鉄道開業150年記念のJR堪能ツアーが日本一に 22年度の鉄旅オブザイヤー

鉄旅オブザイヤー2022年度の受賞者ら=2023年4月19日、さいたま市の鉄道博物館(鉄旅オブザイヤー実行委員会提供)
鉄旅オブザイヤー2022年度の受賞者ら=2023年4月19日、さいたま市の鉄道博物館(鉄旅オブザイヤー実行委員会提供)

 日本の優れた鉄道旅行商品を選ぶ「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」の2022年度授賞式が4月19日に鉄道博物館(さいたま市)で開かれ、22年の鉄道開業150年を記念し、JRの名物列車を堪能しながら13泊14日で日本列島を周遊した日本旅行のツアー(参加費150万~200万円)がグランプリを手にした。

 鉄旅オブザイヤーは11年度から毎年実施しており、12回目の今回は旅行会社が22年中に催行または決定した国内の鉄道旅行を募集。前年度より3件増の86件の応募があった。審査は主催する鉄旅オブザイヤー実行委員会と、芦原伸委員長(日本旅行作家協会専務理事)や大塚圭一郎・共同通信社ワシントン支局次長(元ニューヨーク特派員、VIA鉄道カナダの公式愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員)ら計10人の外部審査員が携わった。旅行のプロとしての企画力が感じられるか、独創性、乗車する列車や路線の魅力度などを採点し、主要4部門賞の中から授賞式当日にグランプリを選んだ。

鉄旅オブザイヤー2022年度のグランプリ受賞ツアーで乗車したJR東日本の「カシオペア」=2017年2月27日、埼玉県で大塚圭一郎撮影
鉄旅オブザイヤー2022年度のグランプリ受賞ツアーで乗車したJR東日本の「カシオペア」=2017年2月27日、埼玉県で大塚圭一郎撮影

 グランプリに選ばれたのは団体旅行が対象のエスコート部門賞を受けた商品で、「一生に一度しかできない思い出に残るような鉄道の旅」をテーマにした。定期運行を既に終えたJR東日本のオール2階建て寝台客車「カシオペア」や、JR九州の特急「ゆふいんの森」などに揺られながら33都道府県を通った。

 授賞式では大塚審査員の「『鉄道旅行の集大成』と呼ぶべき絢爛豪華な商品だ。JRグループの人気列車と厳選した宿泊施設を組み込みつつ、2週間の長丁場になることから参加者の体への負担を考慮して出発時刻を遅めにし、比較的早い時間に投宿できるように配慮した企画力が素晴らしい」とのコメントが紹介された。

 他の主要4部門賞では、個人向けのパーソナル部門賞はJR東日本の観光列車「びゅうコースター風っこ」に揺られながら一ノ蔵と寒桜酒造の地酒を試飲し、宮城県の世界農業遺産「大崎耕土」への理解を深めたJTBの旅行商品が受賞。

 鉄道愛好家向けの「鉄っちゃん部門賞」は、30年度末の開業が計画されている北海道新幹線の新函館北斗―札幌間(約212キロ)延伸のトンネル工事現場を見学するなど“大人の社会科見学”の趣にしたクラブツーリズムの商品が選ばれた。

 JRグループと自治体が手がける大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」を対象にしたDC部門賞は、西九州新幹線が武雄温泉(佐賀県)―長崎間で部分開業した22年9月23日に登場したJR九州の観光列車「ふたつ星4047」などで佐賀・長崎DC期間中に九州を周遊したクラブツーリズムの旅行商品が受けた。

 4部門賞以外では、東武トップツアーズの栃木県の第三セクター鉄道、わたらせ渓谷鉄道のトロッコ列車や古河足尾歴史館(同県日光市)のガソリン機関車が引く列車に乗った日帰り商品が国土交通省鉄道局長賞に輝いた。

 審査員特別賞には、女性アイドルグループ「SKE48」のメンバーとともに岐阜県の第三セクター鉄道、長良川鉄道の観光列車「ながら」を乗車するツアーを含めた名鉄観光サービスの「観光列車ながら3部作」が選ばれた。

 アマチュア部門には53件の応募があり、「ベストアマチュア賞」は東京都立大学まちのお話し会プロジェクト部、鈴木倖陽さんの作品「修学旅行リベンジ 鉄道で密を避けながら京都の歴史をたどる旅」が選出された。

(共同通信社ワシントン支局次長・鉄旅オブザイヤー審査員 大塚圭一郎)

鉄旅オブザイヤー2022年度のグランプリ受賞ツアーで乗ったJR九州の特急「ゆふいんの森」=2019年3月26日、大分県で大塚圭一郎撮影
鉄旅オブザイヤー2022年度のグランプリ受賞ツアーで乗ったJR九州の特急「ゆふいんの森」=2019年3月26日、大分県で大塚圭一郎撮影

大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社ワシントン支局次長・鉄旅オブザイヤー審査員。
これまでに米国に通算約9年間在住。「お気に入りの大リーグ球団はトロント・ブルージェイズ、スターバックスよりもティム・ホートンズ、メープルシロップはカナダ産以外は買わない」と公言するカナダびいき。
VIA鉄道カナダの公式愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。長期休暇になるとカナダに駆けつけて10州全てを訪れた。次は3つの準州の踏破を目指す。

「47News」鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」: https://www.47news.jp/railroad_club

「47News」47リポーターズ(VIA鉄道に関する記事も掲載されている): https://www.47news.jp/47reporters

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