「日系5世、高祖父はカナダへの日本移民第一号とされている永野万蔵」キーガン・メッシング選手インタビュー(後編)

キーガン・メッシング選手、北京五輪、男子フリー。2022年2月10日、中国・北京。Photo by Greg Kolz/Skate Canada
キーガン・メッシング選手、北京五輪、男子フリー。2022年2月10日、中国・北京。Photo by Greg Kolz/Skate Canada

 昨シーズン、30歳にしてカナダ選手権で初優勝を飾った、キーガン・メッシング選手。オリンピックに初出場したのが26歳ということもあり、「遅咲き」と呼ばれることも多い。

 カナダとアメリカの二重国籍を持ち、現在、アメリカ・アラスカ州アンカレッジに住むメッシング選手。日系5世で、高祖父はカナダへの日本移民第一号とされている永野万蔵という系譜を持つ。2021-22年シーズンが終了した5月にZoomで話を聞いた。

30歳でカナダ選手権初優勝、遅咲きのカナダ代表キーガン・メッシング選手インタビュー(前編)

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カナダフィギュア界のレジェンド、エルビス・ストイコに憧れ

キーガン・メッシング選手、北京五輪、男子フリー。2022年2月10日、中国・北京。Photo by Greg Kolz/Skate Canada
キーガン・メッシング選手、北京五輪、男子フリー。2022年2月10日、中国・北京。Photo by Greg Kolz/Skate Canada

– フィギュアスケートを始めたのはいつですか?

 初めてアイススケートをしたのは3歳の時で、家の裏の小さな池でした。1994年オリンピックでカナダのエルビス・ストイコ選手がジャンプやスピンをするのを見て、僕もスケートをしたいと大騒ぎだったそうです。

 スキー場の近くに住んでいたのでスキーも好きで、16歳までは競技にも参加していました。今でも父とバックカントリースキーに出かけます。次のシーズンは同じような筋肉を使うテレマークを、トレーニングの一部に取り入れられたらいいなと考えています。最後のシーズンになるので、いつもと違うことにトライしてみたいです。

– アラスカ在住ということで、カナダとアメリカの二重国籍で、当初はアメリカ代表選手でしたね。

 7年間、チームUSAで滑りましたが、アメリカ代表になったことは後悔しました。小さいときから、カナダ代表が目標だったからです。

 フィギュアスケートの大ファンだった祖母から、カート・ブラウニングやエルビス・ストイコについて聞いて育ちました。だからカナダ代表になるのが夢だったんです。

 ノービスだった14歳のとき、トリプルアクセルに成功して、注目されるようになりました。アラスカに住んでいたため、アメリカチームから春のイタリアでの大会に出るかとオファーがあり、受けました。

 大会が終わって、次はカナダ代表で滑りたいと思ったら、一度アメリカ代表として出場したので、国を変える場合は続く2シーズンはカナダ選手権にしか出られないと知りました。

 2年待つことはできないと、アメリカ代表を続けました。でもカナダ選手として滑りたいという想いが常にあり、2014~15年のシーズンで変更しました。

– 大きな決断でしたね。

 はい。変更を決めたときにはすでに22歳でした。24歳ぐらいで引退すると思っていたのですが、2年後には24歳です。2年待つのだから続けよう、次のオリンピック(平昌五輪)には26歳だけど、がんばってみようか…そんな感じで30歳になりましたがまだ滑っています。

カナダへの日本移民第一号とされている永野万蔵の子孫

– キーガンさんは日系移民との関係も深いということですが、ご存知でしたか?

 はい、高祖父は、カナダへの日本移民第一号とされている永野万蔵です。ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で店を経営していました。日本人の子孫でもあるということを誇らしく思っています。

 ユズルやショーマなど、日本人には練習熱心で卓越した選手が数多くいて、尊敬していますし、刺激も受けています。Inspiring、RESPECTしています。フィギュアスケートのファンだった祖母は、日系カナダ人でした。そんなこともあり日本へのつながりを強く感じています。最後のシーズンとなる来年のNHK杯にはぜひ出場したいと思っています。

– 世界選手権が終わって、オフシーズンに入りました。基本的に休んでいるのでしょうか。

 回転する感覚を忘れてしまうので、休みは取りません。世界選手権を終えて1週間休んで練習に戻ると、トリプルアクセルが飛べなくなっていました。

 トリプルアクセルがダメなら4回転トウ!とトライしてみたら、驚きました。身体が痛いんです。すでに1時間以上滑っていて、ウォームアップもできていたのに、膝、関節、筋肉、全てが痛みました。

 過酷な4回転ジャンプをどうやって身体にできるだけ負担をかけずに飛ぶか、身体が覚えているんです。

 今はスローペースで1日大体1時間ですが、練習は続けています。スターズオンアイスに出る予定で、フリープログラムをショー用に短くしたものを滑ります。来シーズンに向けての良い練習になると思っています。

 シーズンを終えたら引退するつもりでいます。次のシーズンが最後になるので、しっかり準備するつもりです。

キーガン・メッシング選手
アメリカ・アラスカ州アンカレッジ在住のフィギュアスケート選手。平昌、北京オリンピックのカナダ代表。カナダとアメリカの二重国籍を持つ日系5世。高祖父はカナダへの日本移民第1号とされている永野万蔵。1992年生まれ。

(取材 西川桂子)

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