パンデミックの中、Zoomでつながる隣組ラウンジ

 隣組が会員やボランティアを対象に、毎週金曜日にオンラインで隣組ラウンジ(TGラウンジ)を開催している。隣組は日系コミュニティのニーズに対応したサービスやプログラムを提供する団体で、1974年に設立された。

 「週1回スタッフとオンラインで話をする機会を設けることで、少しでも寂しや不安を和らげるお手伝いができれば」と、2020年5月に始めたもの。おしゃべりするだけでなく、参加者が必要としている情報、役に立つ情報も提供する。

 3月5日のTGラウンジではブリティッシュ・コロンビア(BC)州政府が新型コロナウイルスのワクチン接種をフェーズ2に移行したのに伴い、ワクチン接種の予約の取り方について取り上げた。ワクチン接種予約については、隣組にも多数、問い合わせがあるという。実際に出席して、TGラウンジを体験してみたのでリポートする。

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なごやかにスタート

 TGラウンジは毎週10時から正午まで。会員にはEmailでZoomのアクセス情報が送付されているので、時間になったらリンクをクリックして入室する。ほかの人たちもどんどん入ってくる。

 オンラインではあるが、知っている顔を見ると「XXさん、おはようございます」、「〇〇さん、ご無沙汰しています」とあいさつを交わす人たちもいる。

 「(10時から12時と)プログラムの最後まで参加しないで、途中退席してもいいですからね」とRieさんが話すと、「今日は予定があるので、残念ながら途中で抜けます。でも大切な情報なので、できるところまで参加します」と答える人もいた。プログラムはなごやかな雰囲気で始まった。

ワクチン接種予約の方法を日本語で説明

ワクチン接種予約について説明。Rieさんが使った画面のスクリーンショット © The Vancouver Shinpo

 BC州がワクチン接種のフェーズ2に移行し、今後、接種を希望する人は自分たちで予約をする必要がある。スタッフのRieさんは、その予約方法について、政府発表の資料に従い説明した。

 パワーポイントの英語プレゼンテーションを用いて「フェーズ1が終わって、今、フェーズ2です」というと、参加者の中から「フェーズ1が終わっていることも知らなかった」という声も聞かれた。

 フェーズ2では80歳以上の希望者の接種を行う。「80歳以上ですので、80歳になっていない“若者”の方はまだですよ」とまず確認。「 “若者”はまだなので慌てないでくださいね」と注意を促した。

 隣組には現在、BC州でワクチン接種が始まり、希望者は予約をして接種を受けると知った人たちから、電話での問い合わせが多数入ってきているという。

 続いて、バンクーバー新報の記事『シニア向けのワクチン接種予約について』を用いて詳細を説明した。

 日本語の説明画面を見た瞬間に「難しい」とコメントした人もいたが、Rieさんがスケジュール、予約の際に必要なもの、予約のための電話番号と、ひとつずつ解説していく。

 ワクチン接種予約開始日が年齢別になっているため、「今度の月曜日(3月8日)に予約できるのは1931年以前に生まれた、90歳以上の人ですよ。今日の出席者の中では1人だけかな?」と、Zoomを通して参加者に声をかけていた。

 電話で予約をするときに必要な情報については、特にパーソナルヘルスナンバーは「免許証とサービスカードが一緒になっている人はその裏ですよ」、「昔のケアカードを持っている人も裏に記載されていますよ」と、画像を示しながら分かりやすく説明した。

 さらに「日常的にチェックするEメールアドレスか、テキストメッセージを受信できる電話番号について聞かれます。皆さんの場合は携帯電話の番号を伝えるのがいいかもしれませんね」とアドバイス。

 予約の電話番号も「バンクーバーやリッチモンドに住んでいる人はバンクーバーコスタルヘルスなので1-877-587-5767です。書き留めておいてくださいね」、「バーナビーやサレーなどフレーザーヘルス は1-855-755-2455です。フレイザーヘルスはオンラインでも予約できます」と分かりやすく情報を伝えていった。

 「電話予約時には、SIN番号や運転免許証番号、銀行やクレジットカードの情報を聞くことは絶対にありません。こうした情報を聞かれたら詐欺の可能性が高いので教えたらいけませんよ」と、重要な注意事項も伝えていた。

 質疑応答でワクチン接種予約の話を締めくくった後は、休憩をはさんでラジオ体操。リクエストに合わせて、参加者らが一緒に『春の小川』、『春よ来い』、『うれしいひなまつり』を歌った。

oom画面を通して、みんなでラジオ体操。Rieさんが使った画面のスクリーンショット © The Vancouver Shinpo
Zoom画面を通して、みんなでラジオ体操。Rieさんが使った画面のスクリーンショット © The Vancouver Shinpo

 最後に隣組からのお知らせや報告で3月5日のプログラムは終了した。

 参加したアンダーソン恵美さんは「ワクチン接種の予約についての情報は大変よかったです。大体分かっていましたが、日本語で答えて下さるとやはり安心します」と語った。アンダーソンさんは昨年11月から毎週参加している。

 AMさんは「パンデミックで人と会って話す機会が極端に減っています。ほかの方と少しでも接触できる機会となるのでメンタルヘルス的にもよい時間と思います。同時に有意義な情報も日本語で明確に入手できるのでとてもよいプログラムだと思います」と言う。

 AMさんのTGラウンジへの参加は、自分が必要だと感じる、もしくは興味のあるトピックの時に、頻度的には月に1~2回程度だそうだ。

 日本語認知症サポート協会の福島誉子さんも参加していた。「今、ラウンジにご参加の方は、他の団体主催のZoomイベントに参加されることも可能な方だから、iPad、メール、インターネットができる方とできない方で、コロナ禍の社会への繋がりに大きな差がでてしまいましたよね」と言う。

 隣組ではZoomプログラム以外にも電話プログラムも導入して、より広い層に情報やプログラムを提供しようと努めている。

隣組
www.tonarigumi.ca
TGラウンジ
担当Rieさん (programs@tonarigumi.ca / 604-687-2172  ext. 106) 

(取材 西川桂子)

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