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Ayaka Furukawa

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第8回「D Way Foods and Beverage Show」開催、本物の日本の食品と酒をカナダへ

にぎわう会場の様子。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
にぎわう会場の様子。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 日本の食品や酒を日本各地から輸入し、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の日本食レストラン、食品販売ストア、リカーストアへ卸す「D Way Foods Inc.」が、第8回「D Way Foods and Beverage Show」を6月10日に日系文化センター・博物館で開催した。

 西カナダ最大の日本食と酒の展示会で、BCリカーストアも公認のイベント。日本食レストランやリカーストアの経営者、シェフやプロダクトコーディネーターらが集まり、新銘柄の試飲、日本食品の試食を通して新しいアイデアを取り入れる機会となる。

 日本から来た業者は、まるや八丁味噌、福島鰹、ショクリュー(OUGグループ)、創味食品、インタークロス、司牡丹酒造、春鹿(酒蔵)、日本名門酒会、COEDO BREWER、朝日酒造(久保田)、菊水酒造、宝酒造(USA)の12社。

イベントテーマ「インスタ映え」する料理の盛り付け方法やアイデアの提案ブース。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
イベントテーマ「インスタ映え」する料理の盛り付け方法やアイデアの提案ブース。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 今回は「インスタ映え」がテーマで、メニューの盛り付けやツールを展示するブース、D Way社の生産部門によるラーメン、焼き鳥、餃子やコロッケなどのブースも設置され、「映える」内容で盛り上がった。

 2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で5年ぶりの開催となったが、来場者数は400人を超える大盛況だった。

「日本から輸入することで、本当の日本食と酒を皆さんにわかっていただきたい」宮本玲さん

D Way Foods and Beverage Show実行委員長・宮本玲さん。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
D Way Foods and Beverage Show実行委員長・宮本玲さん。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 D Way Foods and Beverage Show実行委員長・宮本玲さんは、テーマを「インスタ映え」にした理由を「(新型)コロナの影響でお客様の動きやニーズが変わって働く人がいないので、オーナーさんが働くことに忙しくて、考えている余裕がないから。レストランオーナーがどういう苦労をされているかという理解をした上でテーマを決めてやっていけたら」と笑顔で答えた。

 新型コロナが明けて5年ぶりに開催できた気持ちを聞くと「うちのスタッフも5年ぶりなのでエキサイトしているし、お客様も本当に興味津々で来ていただいて、予想の倍を上回った来場者数です」とうれしそうに話す。

 今後については「アルバータ(州)まで出したい。カルガリーとエドモンドにはお酒はもう入っているので、食もこれから開拓して東の方へ攻めていきたい。実際にオーダーも入ってきています」と語った。

新型コロナ前からメインブース「ショクリュー(OUGグループ)」

 豊洲から魚を毎週D Way社に輸出しているショクリューは、今回は魚だけでなくイベントのテーマ「インスタ映え」に合わせ、食用花やつまもの、料理に振りかけるラメパウダーなども紹介した。

 一番人気はレストランで簡単に提供できる居酒屋メニュー「北海道ポテトもち」「蟹クリームコロッケ」で、昼過ぎには売り切れになったという。

 海外開発部の村田光利さんは「圧倒的に今年は人が多いです。以前は普通の日本食しか売れませんでした。しかし最近はおまかせメニューを提案するような差別化を狙うレストランが増えていきているので、一種類ずつのオーダー数は減っていますが種類が増えています」と語った。

それぞれに自慢の逸品をバンクーバーで紹介

 世界で2軒しかない八丁味噌屋のうちの1軒「まるや八丁味噌」は、パウダー状になった八丁味噌を紹介。斬新なアイデアで八丁味噌の用途を広げる商品で、既存の料理にトッピングとして使える手軽さとコクのある味が人気の理由だという。

 京都の茶屋や仕出し屋などに商品を提供している昨年100周年を迎えた「京都福島鰹」は、昆布やパウダーなどを展示。人気商品はかつおだしのティーバッグ。今まではレストラン側が自分でブレンドして店の味を作っていたという。しかしティーバッグは、味噌汁やうどん、そばなど何にでも使いやすい配合で一つのパックになっている手軽さが参加者の目を引いていた。

 日本各地の美味しい食材を流通する「インタークロス」の今回の一押しは、静岡県産の生の桜海老としらすの冷凍、千葉県産スイカと群馬県産メロン。特にメロンは、生産者の「最もおいしい状態で出せないなら出したくない」というこだわりから今回は持ってくるのを最初は反対されたそうだ。しかし長い期間築いた信頼関係がありバンクーバーで紹介できたと説明した。

 今回話を聞いた関係者によると、バンクーバーでの日本食への人気は年々高まっているという。また日本食のバリエーションも増え、クオリティの高い飲食店が増えているとも感じていると話していた。そんなトレンドの中で開催された今年のD Way Foods and Beverage Show。カナダで提供できる本物の日本食品や酒の可能性を広げ、新しいアイデアをもたらすきっかけとなるイベントとなったようだった。

420年の歴史がある高知の酒蔵「司牡丹酒造」佐野尚史さん。バンクーバーで人気急上昇中のゆず酒を提供している。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
420年の歴史がある高知の酒蔵「司牡丹酒造」佐野尚史さん。バンクーバーで人気急上昇中のゆず酒を提供している。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
日本で最も売れている生酒「菊水酒造」。約10年前にバンクーバーに持ってきた当初は缶への反応が悪かったが、最近は逆に缶の反応が良いと話す。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
日本で最も売れている生酒「菊水酒造」。約10年前にバンクーバーに持ってきた当初は缶への反応が悪かったが、最近は逆に缶の反応が良いと話す。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
リカーストアを経営している初参加の2人。「とてもエキサイティングで、新商品がたくさんあってとても良いイベントですね」と語るHenry Leungさん(左)と「日本食が大好きです。新しい日本商品をトライできる機会はすばらしい」と話すTomas Chungさん。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Ayaka Furukawa/Japan Canada Today
リカーストアを経営している初参加の2人。「とてもエキサイティングで、新商品がたくさんあってとても良いイベントですね」と語るHenry Leungさん(左)と「日本食が大好きです。新しい日本商品をトライできる機会はすばらしい」と話すTomas Chungさん。2024年6月10日、日系文化センター・博物館。Photo by Ayaka Furukawa/Japan Canada Today

(取材 古川紋)

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「バンクーバーファッションウィーク2024 秋冬コレクション」ファッションを通してメッセージ発信、2つの日本発ブランドに注目!(後編)

「FREijA」のショーの始まり。2024年4月28日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today
「FREijA」のショーの始まり。2024年4月28日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today

 バンクーバーファッションウィーク(Vancouver Fashion Week: VFW)2024年秋冬コレクションが4月23日から28日の6日間、バンクーバー市David Lam Hall Chinese Cultural Centre of Greater Vancouverで開催された。

 バンクーバーファッションウィークは2001年に初めて開催された、ニューヨークに次ぐ北米で2番目の規模となる国際的ファッションイベント。今回はカナダ国内をはじめ、アメリカ、メキシコ、ウクライナ、イギリス、インド、日本、韓国など各国から注目のデザイナー50人以上が発表。世界4大コレクションを目指す若手デザイナーの登竜門と言われるだけあり、今回も盛り上がりを見せた。

 日本からはSOLIT!、meihana、macu macu、COLORFUL BOUTIQUE MORE、Pipiro☆Hiro、le graine、Kubo san made、topao、CHIDORI、MOEMUSISAN、Retoru、nolum、FREijAの13ブランドが参加した。

 その中から今回は注目のブランド「SOLIT!」と「FREijA」のデザイナーやモデルに話を聞いた。

 後編では「FREijA」を紹介。

「バンクーバーファッションウィーク2024 秋冬コレクション」ファッションを通してメッセージ発信、2つの日本発ブランドに注目!(前編)

「FREijA」デザイナー梶田有美さん

ショー直後の「FREijA」デザイナー梶田有美さん。2024年4月28日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today
ショー直後の「FREijA」デザイナー梶田有美さん。2024年4月28日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today

 コレクションのテーマは「ズームイン」で、視点の変化のアイディアを探求。

 廃棄になる予定の素材を販売している素材屋で購入したものだけを使用している。さらにモデルは寝起きのようなヘアメイク、ほぼ化粧なしで、裸足という一般的なファッションショーのイメージを覆す演出が観客の目をひいた。

ショーを終えて今どんな感情ですか?

 ギリギリまで制作していてなんとか間に合いました。洋服のクオリティに自分の中で納得していました。こだわった音楽と洋服を合わせたかったのですが、リハーサルだとモデルさんが歩いている途中で音楽が終わってしまっていました。尺を確実に合わせてもらうように演出家の方にお願いすべきか直前まで考えていましたが、本番で奇跡的にぴったり合ったんです。絶対だれにも調整できないのに。とても緊張していたのですが、それに驚いたのと色んな感情が今混ざっています。

-VFWのための制作の特別なこだわりはありましたか?

 全部ですね。いつもは受注生産のスタイルでお客様にお届けするという前提でものづくりをしているので、ユーザーさんのことを考えてデザインする思考回路ができています。今回それを壊したいなと思いました。いつもと全く違う世界で、私のことを全く知らない方々からの反応や自分の感情を実験したくて、マーケティングも全く抜きにしてとにかくやってみようと思いました。

ファッションデザイナーとしての活動を続けるブレない意志を保つ秘けつは?

 ものづくりを始めたきっかけは、幼少期に本当にシャイで表現の手段として工作や絵を描いてしていました。それが途中で服に変わって自己表現の媒体の幅が広がりました。アウトプットして感情ぶつける場所だったので、10代のころは止められないという感じでしたね。その延長で今までやってきましたが、何度も止めようと思ったことはありました。でも結局止められなかったという感じです。

 あと私にとって洋服を含めてアートは常に必要な要素なので、そういう存在でありたいという希望があって続けています。

今後の目標は?

 ファッション業界は(新型)コロナ(ウイルス感染拡大)期間を終えてかなり変わったと思います。完全に大量生産の時代も終わりました。洋服をフィジカルに物を売る以外の方法で、アーティストとして生きていくということを実験しながらやっていくことですね。どんな道になるか今模索しています。

個性豊かな来場者のファッションスナップ

 来場者の個性豊かなファッションもVFWの見所。世界各国のデザイナーやブランドが、ファッションを通して、世の中に強いメッセージを発信する場となっている。今回も、メディア、モデル、ファッション業界関係者、そしてファンがバンクーバーに集まり、世界の状況や最新のトレンド情報を交換し、華やかで活気あふれる5日間となった。

バンクーバーファッションウィーク会場で。2024年4月23日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today
バンクーバーファッションウィーク会場で。2024年4月23日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today

(取材・写真 古川紋/動画 斉藤光一)

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北米で2番目の規模となるファッションショー、世界各国から選ばれたブランドが来場者たちを魅了

 バンクーバーファッションウィークは2001年に初めて開催された、ニューヨークに次ぐ北米で2番目の規模となる国際的ファッションイベント。今回はカナダ国内をはじめ、アメリカ、メキシコ、ウクライナ、イギリス、インド、日本、韓国など各国から注目のデザイナー50人以上が発表。かつてない盛り上がりを見せた。

多文化・多国籍都市バンクーバーで開催するVFWのコンセプトは「多様性」 

 ファッションウィークとは、約1週間の開催中に複数のブランドが各国の都市に集まり、最新のコレクションを発表する期間。なかでもミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドンは4大コレクションと呼ばれ、世界で最も注目される。VFWは若いデザイナーたちにとって、その4大コレクションへの登竜門となっている。

 VFWのコンセプトは多文化・多国籍都市バンクーバーらしい「多様性」だ。始まった当初から、さまざまな人種、性別、サイズのモデルと共にする機会がデザイナーに提供されている。

 日本からはSOLIT!、meihana、macu macu、COLORFUL BOUTIQUE MORE、Pipiro☆Hiro、le graine、Kubo san made、topao、CHIDORI、MOEMUSISAN、Retoru、nolum、FREijAの13ブランドが参加した。

 その中から今回は注目のブランド「SOLIT!」と「FREijA」のデザイナーやモデルに話を聞いた。

 前編では「SOLIT!」を紹介。

オールインクルーシブな社会の実現を目指すブランド「SOLIT!」

「SOLIT!」ショーのフィナーレ。2024年4月23日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today
「SOLIT!」ショーのフィナーレ。2024年4月23日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today

 ファッションという手段で、だれも何も取り残さないオールインクルーシブな社会の実現を目指すブランド「SOLIT!」ショーのコンセプトは「IT’S SOLIT! – Duh!」

 「特別なものでなく、これは当たり前のことなのだ。多様な存在と、自分らしく表現することが『素敵だね』で終わらず、むしろそこで立ち止まらずに早くこっちにおいでよ、と言いたい」というメッセージが込められている。

 ショーの直後に「SOLIT!」を起業した田中美咲さん、デザイナー兼ディレクター三原いつおさん、モデルひわさゆうきさん、芳坂映由花さんに話を聞いた。

-ショーが終わられて今どのようなお気持ちですか?

 ひわさゆうきさん:他のモデルの方々からかっこいいねと声をかけられたり、会場のお客様の歓声や視線はもちろん、モデルも含めて皆さんが温かかったなと思います。

 芳坂映由花さん:日本のモデルは約9カ月間スタッフの皆さんと準備してきました。VFWの方から現地のモデルが起用されることを聞いていたので、ずっとどんな人が来てくれるのだろうと、恋い焦がれているみたいに楽しみにしていました。多様なモデルがランウェイを歩くということに感動しました。

-日本での「SOLIT!」のプロダクトへの反応と、バンクーバーでの反応の違いはありましたか?

 三原いつおさん:日本だと僕らの服は、色々な体型に合っているとか機能面を評価されることが多いのですが、バンクーバーはファッションとして評価をしてもらったことが一番大きく違ったと思います。

 田中美咲さん:今まで購入してくださった方も評価する方も、福祉用具としておしゃれだという判断をされます。バンクーバーでは私たちの背景をほぼ知らないまま見ている人が多いからこそ、一瞬で見たものがどうなのかっていうところを見られているように思います。

-準備期間から本番を含めて一番大変だったことは何ですか?

 三原いつおさん:ファッションショーへのチャレンジが初めてだったので、そもそも何が起きるかを予見できていない状態でした。バンクーバーに来るまでの気持ちの落ち着かなさが大変でした。いい意味で期待と違ったのが、現地のモデルたちがとても意欲的に僕らのやろうとすることを感知して動いてくれたことですね。

 田中美咲さん:色んなモデルを起用したり、初海外の人や未成年の子もいたので、渡航すること自体がまずとても大変でした。アウトプットは10分しかありませんが、その背景で色んなことが起きた9カ月間があって、ついにこれが終わったのだなと。凝縮された10分間楽しかったです。

 芳坂映由花さん:ランウェイで「日常を表現する」というところです。洋服を奇麗に見せて帰ってくるランウェイは経験してきました。今回の「日常」をコレクションでどう見せるのかということに個人的に悩んで色々考えました。さらにモデル同士で話し合いもしました。

-折れない意志を保つ秘けつは?

 田中美咲さん:SOLIT!が3社目の起業なのですが、1社目の時は責任感、2社目は怒りや悔しさによるエネルギーで行っていました。ただ今回は、もちろん引き続き責任感や倫理観、怒りや悲しさなどの感情もあるのですが、何よりも「好きだから」に尽きると思います。究極、数字(お金)につながらなかったとしても続けてしまうものだと感じています。

-ショーを終えて何を社会に伝えることができたと思いますか?

 田中美咲さん:来場された方や配信を見た方からのフィードバックでしか確かめることができないと思っています。ただタグ付けしていただいた投稿を見る限り、私たちのコンセプトが伝わり、いい意味で胸が痛かった、感動した、涙が出たと言っていただきました。それが答えなのだと思います。

ショー直後の「SOLIT!」の皆さん。左から起業した田中美咲さん、デザイナー兼ディレクター三原いつおさん、モデルのひわさゆうきさんと芳坂映由花さん。2024年4月23日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today
ショー直後の「SOLIT!」の皆さん。左から起業した田中美咲さん、デザイナー兼ディレクター三原いつおさん、モデルのひわさゆうきさんと芳坂映由花さん。2024年4月23日、David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouver。撮影:古川紋/Japan Canada Today

後編では「FREijA」デザイナー梶田由美さんへのインタビューを紹介する。

(取材・写真 古川紋/動画 斉藤光一)

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日本舞踊西川流カナダ彩月会「温習会」開催、励んできた稽古の成果発表と2人の名取襲名披露の特別な会に

 西川流カナダ彩月会の第3回「温習会~和と洋の調べに心寄せて」が4月27日に日系文化センター・博物館で開催された。西川佳洋師範と門弟たちがこれまで励んできた稽古の成果を発表した。前回の「温習会」は2017年。通常はもう少し短い間隔で開かれるが、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で7年ぶりに開催された。さらに今回は西川洋香さんと西川洋雪さんの「襲名披露の会」でもあり、特別な温習会となった。雨天にもかかわらず会場に集まった多くの観客は、春の訪れとともに華やかで伝統的な日本舞踊を堪能した。

あいさつをする丸山総領事。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
あいさつをする丸山総領事。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 上演前にあいさつした在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、温習会に招待されたことへの感謝を述べ、「彩月会の皆さまの長年の取り組みに心から敬意を表します」と語った。彩月会の日本舞踊普及の努力は、バンクーバーで日本の文化を大切にするだけではなく、日本とカナダの文化交流と友情の構築に大きな貢献をしていると称賛した。

西川流四世西川千雅家元からもメッセージ

 「彩月会」にとって2023年は特別な年だった。西川千雅家元の承認を得て2023年6月16日に正式名称を「西川流カナダ彩月会」とした。さらに、かおりリトンさんが「西川洋香」、芦田有希子さんが「西川洋雪」として「名取式」を経て正式に西川流苗字内に入った。西川流四世西川千雅家元からも温習会開催を祝福するビデオメッセージが届き、西川流の歴史、西川佳洋師範と名取の2人が名古屋市の西川会会館で名取試験の踊りを披露した様子などと共に動画で紹介された。

 プログラムは第一部と第二部で構成され、全22曲のさまざまな日本の歌に合わせて美しい舞が披露された。さらにスペシャルゲスト、フルート演奏者の小西千恵子さんとピアニストのダニエル・リーさんによる生演奏と日本舞踊のコラボレーションや、第一部と第二部の間には2人のデュオコンサート「ラブ&ユニバーサル」で会場を包んだ。

 最後の曲「きよしのズンドコ節」では彩月会のメンバーと観客が一緒に踊り、にぎやかに7年ぶりの温習会を終えた。

西川佳洋師範「私の持っている踊りを教えて、次に繋げていきたい」

西川佳洋師範による「川の流れのように」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
西川佳洋師範による「川の流れのように」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 大きなアクシデントもなく、無事に皆が楽しくよく踊れてよかったと語った西川佳洋師範は、来年にはまた3人の弟子を連れて名古屋の家元に行く予定とうれしそうに話した。今後の彩月会について「私の持っている踊りを教えて、次に繋げていきたいです。私で終わりかなと思っていたけど、その希望が出ました。がんばります」といつものお茶目な笑顔を見せた。

「荒城の月」を舞う西川洋香さん。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
「荒城の月」を舞う西川洋香さん。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 子どもの頃から始めた日本舞踊は途切れながらも稽古を積んで35年以上になるという西川洋香さんは、「全く名取になることは予想していなかったです。ただ長くやっていたので、何か残したいなと思って先生にお話しました。決まった時は緊張しました。今回の温習会が終わって一安心です」と破顔した。

西川洋雪さんによる「まり禿」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
西川洋雪さんによる「まり禿」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 彩月会で稽古を始めて今年で9年目になる西川洋雪さんは今回の襲名について「西川佳洋先生と彩月会の皆さんのおかげです。応援してくれるたくさんの方々のご支援の賜物だと思って感謝しています。去年名取になることができて本当にうれしかったです」と目を輝かせた。

 終演後にはロビーで彩月会から菓子や飲み物が振る舞われ、日本舞踊を楽しんだ人たちのにぎやかな声とメンバーへの労いの言葉などであふれていた。

日本舞踊西川流カナダ彩月会第3回「温習会」和と洋の調べに心寄せて

小西さんのフルート、リーさんのピアノ演奏と共に舞う「さくらさくら」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
小西さんのフルート、リーさんのピアノ演奏と共に舞う「さくらさくら」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

第一部

  1. 祝賀の舞:田口恵里子
  2. 祇園小唄:ラビンスキー・りな
  3. 梅一輪・梅は咲いたか:吉武真理
  4. まり禿:西川洋雪(芦田有希子)
  5. 幻阿国:安井リサ
  6. 秋の色種:マトソン・信子、スワッツ・初恵
  7. 夢追い酒:吉野クミ子、相原満美子
  8. 荒城の月:西川洋香(リトン・かおり)
  9. 川の流れのように:師範職/会主 西川佳洋(松野洋子)
  10. さくらさくら:彩月会
    <8〜10フルートとピアノの演奏と共に>

フルート奏者 小西千恵子/ピアノ奏者 ダニエル・リーによるデュオコンサート“ラブ&ユニバーサル”

「コンチキ踊」彩月会。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
「コンチキ踊」彩月会。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

第二部

  1. 黒田節:久永勝芳
  2. ここに幸あり:チャン・ビクトリア
  3. 白鷺の城:吉岡ルーシー
  4. 博多夜船:竹田麗子
  5. 十日町小唄:西川洋香、牛沢操、西川佳洋
  6. 北海よされ節:久永勝芳、ラビンスキー・りな、桜田美子
  7. コンチキ踊:彩月会
  8. たけくらべ:タン・サミー
  9. 宮川音頭:彩月会
  10. 木曽節:桜田美子、久永勝芳、西川洋香
  11. 花笠音頭:彩月会
  12. きよしのズンドコ節<ご来場の皆様ご一緒に踊りましょう!>

出演者(順不同)

西川佳洋(師範職:会主)、西川洋香、西川洋雪、牛沢操、相原満美子、竹田麗子、スワッツ初恵、マトソン信子、桜田美子、吉岡ルーシー、吉野クミ子、田口恵里子、吉武真理、チャン・ビクトリア、タン・サミー、久永勝芳、安井リサ、ラビンスキー・りな、岡村ジーン

西川流カナダ彩月会第三回「温習会」和と洋の調べに心寄せて。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
西川流カナダ彩月会第三回「温習会」和と洋の調べに心寄せて。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

(取材 古川紋/写真・動画 斉藤光一)

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BC州医療保険MSPが州外やカナダ国外滞在中に適用となる条件と手順

The Legislative Assembly of British Columbia, Victoria, Canada.
ブリティッシュ・コロンビア州の州都ビクトリアにある州議事堂。

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州が提供する公的医療保険「MSP(Medical Service Plan)」が、一時的なBC州外やカナダ国外滞在時にも適用される場合がある。

 旅行シーズンを迎えるこれからの時期に知っておきたい、その条件や手順を紹介する。

 BC州政府のウェブサイトでは、条件を満たした場合でも州が全額負担することはないため、旅行保険加入など必要な準備をするよう呼びかけている。

 MSP保険の適用条件は、旅行など一時的にBC州を離れている場合で、予期せぬ事態で医師による治療を受けた場合のみ。医師による治療以外の医療サービスは対象外となる。そのため、他の州やカナダ国外に滞在中に処方箋や救急車サービスなどが必要な場合は全額自己負担となる。

 詳細はBC州政府のウェブサイトを参照。

BC州外での緊急医療サービス

BC州外の国内で医療サービスを受けた場合

 有効なBCサービスカードを提示すればMSPが適用される。ケベック州を除く他の州・準州のほとんどの医師はその州・準州の健康保険制度に請求する。各州・準州はお互いに費用を回収する仕組みになっている。

 ただケベック州に滞在していた場合はその場で支払いが求められ、のちにMSPからの払い戻しを請求しなければいけない場合がある。

BC州外の入院給付

 カナダの公立病院に入院した場合は、ほとんどの外来または入院費用は州・準州の健康保険制度が適用される。

 カナダの公立病院から保険適用の医療サービスに関する請求書を受け取った場合、下記連絡先への問い合わせが必要となる。Ministry of Health, Out of Province Claims, PO BOX 9647, STN PROV GOVT, Victoria, B.C. V8W 9P4

 BC州政府は、他の州・準州へ旅行する際には、州間の相互合意に含まれていない医療サービスの費用をカバーするための追加の医療保険に加入することを勧めている。

カナダ国外での緊急医療サービス

 国外での医療費は、MSPで支払われる金額よりもはるかに高額になる可能性がある。MSPの払い戻し対象となるのは、医師による緊急医療サービスのみで、BC州の医師料金基準に限定される。払い戻し額は同じ治療がBC州で行われた場合を超えることはない。

 緊急入院については、対象となる場合は1日75ドルを上限に支払われる。

 完全な保証を受けたい場合は、1日だけの出国予定でも民間保険会社の医療保険に加入することを州政府は推奨している。

払い戻し申請方法

 「Out of Country Claim Form」に必要事項を記入し、「医療行為を受けた日付と詳細を含む明細書」と「未払いの請求書または支払われた請求書の場合は領収書の原本」を添えて、Health Insurance BC(HIBC)に請求する。

 医療費の請求は、受診日から90日以内、入院した場合は退院日から6カ月以内に行う。英語またはフランス語以外の領収書や請求書には翻訳が必要。

Out of Country Claim Form: https://www2.gov.bc.ca/assets/gov/health/forms/2814fil.pdf

医療サービスを受けるために国外に滞在する場合

 BC州の住民が国外で医療サービスを受けるためにカナダを離れる場合、BCを出発する前に申請しなければならない。

MSP対象外

  • 美容外科など医学的に必要とされないサービス
  • 歯科治療
  • 19歳から64歳の定期的な眼科検査
  • 眼鏡、補聴器、他の機器や器具
  • 医学的に必須ではない定期的な検査
  • カウンセラーや心理学者のサービス
  • 認定医師助手
  • 登録看護師/ナースプラクティショナー
  • 義肢と器具
  • 麻酔科の看護師
  • ヘルススパや同様の施設
  • 交通費や宿泊費
  • 消耗品や資材
  • 緊急治療室の利用、私設クリニック/手術施設の料金
  • 第三者の要請による医療ケア

BC州外でのMSP適用外

  • 救急車サービス
  • マッサージ療法
  • ナチュロパシー
  • 足病学
  • 眼科
  • 処方薬
  • 理学療法
  • カイロプラクティック
  • 鍼灸
  • ホームケアサービス
  • 産婦人科医のサービス

詳細はBC州政府ウェブサイトを参照: https://www2.gov.bc.ca/gov/content/health/health-drug-coverage/msp/bc-residents/benefits/services-covered-by-msp/medical-benefits/medical-benefits-outside-of-british-columbia

(記事 古川紋)

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バンクーバーで天皇誕生日祝賀レセプション開催、多くの出席者で華やぐ

天皇誕生日を祝いあいさつする在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
天皇誕生日を祝いあいさつする在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 天皇陛下が64歳を迎えられた2月23日の誕生日を祝う天皇誕生日祝賀レセプションが、在バンクーバー日本国総領事館主催で3月8日に行われた。

 祝賀レセプションには約300人が出席。ブリティッシュ・コロンビア(BC)州議員、バンクーバー市議、各国の在外公館代表やバンクーバー日系コミュニティで活躍する財文化界から多くの人が出席し、天皇陛下の誕生日を祝った。

丸山総領事「たくさんの方々がお越しくださり、心から感謝しています」

 丸山浩平総領事は「天皇誕生日を祝い、カナダと日本の良好な関係が続き、さらに進歩していくこと祈ります」とあいさつした。

 多くの人が出席したことに感謝の気持ちを語った丸山総領事は、日本とBC州について「日本とBC州の関係を強化することが両地域の利益になることは間違いありません。そして世界が不安定な状況の中で国際社会に貢献できるような関係を築いていきたいと思います」と日本BC州の絆で世界貢献につなげたいと語った。

「天皇誕生日祝賀レセプションを毎年とても楽しみにしています」

乾杯の音頭をとるBC州Bruce Ralston森林大臣。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
乾杯の音頭をとるBC州Bruce Ralston森林大臣。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 乾杯のあいさつをしたBC州Bruce Ralston森林大臣は、BC州と日本の関係における長い歴史について語り、日本はBC州にとって世界で3番目の貿易相手国であると紹介した。そして64歳を迎えられた天皇陛下への祝いの言葉を述べ、乾杯の音頭をとった。

 天皇誕生日祝賀レセプションを毎年とても楽しみにしているというRalston大臣は、とても良い関係を築いているBC州と日本について、「私たちは日本市場を重視しています。日本はBC州製品のクオリティの価値をよく理解しています」とBC州と日本関係の重要性を強調した。

日本に多くの友人がいるというバンクーバー市Pete Fry市議。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
日本に多くの友人がいるというバンクーバー市Pete Fry市議。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 バンクーバー市Pete Fry市議は「天皇誕生日祝賀レセプションに出席することができて、とてもうれしいです」と笑顔を見せた。日本とバンクーバーの絆について「私たちの関係は深く、多くの日本人がバンクーバーを築くことに助力しました。過去から長い歴史があり、さらに未来にもストーリーがあります。私たちは一緒にそれを楽しんでいくでしょう」と語った。

 会場ではBC州日本酒協会による日本酒や日本産の食材を使った料理がふるまわれ、出席者は舌鼓を打ちながら話に花を咲かせていた。着物姿の出席者もいてバンクーバー市内のホテル会場は華やかな雰囲気に包まれた。

天皇陛下64歳の誕生日を祝って乾杯。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
天皇陛下64歳の誕生日を祝って乾杯。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
笑顔を見せるBC州Mike Farnworth公安大臣(左)とRCMP Assistant commissioner Brian Edwoods氏。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
笑顔を見せるBC州Mike Farnworth公安大臣(左)とRCMP Assistant commissioner Brian Edwoods氏。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事夫妻。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事夫妻。2023年3月8日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(取材 古川紋/写真 斉藤光一)

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能登半島地震被災者支援チャリティイベント「Noto Night」開催、カナダからエールを送る

会場中をエネルギッシュに盛り上げた天晴よさこいバンクーバー。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
会場中をエネルギッシュに盛り上げた天晴よさこいバンクーバー。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

 今年1月1日に起きた能登半島地震で被災した人々を支援するためのチャリティイベント「Noto Night」が2月17日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。

 イベントでは、ちび太鼓、ルーク&ゼーン(シークアム・ミュージック・クラブ)、フェリーチェ合唱団、天晴よさこいバンクーバーなどを含む7組のグループによる多彩なパフォーマンスが披露され、会場は多くの人で賑わった。

「一時的な支援ではなく長いスパンで支援していきたい」主催者渡辺雅之さん

主催者の渡辺雅之さん。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
主催者の渡辺雅之さん。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

 渡辺雅之さんは石川県に12年間住んでいたと言う。「Noto Night」企画から開催までの経緯と被災者への思いを聞くと、「元日に地震が起き、流れてくるニュースを見ると全て私が訪れたことがある場所でした。心がとても痛み、何かできることができないかという思いがこみ上げました」と語った。

 今回のイベント開催には平居幹さんの協力があったと話す。「平居幹さんは2016年の熊本地震が起きた時に同じように日系文化センターでチャリティイベントを開催されました。彼から石川県のために行動を起こそうとお誘いを受けて、この度Noto Nightの開催に至りました」

 最近カナダでは能登半島地震についてのニュースが出なくなったことを危惧している。「復興作業は長い道のりになります。一時的な支援ではなく長いスパンで支援していきたいです。そしてこのイベントのように色々なことに関心をもっている人たちが一致団結することで、被災地の皆さんにエネルギーを送りたいという望みがあります」

 今回のイベント開催で最も大変だったのは準備期間が3週間しかなかったこと。「イベントの内容を決めて色々な方々にお声をかけました。参加したいけど予定が合わずメンバーが集まらない、また参加するとなると急きょリハーサルをしなければならないのでパフォーマーの皆さんにはご迷惑をおかけしました」

 ただ「皆さん本当に喜んで参加してくださり、準備期間が短かった割にはスムーズに開催することができました。日系文化センターとボランティアの皆さんにもご協力していただき心から感謝いたします」と穏やかに答えた。

共催者平居幹さん「人々が助け合うことが一番の望み」

笑顔を見せる共催者平居幹さん。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
笑顔を見せる共催者平居幹さん。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

 渡辺さんが「Noto Night」を企画するきっかけを作った共催者の平居さんは、「元日に地震のニュースを見て本当に悲しかったです。地震、津波、火事の3つが揃ってしまいました。こういったチャリティイベントを開催することで、みんなの気持ちが一緒になれます。人々が助け合うことが僕の一番の望みです。ここ最近世界中で悲しいニュースであふれています。人々は本当に仲良くなるべきです」と強く思いを語った。

 この日来場していた男性は、「私は日本が大好きです。輪島市に行ったことがあり、とても良い思い出です。被災地の皆さん、復興に向けて本当にがんばっていると思います。ここからエールを送りたいです」とイベント参加への気持ちを語った。

 イベント開催中はもちろん、終了後もインターネットからの募金や一部マッチング寄付もあり、合計約16,500ドルの寄付金が集まった。全額が在バンクーバー日本国総領事館を通して被災地域に寄付される。

お母さんたちによる手作り衣装を着てかわいらしいダンスを見せてくれたドリームハンターズ。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
お母さんたちによる手作り衣装を着てかわいらしいダンスを見せてくれたドリームハンターズ。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
ワイレレ ワイ ワイのパフォーマンス。オリジナルソング「アロハ、マハロ」で愛と感謝を表現。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
ワイレレ ワイ ワイのパフォーマンス。オリジナルソング「アロハ、マハロ」で愛と感謝を表現。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
バンクーバーでも指折りののど自慢、ガーデナーズ・カラオケ・クラブの皆さん。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
バンクーバーでも指折りののど自慢、ガーデナーズ・カラオケ・クラブの皆さん。2024年2月17日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
イベント開始前に上映された能登の現状を伝える動画。渡辺さんの輪島出身の友人が制作した。

(取材/写真 古川紋)

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寒いバンクーバーの街を温める「ホットチョコレートフェスティバル」開催中

Mercato di Luigiのフェスティバル期間限定特別メニュー「CIOCCOLATA CALDA AL PISTACCHIO」。Photo by古川紋/Japan Canada Today
Mercato di Luigiのフェスティバル期間限定特別メニュー「CIOCCOLATA CALDA AL PISTACCHIO」。Photo by古川紋/Japan Canada Today

 今年で14回目となる「ホットチョコレートフェスティバル」が、1月13から2月14日までメトロバンクーバーで開催中だ。このフェスティバルは、2011年に寒さ厳しい季節にホットチョコレートを通じて地元のビジネスに活気を吹き込むためにスタートした。


 今年は12店が新しく加わり、メトロバンクーバー全体で105のショップが162種類のフレーバーで参加している。

 カフェ、ベーカリー、ショコラティエの参加が多いが、ジェラートやアイスクリームショップも参入。

 フェスティバル限定の特別なホットチョコレートメニューでバンクーバーを盛り上げる。

初参加のMercato di Luigiで「CIOCCOLATA CALDA AL PISTACCHIO」

 メトロバンクーバーに15店舗を展開する常連のArtigianoでは、濃厚なチョコレートと特製ローズマリーバニラシロップがブレンドされた「S’MORELICIOUS HOT CHOCOLATE」が味わえる。ガスバーナーで焼かれたマシュマロホイップ、ローズマリーの枝、スモアクッキーとともに目でも楽しい。

 さらにマシュマロホイップとホイップクリームが乗った濃厚なダークチョコレートシロップとスパイスのブレンド「CHOCOLATE CALIENTE」は、シナモンと塩キャラメルがふりかけられたスペシャルメニューだ。

笑顔でインタビューに答えるMercato di LuigiのマネージャーMariana Barrosさん。Photo by古川紋/Japan Canada Today
笑顔でインタビューに答えるMercato di LuigiのマネージャーMariana Barrosさん。Photo by古川紋/Japan Canada Today

 今年初めて参加するイタリアの食料品ショップ兼カフェMercato di Luigiはスペシャル限定メニュー2つを用意。

 温かいクラシックイタリアンティラミス「TOASTY TIRAMISU」は、リッチでクリーミーで酸味があり、チョコレートの風味がたっぷり詰まっている。

 「CIOCCOLATA CALDA AL PISTACCHIO」は、ナッツの風味豊かなホットココアと砕いたピスタチオ、添えられたピスタチオのアマレッティが織りなす絶妙な味が楽しめる。

 Mercato di LuigiマネージャーMariana Barrosさんに初めての参加を決めた理由を聞くと、「皆さんが知っているこのイベントをきっかけにお客様の来店に繋がり、私たちのことを知ってもらうよい機会になるからです。期間中にたくさんの方がスペシャルメニューをオーダーしに来てくれるのでとても忙しく、この結果に満足しています」とにこやかに答えた。

 日加トゥデイの取材には「ありがたいことに、たくさんの日本人のお客様も来てくれます。さらに多くの皆さんのご来店と私たちの全てのメニューを体験してもらえるとうれしいです」と語った。

 フェスティバルでは期間中にインスタグラム写真投稿コンテストも開催されている。賞品は参加店から総額1,700ドル相当のギフト券。結果はバレンタインデーの午後9時ごろに発表される。詳しくはウェブサイトを参照。

The 14th Annual Hot Chocolate Festival: https://hotchocolatefest.com/

Mercato di Luigi(580 E 12th Ave, Vancouver)の外観。Photo by古川紋/Japan Canada Today
Mercato di Luigi(580 E 12th Ave, Vancouver)の外観。Photo by古川紋/Japan Canada Today

(取材 古川紋)

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桜楓会2024年新年会を開催、寒空でも会場は温かく賑わう

桜楓会参加者の集合写真。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
桜楓会参加者の集合写真。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

 バンクーバー桜楓会の年次総会および新年会が1月11日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。

 当日は厳しい冷え込みとなったが64人が出席。会場では、参加者たちが新年のあいさつとともに話に花を咲かせ、お節料理やゲームなど充実した時間を過ごし、大いににぎわった。

久保会長「今年は隣組と力を合わせていく」

新年会であいさつする久保克己会長。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
新年会であいさつする久保克己会長。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

 久保克己会長のあいさつから始まり、新年会は穏やかに進んでいった。「桜楓会は今年で39年目です。皆さんのお元気なお顔が見ることができて本当に幸せです」と喜んだ。

 久保会長に2024年の抱負を聞くと「今年は隣組と力を合わせていきます。日系のコミュニティの数が多いので、皆で力を合わせれば、さらに大きくおもしろいことができることが沢山あります。やがては他の団体ともできればいいなと思っています。協働することのメリットはものすごく大きいと思います」と力強く答えた。

丸山総領事「日本とカナダ、世界中を結ぶ奇麗な虹が沢山かかるように」

新年会のあいさつをする丸山浩平総領事。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
新年会のあいさつをする丸山浩平総領事。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

 在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事も出席した。あいさつでは「辰年の年男なので張り切って新年を迎えたいと思っていた矢先、残念ながら日本で厳しい年明けとなってしまいました。改めて犠牲者の方々に追悼の意を捧げ、早期の救出と復興が進むことを心よりお祈り申しあげます」と冒頭で能登地震について言及した。

 また先日奇麗な虹の橋を見たというエピソードから「虹は辰が水を飲んでいる姿だという中国の言い伝えがあります。辰が奇麗な虹になって日本とカナダ、世界中を結んでくれる素敵な虹が沢山かかるように祈りますし、我々も気を引き締めて努力してきたいと思っております。大先輩でいらっしゃる桜楓会の皆様からご教授をいただいて、本当に信頼していただける総領事館になるように努めます」と語った。

 新年会では、ヤング規代枝さん、ティム クラークさん、荒巻典子さんがアルゼンチンタンゴ、フランメンコを披露した。情熱的で力強いパフォーマンスに、会場中が新年から活気のある雰囲気に包まれた。

 そのほか、ジャンケンや50:50などのゲームも開催。ゲーム勝者には景品も贈呈され、会場中が大いに盛り上がった。

バンクーバー桜楓会

 満55歳以上の日本語を話す人を会員として1985年に「退職移住者の会」として発足した。新年会のほか、暖かい季節には桜や初夏の香りを楽しむ「歩こう会」やブルーベリー摘みなどのイベント、芸術や健康などについて学べる教養講座など、BC州で生活している会員同士の親睦を深め、生活を充実させるための情報交換の場となっている。

乾杯の音頭をとった会員最年長桑原誠也名誉会長(前列左から2人目)と、食後の和気あいあいとした雰囲気で。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
乾杯の音頭をとった会員最年長桑原誠也名誉会長(前列左から2人目)と、食後の和気あいあいとした雰囲気で。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
荒巻典子さん、ヤング規代枝さんによる美しく力強いフランメンコ。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
荒巻典子さん、ヤング規代枝さんによる美しく力強いフランメンコ。2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
体を使ったジャンケンゲームを楽しむ。 2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today
体を使ったジャンケンゲームを楽しむ。 2024年1月11日、日系文化センター・博物館。Photo by 古川紋/Japan Canada Today

(取材 古川紋)

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朝日ベースボール創設10周年、上西ケイさん102歳誕生祝い

上西ケイさん(前列中央)を囲んで、朝日選手とコーチ、関係者と。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
上西ケイさん(前列中央)を囲んで、朝日選手とコーチ、関係者と。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today

 朝日ベースボール・アソシエーションの新年会が1月7日ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。

 今年で創設10周年となる朝日ベースボール。この日は、朝日軍レジェンド上西ケイさん102歳の誕生会も行われ、多くの朝日選手や関係者が集まった。また、ケイ・カミニシ・アワード受賞者の発表や、10年前のチーム結成時から現在までの朝日ストーリーをスライドショーで見せるスペシャルプレゼンテーションなども行われた。

上西ケイさん102歳に

誕生祝いの大きなケーキの前で微笑む上西ケイさん。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
誕生祝いの大きなケーキの前で微笑む上西ケイさん。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today

 1939年に17歳でルーキーとして朝日軍に入団した上西ケイさんは、今では唯一の戦前にプレーしていた選手。1月11日の誕生日を前に、この日は豪華なケーキと花束とともに102歳を参加者全員でハッピーバースデーの歌を贈り祝った。

 上西さんに気持ちを聞くと「昔の記憶がよみがえって懐かしい気持ちでいっぱい」と笑顔を見せた。

ケイ・カミニシ・アワード受賞はKyle選手

ケイ上西アワードを受賞したKyle選手(左)、上西ケイさんと。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
ケイ上西アワードを受賞したKyle選手(左)、上西ケイさんと。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today

 今年のケイ・カミニシ・アワードはKyle de Waal選手が受賞した。朝日ベースボールチームのメンバーから毎年1人だけ選ばれるこの賞は、朝日の精神であるスポーツマンシップ、礼儀や作法を体現している選手、野球のスキル、自分が朝日で学んだことを次の世代に教える活動への貢献などの要素を総合的にみて選ばれる。

 Kyle選手はボランティアでコーチも務めている。「受賞できたことにとても感謝していますし、幸せな気持ちです。毎週日曜日にボランティアでコーチとして朝日のメンバーに野球を教えていて、その活動を認めてもらえてうれしい。僕はコーチとして野球を教えるのがとても好きで、野球を若い世代に教えることで彼らがまた良いコーチになると思います。僕が知っていること全てを彼らに教えて、インスパイアしていきたい。また僕は将来先生になりたいと思っているので、コーチとしての経験は将来の目標へもつながります」と喜んだ。

2025年ジャパンツアーに向けて2024年は「チームビルド」

2025年ジャパンツアー監督に就任した小川学さん(左から2番目)とジャパンツアーメンバー。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
2025年ジャパンツアー監督に就任した小川学さん(左から2番目)とジャパンツアーメンバー。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today

 今シーズンから監督に就任した小川学さんに2024年の目標を聞くと、「朝日チームはさまざまなチームから、朝日の歴史や日本のスタイルに興味を持ってきてくれた子どもたちが集まって、このチームでもプレーします。(朝日の)各選手は他のチームにも所属しています。そのため練習量も他のチームと違って限られます。その短い時間でいかにチームを一つにまとめられるか、今年は2025年のジャパンツアー前に、子どもたちをチームとしてさらにまとまった状態にしていきたいと思っています」と答えた。

 朝日は2015年から2年に一度、日本で野球を通じた交流を行うジャパンツアーを実施している。チームは毎回選手を選抜。次回のジャパンツアーは2025年。この日はツアーメンバーの発表も行われた。

Marcus選手(左)と、Sam選手。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
Marcus選手(左)と、Sam選手。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today

 Sam Boon選手は「2024年の目標はナショナルトーナメントで勝ち進むこと。2025年のジャパンツアーが今からとても楽しみ」と目を輝かせた。Marcus Cyr選手は「新年会に参加できてうれしい。朝日で学べる最も良いことはスポーツマンシップや相手をリスペクトする精神です」と戦前の朝日軍からの精神を受け継ぎジャパンツアーにつなげていく。

朝日ベースボール・アソシエーション

 2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。https://www.asahibaseball.com/

朝日チーム・ジャパンツアー

 2015年を第1回として、2年に一度、同アソシエーションでプレーする選手から選抜チームを結成し日本に野球遠征している。選手は主に13~15歳で編成されている。2021年は新型コロナ感染拡大の影響で中止に。2023年に第4回遠征が実施された。2017、2019年には、横浜、静岡、滋賀、奈良などで、2023年は2021年に遠征予定だった選手も参加し神戸を中心に親善試合を行なっている。

バットに力強くサインを書く上西さん。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
バットに力強くサインを書く上西さん。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
朝日メンバーに迎えられて入場する上西ケイさん。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today
朝日メンバーに迎えられて入場する上西ケイさん。2024年1月7日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito/Japan Canada Today

(取材 古川紋 / 写真 斉藤光一)

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