第36回 「どうすれば書いてもらえる?エンディングノート、どこで手に入れる?」 〜Let’s海外終活〜

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

前回は予告なく連載をお休みし、申し訳ありませんでした。4月から5月初旬にかけて、約1ヶ月ほど日本に一時帰国をしていました。滞在中は、終活のワークショップを開催し、渋谷で毎年開催されている「Death Festival(通称:デスフェス)」に参加者として参加し、初めてお会いする方々と交流しながら、知見と学びを深めるという、いつもとはひと味違う、濃い滞在となりました。またバケットリストにある夢を叶えるべく、日本国内もあちこちに足を運びました。

カナダに戻ってから体調を崩してしまったため、思い切って1回分の休載をさせていただいた次第です。今はおかげさまで、元気いっぱいです。日本で学んできたことを、またこのコラムでみなさんにお伝えできればと思っています。

さて、前回は遺言についてよくある疑問にお答えしました。今回は、読者の方からもよく届く「エンディングノート」にまつわる、2つのリアルな声にお答えします。

「親に書いてほしいけど、書いてくれない」

これは、海外在住の子世代から最もよく聞く悩みのひとつです。

「お母さん、エンディングノート書いてみて」と伝えたら、「縁起でもない」「そういう話はしたくない」「そんなもの必要ないっ!」と返ってきた、あるいは気分を害された、ひどいときには激怒された、なんて話も聞きます。

読者のみなさんの中で、そんな経験はありませんか?

この反応は、決して珍しくありません。「死」を連想させるものを、元気なうちに前向きに書く。これは、言葉にするほど簡単ではありません。特に、エンディングノートという名前自体が「終わりの準備」を強く連想させるため、拒否反応が出やすいのです。

エンディングノートの必要性と重要性を説明しても、残念ながら、すぐには理解してもらえないことがほとんどです。

では、どうすればいいか。

コツは「死の準備」ではなく「自分の記録」として切り出すことです。たとえば、こんな言い方はどうでしょう。

「お母さんの若い頃の話、聞いておきたいんだけど、一緒に書いてみない?」 「もし私が日本に帰れない時、誰に連絡すればいいか教えておいてほしくて」

エンディングノートの最初のページは、多くの場合「自分のプロフィール」や「好きなもの・思い出」から始まります。そこから入ると、「終活」ではなく「自分史」として、自然と書き進められることがあります。

書いてもらうことがゴールではなく、一緒に話すことがスタート。そう思うと、少し気持ちが楽になるかもしれません。

また、書くのがしんどいという方もいらっしゃるでしょう。その場合は、子どもである私たちが聞きながら代わりに書き込んでいくのもお勧めです。

「ノートはどこで手に入る?」

日本では、エンディングノートは書店や文具店、そして100円ショップでも手軽に手に入ります。最近は種類も豊富で、シンプルなものからイラスト入りのものまで、好みに合わせて選べます。

ただ、海外在住者にとって少し悩ましいのが、日本向けのノートをそのまま使うと、項目が合わない場合があることです。

たとえば「印鑑登録証の番号」「住民票コード」といった項目は、住民票を抜いている海外在住の方にはそのまま当てはまりません。逆に、「永住権・市民権の情報」「SIN番号(アメリカではSSN、オーストラリアではTFNなど)」「日本の資産と現地の資産」といった、海外在住者特有の情報欄は、日本のノートには存在しないことがほとんどです。

そのため、日本のノートを「参考書」として手元に置きつつ、自分の生活環境に合わせてカスタマイズするのがおすすめです。ノートそのものより、「何を書き残すか」を考えることの方が、ずっと大切だからです。

エンディングノートは、「完璧に書き終えるもの」ではありません。書きかけでも、空白があっても、それ自体が大切な意思表示です。

親御さんが少し興味を持ってくれたなら、まず1ページ目だけ、一緒に開いてみてください。その一歩が、遠く離れた家族をつなぐ、やわらかな対話の始まりになります。

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本コラムは終活に関する一般的な情報提供を目的としています。内容には十分配慮しておりますが、必要に応じてご自身での確認や、専門家へのご相談をおすすめします。なお、本コラムをもとに行動されたことによる不利益については、免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

海外終活アドバイザー

親しい友人の急逝をきっかけに、事前の準備が周囲の負担を減らし、安心をもたらすことを実感。現在は相続専門の弁護士アシスタントとして実務に携わりながら、50代からの海外在住日本人に向けて終活の重要性を伝えています。

終活を「死の準備」ではなく、人生を整える「私活(わたしかつ)」と考え、エンディングノートを活用してその考え方を広げています。

カナダ・バンクーバー在住。家族はカナダ人の夫と2人の息子、愛猫1匹。

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