バンクーバーの小売店業界2024年の展望(後編):Crescent Moon Enterprisesオーナー佐藤広樹さんに聞く

クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 各国の新型コロナウイルス規制も終わり、2023年はポストコロナ元年となった。カナダの新型コロナ渡航規制は撤廃され、観光客が多く来加。そうした影響もあり、2023年は小売店ビジネスが好調だったと振り返るのは、ガスタウンとウィスラーでギフトショップを経営する佐藤広樹さん。

 クリスマス商戦真っただ中の現在、2023年のビジネスを振り返るとともに、2024年の展望について話を聞いた。

バンクーバーの小売店業界2024年の展望(前編):Crescent Moon Enterprisesオーナー佐藤広樹さんに聞く

新型コロナで観光客ゼロから市場を広げて売り上げ上昇に

 佐藤さんはウィスラー店を開店してから約25年間、小売店ビジネスをやってきた。以前は日本からのツアー客を中心にビジネスを展開。ガスタウン店をオープンしたのは2008年。日本からの観光客は減少する一方で、そこに新型コロナが追い打ちをかけた。いまも日本からの観光客は戻っていないと感じている。

 しかし、新型コロナを転機に「市場を広げたおかげで色んな人に来てもらえるようになりました」と話す。観光客だけでやっていた時は「12月から3月中旬までは閑散期でした。ですから諦めて全部ウィスラーにシフトしていたんです」と振り返る。しかし新型コロナ後はガスタウン店でも「冬も商売になっています。特に12月のクリスマス時期は忙しいです」。理由は「地元のお客さんが増えているから」と感じるという。

 新型コロナを機に観光客相手のお土産物屋さんから地元の人にも愛されるギフトショップへと変わり市場を広げた。そこにアメリカドル高による観光客増がピタリとはまった。「ピンチはチャンスじゃないですけど、だんだんと市場を広げたから店も伸びていると感じますね」

 それにガスタウン全体が高級志向に変わってきているという。土産物屋が多かったのは今は昔で、最近では高級ショップやカフェなどが増えたと店長の久保ゆうやさん。それでも人は多く集まってくる。

 佐藤さんはバンクーバー・ダウンタウン自体がショッピングをするのに良い流れになっていると感じている。「グランビル通りの(歩道が)広くなったのも良い流れを生んでいるように思います。ガスタウン、ロブソン、グランビルと、ダウンタウン全体がショッピングモールのようになっているイメージですね」

 そうした人の流れがバンクーバーの小売店全体に良い影響を与えているのではと語った。

2024年のバンクーバーの小売業界は?

 佐藤さんによると2024年も小売業界は相変わらず対カナダドルで強いアメリカドルに支えられると予想されることから、好調を維持するのではないかと予測している。

 金利引き上げなどの影響で経済が後退局面に入るとの予測もあるが、バンクーバー、ウィスラーでの小売業界はまだまだ「熱い」と肌で感じると話す。

 そうした上昇気流にうまく乗ってもう少し事業を拡大したいと考えているという。「こういう(好調な)状況がもう少し続くと思っているので、できる時にもうちょっと店舗を広げたいなと思っています」

 そのためにも若者にもっと勉強をして知識を高めてもらって、色々とトライしてほしいと話す。まず来年はスタッフをトロント(オンタリオ州)で開催されるギフトショーに派遣する。自分たちの目で色々なものを見て感じて吸収してほしいと語る。さらに「高級志向にもついていかないといけないのでブランド物も少し取り入れようかと思っているんです」と笑い、若いスタッフにファッションショーに行ってもらう予定にしていると楽しそうだ。

 自分のやりたいと思う方向性が見えているという。「実はいうと商売はそこまで大きくしようと全く思っていなかったんです。でも(東京で)選挙に立候補したあたりから、もうちょっとやってみようかなぁっていう気持ちになって。選挙に立候補したのは私にとっては良い方向に働いたと思います」。だから少し欲が出て「カンパニーっぽくさせたいな」と思っている。

 売り上げも順調に伸びている。若いスタッフのがんばりもあり、新型コロナ後にここまで来られた。インフラも整え、人も増やして、「残りのパワーでちょっとした会社だなと思われるぐらいにはやりたいと思っています」

 それが若い人たちのやる気にもつながると信じている。「店舗が増えて、会社も大きくなっていくのが実際に目に見えるようになるとうれしいと思うんですよ。自分たちがやりたいことが実現するというのはやりがいにもつながりますし」と語り、「チャレンジしないと会社は成長しないと思うので、できるだけ追いついていかなと、と言うところです」と付け加えた。

 「私も目標が見えてきたので、ワクワクしますよ。だからカナダの(小売業界も)このまま2024年も順調にいってほしいですね」と笑った。

佐藤広樹(さとう・ひろき)
Crescent Moon Enterprises Ltd.オーナー・代表取締役
1998年ウィスラーにSMILE GIFT、2008年バンクーバー市ガスタウンにSmileys Giftを開店し2020年GIFTS AND THINGSに改名

クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
クリスマス商戦真っただ中、店頭にもクリスマス商品が並ぶ。2023年11月27日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

(取材 三島直美)

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