バンクーバーで西川流の芸をつなぐ「西川流カナダ彩月会」(前編)

左から、西川洋雪さん、佳洋さん、洋香さん。2023年5月18日、愛知県名古屋市。写真提供:西川流カナダ彩月会
左から、西川洋雪さん、佳洋さん、洋香さん。2023年5月18日、愛知県名古屋市。写真提供:西川流カナダ彩月会

 西川流師範西川佳洋(松野洋子)さん率いる彩月会から、西川洋香(リトンかおり)さん、西川洋雪(芦田有希子)さんが名取式を終え、会も西川流カナダ彩月会に改名した。

 バンクーバーで長く西川流の伝承に努めてきた佳洋さんにとっても、2人の名取はこれからもバンクーバーで西川流が受け継がれていく礎ができたことを意味する。

 今回は7月5日、日系文化センター・博物館で西川流カナダ彩月会の稽古が終わった後に、西川佳洋さん、洋香さん、洋雪さんに話を聞いた。

2人にとって名取は通過点

 リトンかおりさん、芦田有希子さんは佳洋さんの「洋」を引き継ぎ、それぞれ西川洋香、西川洋雪として、次の一歩を踏み出した。

 名取後について洋香さんは、「私自身はなにも変わらないですね。まだ実感がないんで(笑)。たぶん今まで通り。でも(佳洋)先生にお稽古をつけていただく中で、少しでも進歩できればいいかなって。そんな気持ちです」と語った。

 佳洋さんは、「これで西川の苗字に入ったから、大っぴらにかおり(洋香)さんもできるから大丈夫です」と笑う。「できる」とは佳洋さんの代役。これまでも「代役」として会を支えてきた。だから「これからは(名取として)大っぴらに」とうれしそうだ。「先生が優しい分、私が厳しく…」と返す洋香さん。信頼関係は強い。

 洋雪さんは「私はまだ勉強中なので、新しい踊りも覚えたいし、古典をもうちょっと勉強しないとダメだなって思います。まだ発展途上なのでお稽古させていただきたいと思っています」と気を引き締める。

 「有希子(洋雪)さんは前から日にちがたてばお稽古して(苗字を)いただきたいっていう話はしてたの」と佳洋さんは目を細める。若い人に芸を引き継ぐことは師範として自分の役割の一つが果たせることになるのだろう。

 今回2人の名取が同時に実現したのは、彩月会を支えてきたリトンかおりさんの名取希望からだったと佳洋さんは振り返った。「なんのきっかけか忘れちゃったけど、かおりさんがわたしも西川の苗字内に入りたいって。それですぐ1月18日に家元さんに手紙を書いて。名古屋まで行けませんけど、と説明して。そしたら、私の推薦だから大丈夫ですって」

 それから4月1日にはオンラインで名取式が行われ、正式に西川洋香、洋雪となった。佳洋さんは以前のコメントで、「特に『彩月会』のまとめ役のリトンかおりさんが西川の苗字内に入ってくれまして私としてはとてもうれしいです」と語っている。

 彩月会を支え、西川流を引き継ぐ、2人の名取は西川佳洋さんにとって格別だったようだ。

西川流カナダ彩月会

約47年にわたりバンクーバーで西川流日本舞踊を教えている西川佳洋さんが、2011年に日系文化センター・博物館で教え始めたグループ「彩月会」から2023年6月16日に改名した。
稽古は毎週水曜日、会場は日系文化センター・博物館
会員は現在20人、随時募集している
https://satsukikaibc.wixsite.com/satsukikai

*後編「緊張した名古屋の家元の前での舞踊披露」は、7月21日発行の新聞「日加トゥデイ」に掲載。西川流四世家元西川千雅さんインタビュー動画も同時公開。

長唄 雨の五郎より「藪のうぐいす」・・西川洋香(ようか)。2023年5月18日、愛知県名古屋市。写真提供:西川流カナダ彩月会
長唄 雨の五郎より「藪のうぐいす」・・西川洋香(ようか)。2023年5月18日、愛知県名古屋市。写真提供:西川流カナダ彩月会
端唄 重ね扇・・西川洋雪(ようせつ)。2023年5月18日、愛知県名古屋市。写真提供:西川流カナダ彩月会
端唄 重ね扇・・西川洋雪(ようせつ)。2023年5月18日、愛知県名古屋市。写真提供:西川流カナダ彩月会

(取材 三島直美)

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