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Naomi Mishima

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コキットラム市の東漸寺での恒例の年末年始行事のお知らせです

除夜の鐘:12月31日(日)法要は午後11時30分からで本堂で行い、終了後に鐘楼の鐘をつきます。

初詣:1月1日(月)~3日(水)の拝観は午前10時から午後5時までです。新年の初法要の修正会(しゅしょうえ)は1月1日午前10時から本堂で行います。

本堂ではお守り、おみくじ、宝くじ (50/50 draw)の販売、別回向、家内安全、厄除けなど個人の祈祷の申し込みができます。お支払いは現金でお願いします。

あと、本堂では人数制限を設けるので外で待っていただくかも知れません。皆様のご理解ご協力をお願いします。

お問い合わせは (604)939-7749 又は tozenji.bc@gmail.comまで連絡下さい。

東漸寺 209 Jackson Street, Coquitlam(無料駐車場有り、Skytrain Braid駅から徒歩15分)

Annual New Year’s Eve and New Year’s activities at Coquitlam’s Tozenji Temple.

Joya no Kane:  December 31 (Sun)  Prayer service at the Main Hall begins at 11:30pm, followed by bell striking at the bell tower.

Hatsumode: January 1 (Mon) to 3 (Wed)  The temple ground is open from 10am to 5pm.  The first prayer service (Shushou-e) held from 10:00am on January 1 at the Main Hall.

Omamori, Omikuji and Takarakuji (50/50 draw) will be on sale, and personal services such as Betsueko、Kanai-anzen and Yaku-yoke are available upon request.  All payments by cash only.

The number of people in the Main Hall will be limited and we may ask people to wait outside.  Thank you for your understanding and cooperation.

For details, please contact (604)939-7749 or tozenji.bc@gmail.com

Tozenji:  209 Jackson Street, Coquitlam(free on-site parking, 15-minute walk from Skytrain Braid Station)

バンクーバーの小売店業界2024年の展望(後編):Crescent Moon Enterprisesオーナー佐藤広樹さんに聞く

クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 各国の新型コロナウイルス規制も終わり、2023年はポストコロナ元年となった。カナダの新型コロナ渡航規制は撤廃され、観光客が多く来加。そうした影響もあり、2023年は小売店ビジネスが好調だったと振り返るのは、ガスタウンとウィスラーでギフトショップを経営する佐藤広樹さん。

 クリスマス商戦真っただ中の現在、2023年のビジネスを振り返るとともに、2024年の展望について話を聞いた。

バンクーバーの小売店業界2024年の展望(前編):Crescent Moon Enterprisesオーナー佐藤広樹さんに聞く

新型コロナで観光客ゼロから市場を広げて売り上げ上昇に

 佐藤さんはウィスラー店を開店してから約25年間、小売店ビジネスをやってきた。以前は日本からのツアー客を中心にビジネスを展開。ガスタウン店をオープンしたのは2008年。日本からの観光客は減少する一方で、そこに新型コロナが追い打ちをかけた。いまも日本からの観光客は戻っていないと感じている。

 しかし、新型コロナを転機に「市場を広げたおかげで色んな人に来てもらえるようになりました」と話す。観光客だけでやっていた時は「12月から3月中旬までは閑散期でした。ですから諦めて全部ウィスラーにシフトしていたんです」と振り返る。しかし新型コロナ後はガスタウン店でも「冬も商売になっています。特に12月のクリスマス時期は忙しいです」。理由は「地元のお客さんが増えているから」と感じるという。

 新型コロナを機に観光客相手のお土産物屋さんから地元の人にも愛されるギフトショップへと変わり市場を広げた。そこにアメリカドル高による観光客増がピタリとはまった。「ピンチはチャンスじゃないですけど、だんだんと市場を広げたから店も伸びていると感じますね」

 それにガスタウン全体が高級志向に変わってきているという。土産物屋が多かったのは今は昔で、最近では高級ショップやカフェなどが増えたと店長の久保ゆうやさん。それでも人は多く集まってくる。

 佐藤さんはバンクーバー・ダウンタウン自体がショッピングをするのに良い流れになっていると感じている。「グランビル通りの(歩道が)広くなったのも良い流れを生んでいるように思います。ガスタウン、ロブソン、グランビルと、ダウンタウン全体がショッピングモールのようになっているイメージですね」

 そうした人の流れがバンクーバーの小売店全体に良い影響を与えているのではと語った。

2024年のバンクーバーの小売業界は?

 佐藤さんによると2024年も小売業界は相変わらず対カナダドルで強いアメリカドルに支えられると予想されることから、好調を維持するのではないかと予測している。

 金利引き上げなどの影響で経済が後退局面に入るとの予測もあるが、バンクーバー、ウィスラーでの小売業界はまだまだ「熱い」と肌で感じると話す。

 そうした上昇気流にうまく乗ってもう少し事業を拡大したいと考えているという。「こういう(好調な)状況がもう少し続くと思っているので、できる時にもうちょっと店舗を広げたいなと思っています」

 そのためにも若者にもっと勉強をして知識を高めてもらって、色々とトライしてほしいと話す。まず来年はスタッフをトロント(オンタリオ州)で開催されるギフトショーに派遣する。自分たちの目で色々なものを見て感じて吸収してほしいと語る。さらに「高級志向にもついていかないといけないのでブランド物も少し取り入れようかと思っているんです」と笑い、若いスタッフにファッションショーに行ってもらう予定にしていると楽しそうだ。

 自分のやりたいと思う方向性が見えているという。「実はいうと商売はそこまで大きくしようと全く思っていなかったんです。でも(東京で)選挙に立候補したあたりから、もうちょっとやってみようかなぁっていう気持ちになって。選挙に立候補したのは私にとっては良い方向に働いたと思います」。だから少し欲が出て「カンパニーっぽくさせたいな」と思っている。

 売り上げも順調に伸びている。若いスタッフのがんばりもあり、新型コロナ後にここまで来られた。インフラも整え、人も増やして、「残りのパワーでちょっとした会社だなと思われるぐらいにはやりたいと思っています」

 それが若い人たちのやる気にもつながると信じている。「店舗が増えて、会社も大きくなっていくのが実際に目に見えるようになるとうれしいと思うんですよ。自分たちがやりたいことが実現するというのはやりがいにもつながりますし」と語り、「チャレンジしないと会社は成長しないと思うので、できるだけ追いついていかなと、と言うところです」と付け加えた。

 「私も目標が見えてきたので、ワクワクしますよ。だからカナダの(小売業界も)このまま2024年も順調にいってほしいですね」と笑った。

佐藤広樹(さとう・ひろき)
Crescent Moon Enterprises Ltd.オーナー・代表取締役
1998年ウィスラーにSMILE GIFT、2008年バンクーバー市ガスタウンにSmileys Giftを開店し2020年GIFTS AND THINGSに改名

クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

(取材 三島直美)

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第18回 友達からのメイル「何とかなるさ」

澄子さん、お元気でお過ごしですか?
すっかり寒くなってきましたね。
我が家は、雨漏りで、一昨日来て直してくれたはずなのに、同じところから、今も雨漏りになっています。
明日の朝来てくれるそうですが、寒い日の雨漏りは、本当に困ります。
主人はまだ病院です。
もう心がマヒしてきたような状態で、彼も私も、ただただ、毎日生きているような感じです。
今日は私かなり落ち込んで、心が折れそうです。
いらだちと疲れと悲しさと、訳が分かりません。
されど、頑張らなくてはと、思うのですが、、、今はしんどいです。
退院の予定はないみたいで、それも、私たちを苦しめています。Kiko

喜子さん
昨日、笑顔の美樹ちゃんが来ました。
そして、101歳で亡くなったold-holocaust-survivorの話を聞かせてくれました。
Subject: RE: RE: who lived 101yrs old and said happiest person
ユダヤ人収容所ホロコストで、その人は体重が食料不足で25㎏になったこと。
何度も殺されそうになったこと。機械修理の特技を持っていたので、生き抜くことが出来たみたいです。
そして、諦めることなくホロコストを脱走し、結局、オーストラリアへある団体の助けで移民出来たのです。
そして、「生きる」と自分に言って聞かせながら、真剣に「生き」、その「生きる」ことの大切さを世界中の人に訴えて101歳で亡くなられました。彼の平和な写真の顔を見るだけで、私の心も平和になっているのです。
それで、沢山の友達にこのヴィデオを送りました。時間のある時観て下さい。
https://tedxsydney.com/talk/the-happiest-man-on-earth-99-year-old-holocaust-survivor-shares-his-story-eddie-jaku/

https://gendai.media/articles/-/86428

Holocaust Survivor but his face can tell he is really happiest person.

喜子さん、
今日、私の友人から連絡で、彼女は夫の暴力で大けがし、立ち上がれなくなった。
暴力ふるったその夫は自分で直ぐに救急車を呼び、警察へ電話し、自分の暴力行為を報告したそうです。
ただ、彼らの一人息子はハンディキャップ、一人で食事もできない30歳位青年、彼女が入院すれば、息子の面倒みる人がいないのです。結局、彼女は病院で治療だけ受けて入院せず。
暴力ふるったご主人は、彼女から相談を受けた私が、我が家を提供し、彼が数週間滞在することになりました。
警察の「別居リクエステト」で警察の許可が出るまで自宅に戻れなくなったのです。
私の家は寝室7部屋、浴室5ケ所で息子と2人だけの住い。スペースはありますから、その人を歓迎できます。
彼が「暴力をふるった人」と言うので少し心配でした。でも、驚いたことに、初めてお会いしたそのご主人は、それはやさしく、「彼が暴力をふるった!」なんて考えられない静かな方でした。
このご夫婦、とても知的な素敵な方達です。結局、数週間後に警察からの許可が出て彼は帰宅なさいました。
大したお手伝いも出来ませんでしたが、でも彼を温かく我が家にお迎できたと思います。そして、やはり、彼女達ご夫婦にも「世界一幸せな男」のヴィデオを送りました。
怪我しても、ヴィデオは観られるでしょう。元気になって欲しいです。

私ね、脳卒中で両手が動かず辛い時がありました。でも、その苦労があったから今の平和な自分があるのです。
この老婆、84年生きてくると何か問題が自分に来る度、「天が私にその問題から何かを学べ」と言っている気がするのです。そして、そこに毎回学びがありますねぇ。

貴方の御主人のご病気も「必ず良くなる」「良くなった」と口ずさみ続けて下さい。そして、ニッコリ笑う。
それが私の「希望が叶うおまじない」セレンディピティ、幸運をつかむなのですよ。
私も貴方と御主人が「ニッコリ」、お2人の「ニッコリ」を空中に描いて「ありがとう」って3000回言ってみます。馬鹿みたいなんて言わないのよ。それがおまじないなの。笑

ありがとう、ありがとう、ありがとう…

おやすみなさい。

澄子

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/

第7回 エンディング(終活)ノートのススメ その1~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

2023年も早いもので、もうすぐ終わろうとしています。皆さんにとって、今年はどのような年でしたか?私は息子の野球のため日本に一時帰国したり、本を出版したり、夏には久しぶりに家族旅行をしたり、また来年1月からは終活ノート作成講座の開催が決まっており、1年を通して充実したありがたい年でした。年の締めくくりも感謝で終え、感謝の気持ちで新しい年を迎えたいと思っています。

さてみなさんは「エンディングノート」「もしものときノート」「終活ノート」って聞いたことがありますか?(ここでは終活ノートと書きます)

終活の一番の「肝」、最も重要な要素と言ってもよい部分で、まだ作っていない人はすぐにでも作ってもらい、このノートの持つパワーや素晴らしさを実感してもらいたいと思っています。

そう言われても、ノートを作る意味や意義がわからなければ、なかなか作る気になれないですよね?そこで今回から終活ノートの必要性と重要性について、少しずつ例などを交え説明していきたいと思います。

終活ノートを作る7つの利点

  1. 自分の意向や希望の明確化
    葬儀の方法、お墓や遺品の取り扱いなど、具体的な希望を書いておくことが出来ます。
  2. 財産管理
    資産や負債に関する情報を整理しておくことで、物忘れがひどくなった場合や、相続の際に手続きを円滑に進める助けになります。
  3. 家族への配慮
    家族や周囲の人々が大きな決断を迫られることがなくなります。家族間で争うことや、責任を押し付け合うことへの抑止力が期待できます。
  4. 法的・医療的意向の表明
    生前に病状悪化時の治療方針や臓器提供、医療意志(アドバンス・ディレクティブ)などの意思表示や希望を明記しておくことが出来ます。
  5. 人間関係の整理
    大切な人へのメッセージを残したり、感謝や謝罪の気持ちを伝えることで、心や気持ちの整理ができます。
  6. 情報の提供
    金融機関などの様々な取引先や契約先の会社名や内容など、必要な情報を家族が簡単に確かめることができます。
  7. 自分史を振り返り、後悔を防ぐ
    終活ノートは自分の人生を振り返る作業でもあります。人生を終えるまでにやり残したことはないか、心残りなことはないかを確認し、それをやり切ることで後悔を残さずに済みます。

終活ノートはこれらを網羅的にカバーするツールであり、書き上げること自体で終活の大きな一部分を完了させることになるのです。

例えばこんな話があります。

Aさんのお父さんはきっと本人もまだまだ死ぬと思ってなかっただろうとAさんが言うぐらい、本当に前触れもなく急に亡くなられたそうです。そのためお葬式やお墓はお母さんと相談して決めたのですが、その間にかなりお母さんと意見が対立したり、「どうして訊いておかなかったんだ?!」「交友関係も覚えてないの?」「なんで知らないの??」といった心無い言葉でお互いを傷つけあったり、責任を押し付けあったり何度も衝突したり喧嘩をしたそうです。

全てが終わった後も、「お父さんの意図をくみ取れたのだろうか?」「これで良かったのだろうか?」というモヤモヤが残ったそうです。

以前からこうした話し合いができていれば理想的ですが、Aさんのお父さんのように本当に突然亡くなる場合もあるため、お父さんが終活ノートを書き残してくれていたなら、それを頼りに残された家族が衝突せずに、さまざまな判断や決断が容易に出来たため、AさんやAさんのお母さんの負担もぐっと減ったはずです。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

海外終活アドバイザー・弁護士アシスタント
「終活をせずに亡くなった!認知症になって困った!途方に暮れた!!」を、「終活しておいて良かった!」「終活してくれていて、ありがとう!」に変えたい!そんな思いから2020年に終活アドバイザー資格を取得。海外在住の日本人向けの「海外終活」についての講座や説明会、ご相談はブログやFacebookなどのSNSをご覧ください。家族はカナダ人の夫+息子2人+猫1匹、バンクーバー在住。

ブログ: https://globalmesen.com/
Facebook: https://www.facebook.com/noricovancouver
Instagram: https://www.instagram.com/norikocanada/
Line公式: https://line.me/R/ti/p/%40490fuczh
その他SNS: https://lit.link/norikocanada
著書「海外在住日本人のための50代からの終活」:​​https://a.co/d/ad4OeLw

バンクーバーの小売店業界2024年の展望(前編):Crescent Moon Enterprisesオーナー佐藤広樹さんに聞く

クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 各国の新型コロナウイルス規制も終わり、2023年はポストコロナ元年となった。カナダの新型コロナ渡航規制は撤廃され、観光客が多く来加。そうした影響もあり、2023年は小売店ビジネスが好調だったと振り返るのは、ガスタウンとウィスラーでギフトショップを経営する佐藤広樹さん。

 クリスマス商戦真っただ中の現在、2023年のビジネスを振り返るとともに、2024年の展望について話を聞いた。

好調の2023年、販売する側として市場に乗り遅れない努力を

 2023年は、「質が良くて値段が高い商品がよく売れました」と振り返った。それは、ウィスラー店も、ガスタウン店でも、傾向的には同じだったと言う。特にウィスラーは近年の傾向として「余裕がある人が多く来ているので、クオリティが高ければ、少々高くても購入するお客さんが増えています」と話す。

 そのため、売る側としてもそうした顧客のニーズに応えるために、販売する商品を厳選して、少々値段が高くてもよりクオリティの高いものを置くように努力している。「例えば、フード付きパーカーでもそれまでより質の良いものに変えて15ドルほど値上げするとか、帽子もグレードの高い商品を仕入れるとか、メイドインカナダの商品を増やすとか、お客さまが良いものを欲しがるので、そうした様子を見極めながら商品の質を上げ、値段を上げている状況です」

 この状況は特に佐藤さんの店舗だけが特別というわけではなく、ウィスラー全体が高級志向になっていることが背景にあり、「自分たちも色々と市場を研究しながら、ニーズについていかないとと勉強しながらやっています」と笑う。ただ商品の値段を上げればいいかというとそうではないところが難しい。「お客さんの目も肥えているので、そうするとただの便乗値上げみたいになってしまいますし。商品のクオリティと値段のバランスを取るのが結構大変で。だから、これまでのお土産物屋さんという目線ではなく、高級志向に合わせて行く目線が必要なのかなって。できるだけ追いついていかなと、と言うところです」と笑った。

強いアメリカドルが小売店を後押し

 ウィスラー店だけではなく、ガスタウン店もそうした傾向にあるという。その理由を佐藤さんは、アメリカやヨーロッパからの観光客が多く、特に強いアメリカドルを背景にアメリカからの旅行者が増えているせいではないかと語った。アメリカやヨーロッパの観光客から見ればカナダは安全な国だし、通貨も安いし、「行きたくなる旅行先なんだと思います」

 今年からクルーズ船も新型コロナ後初めてフルシーズン寄港した。「アメリカやヨーロッパからバンクーバーやウィスラーへの観光客は余裕のある人たちが多いようで、できるだけ良いものを買って帰ろうとしているように見えますね」と佐藤さん。

 だからこそ、クオリティの高いものが仕入れる側にも求められるという。「でも、高いものって難しくて。安いものだと割と簡単なんですけど、高いものは何を選ぶかがすごく重要で。その商品の質と値段が合致すれば、少々高くても買っていくので自分たちも研究しています」

 GIFTS AND THINGS店長の久保ゆうやさんによるとスタッフみんなで協力してアンテナを張っているという。「商品選びについては本当に好きにやらせてもらっていて、自分たちで色々調べています」と話す。例えば「店舗に来たお客さまの反応を見たり、直接意見を聞いたり、問い合わせがあった商品を調べてたりしますし、また業者の方に売れ筋を聞いたり、トロントで流行っているものを聞いたり、日本人のワーキングホリデーで来ているスタッフにアイデアを聞くとか、スタッフの中には休みの日に雑貨屋さんを回ったり、もしくはSNSを見たり。とにかくトレンドを探すという感じで、スタッフでいつもアンテナを張っています」

 佐藤さんは商品選びについては若者の感性を大事にしていると話す。「固定概念がないので、商品についての考え方も柔軟だし、見る目も持っているし、値段についても先入観がないし、市場でどういうものが売れているかもよく見ているし。だからもうお任せしています」と全幅の信頼を寄せている。

(後編に続く)

佐藤広樹(さとう・ひろき)
Crescent Moon Enterprises Ltd.オーナー・代表取締役
1998年ウィスラーにSMILE GIFT、2008年バンクーバー市ガスタウンにSmileys Giftを開店し2020年GIFTS AND THINGSに改名

店長の久保さんによると、クリスマス時期はプレゼント用にギフトボックスに入ったものが売れるという。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
店長の久保さんによると、クリスマス時期はプレゼント用にギフトボックスに入ったものが売れ筋という。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

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第20回 日系ビジネスアワード&クリスマスパーティ

大賞を受賞された諸橋 富雄様。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
大賞を受賞された諸橋 富雄様。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会

12月3日(日)に2023年度日系ビジネスアワード&クリスマスパーティを開催いたしました。記念すべき20回目の開催となった今回は70名を超える参加者の方々にご参加いただき、Victoria Chinese Restaurantにて美味しい中華料理を楽しみながら大盛況のパーティとなりました。

昨年に引き続き二部制で行い、第一部にてクリスマスパーティ、第二部にて日系ビジネスアワード表彰式を執り行いました。パーティ後の打ち解けた雰囲気の中で進められた表彰式は、会場一体の温かさに包まれていたのが印象的でした。

BC州政府Kang大臣のあいさつ。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
BC州政府Kang大臣のあいさつ。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会

第一部のクリスマスパーティでは、Municipal Affairs省Anne Kang大臣よりご来賓のご挨拶、丸山浩平在バンクーバー日本国総領事より乾杯のご挨拶をいただいたあと、参加者の皆様には歓談のひとときをお過ごいただきました。10品以上にのぼるお料理は、ロブスターや蟹を含めた豪華なもので、皆様堪能なさっていました。

パーティ中には、毎年恒例の50/50、プレゼント交換を開催。

乾杯のあいさつをする丸山バンクーバー総領事。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
乾杯のあいさつをする丸山バンクーバー総領事。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会

50/50では、皆様にご支援をいただき、740ドルの売上を記録し、熱気ある抽選会となりました。コーストホテル佐々木様にご協賛いただいたホテル宿泊券の抽選会も行われ、こちらも大変盛り上がりました。

今年のプレゼント交換は「Too good to go! 企友会SDGsプレゼント交換」と銘打ち、参加者の皆様に、頂き物や自宅で眠っている品物を持ち寄っていただきました。「ゼロウエイスト – 廃棄を減らし、環境へ十分に配慮した持続可能な社会の形成」を目標にした、企友会の呼びかけに皆様、予想以上に賛同してくださいました楽しそうにプレゼントを選ぶ様子が見られ、まさに時流にあったイベントとなりました。

岡本会長のあいさつ。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
岡本会長のあいさつ。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会

第二部の日系ビジネスアワード表彰式では、企友会の岡本会長から選考基準の説明があり、日系ビジネス全体のより一層の発展に並々ならぬご尽力をいただいた3名にアワードが授与されました。

【2023年日系ビジネスアワード受賞者】

企友会日系ビジネスアワード大賞:Bridges International Insurance Services Inc. 諸橋 富雄 様

日系社会功労賞: バンクーバー補習授業校 様

企友会新人賞 : Yuki Shiraishi Immigration Consulting Inc. 白石 有紀 様

大賞を受賞された諸橋 富雄様。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
大賞を受賞された諸橋 富雄様。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
功労賞を受賞されたバンクーバー補習授業校 高生様(右)岩﨑学校長。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
功労賞を受賞されたバンクーバー補習授業校 高生様(右)岩﨑学校長。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
新人賞を受賞された白石有紀様(左)。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
新人賞を受賞された白石有紀様(左)。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会

今年もこのクリスマスパーティが、バンクーバーでご活躍されている皆様の繋がりを深め、2024年に向けた励みとなっていれば幸いです。

来年も皆様の企友会イベントへのご参加を、心よりお待ちしております。

会場全体の雰囲気。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会
会場全体の雰囲気。2023年12月3日、バンクーバー市。写真:企友会

(寄稿 企友会)

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日系餅つき

2023年12月29日 金曜日
11am – 3pm
入場無料

年末恒例の伝統行事にぜひご家族やお友達といっしょにご参加ください。

    お餅を販売します。

        その場で食べられるつきたてのお餅(3個5ドル)

        お持ち帰り用の冷凍餅(1パウンド10ドル)

    バンクーバー日系ガーデナーズ協会による臼と杵を使った餅つきのデモンストレーションを行います。11時15分頃から。

    大人も子供も餅つき体験できますので、ぜひ当日にお申込みください。

    ステージで踊りや太鼓のパフォーマンスがあります。

        11時 ちび太鼓

        1時 彩月会

        2時半 沖縄太鼓

    お食事・おやつ・飲み物を提供するベンダーが出店します。

このイベントはバンクーバー日系ガーデナーズ協会と、NNMCC活動補助グループの協力で行われます。

詳細はウェブサイトをご覧ください。

男声合唱団Chor Leoni、クリスマスコンサート開催

Photo by Phil Jack/Chor Leoni
Photo by Phil Jack/Chor Leoni

 バンクーバーの男声合唱団Chor Leoniがクリスマスコンサート”Christmas with Chor Leoni”を開催する。

 毎年恒例のクリスマスコンサート。曲目は、お馴染みの “I Saw Three Ships”、”Silent Night”、”New Year’s Carol”などのほか、ワールドプレミアとなる “A Midnight Clear”も披露。

 Chor Leoniのコンサートは、その歌声だけでなく、時には笑いもあるパフォーマンスも魅力の一つ。コンサートが終わると合唱団の一人一人がステージから降り、観客と触れ合い、見送ってくれる。今年の開催は15日、16日、18日の3日間、クリスマスな雰囲気に包まれる。

Chor Leoni

男声合唱団。2020年にはJUNO(カナダの音楽賞)にもノミネートされ、2019年にはChorus AmericaからThe Margaret Hillis Award for Choral Excellenceを受賞。北米だけでなく、シンガポールやインドネシア、イタリアやドイツなどでもパフォーマンスを披露している。今年で31年目のシーズンを迎える。

Singing Lions(クリスマスコンサート)

日時:12月15日(金)、12月16日(土)、12月18日(月)。時間はチケット購入時に確認を。
会場:St. Andrew’s-Wesley United Church(1022 Nelson St., Vancouver)
料金:$20~$75
チケットインフォ:https://my.chorleoni.org/events
Chor Leoniウェブサイト:https://chorleoni.org/

(記事 編集部)

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建友会10周年記念パーティー

建友会10周年記念パーティー。2023年11月26日、バンクーバー市。写真:建友会
建友会10周年記念パーティー。2023年11月26日、バンクーバー市。写真:建友会

建友会の設立10周年を記念するパーティーが、2023年11月26日(日曜日)バンクーバー、ポイントグレイのJericho Tennis Clubにて催されました。

30名を超える会員と同伴者が出席したこのパーティーは、まずは松原会長の挨拶からはじまり、これまで多くの会員や日系コミュニティの支えがあって建友会を継続、発展してこれたことへの感謝が述べらました。

続いてはスクリーンに写し出されたスライドショーの写真を見ながら、建友会10年の歴史を振返りました。

当日は設立当初から会の運営に携わってきた会員も多く出席し、構想2年を経て2012年11月に第1回総会が開かれたときの写真を見て、当時を懐かしく思い出していました。

毎年3月のSakura Days Japan Fair への参加は、2013年から現在まで継続しており、2018年からは風車作り体験のよる収益の一部をBCチルドレンホスピタルに寄付しています。また毎年8月には日系祭りで使用する櫓(やぐら )を組み立てていますが、これは2014年に設計から資材提供など、すべて当時の会員が協力して製作したものです。近年では夏にビーチクリーンアップのボランティアもはじめました。

また設立当初から勉強会、講演会、ワークショップ、現場見学会を頻繁に開催し、サロンや懇親会は会員同士の情報交換やネットワーキングの機会になっています。

そして出席者の自己紹介と近況報告につづき、ビュッフェ形式のディナーがはじまりました。霧が立ち込めるバラードインレットの夜景を眺めながらの食事はとてもおいしく、出席者の会話もよくはずみました。

そのあとは出席者が持ち寄ったドネーションを賞品にしてクイズ大会と抽選があり、最後にパーマー副会長に閉会の挨拶でパーティーが締めくくられました。

建友会10周年記念パーティー。2023年11月26日、バンクーバー市。写真:建友会
建友会10周年記念パーティー。2023年11月26日、バンクーバー市。写真:建友会
建友会10周年記念パーティー。2023年11月26日、バンクーバー市。写真:建友会
建友会10周年記念パーティー。2023年11月26日、バンクーバー市。写真:建友会

(寄稿 建友会)

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「いい旅」3 ~投稿千景~

エドサトウ

 関ヶ原古戦場から再び東名高速道路に入り、米原市で北陸高速道路に入るのであるけれど、米原市の琵琶湖湖岸に面した磯に、かつて小生が日系の造船所で働いていたころに、お世話になった大先輩の川崎さんの実家がある。川崎さんは、日米の太平洋戦争が始まる前にカナダに移住されて、戦争が始まると多くの日系人と同じく500キロも離れた内陸部に強制移動させられて、戦中戦後といろいろと苦労されている。その実家は、我が家と同じように弟さんが後を継いで、守ってこられたが、戦争末期に海軍に召集されて、南方方面(東南アジア)に行かれ、戦後はその時にかかったマラリアのためか、弟さんは病死をされている。その後、実家は養子をもらい、その方が実家を守っておられる。その実家のある磯町のはずれに車を止める。

 湖岸に面し、かつては半農半漁の村であったようである。大昔の日本の古事記に磯町から東に見える伊吹山で日本武尊が毒蛇にかまれて、この村で療養をしていたという言い伝えが、ここの磯神社にあるというから、ずいぶん古くから人々が住んでいたらしい。人々は仕事に出ているためか、あまり人の気配のない午後の村のはずれを歩いてこられた年配のおばあさんに道を尋ねるように、「僕はカナダに住んでいるのですが、カナダでお世話になった川崎さんと言う方が、ここの磯の方なのですが、そういう方を知りませんか?」と問うと、「この辺は川崎と言う姓ばかりだよ!」と笑いながら答えられた。

 「私は、昔に、この近くの村から嫁いできたけどね」と付け加えられた。古くから北陸街道と中仙道が交わるこの地は、米とか日本海の海産物などが集まる物流の要の地であったのかもしれない。

 湖岸ぞいの道を車で北上して行くとキャンプ場のある公園があり、その近くに「道の駅」という地元の野菜や名物を売る店があり、ふらりと立ち寄り地元のヨモギで作られたヨモギ饅頭などを買う。車の中でおやつに食べたが、懐かしくて美味しかった。そこから再び北陸街道に入り、長浜市の城下町にある観光名所の一つ黒壁に寄る。かつて、豊臣秀吉がここに住みお城を築いたときに、水郷のように琵琶湖の水を利用して、堀をいくつも城の周りに作っている。これが後の大阪城のモデルになっていると説明が黒壁の街の中にあった。黒壁の街は蔵のような古い黒い壁の家並みに、今はお土産屋さんとか食堂が多く見られた。ところどころに「太閤さんさんありがとう」のポスターが見られるのは何故か印象的であった。

 ここ長浜市は西軍の大将石田三成の生誕の地であり、ここで秀吉と出会い秀吉の小姓となり出世していくのである。しかし、関ヶ原の戦い後、三成が捕縛されて京都で処刑されるのは、無常の時の流れなのであろうか?一方で、ここへ来る前に寄った米原は京極氏の領地で、京極高知は東軍の左翼に陣を構えて、西軍から寝返った小早川軍と共に大谷軍を攻めて勝利している。東軍に寝返った小早川秀秋は以前に石田三成から北九州の領地を改易させられたことがあり、三成を快く思っていなかったと想像すれば、この寝返りも納得できなくもない。

 京極高知の兄は米原で西軍の毛利軍が中仙道を通って関ヶ原へ軍を進めるのをくい止めているのは、家康にとっても関ヶ原の戦いの勝利の一因となったとも思える。 

 もう、四時も過ぎて、天気予報とおりに雨がぽつりぽつりと降り始め、西の空はにわかに黒雲に覆われて強い風が舞い、今にも大雨が来そうな気配になり、急ぎ車に戻り、今夜の宿泊地金沢を目指して高速道路を北へと走る。

投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
これまでの当サイトでの「投稿千景」はこちらからご覧いただけます。
https://www.japancanadatoday.ca/category/column/post-ed-sato/

「カナダ“乗り鉄”の旅」第7回 路線バスで紙幣を運賃箱に入れようとした時、運転手さんは… BRTとバスが発達したウィニペグ

VIA鉄道カナダのチャーチル発ウィニペグ行きの夜行列車(2022年12月31日、大塚圭一郎撮影)
VIA鉄道カナダのチャーチル発ウィニペグ行きの夜行列車(2022年12月31日、大塚圭一郎撮影)

大塚圭一郎

 凍える日が多い冬のカナダだが、私は長期休暇になると駐在している米国から直ちに北上して国境を越えるのがもっぱらだ。自動車の運転を敬遠している者としては公共交通機関で安全に移動できる利点が大きいのに加え、訪れるたびにとても良い方々と出会えて心温まるのも大きい。昨年12月に訪れた中部マニトバ州の最大都市で州都のウィニペグは、バス高速輸送システム(BRT)と路線バスが発達しているため移動しやすい。ただ、紙幣はあったものの小銭を持たずに路線バスに飛び乗ってしまったため、運転手さんに過分な気遣いをさせてしまった―。

ウィニペグ市街地を走るウィニペグ・トランジットの路線バス(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグ市街地を走るウィニペグ・トランジットの路線バス(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)

【BRT】バス高速輸送システムのことで、英語の「Bus Rapid Transit」の頭文字を取って「BRT」と略される。バスだけを走らせる専用道や、バス用の車線を一部活用するため通常の路線バスより道路渋滞に巻き込まれにくく、速達性と定時性を確保しやすいのが特色。カナダではウィニペグのほかに首都オタワや西部アルバータ州カルガリーなどでBRTが走っており、2023年11月16日にはブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー都市圏で3つのルートを優先的に新設することが発表された。

 日本を含めた世界で走っており、JR東日本は2011年3月の東日本大震災で被災した気仙沼線の柳津(やないづ、宮城県登米市)―気仙沼(同県気仙沼市)間と大船渡線の気仙沼―盛(岩手県大船渡市)を復旧させるためにBRTを導入した。JR九州は17年7月の九州北部豪雨で被災した日田彦山線の添田(福岡県添田町)―夜明(大分県日田市)間(29・2キロ)の復旧のため23年8月28日に添田―日田(日田市)間でBRTの運行を始めた。

路線バスでウィニペグの空港から駅へ

ウィニペグ国際空港の旅客ターミナル内(2022年12月26日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグ国際空港の旅客ターミナル内(2022年12月26日、大塚圭一郎撮影)

 カナダで中心部と空港を結ぶアクセス鉄道が走っているのはバンクーバーと国内最大都市の東部オンタリオ州トロントの2都市だけ。ただ、オタワが早ければ2024年4月にもオタワ国際空港まで鉄道で行けるカナダ3番目の都市となり、27年に東部ケベック州モントリオールの無人運転鉄道「REM」がモントリオール国際空港まで延伸する予定だ。

 詳しくは本連載「カナダ“乗り鉄”の旅」第6回をご参照いただきたい。

 大部分の都市では空港への主要な移動手段は路線バスとなっており、私も多くの都市で空港へ向かうバスのお世話になってきた。

 どの都市で乗った路線バスの運転手さんも親切だった。中でも印象的だったのは2022年12月27日にウィニペグ国際空港からVIA鉄道カナダの列車が発着するユニオン駅へ向かった時に乗ったバスの男性運転手さんだ。

運賃箱の投入口を手で押さえる

 空港の旅客ターミナルを出て少し歩いた場所にあるバスの停留所に着くと、ちょうど公共交通機関ウィニペグ・トランジットの路線系統15番のサージェント・マウンテン行きのバスが滑り込んできた。

 運転手さんに「ユニオン駅に行きたいのですが、このバスでいいですか?」と尋ねると、「途中でバスを乗り換えれば行けるよ」と教えられた。

 これはさい先が良いと満足しながら財布を開けると、そうとも言えない事態なのに気づいた。米ドルから交換したカナダドルの紙幣が入っているものの、カナダ入国後に買い物をしていなかったため小銭が全くないのだ。

 バスの運賃を確かめると大人が3・15カナダドル(約340円)で、妻と息子を含めた3人で計9・45カナダドルとなる。

 そこで10カナダドルを運賃箱の投入口へと投下しようとすると、運転手さんが慌てて投入口を手で押さえた。

「お釣りはいいですよ」と申し出たものの…

 運転手さんは「この機械はお釣りが出ないんだ。小銭はないか?」と尋ねてきた。

 そこで、「小銭はないので、お釣りはいいですよ」と10カナダドルを再び入れようとしようとした。大人3人で10カナダドルならばタクシーで移動するよりも安い。0・55カナダドルは運転手さんへのチップだと思えばいい。

 ところが、運転手さんは再び投入口を手で押さえてこう言った。

 「いや、運賃よりも多くもらうわけにはいかない。次に乗る時は小銭を用意して」

 そして「バスの乗り換えにこれが必要だから」と乗り換え用の切符も3枚くれ、乗り換えるバス停と、乗るべきバスの路線系統も丁寧に教えてくれた。

 あまりにも律儀な運転手さんの様子に申し訳なく思いながらも謝意を伝え、「次は小銭を用意するね」と約束して乗り換え用の切符をありがたく受け取った。

日系カナダ人の投票権を請願

ウィニペグ市内で見つけたネリー・マクラングさんらを描いた壁画(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)

 ウィニペグは積雪があったものの、走り出したバスの運転手さんは雪道に全くちゅうちょする様子もなく鮮やかにハンドルをさばいていく。

 車窓から白銀の街並みを眺めていると、カラフルな建物の壁面が目に入った。左上に「女性たちの議会」というタイトルが付けられ、議場に居並ぶ女性たちが描かれていた。

 壁画の題材は『ダニーの信条』などの著書がある作家で、女性の参政権獲得に尽力した故ネリー・マクラングさん(1875~1951年)だ。東部オンタリオ州生まれで、マニトバ州に住んだマクラングさんらの活躍により、マニトバ州は1916年にカナダの州で初めて女性に投票権を付与した。

女性の参政権獲得に尽力したネリー・マクラングさん(1875~1951年)
女性の参政権獲得に尽力したネリー・マクラングさん(1875~1951年)

 また、マクラングさんら女性5人は英国領北アメリカ法に定める「人間」には女性が含まれるとの訴訟を起こし、1929年に勝訴。この判決は、それまで女性の立候補を認めていなかったカナダ連邦議会上院で女性議員が誕生するきっかけとなった。

 マクラングさんは1930年代にブリティッシュ・コロンビア州に対して日系カナダ人にも投票権を与えるように求める請願活動を展開。1930年代後半から40年代前半にかけてはカナダ政府にユダヤ人難民を受け入れるように迫った。

 マクラングさんは1932年、女性で初めてカナダ放送協会(CBC)の理事となった。ウィニペグにはネリー・マクラング財団があり、私が目撃したのは女性参政権に道を開いた功績を顕彰する壁画だったようだ。

人気キャラクターの名前の由来

ウィニペグ・ユニオン駅舎内での筆者(2022年12月27日)
ウィニペグ・ユニオン駅舎内での筆者(2022年12月27日)

 無事に着いたウィニペグ・ユニオン駅は1911年に完成した風格のある石造りの建物で、上部にVIA鉄道のロゴを掲げている。建物内のコンコースは吹き抜けで天井がドーム状になっており、クリスマスツリーの前には2022年9月に亡くなったカナダ元首でもあったエリザベス英女王の写真を展示していた。

 VIA鉄道はユニオン駅舎の改修のために2500万カナダドル(約27億3千万円)超を投じることを23年8月に発表。マリオ・ペロキン最高経営責任者(CEO)は「ユニオン駅はウィニペグの象徴で歴史的建造物というだけではなく、活気のある街と州のシンボルにもなっている。VIA鉄道は手入れをする役割を果たせることを誇りに思う」とコメントした。

 ウィニペグは人気キャラクター「くまのプーさん」(英語名「Winnie the Pooh」)のモデルとなったクマ「ウィニー」の出身地。ユニオン駅の近くには10カナダドル紙幣に描かれているカナダ人権博物館がある。

ウィニペグのカナダ人権博物館(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグのカナダ人権博物館(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)

 2022年の推計人口は約78万3100人で、マニトバ州(23年で144万4190人)の半分強が集まっている。

波瀾万丈の鉄道旅に

 私たち家族は約900人が住むマニトバ州北部チャーチルへ2泊3日で向かうVIA鉄道の夜行列車に乗り込んで往復した。往路の列車は一時16時間超も遅れる波瀾万丈の旅となった。

VIA鉄道カナダのチャーチル発ウィニペグ行きの夜行列車(2022年12月31日、大塚圭一郎撮影)
VIA鉄道カナダのチャーチル発ウィニペグ行きの夜行列車(2022年12月31日、大塚圭一郎撮影)

 予約していた2023年元日の航空便に間に合わなくなることを一時は恐れたが、復路の列車はウィニペグ・ユニオン駅に22年の大みそかの午後10時20分、定刻より5時間35分遅れで到着した。

 詳しくは共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS」などで連載している「鉄道なにコレ!?」の第37回から5回にわたって取り上げた旅行記をご覧いただきたい。

 駅に隣接した市場「ザ・フォークス・マーケット」は大みそかの夜とあって大にぎわいだった。夕食にすしを堪能した後、宿泊先の空港近くにあるホテルへ向かうためにウィニペグ・トランジットの15番バスが発着するバス停へ向かった。

汚名返上のはずが…

 バス停で私はこれまでの買い物でためた小銭を握りしめていた。ウィニペグ国際空港から乗った路線バスで期せずして“無賃乗車”のような形になってしまい、今度こそぴったりと運賃を支払うためだ。

 金額はもちろん大人3人分のバス運賃、9・45カナダドルだ。「次は小銭を用意する」という往路の運転手さんとの約束通りに運賃箱に投入し、汚名返上を果たすという算段だった。

2022年の大みそかにウィニペグ市街を走る「TAKE A FREE RIDE」(乗車無料)と表示したウィニペグ・トランジットの路線バス(2022年12月31日、大塚圭一郎撮影)
2022年の大みそかにウィニペグ市街を走る「TAKE A FREE RIDE」(乗車無料)と表示したウィニペグ・トランジットの路線バス(2022年12月31日、大塚圭一郎撮影)

 ところが、近づいてきたバスの行き先表示をひと目見てあぜんとした。電光掲示板にオレンジ色の文字で「TAKE A FREE RIDE」(乗車無料)と大書しているではないか。地元住民によると「大みそかに出かけて新年を祝う人たちで道路が渋滞するのを避けるため、バスを無料運行している」という。

 無料ということは持っている小銭を運賃箱に入れようとしても、行きのバスの運転手さんのように投入口を手で押さえて阻止されるのは間違いない。

「0:00 AM」と表示されたウィニペグ・トランジットの路線バスのデジタル時計(2023年1月1日、大塚圭一郎撮影)
「0:00 AM」と表示されたウィニペグ・トランジットの路線バスのデジタル時計(2023年1月1日、大塚圭一郎撮影)

 バスに乗ったのは2022年12月31日の午後11時50分ごろ。年越しを迎えたのはバス車内で、天井のデジタル時計の表示が「0:00 AM」に切り替わると乗客らで「新年おめでとう!」と声を掛け合って祝った。 移動中のバスの路上で新年を迎え、2023年という新たな旅路が始まることに胸が躍った。その一方で、約束が道半ばに終わってしまったことを後ろめたく感じた…。

VIA鉄道カナダの列車が発着するウィニペグ・ユニオン駅(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
VIA鉄道カナダの列車が発着するウィニペグ・ユニオン駅(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグ・ユニオン駅の近くに保存された旧型客車(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグ・ユニオン駅の近くに保存された旧型客車(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグ・ユニオン駅の近くに保存されている車掌らが乗務するための車両「カブース」(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)
ウィニペグ・ユニオン駅の近くに保存されている車掌らが乗務するための車両「カブース」(2022年12月27日、大塚圭一郎撮影)

共同通信社ワシントン支局次長で「VIAクラブ日本支部」会員の大塚圭一郎氏が贈る、カナダにまつわる鉄道の魅力を紹介するコラム「カナダ “乗り鉄” の旅」。第1回からすべてのコラムは以下よりご覧いただけます。
カナダ “乗り鉄” の旅

大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社ワシントン支局次長・「VIAクラブ日本支部」会員

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科を卒業し、社団法人(現一般社団法人)共同通信社に入社。大阪支社経済部、本社(東京)の編集局経済部、3年余りのニューヨーク特派員、経済部次長などを経て2020年12月から現職。運輸・旅行・観光や国際経済の分野を長く取材、執筆しており、VIA鉄道カナダの公式愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員として鉄道も積極的に利用しながらカナダ10州を全て訪れた。

優れた鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を13年度から務めている。共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)などがあり、CROSS FM(福岡県)の番組「Urban Dusk」に出演も。他にニュースサイト「Yahoo!ニュース」や「47NEWS」などに掲載されているコラム「鉄道なにコレ!?」、旅行サイト「Risvel」(https://www.risvel.com/)のコラム「“鉄分”サプリの旅」も連載中。

第36回BC州日本語弁論大会への応募受付開始

大学生の部、中級で1位になったSerena Pongさん(右)と、在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2023年3月4日、UBCアジアンセンター。写真提供:BC州日本語弁論大会実行委員会
大学生の部、中級で1位になったSerena Pongさん(右)と、在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2023年3月4日、UBCアジアンセンター。写真提供:BC州日本語弁論大会実行委員会

 BC州日本語弁論大会実行委員会と在バンクーバー日本国総領事館の共催で毎年3月に開催されるBC州日本語弁論大会への参加者応募受付が始まった。

 参加資格は、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州とユーコン準州在住で、日本語が外国語、もしくは第2言語の高校生(グレード10)以上。

 大会は3月2日にブリティッシュコロンビア大学アジアンセンターで開催。大会各カテゴリー優勝者は3月24日にオタワで開催される「カナダ全国日本語弁論大会」に出場する。

 詳しい応募要項(英語)はウェブサイトから確認できる。

第36回BC州日本語弁論大会応募要項

締切: 2024年2月9日(金)午後5時(PST)
応募詳細と登録:https://bcspeechcontest.blogspot.com/2023/11/36th-bc-japanese-contest-accepting.html

第36回BC州日本語弁論大会

日時: 2024年3月2日(土)高校部: 午前10時〜午後12時、大学/一般部: 午後1時〜5時30分
会場: ブリティッシュコロンビア大学アジアン・センター

第35回BC州日本語弁論大会。参加者全員と審査員など関係者で記念撮影。2023年3月4日、UBCアジアンセンター。写真提供:BC州日本語弁論大会実行委員会
第35回BC州日本語弁論大会。参加者全員と審査員など関係者で記念撮影。2023年3月4日、UBCアジアンセンター。写真提供:BC州日本語弁論大会実行委員会

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