日本語教師 矢野修三
先日、台湾出身の友人との集まりがあり、そこで中国語の「加油」(ジャーヨウ)という言葉を話題にした。日本語にすれば、「頑張って」という意味である。
実は、日本語教師として、中国語を母語とする生徒には、よくこの「加油」を使って、「日本語 ジャーヨウ」 と声を出して励ますと、なかなか効果的である。
ところで、同じ漢字言葉としての「加油」と「頑張る」。意味的には同じなのに、なぜ中国語と日本語で、こんなに漢字が異なるのか、すごく気になっていた。ちょうど良い機会なので、この「加油」の語源などを台湾の友人たちにいろいろ聞いてみた。
なるほど、まさしく「加油」(ジャーヨウ)は油を加えるであり、車もガソリンを入れると力強く走れるようになるので、そこから「頑張れ」や「ファイト」という励ましや応援の意味になったとのこと。確かに、人間にもエネルギーを加えて、もっと力を出そう、の意味として、応援相手や自分自身を励ます掛け声として使うとのこと。なるほど、とても分かりやすい。
これに対して、日本語の「頑張る」だが、由来を探ると有力なのが二つある。一つは「我を張る」で、すなわち、自分の考えをどこまでも押し通す、意地を張るなどから変化して、踏ん張るや気を張るという意味に変化した。
もう一つは「眼を張る」で、ちゃんと目を開き、油断せず努力してやり通すという感覚から。
いずれにせよ、どちらも困難に負けず、踏ん張って意思を貫くという響きがあり、さらに、発音や意味が似ている、頑固などの漢字「頑」(ガン)を当て字として使うようになったようで、「頑張る」や「頑張れ」などの言葉ができたとのこと。うーむ、何となくややこしい。
日本語と中国語では、発想の起点が異なっており、文化の違いと言えばそれまでだが、とても興味をそそられる。すなわち、日本語は精神的な「自分の力で踏ん張る」であり、中国語は具体的な「外から油を補給する」である。
確かに、日本語の「頑張る」は自分自身に気合を入れるにはふさわしいが、応援の「頑張って」は、場合によっては「もう十分頑張っているのに・・・」と、相手が少し重く感じることもある。
一方、中国語の「加油」(ジャーヨウ)は「油を加えるよー」なので、応援には実にふさわしい。でも、自分自身に対しては、ちょっと弱い感じも・・・。
それゆえ、こんな考えが我が輩の頭の中に広がった。自分への励ましは、日本語の精神的な「頑張るぞ」がピッタリで、相手への応援には「加油」(ジャーヨウ)がバッチリかも。
こんなこと、どうでもいいことだが中国系2世の日本語上級者に話したら、彼曰く、この「加油」を英語にすると「Add oil」であり、ここバンクーバーの大学などでも、中国語系の若者たちは、冗談交じりに、「加油」の代わりに「Add oil」を使っているとのこと。えー、びっくり。
そこで、この「Add oil」が「Good luck」や「Do your best」などの意味として、近い将来、一般的に使われるようになったら面白いね、と二人で笑ってしまった。
ちょうど、「久しぶり」を意味する「Long time no see」が中国語の「好久不見」(ハオジウ ブージェン)をそのまま、好久(long time)+不(no)+見(see)と英語に訳して作られた、という説が有力であり、確かに英語の正式な言い方ではなく、当初はかなり違和感があったようだが、現在では一般的に広まり、堂々と使われている。
ぜひ、「Add oil 」も同じように広まって! 頑張って! 加油 ! Add oil!

「ことばの交差点」
日本語を楽しく深掘りする矢野修三さんのコラム。日常の何気ない言葉遣いをカナダから考察。日本語を学ぶ外国人の視点に日本語教師として感心しながら日本語を共に学びます。第1回からのコラムはこちら。
矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)
メール:yano94canada@gmail.com
ホームページ:https://yanoacademy.ca
日本語教師として37年、81歳になって
初めて、平仮名「あいうえお」の
素晴らしさ、奥深さを悟りましたよ。
愛情、いっぱいで、生まれ
あ い う
笑顔で、終える。
え お
素晴らしきかな「あいうえお」



















