
夏の終わりのレイバーデー。9月7日、今年もナナイモパークに朝日の選手たちが集まった。戦前にバンクーバーで活躍した日系人野球チーム「朝日軍」の歴史を受け継ぐ朝日レガシーゲーム。グラウンドを囲むように家族や関係者らが集まり、選手たちのプレーを見守った。
今年の試合は、2027年3月に日本遠征を予定するジャパンツアーチームと、過去のジャパンツアーに参加した選手らによるOBチームの対戦。2027年チームは、この日初披露となった白と赤の新ユニホームでグラウンドに立った。
朝日のレガシーを次世代へ 新ユニホームを初披露

試合前の開会式では、Vancouver Asahi Baseball Associationジョン・ウォン会長が1914年から1941年まで活動した朝日軍の歴史を紹介した。
朝日軍は、バントや盗塁、スピードと戦術を生かした「ブレインボール」と呼ばれるスタイルで知られた日系人野球チーム。ウォン会長は、現在の朝日の活動がその歴史と精神を受け継いでいることを改めて伝えた。
この日は在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事も出席。開会式では2027年ジャパンツアーチームの選手たちを祝福し、「皆さんはバンクーバー朝日の名前とレガシーを背負っています」と激励した。
2027年ジャパンツアーチームのヘッドコーチを務めるベン・チョウ(Ben Chow)さんは、この日、同チームのユニホームを一般に初披露したことを紹介。ユニホームは、かつて活躍した朝日チームにちなんだもので、選手たちにはその歴史と野球へのリスペクトを受け継いでほしいと語った。また右袖には、朝日ファミリーの一員をしのぶ印が施されていることも説明、世代を超えて受け継がれる朝日のつながりを伝えた。

今年の始球式は、髙橋総領事とケン・ヤダ(Ken Yada)さんが務めた。1936年バンクーバー生まれのヤダさんは、6歳だった1942年に家族と強制移動地のブリッジリバーへ。強制収容政策が終了した1949年に一家でバンクーバーに戻った。その後、長年にわたり野球指導に携わったほか、BC Amateur Baseball理事や、大リーグ・ピッツバーグ・パイレーツの地域スカウトなどを務めた。
「日本のチームがどのように野球をしているのか」

開会式を終えると、グラウンドでは早速、2027年ジャパンツアーチームが躍動した。試合を動かしたのはキャプテンのLiam Gregsonさん。先制のホームを踏むと、ベンチから歓声が上がり、チームメートが笑顔で迎えた。
その後はOBチームもホームランを放つなど両チームが得点。世代を超えた朝日の選手たちが、同じグラウンドで試合を楽しんだ。
Gregsonさんは母親が日本人で、グラッドストーンで朝日の案内を目にしたことがチームに加わるきっかけだった。初めて練習に参加して以来、指導やチームメートにも恵まれ「ずっと続けたいと思ってやってきた」という。
朝日の魅力については「一番好きなのは楽しいところ。でも同時にすごく真剣でもある」と話す。「真剣に練習しながら、みんなで楽しんでいる。それがとても大切だと思う」と笑顔で語った。
母方の祖父母に会うため日本には何度も訪れているが、朝日の仲間と一緒に行くのは初めて。遠征先の千葉を訪れるのも今回が初めてだという。
2027年のジャパンツアーでは「日本の文化や、日本のチームがどのように野球をしているのかを学びたい」とGregsonさん。日本の野球には組織的で真剣に取り組む印象を持っていると言い、「もっと良い野球選手になって、みんなで楽しみたい」と来年の遠征を心待ちにしている。
「リスペクト」を胸に、16人で日本へ

今年1月の朝日新年会ではまだ始動したばかりだったチームも、現在はキャプテンと副キャプテン2人が決まり、ツアーメンバーは18人から16人になったが、来年3月の日本遠征に向けた準備が進んでいる。ヘッドコーチのベンさんは、秋から冬にかけては野球の練習に加え、日本の文化や日本野球にも通じる考え方を学ぶ機会も取り入れていくという。全力でプレーする姿勢など、日本へ行く前に野球に向き合う意識も育てていく。
そのチームづくりの軸にあるのが朝日が大切にしてきた「リスペクト」だ。「チームメートをリスペクトする。野球をリスペクトする。保護者をリスペクトする。全てはリスペクトから始まる」と話す。

その考えは、自分たちのチームの中だけにとどまらない。選手たちが年下の子どもたちを教える時にも、まず相手への敬意を大切にするよう伝えているという。「次の世代にも、そのリスペクトを学んでもらうことが大切」とベンさんは話した。
16人の選手たちはこれから秋、冬と練習や学びを重ね、来年3月のジャパンツアーを目指す。
朝日ベースボール・アソシエーション
2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設された。戦前にバンクーバーで活躍した日系人野球チーム「朝日軍」の歴史や精神を受け継ぎながら、野球を通じた活動を続けている。
朝日チーム・ジャパンツアー
2015年を第1回として、2年に1度、同アソシエーションでプレーする選手からチームを結成し、日本へ野球遠征している。2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止。2017、2019年には横浜、静岡、滋賀、奈良など、2023年は神戸を中心とした関西地区、2025年は千葉、東京、栃木を訪問した。2027年は東京、千葉、愛知を訪れる予定。
(取材 田上麻里亜/写真 加藤さくら)
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