダと比べることで、日本の生徒たちは自分たちの生活を見つめ直し、「自然との距離」や「社会の在り方」について考え始めていったのです。

日本とカナダを繋ぐ哲学

まずは日本の現状をより深く知るために、宮城県気仙沼の牡蠣養殖漁師であり「森は海の恋人運動」の創設者、故畠山重篤氏の活動についても学びました。「海の環境を守り、牡蠣を守るためには、海に注ぐ川、そして上流の森を守ることが不可欠である」という畠山氏の環境哲学を知り、『ではカナダではどうなっているのだろうか?』という疑問に繋いでいくことは、人と森と海の生態系を理解する上での大きな指針となりました。

畠山氏にはUnited Nationsから森のヒーロー賞が送られています(2012年)。なぜ漁師が?と思うでしょうが、これはシリーズ最後の『森と海は恋人NPO』についての寄稿文で説明することにします。

1989年から宮城の大川上流で植林活動を続け、東日本大震災の苦難を乗り越えてなお、自然と共生する地域づくりに尽力する畠山氏の姿。今はこの意思を息子の畠山信氏がしっかり受け継いで活動をされています。

森は海の恋人NPO団体の今までの歩みを知ることで、日本国外では一体どうなっているか?という点に、生徒たちは興味を持ち、「環境問題は国境を越えた共通の課題である」と少しずつ気づいていきます。カナダのサーモンが川を遡り、森を育む仕組みは、まさに畠山氏が提唱してきた「森・川・海」の循環と繋がりそのものです。自然と人々が繋がっているのは日本国内だけではなく、世界でも同様だという認識が高まっていきます。

国際交流の中で、生徒たちはカナダの学生が当たり前のように話す自然との関わりに触れ、「自然が身近にある生活とはどういうものなのか」といった関心を持ち始め質問が出始めます。明確な問いはこの時点でまだ生まれていませんが、深く考えていくきっかけになったのは確かです。

事前研修で利用した、カナダの生態系を描く”The Salmon Forest Project”の動画資料。ここから生徒たちの「問い」が生まれました。https://salmonforestproject.ca/watch-the-film/)
事前研修で利用した、カナダの生態系を描く”The Salmon Forest Project”の動画資料。ここから生徒たちの「問い」が生まれました。https://salmonforestproject.ca/watch-the-film/)

サーモン・フォレスト・プロジェクト・フィルムについて:

数々の国際フィルムフェスティバルで優秀賞を受賞した「Salmon Forest Project Film」は、映像作家Bill Heathによるドキュメンタリー作品であり、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の沿岸雨林におけるサーモンと森林、そして人々の関係を描いています。

本作品には、先住民の知識と西洋科学の両方の視点が織り込まれており、The University of British Columbia (UBC) の研究者であるDr. Teresa Ryanらも登場します。

サーモンが運ぶ栄養が森全体の生命を支えるという循環を通して、自然のつながりの重要性と、そのバランスが失われつつある現状を静かに問いかける多くの人に観てもらいたい作品です。

対話から自分ごととして広がる学び

事前研修の目的の一部であった国際交流を経て、生徒たちの意識には大小なれど関心度の差あれど、なんらかの小さな変化が生まれているのは確かでした。これまで気にかけていなかった森や海、川といった自然が、カナダの学生との対話を通して自分にももっと関係のあるもの」として認識され始めたのです。

そうなると、

「サーモンが川や、森、海とどのようにつながっているのかを実際に見てみたい」
「先住民の人たちは自然とどう関わっているのか知りたい」

と、希望や問いが湧いてきます!

こうした具体的な関心は、「ただ海外に行く」という受動的な姿勢を、「自ら学びを掴み取る」という能動的なものへと変えていきました。

カナダと日本、場所は違えど、自然を愛し、人との関係性を考え、次世代へ資源を受け継ぎ、人とひとを繋ごうとする国民の想いは世界共通です。事前交流会は、生徒たちが「自然とのつながり」を自分ごととして捉え、グローバルな視点で未来を描き始めるための、大事な第一歩となりました。

寄稿者:山下 樹春

カナダ在住7年目。University of VictoriaにてChild & Youth Care分野を学びながら、留学中の小学生・中高生を対象とした英語学習支援、生活面のメンタリング、国際交流プログラムの引率を行っている。

自然とつながりをひらくカナダ研修の第一歩

カナダ到着後3日目に行われたウエルカムアクティビティを通して、英語やホームステイへの不安を抱えた生徒たちが、人とのつながりの中で表情をほぐし、自然や社会、環境を学ぶ第一歩を踏み出す様子を追います。

不安の先に見えた学びの景色

3月14日から29日まで、私の出身校である武庫川女子大学付属高校の生徒さんが、バンクーバーへ海外研修に来ました。私は多くのプログラムに同行し、生徒さんのサポートを担当しました。今回の研修の目的は、カナダの豊かな自然と人間の共生を肌で感じ、日本の社会や環境を見つめ直すこと。

到着して間もない研修初日。初めてのホームステイや慣れない英語、時差の疲れも重なり、生徒さんの表情には期待よりも不安と緊張が色濃く滲んでいました。「食事が合わない」「言葉が通じない」。そんな戸惑いから涙する生徒も。不安を抱えた生徒たちは、2週間の研修で何を学び成長していくのでしょうか?

研修最初の全体アクティビティはLCI Language School7階の広々とした教室から始まりました。雨模様の一日でしたが、大きな窓から光が入り、その先には遠くの山並みが見えていました。これから森や海や川へとつながっていく研修の入口として、印象的な空間でした。

生徒たちは、到着後のホームステイ先での二日間を経てこの日を迎えました。英語がうまく伝わらない不安、時差による疲れ、午前中に3校に分かれて参加した語学学校初日の緊張も重なり、表情はまだ少しかたく見えました。しかし、事前研修から交流してきたスタッフや、カナダ現地の大学・高校に通うボランティア学生さんたちと顔を合わせるうちに、少しずつ笑みがこぼれ始めました。人とのつながりが、学びの土台をつくっていくことを感じる時間でした。

研修最初の全体アクティビティを行ったLCIの教室 (2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
研修最初の全体アクティビティを行ったLCIの教室 (2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

七田式が伝える、脳の育ちとことばの見方

まずはAK Jump Educational Consulting Inc.の代表高林美樹さんによる、研修中、WOWと感じたことや問いを持ち続け、声を発信しようというウェルカムスピーチ、続いてLCI Language School校長Zoraida Alsoweis Carrascoさんからの、カナダの多文化環境で英語を思い切り楽しもうとのごあいさつがあり、その後、私から七田式右脳語学習得法についてお話ししました。

七田式教育は、脳科学の知見を土台に、右脳と左脳の働きの違い、発達年齢の特徴に合わせて子どもの力を育てていく日本で生まれた教育法です。知識の先取りだけでなく、親子の心のつながりを大切にしながら、子どもが本来持つ可能性を伸ばしていく点に特色があります。現在は世界各地でも教室が展開されています。

私は日本で17年間講師として経験を積んだ後、2010年に七田式認定フランチャイズ教室をバンクーバーに設立しました。これまで30年以上、子どもたちの可能性を信じ、その才能を引き出す教育に力を注いできました。また自身の親子留学を通して、子どもはなぜ文法や文字を知らないうちから言葉を使いこなせるのかという問いに関心を持ち、語学習得について研究を続けています。

ホストファミリーとの会話がうまくいかず自信を無くしている生徒たちに伝えたのは、『英語の聞き取りや発音がうまくできないのは能力不足だからではない』ということでした。日本語環境で育った私たちは、日本語特有の音の聞き方や発音の仕方を自然に身につけています。そのため日本語とは大きく違う英語の音をすぐに正確にとらえられないのは当たり前なのです。その話に、生徒たちは安心したような表情で耳を傾けていました。

その後は、右脳を使った記憶法にも挑戦しました。ゲーム感覚で問題に取り組むうちに、会場には笑い声が増え、最初の緊張がほどけていったように思います。

ウェルカムスピーチの様子 (2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
ウェルカムスピーチの様子 (2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

「答えのない教室」で見えた、思考する生徒たち

続いて行われたのが、バンクーバーの高校で数学の教師として勤務する梅木卓也先生による答えのない教室のレッスンです。梅木先生は、BC州のSimon Fraser大学にて、Peter Ljedahl氏が長年の研究をもとに発展させてきた教育方法を学びました。学習者が自ら考え、仲間と対話しながら理解を深めるためのレッスン作りとして世界中の教師が取り組んでいます。

梅木先生は日本で、独自の主体性を伸ばす授業方法を伝授されています。あらかじめ決まった正解を当てるのではなく、生徒が予想し、試し、修正し、対話しながら自分なりの納得解をつくっていく学びです。梅木先生は、この教育法を日本に広めることに注力し、頻繁に体験会や講演会を行い、日本からの研修受け入れにも取り組んでおられます。

生徒たちはトランプでランダムに3人のグループに分けられ、グループごとに大型ホワイトボード、マーカー1本、イレーザー1つが与えられました。この教育法では、協働グループの作り方や、書き消しできるホワイトボードの前に全員が立って考えること、マーカーやイレーザーの数までもが重要な実践の一つとされています。

最初の課題は、アラスカのカクトビックの中学生たちが、自分たちの言語であるイヌピアックに合う独自の数体系を築いた背景をもとに、提示された例から1〜20までの表し方を考えるものでした。生徒たちはアイデアを共有し、何度も書いては消し、また書き直していました。最初は遠慮がちだった声が次第に大きくなり、真剣な表情で意見をぶつけ合う姿が印象的でした。

二つ目の課題は、環境問題をテーマにしたものでした。まずは環境に悪影響を及ぼす要因を話し合い、そのあとでプラスチック包装や車通勤など与えられた10個の要因をどう分類し、何を基準に並べ替えするかを考え、その理由をことばにしていきます。この課題に正解はなく、まさに『答えのない問題』なのですが、あるグループは身近さで整理し、別のグループは影響の大きさで考えていました。同じテーマでも、どの視点から見るかで答えが変わることに、生徒たちは驚いたような表情を見せていました。

意見を出し合い課題に真剣に取り組む生徒たち。(2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
意見を出し合い課題に真剣に取り組む生徒たち。(2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
「答えのない教室」で取り組む課題を説明する梅木氏。(2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
「答えのない教室」で取り組む課題を説明する梅木氏。(2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

森、海、川、そしてサーモンへつながる学びの入口

全体研修の初日、生徒たちはまだカナダの森にも海にも川にも出かけていません。サーモンや先住民の歴史に直接触れたわけでもありません。しかし、自然と社会、環境と人とのつながりを考える準備は、すでに教室の中で始まっていました。文化や歴史に触れ、自然や社会の問題を自分ごととして捉える経験の積み重ねが、これからのカナダでの体験をより深く受け止める感性のようなものを育てていくのだと思います。

初日の活動を通して印象に残ったのは、不安や緊張を抱えていた生徒たちが、人とのつながりの中で安心を得て、積極的になり様々なことに興味を持ち出したことです。自分の考えを言葉にし、異なる意見に触れ、物事を多面的に見ようとする経験は、これから自然や社会と向き合っていくための大切な土台になるはずです。ここから始まるバンクーバーでの生活と、森、海、川、サーモン、そして先住民の文化や知恵に触れる体験が、生徒たち一人ひとりに、多様な困難に向き合いながら自ら成長していく力と自然や環境を守る責任を自らのものとして受け止める意識を育む機会になることを願っています。

寄稿者:高橋容子

七田キッズアカデミーカナダ校長。武庫川女子大学附属高校、武庫川女子大学卒業生。脳科学を取り入れた教育法のスペシャリストとして、日本とカナダで赤ちゃんからシニアまでの指導に従事。

森とサーモンが教えてくれた共生の知恵

カナダ・バンクーバーでの自然体験を通して、生徒たちはサーモンの命の循環や先住民の価値観に触れました。原生林の中での学びは、単なる環境保護の知識を超え、自然と人との深い「つながり」を再確認し、自分自身の生き方を見つめ直す貴重な機会となりました。

サーモンと森から学ぶ命の循環

午前中は語学学校でのレッスン。すべて英語で行われる授業は、日本での学習とは異なる集中力を要します。

生徒たちからは、「普段以上に頭を使うので大変ですが、その分とても充実しています。もっと積極的に参加したい」「現地の友人もでき、交流の面でも貴重な経験になっている」といった声が聞かれました。慣れない環境への戸惑いを、自らの力で「前向きな意欲」へと変えていく逞しい姿が見られました。

そして、午後のアクティビティであるCapilano River Hatchery(キャピラノ鮭孵化場)では、サーモンを軸とした自然の生態系について学ぶために、Talaysayの先住民の環境ツアーに参加をしました。原生林の中での学びは、単なる環境保護の知識を超え、自然と人との深い「つながり」を再確認し、自分自身の生き方を見つめ直す貴重な機会となりました。

Capilano Hatchery のレインフォレスト散策中の一コマ。体が感じるすべての感覚を使ってカナダの原生林を感じる生徒たち。(2026年3月17日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
Capilano Hatchery のレインフォレスト散策中の一コマ。体が感じるすべての感覚を使ってカナダの原生林を感じる生徒たち。(2026年3月17日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

現地に到着し本研修一回目の森林散策が始まります。

雨の森の中へ入ると、巨木に囲まれ静かで寂然とした空間が出迎えてくれました。ノースショア山脈の雪解け水の流れや、クリーブランドダムから放流される力強い水の音が川から広がるなかを、生徒たちは周囲にキョロキョロ目を向けながら歩いていきました。

先住民ガイドであるCultural Land Ambassadorの説明が始まると、生徒たちは真剣な表情で耳を傾け、サーモンが川を遡上する理由や自然の循環について理解を深めていきます。

大自然を目の前にして、環境や生き物への関心が高まっていく数人の生徒さん

の様子が印象的でした。日本から到着間もなく、時差や慣れないホームステイでの環境や雨ばかりの薄暗いバンクーバーの気候もあり、多くの生徒たちは森に癒されながらも疲れた表情もみられ眠そうでした。

先住民の価値観と自然とのつながり

ガイドの説明の中では、カナダの先住民(First Nations)が数千年にわたり大切にしてきた考え方についても学びました。

そこでは、私たちの生活は自然の循環の中にあり、食べ物や水、木々や植物などすべての恵みは自然から与えられているという価値観が大切にされています。

そのため、自然から受け取るだけではなく、自分たちもその循環の一部として自然へ返していく「Give Back」という考え方が重視されています。

例えば、植物は単なる薬やハーブではなく、自然との繋がりを象徴する存在として、深い感謝とともに受け取ります。「森の木々はすべてを教えてくれる先生である」という教えに触れ、生徒たちは自然そのものが人の生き方やバランスを導いてくれる精神的(Spiritual)な存在であることを学びました。

自然と自分の関係に気づく時間

先住民族の伝統的なお茶を体験しながら学ぶひととき(2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
先住民族の伝統的なお茶を体験しながら学ぶひととき(2026年3月16日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

森林での説明の途中には、お茶をいただく時間もあり、生徒たちは静かな自然の中でリラックスしながら過ごしました。

その時間の中で、水や食べ物、植物といった日常の何気ない存在が、自然の循環によって支えられていることに意識が向けられていきます。

「日本での当たり前」と「カナダでの気づき」を照らし合わせることで、自分たちの生活がいかに自然と地続きであるかを再確認する時間となりました。今回の体験は、自然を客観的な「環境」としてではなく、自分自身とつながる「存在」として捉える大きな第一歩となりました。

生徒の感想:

訪問前は想像もできませんでしたが、先住民の方々は森林を非常に大切にしており、自然と共に生きる姿勢が印象的でした。特に、食料を得るために葉を採取した際には、そのお礼としてタバコの葉や自らの髪の毛を自然に返すという文化に大きな驚きを感じました。

今回の体験は、現地でしか得ることのできない貴重な学びとなりました。

先住民の考えに触れ、カナダの森を実際に歩いてみて、改めて自分たちは日本でいったいどれだけ森を大事に生きているかを考えるきっかけにもなったようです。

寄稿者:山下 樹春

カナダの海と平和、未来を創る。ノースバンクーバーで学ぶ共生の形

大自然と都市が調和するノースバンクーバーを舞台に、食・平和・建築のプロフェッショナルを訪ねました。日系起業家の挑戦や被爆体験者の願い、環境に配慮した持続可能なまちづくりに取り組む建築家。多様な「生き方」に触れ、生徒たちの視野が日本を超えて世界へと広がっていく様子を追います。

海のエコシステムと日本の食卓|日系起業家から学ぶ「食」の未来

語学学校は3日目を迎え、クラスにも徐々に馴染んできている様子。「さまざまな国から来たクラスメイトとも打ち解け、会話を楽しめている!」と授業にも意欲的に参加している声を聞くことができました。

午後のアクティビティでは、ノースバンクーバーで「TSUKIJI KITCHEN」を経営するTSUKIJI FISH MARKET Inc.代表の疋田拓也氏を訪ねました。元築地卸販売業者の疋田氏は、現在カナダで海のエコシステムを守りながら日本とカナダをつなぐ、魚を卸す事業を展開されています。

生徒たちは、絶品のスモークサーモンを味わいながら、疋田氏の「移民物語」と「食の哲学」に耳を傾けました。単なる「美味しい魚」の提供ではなく、いかにして豊かな海を次世代に残すか。自然とビジネスを両立させる情熱に触れ、生徒たちは「食」の裏側にある環境との深い繋がりを実感していました。

「環境を守ることは、自分たちの食卓を守ること」。その言葉は、遠い世界の出来事に捉えがちな環境問題を、自分たちの生活や将来のキャリアの延長線上にあるものとして再定義してくれました。生徒たちは、普段口にする「食」の裏側にある深い繋がりを、肌で感じる貴重な機会となりました。

メープルシロップに漬け込まれた伝統的なスモークサーモンと鮭おにぎりを比べる(鮭の食べ方の味付けの違いを楽しむ)。(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
メープルシロップに漬け込まれた伝統的なスモークサーモンと鮭おにぎりを比べる(鮭の食べ方の味付けの違いを楽しむ)。(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
自身の移民物語と海洋ビジネスの展望を生徒たちに語る疋田氏。(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
自身の移民物語と海洋ビジネスの展望を生徒たちに語る疋田氏。(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

<過去を未来へつなぐ対話|被爆者・ランメル幸さんが語る平和の種>

TSUKIJI KITCHENにて自身の被爆体験と平和への願いを生徒たちに語るランメル幸さんご夫妻(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
TSUKIJI KITCHENにて自身の被爆体験と平和への願いを生徒たちに語るランメル幸さんご夫妻(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

スペシャルゲストとして、広島の被爆体験を持つランメル幸さんご夫妻をお迎えしました。被爆者としての葛藤を越え、東日本大震災をきっかけに「二度と同じ悲劇を繰り返さない」と決意し、カナダで平和活動を続けている幸さん。

その静かですが力強い言葉に、生徒たちは真剣な面持ちで聞き入っていました。過去の歴史をどう受け止め、自分たちの未来にどう活かしていくかという深い問いが生まれ、平和を「守る」ための当事者意識が芽生えた瞬間でした。

チャールズさんは、約70年前に東京大学へUBCから交換留学した際のエピソードも共有してくださいました。当時はカナダから日本へ渡る人が非常に少なく、難関大学とされる東大にもほとんど競争相手がいなかったため、比較的容易に留学の機会を得ることができたそうです。

また、日本とカナダをつなぐその経験は、現在は廃版となっている『ヴァガボンド日本を駆ける』(Fraser Journal Publishing)という書籍の中でも語られているとのことです。

<環境に配慮した次世代のエコ建築>

最後に訪問したのは、現地の建築事務所のSynthesis Design Inc.です。ここでは持続可能なまちづくりの鍵となる「エコ建築」の実践について学びました。カナダらしいメープル材をふんだんに活用し、人と自然が調和する形で設計された空間は、まさに共生の象徴です。

驚くべきは、この地で日本の伝統技法が評価されていることでした。釘や金物を使わず、木と木を連結させる「継手(つぎて)」や「仕口(しぐち)」という技法。この日本古来の知恵が「世界の持続可能性に貢献している」という事実に、生徒たちは自国の文化に対する新しい誇りと、グローバルなモノづくりの可能性を感じ取っていました。

建築家の方から伺ったのは、単なる建物の設計にとどまらない、「森と川が共存するエコシステム」という視点です。建築に使われる「木」の起源である豊かな森、そこから流れ出す海へと栄養を運ぶ川。これらすべてが繋がって一つの生命圏を作っているというお話は、疋田氏の海洋ビジネスの視点とも重なり、生徒たちに「環境保護と私たちの生活は地続きである」という深い気づきを与えてくれました。

建築事務所での模型や、木のサンプルを熱心に見る生徒たち(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
建築事務所での模型や、木のサンプルを熱心に見る生徒たち(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

さらに、スペシャルゲストとしてバンクーバー最高峰のオマカセ寿司店Sushi MAHANAを営むシェフ・起業家のYuki Aida氏が登場。この建築事務所のクライアントでもある彼女から、カナダへ渡った当時の苦労や、仕事・人生に対する信念を伺いました。

「自分のためではなく、誰かのためにエネルギーを注ぐこと」。この日本らしい献身的な精神が、多様な文化が混ざり合うカナダで最高級の評価を得ている事実は、生徒たちに「自分たちのルーツにある精神性が、世界を動かす力になる」という、何にも代えがたい自信を与えてくれました。

自身のカナダでの経験とプロとしての信念を伝えるYuki Aida氏(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)
自身のカナダでの経験とプロとしての信念を伝えるYuki Aida氏(2026年3月18日撮影 提供:AK Jump Educational Consulting Inc.)

次回の記事では、UBCの森林学部が管理する森の中での研修やキャンパスツアー・模擬授業等の様子をお届けします。

寄稿者:齊藤 紗織

カナダ在住3年目。日本では地元の自動車メーカーで総務部を経験。その後、Coop留学でバンクーバーに留学し、現在はワーキングホリデーで滞在中。AK JUMPでの国際交流プログラムの企画や運営を担当している。

<本研修プログラムの実施・協力組織>

梅木卓也(うめきたくや)
カナダの公立中高一貫校。数学教師・数学教育研究者 。兵庫県出身。2007年度のワーキングホリデーを機にカナダに渡り、学童保育や特別支援教育の支援員として教育現場に携わる。2019年度よりバンクーバー市の中高一貫校で数学教員を務め、現在はBTCの発案者であるリリヤドール教授のもとで数学教育の修士課程を修了。「答えのない教室」の著者、BTCの監訳者であり、認定講師としても活動しています。

LCI Language School
バンクーバーの姉妹カレッジ「LaSalle College」内にキャンパスを構え、最先端の設備環境で学べる語学学校です。「使える英語・実践的な会話」に重点を置いた多彩なプログラムを展開し、専門分野(アカデミック・ビジネス等)のクラスも充実。フレンドリーな校風と一人ひとりへの手厚いサポート、さらにカナダ各都市を巡りながら学べる「カナダワイド」プログラムなど、その高い教育・サービス品質で定評を得ています。

Talaysay Tours(タレイセイ・ツアーズ)
2002年に設立された、シーシェルトおよびスクワミッシュ先住民族によって運営される教育・エコツーリズム団体です。「土地・コミュニティ・自己・精神」の調和を尊ぶ先住民の伝統的な価値観に基づき、自然と共生する「本来のあり方」を伝えるフィールド教育を提供しています。

 TSUKIJI FISH MARKET Inc. / TSUKIJI kitchen
元築地魚市場の卸販売業者としての経験を持つ疋田拓也氏が代表を務める、バンクーバー拠点の海洋ビジネス企業。カナダの持続可能な漁業資源を世界へ届けるとともに、併設の「TSUKIJI kitchen」を通じて、食の背景にあるエコシステムや「次世代に豊かな海を残す」哲学を伝えています。

Synthesis Design Inc.
ノースバンクーバーに拠点を置く、数々の受賞歴を持つ建築設計事務所。自然界のエコシステムと住環境の調和を追求し、持続可能な建築(サステナブル建築)を牽引しています。

Sushi MAHANA
シェフ・起業家のYuki Aida氏が手掛ける、バンクーバー最高峰のオマカセ寿司レストラン。地元の厳選された食材と日本の伝統技術を融合した独自のダイニング体験を提供しています。

武庫川女子大学附属高等学校
「高い知性」「善美な情操」「高雅な徳性」を兼ね備えた有為な女性の育成を理念に掲げ、グローバルな視野を持って社会に貢献できる女性の育成に力を入れています。本研修を通じて、自発的な探究心と国際感覚を育んでいます。

AK Jump Educational Consulting Inc.
カナダ・バンクーバーに拠点を置き、年齢・障害・バックグラウンドを越えて、カナダでの留学・進学、そして多角的な学びへの挑戦を、インクルーシブなチームで支えます。小中高生の留学から、教育専門家・政策関係者・カウンセラー向けの研修まで。対話を通して問いを深め、思考を広げる学びをデザインします。

庭づくりとは、完成のない永遠のプロセス ―新渡戸ガーデン30年以上ぶりの大改修に込めた想い―

新渡戸稲造先生がこの世を去ってから、90年以上が経つ。

それでも先生が生涯をかけて願った「太平洋の架け橋」という想いは、今も静かに受け継がれている。

その舞台が、UBC新渡戸稲造メモリアルガーデンだ。

この庭を訪れる人の多くは、日本庭園に詳しいわけではない。それでも、庭に流れる静けさや調和、美しさに心を動かされ、何度も足を運んでしまう。

そこには、言葉では説明できない日本庭園の本質がある。

庭園には本格的な数寄屋造りの茶室があり、茶道、華道、香道など、日本文化に触れるイベントも行われている。美しい庭を眺める場所であると同時に、日本文化や精神性を未来へ伝える「生きた日本文化」でもあるのだ。

2026年、その新渡戸ガーデンで、30年以上ぶりとなる大規模改修が行われた。橋の架け替え、池護岸の修景修復、そして四阿(あずまや)の建て替え。

設計から施工まで一貫して担ったのは、Ogawa Landscape Designの小川隼人さんだ。

「このお話をいただいた時、自分の庭を造るという感覚はありませんでした」

小川さんは、そう静かに語る。

「新渡戸ガーデンには60年以上、多くの方々が守り育ててきた歴史があります。私が大切にしたのは、新しい庭を造ることではなく、この庭が本来持っていた姿を未来へ受け継ぐことでした」

長年庭園を管理してきたキュレーターの杉山龍さんも、今回の改修をこう振り返った。

「工事期間中も、多くの来園者から『完成を楽しみにしています』『また庭を歩ける日を待っています』という温かい言葉をいただきました。この庭がどれほど地域の皆様に愛されているかを改めて実感しました」

今回、小川さんに依頼した理由について杉山さんはこう話す。

「小川さんは造園だけでなく、日本建築にも深い知識と技術を持っています。日本庭園を一つの文化として理解し、設計から施工まで一貫して携わることで、図面だけでは表現できない細部まで責任を持って形にできる。それが大きな理由でした」

工事が始まってから、杉山さんが最も感銘を受けたのは、Ogawa Landscape Designの仕事への姿勢だったという。

「皆さんが常に庭のこと、そして来園者のことを第一に考えて行動されていたことです。工事中であっても来園者が少しでも気持ちよく過ごせるよう細やかな心配りをされ、その姿勢から日本のおもてなしの精神を強く感じました」

橋は、新渡戸先生が願った「太平洋の架け橋」という理念を象徴する存在。吉田茂元首相をはじめ、上皇陛下・上皇后陛下も渡られ、新渡戸ガーデンの歴史をずっと見守ってきた橋でもある。

今回の架け替えでは既存の橋脚を生かし、その上に足場を組み、一本一本のダグラスファーを削りながら美しいアーチをつくり上げた。

「図面どおりにはいきません。現場で少しずつ削り、合わせ、また削る。その繰り返しでした」

完成すると一本の橋に見えるが、その裏には何本もの材木が互いを支え合っていて、見えない部分にまで職人の仕事が積み重ねられている。

「日本庭園は、見えない部分にどれだけ手を掛けるかが、何十年先の美しさを決めるんです」

一方、技術的に最も難しかったのは池護岸の修景修復だった。

「石を据えることに、これが正解という答えはありません」

過去の改修で変わってしまった景観を、当時の資料や写真を読み解きながら本来の姿へ近づけていく。でも最後に頼るのは、長年石と向き合ってきた庭師の感性だ。

「石は一つとして同じものがありません。向きや高さが少し違うだけで、表情がまったく変わります」

そのため作業は陸からだけでは終わらなかった。ボートを池に浮かべ、水面側からも一石一石の表情を確認しながら据えていった。

「陸から美しく見えても、水面から見ると印象はまったく違います。歩く人の目線だけではなく、水との関係まで考えて石を据えていきました」

庭師は石を積むのではない。一石一石に、最も美しく見える居場所を見つけて据えていく仕事だ。

四阿は、開園当初から残る束石と差し石を生かし、それ以外を新しく造り直した。実は、施工でいちばん時間と労力がかかったのが、この四阿だった。

カナダでは、日本建築に適した乾燥材が十分に流通していない。そのため構造材にはバンクーバーアイランド産のダグラスファーを使い、原木の段階から一本一本を厳選。乾燥機で時間をかけてしっかり乾燥させるところから作業は始まった。

飛石には、京都での修業時代に親しんだ真黒石を寄付し、左官には日本から取り寄せた材料と岡山県産の寒水石を使用した。

「来園者には気付かれない部分かもしれません。でも、日本庭園は見えない部分へのこだわりの積み重ねが、庭全体の空気感や品格をつくるものなんです」

最後に、小川さんはこう語った。

「私は、庭づくりとは完成のない永遠のプロセスだと思っています。

完成した庭を見ることよりも、石を据え、木を組み、自然と対話しながら少しずつ庭が形になっていく時間が、一番好きなんです。

だから私は、設計だけでは終わりたくありません。図面では分からない石の表情、木々の枝ぶり、光や風。その場で自然と向き合いながら判断を積み重ねていくことが、私にとってのものづくりであり、庭づくりの本質です。

そして庭は、完成した瞬間から再び育ち始めます。石には苔が付き、木々は成長し、人が手を入れ、自然と時間が庭を育てていく。

私たち庭師の仕事は、庭を完成させることではありません。自然と時間へ、その庭を託すことです。

これから何十年、何百年という歳月の中で、この庭が多くの人々に愛されながら育ち続けてくれること。それが庭師として、何よりの喜びです」

新渡戸稲造先生が遺した「太平洋の架け橋」という想い。

その想いは90年以上の時を越え、多くの人々の手によって守られながら、この庭とともに未来へ受け継がれていく。

寄稿者 石井貴明(庭屋石井 京都)

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モントリオールからのアルバム 2026年6月

Parc Jean-Drapeau

写真と文:鎌田珠代

 ドーム型の建物は、Parc Jean-Drapeau(ジャン・ドラポー公園‐ l’île Saint-Hélène-サンテレーヌ島)にあるバイオスフィア(Biosphère)です。

 著名なアメリカ人建築家 リチャード・バックミンスター・フラーが手がけた、世界最大級のジオデシック・ドーム(球体構造物)です。

 1967年のモントリオール万博博覧会(EXPO67)のアメリカ館として建設されましたが、1976年の火災により外装が消失し、内部構造だけが残されました。

 現在は北米で唯一の環境博物館として公開されています。生態系や気候変動に関する問題提起、持続可能な生活について子どもから大人まで自由に学べる体験型の博物館です。

水無月の風景♪

写真と文:鎌田珠代

 今年はエルニーニョの影響で、北米の東海岸は冷夏、ヨーロッパはこれまでにない酷暑となり、熱中症で亡くなる方も増えているとのことですが、いかがお過ごしですか?

 今年もAtwaterの花市場では、数えきれないほどの夏の花々が見事に咲き誇っています。

 さて、どの子を家に連れて帰ろうかと、美人さんばかりなので毎年悩んでしまいます。

MURAL FESTIVAL

 写真と文:鎌田淳平
Instagram:Junpeke1984

 モントリオールで6月4日から14日まで開催された「MURAL Festival」では、市内各所に国内外のアーティストによる個性豊かな壁画が描かれました。建物の壁をキャンバスにした色鮮やかな作品が街並みを彩り、多くの市民や観光客が散策を楽しみながらアートに親しんでいました。

モントリオールからのアルバム 2026年5月

Montréal-Pierre-Eliot Trudeau International Airport
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Olé, Olé, Olé

写真と文:鎌田淳平
Instagram : junpeke1984

ビールの空き箱を被り注目を集めるビール売りのお兄さん
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Red Wave in Downtown Montréal
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Canada Grand Prix

Canada Grand Prixといえばモントリオール。スポーツカーのエンジン音が街に響く中、モントリオールのショッピングモール「ROYALMOUNT」では、スーパーカーやF1関連展示が来場者を魅了している。

皐月の風景♪

写真と文:鎌田珠代

Parc Saint-Louis
モントリオール市のラシーヌ(Lachine)地区にある、Quai 34(ラシーヌ34波止場)とそこに佇むラシーヌ灯台(Lachine Range Front Lighthouse)

モントリオール島の西端に位置する歴史的な街、サント・アンヌ・ド・ベルヴュー(Sainte-Anne-de-Bellevue) にあるサント・アンヌ・ド・ベルヴュー運河(Promenade du Canal)の遊歩道。

季節の彩り ♪

モントリオールからのアルバム 2026年4月

沖縄ナイト‐2026年3月28日

「沖縄ナイト」は3月28日、Collective Montreal, 397A Rue Sainte-Catherine Ouestで開催されました。

 今年はバンクーバーから、「バンクーバー沖縄太鼓」が参加しました。

写真撮影:鎌田淳平 Instagram:junpeke1984

バンクーバー沖縄太鼓の太鼓
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日本のシンガーソングライター、音楽プロデューサー、ボイストレーナー、三線室講師、沖縄県大宜味村広報大使の東風平高根さん
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弦詩のヴォーカル、Shoさんとグループ
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バンクーバー沖縄太鼓の演奏
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弦詩の演奏
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参加の皆さんの記念写真
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モントリオール・カナディアンズのファンたち

ベル・センター前

春の彩り

写真と文:鎌田珠代

春の遅いモントリオールにも、ようやく春の彩りがそこかしこで見られるようになりました。

家の近くのLachine Canal散策の様子とクロッカスなど、春一番に咲き出す花の写真です。

帰宅途中にベルセンターの横を通りましたら、外の巨大スクリーンに映し出されたスタンレーカップの試合を応援する群衆の熱気とすごい騒ぎに出会いました。さて、カナディアンズは、今年はどうでしょうか?

ラシーヌ運河(Canal de Lachine)は、モントリオール南西部にある全長14.5kmの歴史的な水路です。旧港からサン・ルイ湖まで続くこの運河は、現在はカナダ国定史跡に指定され、サイクリング、散策、カヤック、ボートなどのアクティビティが楽しめる緑豊かな都市公園として愛されています。

日本一の鉄道旅行に四国をローカル線で周遊ツアー 第15回鉄旅オブザイヤー

鉄旅オブザイヤーの受賞者と関係者(鉄旅オブザイヤー実行委員会提供)
鉄旅オブザイヤーの受賞者と関係者(鉄旅オブザイヤー実行委員会提供)

 優れた鉄道旅行に贈られる代表的な賞「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」の第15回の授賞式が2026年4月15日に鉄道博物館(さいたま市)で開かれ、ユニークな列車に乗って四国を3日間かけて周遊するクラブツーリズムの旅行商品がグランプリに輝いた。人口減少で経営環境が厳しい四国のローカル線の魅力を発信するとともに、旅行者を呼び込んで経済効果をもたらしたことが高く評価された。(共同通信社経済部次長・連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者 大塚圭一郎)

▽七つのローカル列車に乗車

 2011年度から毎年実施されている鉄旅オブザイヤーは、旅行業界でつくる鉄旅オブザイヤー実行委員会が主催。後援にJR旅客6社全てと日本民営鉄道協会、日本旅行業協会といった鉄道・旅行業界の主要団体がそろう「鉄道旅行のオールスター戦」となっている。

 第15回の旅行部門は2025年に催行または予定されたツアーを募集。応募は89件と前回を4件上回った。審査委員長の山口昌彦・月刊「旅の手帖」編集長や、筆者ら計11人の外部審査員が一次選考を通ったツアーを対象に、旅行のプロとしての企画力が感じられるか、独創性、乗車する列車や路線の魅力度などを60点満点で採点。得点が上位三つのツアーが優秀賞となり、授賞式当日の決選投票でグランプリを決めた。

東京都江東区のイベントで展示された阿佐海岸鉄道のDMV(大塚圭一郎撮影)
東京都江東区のイベントで展示された阿佐海岸鉄道のDMV(大塚圭一郎撮影)

 四国周遊の商品は、線路と道路の両方を走ることができる徳島県の第三セクター鉄道、阿佐海岸鉄道のデュアル・モード・ビークル(DMV)や、高知県の三セク鉄道の土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の観光列車「やたろう号」、先頭部に「団子鼻」を取り付けて東海道・山陽新幹線の初代営業用車両0系を模したJR四国予土線のディーゼル車両「鉄道ホビートレイン」など計七つのローカル列車に乗った。

 私は60点満点中56点と2番目に高い点数を付け、審査員コメントに「人口減少と過疎化が深刻な四国のローカル線の生き残りが厳しさを増している中で、阿佐海岸鉄道のDMVや、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の観光列車『やたろう号』など『潜在的な魅力がたくさんある』目玉列車へいざなって地域経済を盛り上げる好企画です。2026年度以降も継続し、息長く四国を応援してくれることに元松山市民として感謝しています」とのメッセージを寄せた。

グランプリを受賞したクラブツーリズムの四国周遊ツアーに携わった関係者(大塚圭一郎撮影)
グランプリを受賞したクラブツーリズムの四国周遊ツアーに携わった関係者(大塚圭一郎撮影)

 企画したクラブツーリズムの山野井眞史さんは「今後も企画をパワーアップし、四国を盛り上げたい」と意気込んだ。

▽明治時代の団体旅行を「現代風に復刻」

 日本旅行が2025年12月6、7両日に催行し、16年3月に消えた当時のJR在来線最長昼行特急と同じルートを約10年ぶりに“復活”させたツアー「大阪~長野 直通団体貸切列車『日本旅行創業120周年記念号』で行く 長野・善光寺」は優秀賞を受けた。

鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた日本旅行のツアーで走った団体臨時列車「日本旅行創業120周年記念号」(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた日本旅行のツアーで走った団体臨時列車「日本旅行創業120周年記念号」(大塚圭一郎撮影)

 JR西日本子会社の日本旅行は、2025年に創業120年を迎えた日本で最も歴史のある旅行会社。日本旅行は創業3年後の1908(明治41)年に現在の滋賀県草津市から善光寺へ貸し切り列車で向かう団体旅行を実施していた。それを「現代風に復刻した」(日本旅行)という触れ込みのツアーは、「日本旅行創業120周年記念号」と名付けた団体臨時列車で大阪駅と長野駅の間を往復し、参加者は長野市の善光寺を参拝した。

 この行程は、現在は全ての列車が名古屋と長野を結んでいる特急「しなの」が、1971年4月~2016年3月に1日1往復が東海道本線を西進して大阪駅を発着していた通称「大阪しなの」と同じ。大阪、京都、滋賀、岐阜、愛知、長野の2府4県を通る441・2キロの走行距離で、「大阪しなの」で終盤に使っていたのと同じ特急形車両383系で運転した。所要時間は片道7時間を超えた。

鉄旅オブザイヤー実行委員会の吉田圭吾委員長(日本旅行社長、一番左)と、鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた日本旅行関係者(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤー実行委員会の吉田圭吾委員長(日本旅行社長、一番左)と、鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた日本旅行関係者(大塚圭一郎撮影)

 鉄道愛好家として知られるホリプロの南田裕介マネージャーは「目の付け所と、社をまたいだ調整などのご苦労がにじみ出た名作です」とコメントした。

 残る一つの優秀賞は、阪急交通社の大阪(伊丹)空港を発着し、JRの始発・終着駅として最南端の枕崎(鹿児島県)から最北端の稚内(北海道)まで向かう4泊5日の「5つの特急と3つの新幹線でつなぐ鉄道でめぐる日本縦断の旅5日間」。参加者が楽しめるように随所で旅程を工夫しており、参加後のアンケート回答者(428人)のコース満足率は95%に上ったという。

鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた阪急交通社のツアーで利用されたJR西日本の特急「スーパーおき」(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた阪急交通社のツアーで利用されたJR西日本の特急「スーパーおき」(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた阪急交通社のツアーで使った寝台特急列車「サンライズエクスプレス」(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤーの優秀賞を受けた阪急交通社のツアーで使った寝台特急列車「サンライズエクスプレス」(大塚圭一郎撮影)

 行程の工夫が随所に見られ、利用したJR九州指宿枕崎線はJR最南端駅の西大山(鹿児島県)の停車時間が短いため、観光バスで訪れることで約20分間見学できるようにした。また、走行距離が378・1キロと昼行在来線特急としては本州で最も長いJR西日本の「スーパーおき」(鳥取―新山口)と、396・2キロと全国2位のJR北海道の「宗谷」(札幌―稚内)のそれぞれ一部区間に乗車。出雲市(島根県)から東京への移動には、人気のある寝台特急列車「サンライズエクスプレス」の「サンライズ出雲」を組み込んだ。

 鉄道写真家の櫻井寛さんは「鉄道旅行好きなら誰しもが夢見る究極の鉄道旅」と評価した。

▽ベストアマチュア賞は豪華寝台列車満喫のプラン

 他に「国土交通省鉄道局長賞」に輝いたのは、クラブツーリズムの旅行商品「飯坂電車・山形鉄道・由利高原鉄道・秋田内陸縦貫鉄道 4つのローカル列車を貸切運行!列車内では沿線にちなんだ地酒をお楽しみ!!『東北ローカル列車めぐり』と『東北地酒めぐり』のマリアージュ」。東北地方は積雪が多い冬季の旅行が敬遠されがちなのを受けて企画担当者が「少しでも地域活性化に貢献したい」と思い立ち、東北地方の豊富な酒蔵で醸造されている日本酒を貸し切り列車で堪能できるようにした。

鉄旅オブザイヤー実行委員会の吉田圭吾委員長(一番左)と、鉄旅オブザイヤーの国土交通省鉄道局長賞を受けたクラブツーリズムの関係者ら(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤー実行委員会の吉田圭吾委員長(一番左)と、鉄旅オブザイヤーの国土交通省鉄道局長賞を受けたクラブツーリズムの関係者ら(大塚圭一郎撮影)

 国土交通省鉄道局は「地域の鉄道会社が連携し、福島県、山形県、秋田県をめぐる貸し切り列車で日本酒などの地域の魅力を発信するとともに、地元の酒蔵スタッフなどによる『おもてなし』を感じる企画が地域活性化にもつながる点を評価した」としている。

 「審査員特別賞」は、JTBの「歴代編集長と行く JTB時刻表100周年記念号 首都圏貨物線の旅」が受けた。旅客列車が普段走らない貨物線を貸し切り列車に乗って楽しみ、運行する時刻表は発行されている「JTB時刻表」のフォーマットと同じ体裁で作成するなど趣向を凝らした。

 私は「2025年に創刊100年を迎えたJTB時刻表が監修し、歴代編集長が時刻表の世界へといざなうストーリー性を売りとしつつ、JTB時刻表には掲載されない貨物線を貸し切り列車で楽しむことができる鉄道ファンや時刻表好きにはたまらない企画です」とのメッセージを寄せた。

 一般から「夢の鉄道旅行企画」を募る一般部門には55件の応募があり、最優秀の「ベストアマチュア賞」は2026年度のデスティネーションキャンペーン(DC)開催地全てを網羅した栃木県那須町の自営業、橋本ちひろさんの作品「豪華3大クルーズトレイン(四季島・瑞風・ななつ星)で巡る日本一周14日間の旅~9つの観光列車にも乗車します~」が受賞。

ベストアマチュア賞に輝いた橋本ちひろさん夫妻(大塚圭一郎撮影)
ベストアマチュア賞に輝いた橋本ちひろさん夫妻(大塚圭一郎撮影)

JR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島」とJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」、JR九州の「ななつ星in九州」を乗り継いで14日間かけて日本を一周し、全てを車中泊にするなど夢のある作品なのが支持された。

 一般部門の審査員を務めたお笑い芸人の吉川正洋さんは「1つ乗るだけでもすごいことなのに、3大クルーズトレインに乗れて、さらに観光列車にもたくさん乗れちゃう『てんこ盛り感』が素晴らしかったです」とコメントした。

鉄旅オブザイヤーの旅行部門の審査員(大塚圭一郎撮影)
鉄旅オブザイヤーの旅行部門の審査員(大塚圭一郎撮影)

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「カナダ日系企業と留学生をつなぐ交流イベント」Japan Connect 2026 バンクーバーで開催

共催団体JCN・日本カナダ商工会議所、協力団体CFNスタッフおよび参加企業代表の皆様
共催団体JCN・日本カナダ商工会議所、協力団体CFNスタッフおよび参加企業代表の皆様

2026年3月25日、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で、日系企業と留学生の交流イベント「Japan Connect 2026」が開催された。多様な業界のプロフェッショナルと直接交流する機会に、正規留学生、またコーププログラムやワーキングホリデーで現地に滞在する学生を中心に346名もの参加者が来場。会場は「就職活動の第一歩を踏み出したい」「現地での仕事探しの参考にしたい」といった目的を胸に参加した学生の活気にあふれ、参加者・企業出展者双方にとって有意義な交流の場となった。

Japan Connectは、⽇本・カナダ商⼯会議所(JCCOC)とUBC⽇本⼈学⽣団体(JCN)が共催し、就職活動プラットフォーム(CFN)の協⼒を得て開催されるイベントである。JCCOCは「⽇本 とカナダをつなぐ」というミッションのもと、ビジネス・⽂化・教育・観光の各分野で⽇加の架け橋 となることを⽬的に活動しており、Japan Connectはその取り組みの中核を担う年次イベントとして 位置づけられている。今年で5回⽬を迎えた。

そこで、JCN会長の内田百香氏に、イベントづくりについて話を伺った。

JCN会長の内田百香氏
JCN会長の内田百香氏

――イベントを企画するにあたり、コンセプトや思いを教えてください。
 「正規留学生にとって気軽に参加できる“就職活動の第一歩”となる場づくりと、ワーキングホリデーや語学留学生に、すぐに働ける企業と出会う機会を提供することを意識しました。特に正規留学生にとっては、まず業界や企業を知るきっかけになればと考えています。また、仕事探しに苦労している語学留学生にとっても、効率的に企業と出会える場を目指しました。」

――昨年から改善できた点や、準備で苦労した点、それをどのように乗り越えたかを教えてください。                                     「今年はカナダ政府による留学生受け入れ数の制限により、ターゲット層の減少が課題でした。そのためSNS運用を強化し、Boost機能の活用などで集客に努めました。また、外部の方々の協力を得るとともに、新規企業の開拓にも注力し、対面での訪問・説明を行いました。」

――最後に、学生に対して本イベントをどのように活用してほしいですか。
「就職活動の進め方に悩んでいる方や、バンクーバーでの仕事探しに苦戦している方にとって、不安を解消するきっかけになればと思います。ぜひ“就活の第一歩”として活用していただきたいです。」

内田氏は、学生一人ひとりに寄り添うような姿勢で、イベントへの思いを語った。

CFNの担当者でキャリアコンサルのスペシャリスト、実川奈那氏
CFNの担当者でキャリアコンサルのスペシャリスト、実川奈那氏

協力団体の一つであるキャリタス(CFN)の実川奈那氏は、バイリンガル人材を対象としたキャリアフォーラムを通じ、長年にわたりグローバル企業と学生との出会いの場の提供に携わってきた。現在はニューヨークを拠点に活躍しているが、バンクーバーでの人材支援にも積極的に関わっており、今回はそのネットワーキングと知見をもってイベントに参加した。

実川氏は、「バンクーバーで学生のキャリア形成を支援できることを大変うれしく思い、参加しました。キャリアの機会を提供することに大きなやりがいを感じています」と語った。

出展企業は21社にのぼり、その中から数社の担当者に、Japan Connect参加の目的や意義について話を伺った。

まず紹介するのは、カナダで3店舗のレストランを展開し、“劇場型おまかせ”というユニークな演出でミシュランの星を獲得した「Okeya Kyujiro(桶屋久次郎)」の創業者、松田卓也氏である。

Okeya Kyujiro(桶屋久次郎)の創業者、松田卓也氏
Okeya Kyujiro(桶屋久次郎)の創業者、松田卓也氏

松田氏は、店舗を2月にオープンさせたばかりの京都から本イベントのために来加。その意義について次のように語った。

「これまで飲食業界には、このような機会は多くありませんでした。飲食店の社会的な価値を高めたい、そして新しい時代において、飲食業界がより正当に評価されるべきだという思いから参加しました。食を通して日本文化を世界に伝えたい――そのビジョンが、こうした活動に参加する意義につながっています。」

また同氏は、食文化を“雅”に伝えることをコンセプトに掲げていると語る。ディナーでは、シルク・ドゥ・ソレイユを想起させる劇場型おまかせコースを提供し、ランチでは懐石・茶・おまかせを融合させた「お茶かせ」が人気を集めているという。「お茶かせ」といった新たな言葉も生み出し、独自性を追求している点も特徴だ。

さらに、「産地の生産者や酒蔵とのつながりを大切にしており、酒蔵にはこれまで50ヶ所以上訪問しています。そうした出会いから新しいジャンルを創造していく。この姿勢は、ある意味ベンチャー企業に近いのかもしれません」と語った。

なお、日本では京都店に続き、今後は銀座店の開業も予定されている。今後の展開にも注目が集まる。

次に紹介するのは、双日カナダ会社(Sojitz Canada Corporation)の佐野信広氏である。佐野氏は、日加間の経済活動に寄与するバンクーバー日本商工会(懇話会)の会長も務めている。今回は、本イベントへの参加に対する期待と、バンクーバー社会における懇話会の役割について話を伺った。

Sojitz Canada Corporation Executive Vice Presidentでバンクーバー日本商工会(懇話会)会長の佐野信広氏
Sojitz Canada Corporation Executive Vice Presidentでバンクーバー日本商工会(懇話会)会長の佐野信広氏

「これまでカナダで学ぶ学生さんとの接点はあまりなく、直接雇用した経験もありませんでした。今回初めて参加することで、どのような学生さんがいらっしゃるのか、新たな出会いを楽しみにしています。もし弊社に興味を持っていただければ、正式な採用プロセスを通じて前向きに検討したいと考えています。」

また、バンクーバー日本商工会の活動については、バンクーバー補習授業校の運営および支援に携わっている点を挙げ、「次世代のグローバル人材の育成に関わることは、会としても個人としても大きな意義を感じています」と語った。

続いて、ガスタウンとウィスラーで土産店「Gifts & Things」を2店舗展開し、さらに昨年4月にはキャラクターショップ「The Little Things」をオープンさせたCrescent Moon Enterprises(オーナーは佐藤広樹氏)所属の小野塚 裕香氏である。

Gifts & ThingsとThe Little Thingsを運営するCrescent Moon Enterprisesの小野塚 裕香さん
Gifts & ThingsとThe Little Thingsを運営するCrescent Moon Enterprisesの小野塚 裕香さん

裕香氏は、昨年のJapan Connectを通じてスタッフを採用した実績があり、今年も新たな若手人材(ヤングプロフェッショナル)の採用に意欲を持って本イベントに参加した。

さらに、日系ビジネスコミュニティとして知られる「企友会」の会長も務める白石有紀氏も本イベントに参加した。白石氏は移民コンサルタントとして「ビザJPカナダ社」を運営するビジネスオーナーであり、今回がJapan Connect初参加となる。参加の背景について、次のように語った。

ビザJPカナダ社のビジネスオーナーで企友会会長の白石有紀氏
ビザJPカナダ社のビジネスオーナーで企友会会長の白石有紀氏

「当初は、日本へ帰国して就職を目指す学生向けのイベントだと思っていました。しかし、現地に残ってキャリアを築きたいと考える学生も多いと知り、それであればビザ申請などイミグレーション関連でお手伝いできることがあるのではないかと考え、参加を決めました。」

また、自身のイミグレーションファームについては、「専門家6名に加え、アシスタントを配置しています。それぞれの専門家がファミリークラス、難民受け入れ、就労ビザなど異なる分野を担当しており、幅広いケースに対応できる体制を整えています」と説明した。

煩雑になりがちなビザ手続きにおいて、留学生や若手人材にとって心強い存在といえるだろう。

最後に、日本・カナダ商工会議所(JCCOC)において本イベントを担当したウィットレッド太朗氏に、同会の取り組みや本イベント参加の意義について話を伺った。

日本・カナダ商工会議所では事務局長を務めるウィットレッド太朗氏
日本・カナダ商工会議所では事務局長を務めるウィットレッド太朗氏

ウィットレッド氏は、日本・カナダ商工会議所(JCCOC)について、「日本とカナダをつなぐというミッションのもと、ビジネス、文化、教育、観光といった分野で日加の架け橋となることを目的に活動しており、Japan Connectもその取り組みの一環である」と説明。

また、本イベントの目的について、「一つは、カナダで活躍する日系企業のプレゼンスを高めること。もう一つは、日本とカナダの企業と学生が直接つながる機会を創出すること」と述べた。「キャリアフェアという形式を通じて、次世代のビジネスパーソンと企業が出会い、日加間のつながりがより一層深まることを期待しています」と強調。

ウィットレッド氏は「参加する学生は目的意識が高く、企業側にとっても大きな刺激になっています。ブランディングや採用にとどまらず、次世代とつながる場として、多くの企業にとって意義のある機会なのでは」と語り、本イベントの重要性を再確認させた。

こうして、日系企業と留学生が一堂に会した「Japan Connect 2026」は、大盛況のうちに幕を閉じた。また、日本・カナダ商工会議所のブースには、「日本とカナダをつなぐ」というビジョンに共感し、「日加を結ぶ架け橋の一助となるような多様なコミュニティづくりに参加したい」と考える多くの学生が訪れた。本イベントは、学生にとって日系企業と直接関わる貴重な機会となり、キャリア形成に大きなヒントを与えるとともに、将来の日加間の交流の発展にもつながることが期待される。日本・カナダ商工会議所は、今後もこうした人材交流と関係強化を一層促進する取り組みを続けていく。

寄稿:日本・カナダ商工会議所
文責:日本・カナダ商工会議所
撮影:日本・カナダ商工会議所

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おれ伝/伝言館/映画マイプレイスー保養という選択他:15回目の311が過ぎて思うこと

おれたちの伝承館:福島県南相馬郡小高区南町2-23。写真提供 橋爪亮子
おれたちの伝承館:福島県南相馬郡小高区南町2-23。写真提供 橋爪亮子

橋爪亮子

 旧モントリオールブレテンに過去数回311周辺に寄稿させていただいご縁がありました。

 東日本大震災の被災各地では慰霊祭が執り行われ、東京の代々木公園では15年脱原発集会が8500人参加で、3月21日の「原発のない福島を」を合言葉にした(福島)県民集会は1100人参加だったそうです。日本外国人特派員協会ではChallenging the Narrative: Thyroid Cancers in Fukushimaと題した311子ども甲状腺がん裁判弁護団長井戸健一弁護士と牛山元美医師の記者会見がありました。この裁判は震災当時子どもだった8人が原告となっています。震災当時福島県内居住者の18歳以下で統計から漏れている人も含め、現在412名が甲状腺がんと診断されています。

 震災から15年目にして海岸で見つかった遺骨がDNA鑑定により行方不明の我が子と判明したり、宮城県の大川小学校(児童教員74人が津波で死亡)で子を亡くした親が語り部となったといったニュース、そして私の出身地でもある福島県いわき市からは3月11日の卒業祝いの給食用のお赤飯を破棄というニュースがありました。

 15回目の3月11日をどうとらえ、認識、記憶していくのか。原発災害においてはまだ終わっていないという声があり、実際、原子力緊急事態宣言は発令中で、その通りとも思います。

 誤解も生みそうですが、特定の日や過去の出来事にある意味を持たせ、行動や思考や祈りを自然のことのように促してしまう、あるいはそれを意識すべきだと思わせてしまうような発信をすることをしたくない気持ちがあります。

 と、そう書きながらも、3月11日は個人的には蝋燭を灯し、オンライン朗読と小さな祈りの会をしました。あの日に東北被災三県(岩手、宮城、福島)で誕生した生命は104あり、朗読したものはその中の数名の親の手記でした。誕生日も命日も原爆投下日も建国記念日も元日もある1日です。

 記憶や痛み、歓喜や感動、主義や信条も持ち続けることは容易ではないと思います。もちろん忘れるという贅沢が許されない人たちがいるという2000年当時の国連事務総長のKofi Annan氏がチェルノブイリ原発事故の悲劇について言ったように。

 世界各地から日々沢山のニュースが溢れ情報戦の有様です。当事者と、その渦中の人々や場所と直接つながる人々。自分の生活とはかけ離れた出来事としてしか受け止められない現実。かけ離れているように見えて、共通項や、痛みを感じること。またそれらを超えた世界や現象の捉え方もあるように思われます。

  個人が経験し、知覚、認識し、体感、記憶し続ける事柄は限られていると思います。見える情報やデータとしてではなく、より深いところに届き、私たちはなんなのかという本質に気づかせるツールや時間が今、必要なのかもしれないと思います。それは、一人自然の中にいる時間かもしれませんし、人との対話かもしれませんし、ゆったりお風呂につかる時かもしれませんし、音楽や文学などの芸術に触れた時かもしれません。あるいは、それらさえも必要なく、1日を一瞬を感謝し悔いないように生きることだけかもしれないとも。同じく唯一の人生を生きている他者や人間以外の生き物や偉大なものと時空を超えてつながった先にある生命と現象への慈愛と受容が希望への鍵のような気持ちがします。

 今月、オンラインと対面ハイブリットの上映会とトーク「マイプレイスー保養という選択」(2025年)をオンライン視聴しました。福島県や関東からの子ども受け入れの保養プログラム ‘せとうち交流プログラム’ の昨年の様子を撮ったものです。保養プログラム設立者で自身も震災後岡山県へ母子避難をしてきた蝦名(えびな)宇摩さんと彼女のパートナーでもある渡辺嶺也監督がゲストの上映後トークは東京の隣町珈琲というブックカフェで興味ぶかいものでした。

 蝦名さんは奄美大島にあった共同体で育ち、津軽三味線奏者でもあり、渡辺監督は国際開発支援分野でアフリカにいた経験があり、普段はパン屋の裏側を撮影、二人とも面白いバックグランドを持っています。ファシリテーターはこの映画のプロデューサーであり、核をめぐる3部作「ヒバクシャー世界の終わりに」「六ヶ所村ラプソディー」「ミツバチの羽音と地球の回転」、2017年にモントリオール上映会をした原発事故後の福島県の親子を撮った「小さき声のカノン」等を撮った鎌仲ひとみ監督でした。

 保養運営側も来てくれる人がいるからやめられないという現実もあるでしょうが、他人の喜びを自分の喜びとして続けていることが感じられます。

 子どものきらきらとした表情、瀬戸内の海や山での遊びと学び、親の普段は口にしづらい言葉、身体と心の緩みも伝わってきます。ご飯、台所や地元のボランティアの人たちや裏方の場面も。

 5泊6日のこの保養キャンプがあるからこそ、他の360日を生きていけるといった親の言葉にはなんともいえない気持ちになりました。保養にきている子どもは原発事故後に生まれたいわゆる2世です。

 この映画は東京ドキュメンタリー映画祭2025で準グランプリと観客賞を受賞しています。3.11福島を忘れないをテーマに2012年から続けられている東京の手作りの江古田映画祭で来年はこの映画が上映されそうです。ぶんぶんフィルムズ配給で自主上映も可能です。https://rb.gy/jewk6c

 福島県は、日本で北海道、岩手に次いで3番目に面積が広く、東西に166キロ、浜通り、中通り、会津の3地方に分かれています。

 Sayonara Nukes Berlinのウェブサイト(https://sayonara-nukes-berlin.de/ja/)で共有された武藤類子さんのメッセージにもある福島イノベーション・コースト構想は原発のある浜通り地方です。2020年開館の立派な東日本大震災/原子力災害伝承館があります。今年はその近くにホテルも開業予定です。

おれたちの伝承館:福島県南相馬郡小高区南町2-23。写真提供 橋爪亮子
おれたちの伝承館:福島県南相馬郡小高区南町2-23。写真提供 橋爪亮子

 私はこの機会に、同じ浜通りにありながら、上記のような公的な施設とは別の手作りの施設について共有します。南相馬市小高の「おれたちの伝承館(通称おれ伝)」と双葉郡楢葉町の宝鏡寺境内の「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館(通称伝言館)」です。両方とも設立者とそれを支える賛同者、ボランティア、訪れる人の尽力と応援によって成り立っています。

 おれ伝は2023年設立の震災と原発事故の記憶をアートで伝える美術館です。もやい展というアート展がきっかけと言ってよいかと思います。アーティスト始め、多くの協働者、賛同者により設立し運営されており、館長は写真家中筋氏です。2025年3月に「おれでん文庫」と放射線測定室もオープンし、この3月11日には敷地に建てたHiroshima, Nagasaki, Bikini, Chernobyl, Three Mile Islandのサインのもとに、広島で被爆したイチョウ2世の苗を地元小高小6年生と他70名の参加者で植樹したそうです。展示の入れ替わりもあり、イベントも開催しています。館長が不在の時も、地域の方々のボランティアで運営されていますが、開館日をウェブサイトで確認後におでかけください。遠方からの訪問者には伝える見せる場所で、地元の人が来た時には聞き役にまわる場合もあるようです。特別な場所になりつつある場所です。入館は寄付制でウェブサイトから応援ができます。https://suzyj1966.wixsite.com/moyai

ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子
ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子

 「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館(通称伝言館)」は浄土宗宝鏡寺の(故)早川篤雄住職が私財を投じて2021年に開館された平和資料館です。早川住職は2022年に亡くなりましたが彼の遺志を継いだボランティア丹治杉江さん他により維持されています。膨大な資料や物品の他、よい庭にはアンネの薔薇、原爆の火、「原発悔恨・伝言の碑」、みごとな桜もあります。丹治さんは避難先の群馬県から伝言館を引き継ぐためにいわき市に戻った人です。同じ浜通りでもいわき市もひろく、丹治さんは自宅から車で高速道路も含め40分以上もかかり、常駐ではありませんが、伝言館はいつでも開いています。私が行った時はタイミングよく団体のお客があり、隣接の未来館でその団体と一緒に沢山の資料もいただき、丹治さんの話を聞くことができ幸いでした。伝言館・未来館の友の会のシステム(年間費)もあります。

ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子
ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子

 浜通りは新幹線の通る中通りと違い、行きづらく、原発もあり、是非行ってくださいとは大きな声では言わないほうがよいのでしょう。実際私が帰省中に地震があり、携帯電話のけたたましい地震速報アラームで飛び起き、収束作業中の福島第一原発のことを思うと、背筋がすーと寒くなりました。福島第一原発で毎日作業員も沢山働いていますし、もう地震にも慣れたという人もいます。

 でも、特に旧避難区域の市町村には移住支援や企業支援金等の助成金制度もあり、避難元から戻る人(少数)のほかに県外からの移住者も日々の暮らしを営んでいます。山や海の景色はそのままの場所もそうでない場所も、震災の跡があり、複雑な現地の実情の片鱗でも実際見て感じてもらえたらと思います。

 話が飛びますが、東日本大震災のあった日は、ポーランド人友人がモントリオールに滞在中で、チェルノブイリ原発事故後に安定ヨウ素剤を飲んだことを話してくれました。現在スイス在住の彼女が、この3月11日に聞いたスイス発ポッドキャストは横浜から福島県に移住した子ども連れ夫婦のインタビューだったとWhatsAppメッセージで伝えてきました。内容は福島の方が経済的で、家が広く、安易に仕事が見つかり、仕事と家庭のバランスがとれ、子どもとの過ごす時間が多くなった等の希望の話でした。その家族にとってはきっとそれが真実で、感謝で生きているのだとも思います。そのような語りの方がより伝わるようになっている昨今とは思います。

 Bulletin of the Atomic Scientistの記事には、長くて英語ですが、丁寧に書けているので興味ある方は読んでみてください。

参考資料

Fukushima at 15 ―
Living with radioactive hot spots and stigma as Japan’s government pushes for more reactors (Bulletin of the Atomic Scientist, March 9, 2026) https://thebulletin.org/2026/03/fukushima-at-15-living-with-radioactive-hot-spots-and-stigma/

おれたちの伝承館 https://suzyj1966.wixsite.com/moyai

伝言館 https://touhoku-ohenro.jp/junreiti_detail.php?id=134

東日本大震災から15年:被災地と福島第1原発の現状 (Nippon.com, 2026年3月16日)https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02705

Press Conference: Challenging the Narrative: Thyroid Cancers in Fukushima https://www.fccj.or.jp/event/press-conference-challenging-narrative-thyroid-cancers-fukushima

甲状腺検査の利益めぐり応酬〜福島「県民健康調査」検討委員会(OurPlanet-TV, 2026年3月25日)https://www.ourplanet-tv.org/52594/

311甲状腺がん子ども支援ネットワーク:https://www.311support.net/news-260303/

原子力市民員会(CCNE: Citizens’ commission of Nuclear Energy)『見ればわかる 知れば変わる ─ 福島原発事故 15 年の現在地』」https://www.ccnejapan.com/reports/20401

ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子
ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子
ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子
ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館。楢葉町宝鏡寺:福島県双葉郡楢葉町大谷寺下91。写真提供 橋爪亮子

お詫びと訂正:

先月配信された記事の内容に関してお詫びと訂正があります。
許可なく個人名を出したこと、事実と違うと解釈されえること、必要な情報がかけていたこと、わかる人にしかわからない書き方がありました。
当事者と関係者と読者の皆様に深くお詫び申し上げます。

モントリオールからのアルバム 2026年3月

St. Ptrick’s Day Parade

3月22日(日)モントリオールダウンタウン

写真:鎌田淳平
Instagram:junpeke1984

***

THE RING

写真:鎌田珠代

L’Anneau(ラ・ノー/ザ・リング):モントリオールのダウンタウンにある複合施設。Place Ville Marie (PVM) エスプラナード(広場)に設置された、巨大な円形のモニュメント。ケベック州を代表する景観建築家 Claude Cormier (CCxA) 設計。直径30メートル、重さは約23トン。PVMの開館60周年を記念し、2022年6月に設置。Place Ville Marieの大階段の上に吊り下げられており、マギル大学やモン・ロワイヤルへと続く視覚的な軸を縁取っている。

象徴的な意味 都市のつながり: モントリオール市、市民、そして訪問者の間の強い絆を象徴しています。視覚的演出: 夜間には、モン・ロワイヤルの山頂にある十字架の照明と連動したライトアップが行われます。

Christ Church Cathedral

クライスト・チャーチ大聖堂 Cathédrale Christ Churchは、カナダのモントリオールにある英国国教会の大聖堂で、カナダ英国 国教会のモントリオール教区の本部です。サント・カトリーヌ・ウエスト通り635番地、ユニオン通りとユニバーシティ通りの間に位置しています。ゴシック・リバイバル様式の建物は1857年から1859年にかけて建設されました。1988年以来、国定史跡となっています。

Saint James Church

カナダのケベック州モントリオールにあるセント・ジェームズ合同教会(St. James United Church)です。

セント・ジェームズ合同教会の概要

場所: モントリオールのダウンタウン、サン・カトリーヌ通りに位置しています。
歴史: 1887年から1889年にかけて建設され、建設当時はカナダ最大のメソジスト教会でした。
建築スタイル: 中世フランスのゴシック・リバイバル様式で設計されています。
指定: 1996年にカナダの国立歴史サイトに指定されました。

CCA(Centre of Canadian Architecture)

カナダ建築センター(CCA)の彫刻庭園内に設置されている作品です。

作品の詳細:タイトル“The Tribute: Column-no. 11”(放題:献辞第11号柱)
作者:Melvin Charney(メルヴィン・チャーニ)
制作年:1987年~1989年

この彫刻は、庭園内にいくつか配置されている「寓意的な柱(Allegorical Columns)」の一つです。ギリシャ神話などの古典的な建築要素であるペディメント(三角形の屋根部分)や列柱を、現代的な鉄骨構造と組み合わせたユニークなデザインが特徴です。

Freezing Rain

この3枚の写真は、3月12日のfreezing rainで凍りついたプラムの枝ですが、一夜明けて朝の陽の光に輝くそれは、まるで宝石のようで見惚れてしまいました。

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