日本語オンラインセミナー「2021年度タックスリターン―知っておいた方がいいこと」

 移民定住支援団体S.U.C.C.E.S.S.による日本語オンラインセミナー「2021年度タックスリターン ―知っておいた方がいいこと」が1月14日、開催された。講師はタックスプリペアラーの坂巻裕子さん。

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災害や家族が亡くなったときの確定申告は?

 長引くパンデミックと多くの自然災害に見舞われた2021年。タックスリターン(確定申告)にも影響が及んでいる。

 「まず災害などで期限どおりタックスリターンをできそうにないときは、Canada Revenue Agency(CRA)にTaxpayer relief provisionを提出しましょう。ペナルティや利子が免除になる場合も。これは過去10年にわたって遡ることができます」

 不慮の事態だけでなく、確定申告に含めるべき情報、例えば日本からの年金を申告していなかった、などの場合にも使えるという。

 次に家族が亡くなったときには、どうすればいいか。まず亡くなった年はFinal tax returnを、その後もその人名義で家や投資などを持っている場合はEstate tax returnを行う。

 生前にできることは「まずは遺言状を書くこと。遺言状がないと残された家族が大変です。それから自分名義の家や投資、保険、ビジネスなどの受取人登録を」

 遺言に書きにくいことは保険の利用がおすすめだそうだ。「保険の内容は遺言より優先されるので、例えば自分の財産をパートナーの連れ子ではなく、自分の子どもだけに相続させたい場合などに利用できます」

 また最近は、ほとんどの情報がコンピュータやオンライン上にあるので、パスワードが家族にわかるようにしておきたい。

病気になった時のクレジット

 病気になった場合の税金対策として、まずはDisability tax credit(DTC)がある。「日本語でいえば障害者認定証でしょうか。障害者と認定されればクレジットがもらえます」

 書類はファミリードクターや専門医が記入し、CRAが判断を下す。

 「自分では認定されるかわからない場合でも、ファミリードクターに書類を記入してもらい提出してみては」。これは遡ってクレームすることもできる。

 DTC以外にも、さまざまな措置がある。セミナーでは実例として節税額が1万ドル以上になったケースを紹介。障がいのために必要となった住宅リノベーション費用やヘルパー費用なども計上することができるという。

節税の基本、クレジットと控除

 一般的な節税法を考えるのに、押さえておきたいのがクレジット(credit)と控除(deduction)だ。

クレジット
 「クレジットは『いくらまで無税で収入を得られるか』。クレジット総額と同額の所得には所得税がかかりません。クレジットにはいろいろな種類があり、家族構成などで変わります」

 一律に適用されるクレジットBasic personal amount(BPA)については、2021年度は13,808ドル(所得が151,978ドル以下の場合)なので、その額までは所得税は払わなくてよい。

 稼ぎ手が1人の家庭の場合は、働いていない人のBPAを働いている人のBPAとして使えるし、シングルペアレント家庭では子どもが扶養家族となり、Eligible dependant amountとして2人分のBPA額がクレジットとして使える(子どもの人数は関係なし。パートナーがいる場合は使えない)。

 シングル(所得あり)で親を養っている場合も、Eligible dependant amountで2人分のBPA額が利用できる。ほかに住宅購入や学費支払いのクレジットも。これらのクレジットには細かいルールがあり収入でも変わるので、詳しくは専門家に相談を。

控除
 一方の控除は、収入から差し引くことのできる額。RRSPや引っ越し費用などさまざまなものがあるが、今回注目したいのはEmployment Expenseだ。

 「これは従業員向けの在宅勤務手当ですが、コロナ特例としてオプション1、2が去年設定されました。最低1カ月間、勤務時間の50%以上を在宅勤務が占めた従業員が対象。オプション1は在宅勤務をした日数×2ドル(最高額500ドル)を控除できます。雇用主からの書類やレシートは必要なし。最高額は昨年の400ドルから500ドルに増えました」

 もうひとつのオプション2は、オプション1より多くの控除額が期待できるが、雇用主からの書類とレシートが必要になる。控除対象になるのはレントや光熱費、オフィス用品、仕事使用分の個人の携帯電話代など。

 Child Care Expenseに関しては、子どもの世話をしてくれた祖父母らに支払った費用も申告することができる。その場合、18歳以上の家族で、自分が仕事をしている間の子どもの世話に対して支払った金額になる。また相手が収入として確定申告していることも条件だ。

 このほか、TFSAの活用法や質疑応答など内容は多岐にわたった。最後に「好きな仕事をして保険で今と将来の収入を守り、投資でお金を増やして、それを好きなことに使いましょう。そのためには専門家と計画を立てて」とアドバイスした。 

問い合わせ
S.U.C.C.E.S.S.リッチモンド
ウェブサイト: https://successbc.ca/
メールアドレス:kozue.ito@success.bc.ca

(取材 宗圓由佳)

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