日本の中高生、バンクーバーのChopValueを訪問

ChopValueを訪問した「Youth Entrepreneur Initiatives」の参加者らと関係者。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ
ChopValueを訪問した「Youth Entrepreneur Initiatives」の参加者らと関係者。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ

 日本の中学・高校生24人が8月6日、バンクーバー市の循環型製造企業ChopValueを訪れ、使用済みの割り箸を建材や家具に変える革新的な製造工程を見学した。訪問は起業家教育プログラム「Youth Entrepreneur Initiatives」の一環で、主催はEduwel Solutions Ltd. 、日本カナダ商工会議所とChopValueが協力した。

「外に出て確かめる」学び

 中高生は7月29日から8月11日までバンクーバーに滞在。ChopValueへの企業訪問のほか、日本にある既存の商品・サービスを北米向けにローカライズして売り込み、英語で投資家や起業家に3分で事業案を売り込むピッチをするという課題にも取り組んだという。

 プログラムを企画・運営したEduwel Solutions Ltd.代表ウィットレッド太朗さんは、このプログラムをバンクーバーで実施する意義について、生徒が考えた事業案を実際の市場で検証できる点にあると語り、「外に出て確かめるプロセスは、バンクーバーでなければ成立しない。教室のドアを開ければそこが市場」と説明した。

身近な割り箸から 10年で2.9億本再生

製造工程でわずかに出る端材を再利用して作られた世界地図。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ
製造工程でわずかに出る端材を再利用して作られた世界地図。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ

 ChopValueは、ドイツ生まれのフェリックス・ベック氏によって2016年にバンクーバーで設立された。ドイツで木材工学を学んだ経歴を持ち、その後ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の教員から招かれ、構造用竹材や革新的な竹由来の複合材料をテーマとした博士研究に取り組んだ。この研究は、UBC、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ケンブリッジ大学が参加する国際共同研究の一環として行われた。

 ベック氏は当初、建設現場から出る廃材の活用を試みたが、さまざまな材料が混ざり合っていて扱いにくく、うまくいかなかった。何か他に使えるものはないかと考えていたところ、妻とすし店で食事をしていた時に「割り箸を使ったらどうか」と提案されたことが、事業の着想を得たきっかけになったという。

 同社によると、日本では年間およそ130億膳の割り箸が廃棄されている。関東地方だけで毎日約2700万本が廃棄されており、バンクーバー本社周辺の毎日約10万本、シンガポールの約150万本と比べても際立って多い。日本で使われる輸入割り箸のうち竹製が約33%を占め、主な産地は中国・ベトナムという。

 同社はレストランやフードコート、ホテルなどから使用済みの割り箸を無償で回収し、分別・乾燥(高温処理による除菌を含む)を経て、独自技術で高密度に圧縮・成形する。再製造・仕上げの工程の後、レーザー加工でロゴやメッセージを入れてカスタマイズすることも可能で、家具や建材、内装材に加工されるという。都市から生まれる廃棄されるはずの資源を地域内で回収し、新たな製品へと生まれ変わらせるこの地域密着型の取り組みを「アーバン・ハーベスティング(都市の資源収穫)」と呼んでいる。

 さらに輸送に伴う二酸化炭素排出を抑えるため、1カ所の工場から世界に出荷するのではなく、各国・地域に小規模な「マイクロファクトリー」を設ける方式を採用。必要な工場スペースは約330平方メートル(100坪)以下の軽工業用施設で足りるという。2026年8月10日時点で、これまでに世界で2億9015万本以上の割り箸を埋め立て処分される前に回収し、二酸化炭素排出量を約1,413万kg相当抑制した。マイクロファクトリーは現在、世界12カ国に広がっている。

 身近な割り箸というアイデアから始まった事業は、いまや2025年の大阪・関西万博や文具大手コクヨとの協業など、著名な企業やイベントとも手を組む規模に成長している。

割り箸から生まれたタイルを手に

プレス加工前の使用済み割り箸が積まれたChopValueの工場内。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ
プレス加工前の使用済み割り箸が積まれたChopValueの工場内。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ

 生徒たちは会社概要の説明を受けた後、2グループに分かれ製造ラボを見学した。

 圧縮前の割り箸と、プレス後の薄いタイルを実際に見比べる場面もあった。竹製の割り箸を使ったものは幾何学的な模様がはっきりと表れ、より柔らかい木材を使うとまだら模様になるなど、素材によって見た目や重さが変わる。

 生徒たちは実際にタイルを手に取り、重さや質感をじっくりと確かめた。厚さは用途に応じて3種類あり、壁材には薄いタイル、テーブルなど耐久性が求められる製品には厚みのあるタイルが使われるといった使い分けも紹介された。

割り箸から作られた製品について生徒に説明する、ChopValueプロジェクトアドミニストレーターの佐名木紬さん。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ
割り箸から作られた製品について生徒に説明する、ChopValueプロジェクトアドミニストレーターの佐名木紬さん。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ

将来は「日本と世界をつなぐ仕事を」

 年間およそ130億膳が廃棄されるという日本の割り箸。誰もが日常的に使っているだけに、質疑応答では「割り箸のリサイクルはなぜ日本で先に始まらなかったのか」という質問が出た。

 プロジェクトアドミニストレーターの佐名木紬さんは、日本では廃棄物処理法をはじめとする基準が厳しく、自治体によっても異なるため、割り箸を「廃棄物」ではなく「有価物」として扱ってもらえるようになるまで、川崎市の担当者との協議に約1年かかったと明かした。その他にも、「カナダなら直接訪問して交渉すればすぐに話が進むが、日本ではまず訪問の許可を取ることから始まる」と、交渉の進め方の違いもあったと説明すると、生徒たちはなるほどとうなずいた。

 自分の将来を模索する中高生にとって、日本からカナダで働く佐名木さんの経歴は関心の対象だったようで、「なぜ日本からカナダに来たのか」といった質問も向けられた。

 「なんでこれが日本から始まらなかったんだろう」と、率直な疑問を口にしたのは高校生の山下陽耀さん。イベント後に話を聞くと、日本になじみのある割り箸にも関わらず、この取り組みが「バンクーバーからなのがおもしろい」と話し、身近な物事にもビジネスチャンスは広がっていると学んだという。将来は「英語を生かして日本と世界をつなぐ仕事をしたい」と目を輝かせた。

 同じく高校生の板橋ひとみさんは、英語だけでなくアントレプレナーシップを学べる点にひかれて今回のプログラムに参加したという。「日本でリサイクルというとプラスチックや紙のイメージが強かったので、木に着目しているのがおもしろいと思った」と話し、将来は「自分で未来を切り拓いていきたい」と力を込めて話した。

身近な割り箸から新たなビジネスが生まれる可能性を学んだ高校生の板橋ひとみさん(左)と山下陽耀さん。見学後、それぞれ将来への思いを語った。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ
身近な割り箸から新たなビジネスが生まれる可能性を学んだ高校生の板橋ひとみさん(左)と山下陽耀さん。見学後、それぞれ将来への思いを語った。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ

第二の人生を与えられるかもしれない

 グローバルマーケティングディレクターのアリソン・リーさんは「生徒たちが割り箸という『廃棄物』から何を生み出せるか、学ぶことに夢中になっている様子を見るのは、とてもうれしい」と笑顔を見せた。こういった活動を通じて「循環経済について次の世代に伝え、刺激を与えたい」と話した上で、「一番大事なのは、割り箸でこれができるなら、他の何を『第二の人生』に生かせるだろうかと考えるきっかけになることだ」と続けた。

 割り箸はあくまで一つの例で、埋め立てられるだけの資源は他にもたくさんあるとし、「次の世代が、毎日飲むコーヒーの搾りかすでも、身近な何かでも、これにも第二の人生を与えられるかもしれないと考えるきっかけになれば」と話した。

ChopValueの事業や使用済み割り箸の再利用について説明を受ける日本の中高生ら。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ
ChopValueの事業や使用済み割り箸の再利用について説明を受ける日本の中高生ら。バンクーバー市、2026年8月6日。撮影:田上麻里亜/日加トゥデイ

(取材 田上麻里亜)

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