『コロナ後の日本とカナダの往来』
ウェブセミナー『コロナ後の日本とカナダの往来』が、8月4日に開催された

 日加間の渡航制限が開始して4カ月以上が経過した。この措置により、カナダの日系コミュニティではほとんどの人が困っているといって過言はないだろう。そのような中、Zoomによるウェブセミナー『コロナ後の日本とカナダの往来』が8月4日に開催され、最大時で146人が参加する盛会となった。

 コロナ禍の中、在加日系経済界より、日本に出張できるのか、国内出張は可能なのかなどの声を耳にすることが多い。

 今回のウェブセミナーでは日本への渡航およびカナダ国内の旅行についての最新情報(両国における入国者受け入れの規定や航空会社の運航状況、予約や搭乗についての留意点など)を、日本航空(JAL)バンクーバーセールスオフィス アカウントエグゼクティブ・小林美和氏とHISトラベル カナダ統括支店長・山田圭哉氏(プレゼンテーション順)が説明した。

 ウェブセミナーは、JTOA(在カナダ日系ツアーオペレーター協会)、日本カナダ商工会議所、企友会(順不同)の3団体主催で行われた。

 セミナーは開催を発表した直後から大きな関心を集め、バンクーバーでのビジネス系のウェブセミナーとしてこれまでにない規模の参加申し込みがあった。そのため、主催者側ではセミナーやセミナー後の参加者へのアンケートを通じてコミュニティの窮状を在バンクーバー日本国総領事館を通じて、日本政府にも知らせることにしたという。

 日本カナダ商工会議所サミー高橋会長のあいさつ後、JTOA向井恒次郎会長は「当初の予定では、規制が緩和された際の見通しをお話させていただければと考えていたのですが、規制が継続していて、見通しが立っていません。そのため現状について系統立てて整理するという趣旨で進めさせていただきます」と語った。欧州諸国の中には日本人を入国制限なく受け入れている国もある中、「日加間の往来の見通しが立ってきたら改めて再度セミナーを企画したいと考えています」とのことだ。

 最初にプレゼンテーションを行ったのは日本航空の小林美和氏。カナダ各都市で旅行会社を経験後2017年に日本航空バンクーバー支店に入社した。旅行代理店や日系企業団体の営業を担当する。

JALグループの新型コロナ感染予防策

 まず、JALグループの新型コロナウイルス感染予防策について説明があった。機内などを清潔に保つよう努力しているとともに、乗客に接触機会を減らすために手荷物の最小化などを求めている。

具体例として
・地上係員のマスク着用
・チェックインカウンターにアクリル板でパーティション設置
・カウンターやゲートほか各所に消毒液を設置
・利用者にウェブチェックインにより、できるだけ接触を減らすように求める
・テーブル、いす、自動チェックイン機など、搭乗者が利用する場所は消毒や清掃を徹底
・サーモカメラで体温設定を行い、体温が高い場合は搭乗を断っている
・搭乗の際、フィジカルディスタンス確保をお願い
・機内では客室乗務員はマスクと手袋を着用
・使い捨ておしぼりの使用
・機内販売はクレジットカードでの購入で、現金の取り扱いなし
・化粧室に手指消毒スプレーを設置
・機内で希望者に除菌シートの配布
・航空機は夜間駐機中にひじ掛けやモニター、座席周辺の共有収納棚、化粧室などを消毒
・機内は高性能空気フィルター、HEPAを用いて、2~3分で機内の空気をすべてを入れ替え
・ビジネスクラスの食事で皿などに移し替えて盛り付けていたが、このサービスは停止

などを行っているという。

 また、体温が37.5度以上の発熱、咳などの体調不良がある人には、搭乗を控えることを求めている。

航空券購入時の注意

 航空券購入時の注意について、まず渡航先が入国を受け入れているかどうか、最新情報を入手してほしいという。これらの情報はJALのウェブサイトでも案内しているほか、外務省や各国大使館などの公式サイトでも確認できる。

 購入日や出発日によって対応が異なるため購入した旅行会社かJAL予約センターで確認。2020年6月11日かそれ以前に購入の場合と、6月12日以降に購入した場合で取り扱いが異なる。変更・キャンセル規定は、JALの国際線航空券は9月30日までの購入については変更手数料は無料、完全キャンセルについては手数料は発生するものの払い戻しも可能だ。

搭乗時の注意
 接触機会を抑えるための荷物に関するお願いとして
・ほかの乗客との接触が増える原因となることから、手荷物を最小限に留めてほしい
・手荷物の収納はできる限り乗客自身で行う
という話があった。

 座席については、6月30日までは3~4人並びの中央席を空席としていたが、このサービスは終了している。公式ウェブサイトでのオンラインチェックイン(24時間前から)で、早めに希望の座席を確保することを勧めている。

 バンクーバー国際空港ではマスク着用が必要。JALでは機内でも乗客に食事の時以外はマスクを着用するようを求めている。

PCR検査、唾液に
 日本到着時のPCR検査は、
・成田・羽田空港で7月29日以降
・関西空港で8月1日以降
唾液を用いたものに変わっている。

 唾液での検査は2~5時間と短時間に結果が出る。そのため、これまでの入国審査後のPCR検査から、飛行機を降りたあと入国審査を行う前に変更。陰性を確認後、入国審査、荷物受け取り、税関を通って外に出るという流れになっている。

唾液でのPCR検査で入国体験
 小林氏は唾液での検査を体験したJALスタッフから聞き取りを行い、ウェブセミナーの参加者にも共有してくれた。
・成田空港へは通常より早めの午後3時30分にゲート到着。まず第三国に乗り継ぎの乗客が先に飛行機を降りる
・15分後の3時45分ごろより成田到着となる残りの乗客、乗員が飛行機を降り、検疫官のエスコートで指定の場所に移動
・午後4時検査のためのレジストレーション開始。機内で記入した検疫フォーム確認、検体採取容器の配布
・各自唾液を採取。待機場所で検査結果を待っている間に検疫官よりインタビュー。健康状態、隔離場所、移動方法の確認
・午後5時45分、陰性の検査結果を受け取り移動、入国審査、荷物の受けとり、午後6時ごろ税関を通りロビーへ

 このケースは到着からロビーに出るまで約2時間30分だったが、到着状況などにより所要時間などは異なる。今回紹介したケースはひとつの例だ。 

 また、JALスタッフが検疫官に次の質問をして回答を得ている。

Q. 隔離期間中にコンビニエンスストアなどで買い物ができるか。
A. 外出はなるべく最小限にとどめ、混雑する時間帯を避けマスク着用であれば、ちょっとした買い物は可能。

Q. 成田空港にて手荷物を自宅に配送するようにサービスを利用したいができるか。
A. 必要不可欠な場合、最小限の範囲で可能。

(注: 状況によって異なるのでいずれも参考情報)

日本での自己隔離と乗り継ぎ
 結果が陰性で日本へ入国が無事に完了したら、到着の翌日から14日間の隔離が必要。検査方法が唾液検査へと変更になったものの、現在も隔離は継続中だ。隔離期間中は国内線を含め公共交通機関を利用できない。地方に移動したい人は東京で隔離を行うか、車で迎えに来てもらうなど別の方法を取る。
ほとんどの人が東京近辺で14日間の隔離後、移動するという。 

・東京で経由して第三国へ向かう場合(例、バンクーバー発成田経由マニラ行き)、成田空港で同日中乗り継ぎなら検査や隔離なしでOK。但し、JALからJALへの乗り継ぎの場合のみ

・14日間の隔離が完了する前に日本を出発しカナダに戻る場合(例、バンクーバーを出て日本に7日間滞在後、カナダに戻る)、カナダに入国できる条件が揃っていれば、搭乗および出発可能

バンクーバー到着時の流れと自己隔離
 バンクーバー到着時の流れは
1.バンクーバー空港に到着後、飛行機を降りてすぐのところでカナダの入国管理官(CBSA)による簡単な入国チェック
2.入国審査通過
3.荷物受け取り
4.税関チェック
となっている。

・ブリティッシュ・コロンビア(BC)州に到着する人は全て、ArriveCANアプリなどを用いて、Self Isolation Plan(自己隔離計画)を提出する必要がある。Self Isolation Planを確認する専用カウンターは税関通過後にある。ただし、場合によって手順が異なることがあるので入国審査係員の指示に従うこと。

・カナダは到着日より14日間の隔離
・国内線予約が国際線と連結されたチケットを所持している場合は、国際線からカナダ国内線への同日中の乗り継ぎは可能
・そのためバンクーバー経由で他都市に行く場合は、当日乗り換えで航空券を手配のこと

現在のバンクーバー空港の様子
セミナー時点でのバンクーバー空港の様子についても報告があった。
・国際線ゲート付近のフードコートは閉鎖
・ビル・リードの彫刻のそばのスターバックスも閉鎖
・フードコートで開いているのは、国内線出発エリアが数軒
・ゲートは国内線C、国際線Dゲートの2か所のみ開いている(ほかのゲートは閉鎖中)
・日本から到着の際、国際線を下りて荷物受け取り、通路を通って(ロビーに出ずに)直接国内線に乗り継ぐことができたが、この通路も現在閉鎖中。一度、ロビーに出て、上の階に上り、エアカナダ、ウエストジェットともに国際線チェックインカウンターで国内線のチェックイン。
(注: 国内線ターミナルのチェックインカウンターは全て閉鎖中)

JAL8~9月フライトスケジュール
バンクーバー・成田線運航
・JAL 18便(成田-バンクーバー)水曜と土曜
・JAL 17便(バンクーバー-成田)木曜と日曜

8月と9月の同日乗り継ぎ可能なアジア都市 予告なしに変更になる場合あり
・アジアから成田経由でバンクーバーなど北米都市へ
クアラルンプール、マニラ、ジャカルタ、ハノイ、ホーチミン、バンコク、シンガポールの7都市

・バンクーバーから成田経由でマニラ、ジャカルタ、シンガポールの3都市
*参考 北米から羽田経由で同日にアジアに乗り継ぐ便はない。

 アジアから北米は、マニラ、ホーチミン、バンコクから羽田経由でNY、シカゴ、ダラス、LAが可能。

その他 最新情報
 成田、羽田空港ともサクララウンジは閉鎖中だが、7月1日よりJALファーストクラスラウンジが再開。マイレージステータスによっては使用可能。

・ロサンゼルスから関西空港までノンストップ便
 8月あと3便、9月は2便が運航予定
*編集部注 8月18日にJALが9月より一部北米路線の増便を発表。18日の時点で8月はあと1便、9月は3便になった。
 
 手持ちの航空券、新型ウイルス感染症に関するJALグループの対応などの問い合わせは、JAL北米のウェブサイトから可能(日本語、英語)。

ウェブセミナー『コロナ後の日本とカナダの往来』 Part 2に続く。
Part 2ではHISトラベル カナダ統括支店長 山田圭哉氏のプレゼンテーションをレポートする。

(取材 西川桂子)

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