「新樹(しんじゅ)」

カナダde着物

第83話
*端午の節句と花まつりで着物を愉しむ*

 新樹(しんじゅ)は、初夏の5月頃を表す季語であり、若葉が美しく萌え出て生い茂る木々のことを指すそうです。

 新緑(しんりょく)はよく使われる言葉ですが、新樹には単に木々の葉の緑だけでなく、樹木そのものが持つ生命力や力強さを感じさせる響きがあります。その点では、神聖な存在として敬われる御神木(ごしんぼく)にも通じるものがあるように思います。

 当地バンクーバーには、スタンレーパークという、公園というより森と呼ぶにふさわしい場所があります。そこには樹齢600年を超えるダグラスファー(ベイマツ)や、樹齢1000年にもなる見事な杉、さらにはカナダ全土でも知られる巨大なカエデの木などがあり、まるで太古の森に迷い込んだかのようです。

 自然のパワーやエネルギーを存分に感じられるスタンレーパーク。気軽に訪れることができるのも魅力で、これからの季節にはぜひ足を運びたいスポットの一つですね。

「Around the sea wall in Summer Sunny day!!!!Stanley Park」by Manto Artworks
「Around the sea wall in Summer Sunny day!!!!Stanley Park」by Manto Artworks

*今日の着物と集い*Today’s Kimono and Gathering
「花まつりで着物を愉しむ*幻の染め 辻が花」

 新暦の端午の節句(5月5日)と旧暦の花まつり(4月8日)にちなみ、コキットラムにある東漸寺では、毎年5月初旬の日曜日にお祝いと法要が行われています。

 そこへ着ていく着物は、まだ袷(あわせ:生地を二枚重ねにし、裏地のある着物)を着る時期ではありますが、季節に合わせて、淡く爽やかな色合いや初夏らしい文様を選ぶとよいでしょう。

 帯は特に季節感を表しやすいので、植物や行事をモチーフにしたものを選ぶと、初夏らしい装いになります。抽象的な柄であっても、色合いを明るくすることで季節感を演出できます。

 初夏から盛夏にかけては、あえて色の濃い着物を選ぶこともあります。天候が悪い日やお茶会のお手伝いなどで着用する場合、汗じみや汚れが目立ちにくく、お手入れがしやすいという利点があります。その際は、帯を明るめの色にすると全体のバランスが軽やかになります。

 お釈迦さまの誕生日をお祝いする「花まつり」は、古くから日本で親しまれてきた仏教行事です。春から初夏の花々でお堂や祭壇を飾り、誕生仏に甘茶をそそいでお祝いする風習は、今も各地のお寺で大切に受け継がれています。

 この日、花まつりにかけて帯は辻が花を選びました。「辻が花(辻ヶ花)つじがはな」は、室町時代から安土桃山時代にかけて現れ、その後忽然と姿を消したため「幻の染め」と呼ばれる絞り染めの染色技法です。

 その後、現代では、戦後に久保田一竹氏(一竹辻が花)や翠山工房などの作家・工房によって独自の解釈や現代的な手法が再現され、振袖や訪問着として高い人気を誇っています。

 細かい点ではありますが、絞りの技法による着物であるため、京友禅や加賀友禅といった友禅染の着物のほうが、格としてはやや上に位置づけられることが多いと考えられます。 もちろん、絞りは礼装からカジュアルまで幅広く楽しめる、現代の着物の代表的な柄・技法の一つでもありますね。

「綸子の色無地着物に辻が花の帯 お寺の花まつりにて」By コナともこ
「綸子の色無地着物に辻が花の帯 お寺の花まつりにて」By コナともこ

*今日の集い*Today’s Gathering *
「端午の節句と子ども茶会」

 今年は晴れの日が多く、うれしい気持ちになります。日曜日に行われている和の学校の季節の行事の中でも、5月は誰もが心弾む季節ではないでしょうか。

 こどもの日は「端午の節句」でもあり、お茶会には浴衣姿の子どもたちが集まりました。

 和尚さまが用意してくださった床の間には掛け軸が掛けられており、ふだん子どもたちは本堂でお抹茶をいただいていますが、今回は茶室デビューでしょうか。本格的な茶室で、お菓子とお抹茶をいただく機会となりました。

 茶室への入り方、床の間の拝見の仕方、お客同士の立ち居振る舞いなど、お茶をいただく前にも多くの所作やご挨拶があります。一つひとつの動きには意味が込められているのですが、子どもたちは熱心に耳を傾けてくれました。

「端午の節句 子ども茶会 東漸寺にあるお茶室にて」By コナともこ
「端午の節句 子ども茶会 東漸寺にあるお茶室にて」By コナともこ

コナ ともこ
(和の学校@東漸寺 主宰)

*参照*

暦生活
https://www.543life.com

スタンレーパークにある古代西洋レッドシダーの巨木
https://en.wikipedia.org/wiki/Hollow_Tree

「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから

コナともこ
アラ還の自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
15年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。

年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。

*詳しくはコナともこまでお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。

次女とバンクーバー近郊在住。

《和の学校@東漸寺》

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「東漸寺🌸春🌸2024」Manto Artworks
「東漸寺🌸春🌸2024」Manto Artworks
東漸寺はカナダ・ブリティッシュコロンビア州メトロ・バンクーバーのコキットラム市にある西山浄土宗の寺院です。
東漸寺はカナダ・ブリティッシュコロンビア州メトロ・バンクーバーのコキットラム市にある西山浄土宗の寺院です。