運のいい奴 10-1 ~投稿千景~

エドサトウ

 黄色の病院専用ミニバスに乗り、VGH病院からバンクーバーの南にあるリハビリ専門病院へ、パジャマのまま移動する。コロナウイルスのためか、ミニバスの中は風としをよくしていたのか、少々寒かったが、こちらは乗せてもらう側だから文句は言えない。

 病院に到着して、4人部屋の窓際のベッドに案内されると、中年の怖そうなアジア系の婦長さんと思われる人が来て、「コロナの検査をします。」と言う。「えっ!もうコロナの検査は前の病院で、今日の朝にしました。」と言うと、「もう一度します。」と言って、綿棒で鼻の中の粘液のサンプルなどを取って行った。何故か肛門のあたりも綿棒でチェックしてサンプルを取っていった。

 前は一人部屋で、わりと気楽であったけれど、四人部屋というのは、少々緊張する。しかし、よく説明を聞くと障害者は一人でいるのはよくないらしい。周りの人と少しでも対話をしたりしてコミュニケーションをとることも大切な治療の一つらしい。

 だから、午前中、午後とそれぞれにいろんなリハビリがあるけれども、時折、朝のトレーニングが早いと10時半ころに終了となり、昼まで少し暇になる事がある。するとレクリエーションルームでゲームや絵を描いたりするイベントがあって、呼ばれる。知らない人ばかりなので、気持ちが進まないが、絵を描くのが面白そうなので出かけた。

 レクリエーション担当の方がデモンストレーション動画を見せて、絵を描く順序などを理解して、用意されてある絵具で画布に描いてゆく。参加している人それぞれがいろんな障害があるがインストラクターの先生の手助けと説明を聞きながら描いてゆく。僕は両手の指先が自由に動かないので、細い処は、両手で筆を持って、それなりに描き上げた。

 後で、それぞれの作品を皆に見せるのだけれど、担当者の方が、僕の絵を上にあげて、「これは、エドさんの絵です」と紹介してくれた。下手なりにうまくできた。後で絵具が乾くと、絵を僕の部屋に届けて、壁にかけてくれた。

(つづく)