オキュペーショナル・セラピスト(作業療法士)が詳しく説明する転倒予防2

    隣組シニアライフセミナー「オキュペーショナル・セラピスト(作業療法士)」

     隣組が毎月第4金曜日に開催しているシニアライフセミナーではシニアの生活に役立つ情報を提供している。

     9月には「オキュペーショナル・セラピスト(作業療法士)」のタイトルで、オキュペーショナル・セラピストの仕事について、サポートを受けるにはどうすればよいか、高齢者の転倒防止などの話だった。 

     高齢者が転倒すると寝たきりになることもよくある。高齢者本人や家族に高齢者がいる人に有益な情報が満載のセミナーだった。内容を3回に分けてリポートする。

     2回目は転倒のリスクが高い人はどのような人か、自宅での転倒を防ぐためのヒントについて。

     講師はバンクーバー・コースタル・ヘルス(VCH)に所属するフジノ・ミドリさんで、日常生活の行動が困難な人の手助けをする作業療法士(オキュペーショナル・セラピストOT)として活躍している。

    シニアで特に気を付けたい転倒防止

     転倒はカナダの65歳以上の人が入院する原因の主なもので
    ・20−30%のシニアが毎年転倒している。
    ・50−60%の転倒は家の中で起こっている。

     転倒で怪我をすると、「また転ぶかも」と恐怖心が生まれて生活や活動が制限される。そしてやりたくても怖くてできなくなってしまうという。

    こんな人は要注意!転倒リスクの高い人とは

     フジノさんは、転倒の危険度が高い人についてVCHのパンフレット『Stay on Your Feet, Fall Injury Prevention Program』を用いて、チェック項目を紹介した。

    ・目まいがする。
    ・4種類、もしくはそれ以上の薬を飲んでいる。
    ・足腰が弱い。
    ・よく滑ったり、転んだり、つまずいたりする。
    ・バランスを保つのが難しい。
    ・酒類をよく飲む。
    ・足に痛みや麻痺があったり、足の感覚が鈍い。
    ・杖やその他の器具を使っている。
    ・物がよく見えない。耳が聞こえにくい。
    ・睡眠障害。
    ・集中力がなくなったり、混乱することがある。
    ・息切れ。
    ・レクリエーショナル・ドラッグの使用。
    ・不安を感じたり、気分が落ち込んでいる。

     該当するものが多いほど、転倒のリスクが高いと述べた。

     では該当するものが多い場合、具体的にどうすればいいかだが、

    ・GP(ファミリードクター)やNP (ナースプラクティショナー)に相談して薬の見直しを行う。
    ・視力、視覚(遠近感、色覚)、白内障、緑内障、加齢黄斑変性など、眼の健康状態を調べる。
    ・聴覚。必要に応じて補聴器を使う。
    ・筋肉強化やバランス機能を改善するための運動をする。
    ・家の中をより安全にする。

     50~60%の転倒は、家の中で起きているといわれている。ただし報告された中の50~60%なので、報告されていないケースを含めると、もっと多い可能性もある。

    自宅内での転倒を防ごう!

     家の中での転倒を防ぐためのヒントも紹介した。

    ・部屋の中を整理整頓する。
    ・床に物を置かない。
    ・電化製品のコードは部屋の隅へまとめておく。
    ・床のラグやエリアマットを敷くのは避ける。使用する場合はテープ等で動かないように固定する。
    ・足にフィットして滑りにくい靴を履く。裸足やスリッパは避ける。
    ・動きやすい服を着る。衣類の裾踏み転倒に注意。
    ・セラピストに薦められた器具を使う。例えばウォーカーや杖、シャワーチェアなど。
    ・頻繁に使うものは、取り出しやすいところに置いておく。
    ・立ち上がる時はゆっくり立ち上がる。めまいなどがないことを確認してから立ち上がること。
    ・大きなものや重たいもの、運びづらいものを運ぶのを避ける。バランスを崩しやすいため。
    ・照明。暗いと転倒しやすい。
    ・飲酒、アルコール摂取を控える。

     衣類については、丈の長いスカートをはいていて裾を踏むことも多い。あるいはパジャマのゴムが緩んでいたために、裾を踏んで転ぶケースもある。そのほか、フジノさんは電話や携帯電話は手の届くところに置いておくことも勧めた。

     また、「飲酒による転倒は結構多いんですよ」とフジノさんは注意を呼び掛けた。
    (3に続く)

    (取材 西川桂子)

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