本塁打量産の岡本内野手が活躍のブルージェイズ、本拠地の試合観戦は「サプライズ」の連続

トロント・ブルージェイズの本拠地「ロジャーズ・センター」(大塚圭一郎撮影)
トロント・ブルージェイズの本拠地「ロジャーズ・センター」(大塚圭一郎撮影)

 プロ野球大リーグ球団(MLB)で唯一アメリカ国外にあり、カナダ最大都市のオンタリオ州トロントに本拠地を置くのが「トロント・ブルージェイズ」だ。4年で総額6000万ドル(1ドル=160円で96億円)の大型契約で読売巨人軍から移籍し、本塁打を量産している岡本和真内野手が主軸となっている。本拠地「ロジャーズ・センター」へ足を運び、岡本内野手が4番で出場した試合を観戦すると、「サプライズ」の連続だった。

(連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者・共同通信社経済部次長 大塚圭一郎)

守備中のトロント・ブルージェイズの岡本和真内野手(大塚圭一郎撮影)
守備中のトロント・ブルージェイズの岡本和真内野手(大塚圭一郎撮影)

【トロント・ブルージェイズ】プロ野球大リーグ(MLB)で唯一のアメリカ国外にある球団で、カナダ最大都市のトロントに本拠地を構える。アメリカンリーグ東地区に所属。2025年は同じ勝率で並んだニューヨーク・ヤンキースを破って地区優勝を果たしたが、ワールドシリーズではナショナルリーグ西地区の球団「ロサンゼルス・ドジャース」を相手に3勝4敗で敗れた。
 1992、93年は2年連続でワールドチャンピオンに輝いた。日本人選手では元読売巨人軍の岡本和真内野手が現役のほか、五十嵐亮太投手、川崎宗則内野手らがかつて在籍していた。
 本拠地「ロジャーズ・センター」は屋根が開閉するドームタイプの球場となっており、天候に左右されることなく観戦できる。観客席は3層になっており、ブルージェイズ戦では最大4万9286人を収容できる。

▽大谷選手に続き、岡本内野手の快音も期待

ロジャーズ・センターのフィールドから見た様子(大塚圭一郎撮影)
ロジャーズ・センターのフィールドから見た様子(大塚圭一郎撮影)

 大リーグ球団「ロサンゼルス・ドジャース」の大谷翔平選手ら日本人選手の活躍を背景に、大リーグが盛り上がりを見せている。その一つが、岡本内野手が2026年に加わったトロント・ブルージェイズだ。岡本内野手が本塁打を量産していることもあり、「岡本選手が本塁打を打つ場面を間近で見たい」(カナダ在住の日本人)という声を聞く。

 私は前任地のアメリカの首都ワシントンに駐在していた際、投手と打者の「二刀流」で活躍する大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャース対ワシントン・ナショナルズの試合を観戦。大谷選手が「カキーン」という豪快な打音を響かせながら、大アーチを外野席に放り込む様子を目の当たりにして感激した。

 好きなカナダを訪れ、ブルージェイズを応援し、特に岡本内野手をバットの快音を聞ければ気分が高揚するのは間違いない。欲を言えば、本塁打を豪快に放つ場面をぜひ見たい。

 そんな期待を胸にし、トロント訪問時にロジャーズ・センターへ向かった。

▽中心駅から徒歩10分

 ロジャーズ・センターは、トロントの主要駅ユニオン駅から徒歩10分という交通至便な立地だ。ユニオン駅にはトロント交通局(TTC)地下鉄1号線(ヤング・ユニバーシティ線)、トロント・ピアソン国際空港と結ぶユニオン・ピアソン・エクスプレス(UPエクスプレス)、近郊と結ぶGOトランジットの列車、都市間輸送を手がける国営鉄道会社VIA鉄道カナダの列車も発着する。

 訪れた2026年5月26日にはオンタリオ州観光局「デスティネーション・オンタリオ」のご厚意により、試合前にガイドが球場内を案内してくれる「ボールパーク・ツアーズ」にも参加させてもらった。試合開催日に複数回設定されており、私が参加したのは午後3時15分に始まるツアーだった。料金は40カナダドル(1カナダドル=115円で4600円)だ。

 訪問前日に注意事項を伝えるメールが届き、ボールパーク・ツアーズの入場券、開始時刻の15分前までに到着するように促し、試合の観戦券ともにスマートフォンのデジタルチケットを持参するように明記している。「チケットの(画面を撮影した)スクリーンショットや、印刷したチケットは受け付けません」と警告していた。

 セキュリティー上の理由から荷物は高さ16インチ(約40センチ)、横16インチ、奥行き8インチが上限となっている。また、ロジャーズ・センターに参加するためにいったん入場すると「その後の試合も含めて途中出場はできない」そうだ。

 注意事項を確認した上で、私は入場口の「6A」ゲートへ向かった。

▽入り口で早くも万事休す!?

 6Aゲートの前にはボールパーク・ツアーズの予約客が行列しており、中へと順番に案内された。今季は1977年の初試合から50年目のシーズンに当たるため、「50」の数字が入った球団ロゴが壁に装飾されている。

 球場入り口でスマートフォンの画面に表示したボールパーク・ツアーズと試合の両方のチケットを読み取り機でスキャンしてもらうと、ツアーに参加できる仕組みだ。ところが、最初のサプライズが早速訪れた。

 ダウンロードしたはずのボールパーク・ツアーズのチケット画面を開けないのだ。試合の観戦券はスキャンしてもらったが、ボールパーク・ツアーズのチケット画面をなぜか開けない。

 万事休すと思いきや、救いの手を差し伸べてくれたのが球場の係員だった。ボールパーク・ツアーズのチケット画面を開こうと試みてくれたものの、難しいと分かったため「それではチケットを受領した電子メールを見せてください」と言われた。受信したメールを確認すると、入場させてくれた。

 後から「他にも日本で使っているスマホを持ってきた人で、ボールパーク・ツアーズのチケット画面を開けないトラブルが起きた人がいた」と聞いた。ただ、購入していることを係員が確認すると、入場させてもらえたという。

 このときに対応してくれた係員も含め、誘導係や売店の販売員といったロジャーズ・センターの係員はいずれも笑顔で愛想良く対応してくれた。とても素晴らしいことで、彼らの奮闘ぶりもブルージェイズファンを球場に引き寄せる大きな原動力になっているのは間違いない。

▽会員制ラウンジにあったものは

 ツアーでは、ガイド役のマットさんが球場の3塁側にある会員制ラウンジ「クローバー・バナー・クラブ」へ案内してくれた。2025年のワールドシリーズ第1戦でシリーズ史上初となる代打満塁本塁打を放ったアディソン・バーガー内野手(背番号47)のユニホーム、守備が卓越した選手に贈られるゴールデングラブ賞のトロフィーなどが飾られており、会員らはバーカウンターで好きなアルコール類などを味わうことができる。

クローバー・バナー・クラブの室内(大塚圭一郎撮影)
クローバー・バナー・クラブの室内(大塚圭一郎撮影)

 すると、マットさんが「こっちに面白い場所があるので、皆さん集まってください」と呼びかけた。クローバー・バナー・クラブからガラス越しにバッティングケージを眺められる一角があり、「ブルージェイズの選手がバッティング練習をしている場合、ここからその様子を見ることができます」という。ブルージェイズの監督やコーチ、控え選手らが試合中に待機するベンチ「ダグアウト」は3塁側にあり、その裏にブルージェイズの選手用のバッティングケージが存在する。隣接して、クローバー・バナー・クラブが置かれているというわけだ。

クローバー・バナー・クラブからガラス越しに眺めたバッティングケージ(大塚圭一郎撮影)
クローバー・バナー・クラブからガラス越しに眺めたバッティングケージ(大塚圭一郎撮影)

 マットさんは「今は会員を絶賛募集中ですので、皆さんも是非ご入会を検討してください」とセールストークを忘れず、参加者から笑いが起きた。

 続いて球場のフィールドに移動した。この日は快晴だったため開閉式の屋根が開いており「開けるのも、閉めるのも20分ほどかかる」とか。

ロジャーズ・センターのフィールドでバットを示すマットさん(大塚圭一郎撮影)
ロジャーズ・センターのフィールドでバットを示すマットさん(大塚圭一郎撮影)

 参加者に試合で使われているバットを握らせてくれたが、ずしりと重い。参加していた女性が「こんな重いバットを選手たちはあんなに軽々と振り回しているのね」と感嘆していたが、私にとっても同じくサプライズだった。

 球場内にある料理の調理場の脇も通ると、マットさんは「本日は(ホットドッグ)ルーニードッグが1カナダドル(約115円)の『ルーニードッグス・ナイト』の日なので、必ず買うように」と参加者に命じた。2026年4月7日に0・77カナダドルで販売し、1試合当たりの過去最高記録となる10万2202本が売れたので「記録更新に挑戦する」そうだ。

▽試合前に早くも視界に!

 ツアーは約1時間で終了し、試合の開場の午後5時半まで1時間余りある。ただし、試合の入場券も既にスキャンしており、球場外には出られないのだ。

 そこで、1塁側の試合相手の球団が使うダグアウトの近くの座席に腰かけ、選手たちがウォーミングアップする様子を見学するように薦められた。

 3塁側のグラウンド内を眺めると、ブルージェイズの野球帽と紺色のTシャツを着た選手が視界に入った。Tシャツに背番号はなかったが、3塁の守備に入っているとすれば思い当たる選手がいる。

 確かめるべくデジタルカメラの望遠レンズを目いっぱいズームしてファインダーをのぞき込むと、こちらを向いている。岡本内野手だ。

ウォームアップ中のトロント・ブルージェイズの岡本和真内野手(大塚圭一郎撮影)
ウォームアップ中のトロント・ブルージェイズの岡本和真内野手(大塚圭一郎撮影)

 運の良いサプライズで、岡本内野手のウォーミングアップの様子を見られたのだ。

 開場後に岡本内野手の背番号「7」が入ったジャージを着たブルージェイズファンを見かけ、球団公式グッズを販売している「ジェイズショップ」をのぞいた。ところが、付いていた値札は200カナダドル(約2万3000円)というサプライズ価格だ。早々に断念し、ボールパーク・ツアーズの参加者特典で10%引きになるため50年目の記念ロゴが入った球を買った。

ロジャーズ・センターのフィールドに立つ筆者
ロジャーズ・センターのフィールドに立つ筆者

 自分の席に向かう前に、1カナダドルの特価になっているルーニードッグを買うのも忘れてはならない。売店で「1本ください」と注文すると、「1本だけ。すごく小さいわよ」と販売員にそそのかされて2本購入。包み紙を開けると、アメリカで一般的に売られているホットドッグの半分ぐらいの大きさしかなかった。

▽岡本内野手は4番で出場

 試合開始は午後7時7分だが、空はまだ明るい。相手チームのマイアミ・マーリンズが先攻で、バッターが三振に倒れたので拍手を送ると球場の大部分の観客とシンクロしていた。

 なんとブルージェイズファンが球場をほぼ占拠している状況で、ここまでの占有ぶりだとはサプライズだった。「ブルージェイズ推し」で本当に良かったと胸をなで下ろした。

 カナダ西部ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)バンクーバーに住む友人が「カナダ国民はアイスホッケーでは応援するチームによって激しく火花を散らすが、カナダのMLB球団はブルージェイズだけなので一丸となって応援する」と解説していたのを思い出した。

 アメリカ西部ワシントン州シアトルの球場「T―モバイル・パーク」でブルージェイズとアメリカンリーグ西地区所属の球団シアトル・マリナーズの試合が開催される場合、BC州から遠征して応援するファンも多く「見に行った時には球場の4分の3ほどがブルージェイズファンだった」という。

トロント・ブルージェイズの岡本和真内野手の出場紹介画面(大塚圭一郎撮影)
トロント・ブルージェイズの岡本和真内野手の出場紹介画面(大塚圭一郎撮影)

 この日は岡本内野手が主砲らしく4番で出場し、3塁を守備する。打席に入る際には、サザンオールスターズの「希望の轍(わだち)」が響く。

 マーリンズは2022年のサイ・ヤング賞を受けている右腕サンディ・アルカンタラ投手が先発し、岡本内野手の第1打席は三振だった。

 ブルージェイズ1―マーリンズ0で迎えた3回裏の第2打席は、1アウト、2塁、3塁の場面でタイムリーヒット(適時打)を放って11試合ぶりの打点をマークした。ファンが大いに盛り上がったのは言うまでもない。

▽ホットドッグ販売試合の行方は…

 6回裏にはブルージェイズの3番ヘスス・サンチェス外野手の満塁弾が飛び出し、8―1と大量リードで岡本内野手の第4打席を迎えた。この日のアルカンタラ投手は大乱調で、初球が防具を付けていなかった岡本内野手の右肘に直撃する死球だ。

トロント・ブルージェイズの岡本和真内野手への死球後、画面に表示された怒りの炎と「LOUD」の文字(大塚圭一郎撮影)
トロント・ブルージェイズの岡本和真内野手への死球後、画面に表示された怒りの炎と「LOUD」の文字(大塚圭一郎撮影)

 アルカンタラ投手の4個目となる死球にブルージェイズファンが大ブーイングを浴びせ、球場内が騒然となった。すると、球場内の画面に赤い炎のCGとともに「NOISE」や「LOUD」の文字が浮かび上がり、「もっと大きな声で憤りをぶつけろ」とそそのかしているのだ。

 プロ野球投手の速球が直撃すれば選手生命を奪いかねない危険も伴うだけに、私も立ち上がってブーイングを浴びせた。それでも、球場が火に油を注いで投手交代を露骨にあおる場面は見たことがなかっただけに、ある意味でサプライズだった

死球後に1塁に進んだトロント・ブルージェイズの岡本和真内野手(大塚圭一郎撮影)
死球後に1塁に進んだトロント・ブルージェイズの岡本和真内野手(大塚圭一郎撮影)

 岡本内野手は死球後に顔をしかめていたが、トレーナー陣がチェックした後に1塁へ向かった。痛みを乗り越え、プレーを続ける姿は清々しい。

 ブルージェイズは8対1のままマーリンズを下し、試合終了。ファンが勝利に酔いしれたが、「もう一つ」の試合であるルーニードッグ(ホットドック)の販売本数は9万3202本と記録更新にはならなかった。

 この日のルーニードックの価格は1カナダドルと、過去最高を記録した2026年4月7日の0・77カナダドルより高い。よって記録更新は難しいという私の予想が当たり、この点ではサプライズにならなかった。

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