スポーツクライミングを楽しもう

ウィスラークライミングジムのボルダリング。©The Vancouver Shinpo
ウィスラークライミングジムのボルダリング。©The Vancouver Shinpo

老若男女にかかわらず、気軽に挑戦したいクライミング

 東京五輪から競技種目となったスポーツクライミング。日本代表女子では野中生萌さんが銀メダル、野口啓代さんが銅メダルを取り、注目度が高まった。

 スポーツクライミングの魅力はなんだろう?

 身体全体を使ってパズルを解くような知的ゲーム性、できなかったことができるようになる喜び、達成感、自分との向き合い、仲間ができるなどがある。

 競技的なクライミングを見ていると、「若くないとできない」と思うかもしれない。

 そして腕の力で登っているように見えるかもしれないが、基本中の基本は足で登ることなのだ。だから何歳でも始められる。

 筋力や腕力に頼らないで足の置き方や向き、体重移動など体全体を使ってバランスを取りながら登る。そこには技術が必要になってくる。

 なので、始めてみると筋力や腕力が増えたわけではないのに、不思議なことに登れるレベルが上がってきて、そこに喜びや達成感を見いだすことができる。

 実際クライミングジムに行くと、小学生から60代、70代の人までいる。カナダでももちろんそうだが、筆者が日本帰国時に行くクライミングジムでは、「孫が始めたからやってみた」というような人もいて、老若男女多くの人々に浸透しつつあるなぁって感じる。

 クライミングは別名動くヨガとも呼ばれる。本当にジョギングをやるぐらいの気持ちで始めてもよいと思う。

 また、「クライミングをやっている」というと、何かすごいことをやっているようで偉くなったような気がして精神的に余裕ができるのもよいように感じている。

ボルダリング、スピードクライミングといろいろあるクライミング

課題にはこのようにグレードがついている。自分に合わせてチャレンジしよう。©The Vancouver Shinpo
課題にはこのようにグレードがついている。自分に合わせてチャレンジしよう。©The Vancouver Shinpo

 さて、スポーツクライミングの中で一番気楽に始められるのがボルダリング。簡単にいうと岩をよじ登るというもので、子どもの遊びそのものだ。

 そのルートは課題(英語ではプロブレム)と呼ばれる。難しさのグレードは北米ではVグレードといって、V0から始まりその数字が大きくなるほど難易度が増す。V0ができた、V1ができたなど課題を解決した時の喜びは格別だ。

 クライミングジムでの課題は手でつかむホールドや、足をのせるスタンスなどは制限されているので、その課題を作った人の性格が表れる。

 正直、カナダの課題は身長が高い人が作っていることが多いので、「ちびっこの気持ちわからないだろう!」と言いたくなる時もある。しかしながら自分と身長が変わらない人が作った課題などは「できないはずがない、何が要求されているんだろう?」と想像力がかき立てられる。

 筆者の感覚としては、同じグレードでもカナダの課題はダイナミックでより筋力を必要とするものが多く、日本の課題はより繊細な体の使い方が要求されるものが多いように思う。

 課題を作る友人もいるが、「俺の課題をそのように解決するのか?」というような解決の仕方をする人もいて、とても面白いという。

 さて、始めるのに必要なものはクライミングシューズとチョーク、あとは動きやすい服装だけ。室内クライミングでは液体チョークでないとダメなクライミングジムも多い。これは粉チョークにアルコールなど混ぜて粉が飛び散らないようにしたもので手の滑り止めになる。

 一回一回手を消毒しながら登っているようなものなので、今の状況では最も安全なアクティビティのひとつかもしれない。

 また、競技ではリードクライミング*1や、スピードクライミング*2と呼ばれるどんどん上に登っていくクライミングもある。  

 この2つは「高いところに登る」というクライミングの本来の姿であり、気軽に楽しめるように派生したボルダリングよりも歴史は古い。より達成感が味わえるのはいうまでもない。これも自分に合わせた課題で楽しみたい。

*1、リードクライミングは基本的にクライマー(登る人)とビレイヤー(ロープを確保する人)の2人1組で行われる。クライミングジムではあらかじめセットしてあるクイックドロー(カラビナを専用のスリングでつなげたもの)にロープをかけながら登っていく。

*2、高さ15メートルの壁に、世界共通のホールドが配置されていて、最も速く登ったものが勝つ。そのためそのタイムは100m競争と同じように世界記録として認定され、よりゲーム性の高くなった競技。

 用具はハーネスという安全ベルトが必要になる。クライミングジムによっては、頂上にぶら下がっている機械から出ているロープを付けることによりフォールした際、ゆっくりと地面に降ろしてくれるオートビレイという装置が設置されているところもある。そのようなジムにはひとりで行っても楽しむことができる。

 ほとんどのクライミングジムでは用具のレンタルもある。ジム利用料は一般的に1日パスが15ドルから30ドルぐらい、レンタルも15ドルぐらいから。

 また初心者向けのレッスンもあるところが多いので、初めはレッスンを取ってみるのもよいだろう。

野外の自然の岩で行うクライミング

スコーミッシュのクライミングエリア。脱がなくてもいいけど、なぜか上半身裸が多い。©The Vancouver Shinpo
スコーミッシュのクライミングエリア。脱がなくてもいいけど、なぜか上半身裸が多い。©The Vancouver Shinpo

 さて、クライミングの最大の楽しみはやはり野外の自然の岩(外岩)で行うクライミングだろう。

 登り切った時の感動や喜びは室内クライミングの比ではない。手でつかむホールドや、足をのせるスタンスの場所は決まっていないので、自分で自然の岩の中から見つけ出さなくてはならない。

 しかし実際には1日クライミングをやっていても、自分が登っている時間はおそらく1時間とか2時間ぐらいだろう。

 クライミングエリアまで行くためのアプローチや、お茶を飲んだり、ほかの人が登っているのをみて参考にしたりと、1日ハイキングに行くより体力は使わないかもしれない。その分登っているときの集中力は半端ないので、満足感や達成感の度合いは大きいように思う。

 バンクーバーの人は運が良いことに、スコーミッシュの世界的にも有名なクライミングエリアがご近所。もちろん野外なので無料で楽しむことができる。

 COVID-19(新型コロナウイルス感染拡大)以前は日本からも多くの人が訪れていた。

 初心者向けのルートから、まだ十数人しか完登されてないコブラクラックという有名なルートまで多種多様。

 さあ、チャンスがあったらぜひ室内クライミングから始めて、来るべき春には外岩デビューを目標にチャレンジしてはどうだろう?

情報

 バンクーバー近郊のクライミングジムで、筆者が実際に行ったことのある場所を紹介する。

 ここに紹介する以外にも、バンクーバー近郊でも増えており、リッチモンドやブリティッシュコロンビア大学(UBC)内にもできている。最初は初心者向けレッスンを取るか、クライミングをやっている友人に連れて行ってもらうのがオススメ。

HIVE

 HIVE系列のバンクーバー市内のジムはボルダリング専用のジムとなっている。子ども向けの誕生日パーティープログラムもある。

 全面にマットの敷かれた広いスペースで安全にクライミングを楽しむことができる。

住所: 520 Industrial Ave, Vancouver
Tel: 604-683-4483
https://hiveclimbing.com/

初心者レッスン:$75〜
子ども用のレンタル有り。

※2月6日時点では会員か回数券保持者のみ。また会員でもあらかじめオンラインで時間の予約が必要。またワクチン証明も必要となっている。

Base5

 ノースバンクーバー市にあるクライミングジムの老舗。

 筆者も数回利用したことがあるが、地域のクラブ活動のような雰囲気だった。ずいぶん前だがそっくりな親子3代クライマー(?)がいて、おばあちゃん、お母さん、娘で登っており、3人ともにとても上手だったのが印象に残っている。

 子ども向け誕生日パッケージなど特色のあるプログラムも行なっている。

住所: 1485 Welch St. #2, North Vancouver
Tel: 604-984-9080
https://www.climbbase5.com/

初心者レッスン:ベースコース $85〜
子ども用のレンタル有り。

※2月6日時点では、会員と回数券保持者だけが利用可能。ワクチン証明要。

WHISTLER CORE CLIMBING AND FITNESS GYM

 ウィスラーのクライミングジム。ビジターでも利用可能だが混み合う午後4時以降は会員のみ。

住所: 4010 Whistler Way, Whistler
Tel: 604-905-7625
https://whistlercore.com/

初心者レッスン:1人$55で参加者2人から。
子ども用のレンタル有り。

※1月25日時点で、利用にワクチン接種証明が必要。

(取材 野口英雄)

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