VIFF 2021 第40回バンクーバー国際映画祭

Drive My Car by Vancouver International Film Festival
映画「ドライブ・マイ・カー」の一場面。Provided by Vancouver International Film Festival

映画はオンラインとシアター

 今年はVIFFことバンクーバー国際映画祭の40周年の記念の年。1982年に非営利団体として発足されたBC州最大の映画祭、バンクーバー国際映画祭は2021年は10月1日から11日まで開催される。

 去年は新型コロナウイルス感染拡大による海外からの渡航規制のため、全ての映画がオンラインで上映された。恒例のレッド・カーペットや舞台挨拶がなくなったものの、自宅でゆっくりと好きな時間に映画を鑑賞できた。

 オンラインを好むファンも増えていて、今回もVIFFコネクトがオンラインで映画を配信する。ただし、視聴はブリティッシュ・コロンビア州からのみ。是枝裕和監督らによるクリエイター・トークイベントや監督のQ&Aセッション(すでに録画されたイベントも含む)もプログラムに含まれる予定だ。

 40周年となる今年は一部シネマ上映も復活する。劇場は以前より増えていて、次の9カ所:

バンクーバー・ダウンタウン
-Vancity Theatre
-Studio Theatre
-Vancouver Playhouse
-The Cinematheque
-Goldcorp Centre for the Arts at SFU
-Annex

バンクーバー・イースト
-The Rio Theatre

キツラノ
-Hollywood Theatre

ウエスト・バンクーバー
-Kay Meek Centre

 映画館に入場するにはワクチンパスポート提示とマスク着用が義務付けられる。(9月13日時点での情報)

 チケットはオンライン上の場合、一本$10、家族鑑賞は$15。いずれも機器は一台のみ。$10で友人や家族と一緒にパソコンなどで観賞することもできるが、家族観賞チケットを購入することでVIFFをサポートできる。

 劇場での上映は一般$15、65歳以上のシニア$13、学生$10。特別上映は全て$17。4枚綴りの少しお得なチケットパスは一般$48。

 詳しくはwww.viff.orgフェスティバル・チケットのページを参照。劇場チケットの購入はお早めに。

~注目の日本映画~

Drive My Car
ドライブ・マイ・カー

(バンクーバー新報メディアパートナー)

監督:濱口竜介
2021年、179分

「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹による同名の短編小説が原作。Provided by Vancouver International Film Festival
「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹による同名の短編小説が原作。Provided by Vancouver International Film Festival

運命から目を逸らさない

 村上春樹による同名の短編小説が原作となるドラマ映画。今年のカンヌ国際映画祭で、脚本賞ほか4つの賞を受賞した。カンヌでの脚本賞は日本映画初。濱口監督の作品は去年も『寝ても覚めても』がカンヌやVIFFで好評だった。

 舞台俳優で演出家の家福悠介(西島秀俊)は脚本家の妻、音(霧島れいか)と満ち足りた生活を送っていた。だがある日、妻の不倫が発覚、さらに真相を明かさないまま彼女は亡くなってしまう。

 喪失感とトラウマを抱えた家福の前にドライバーの渡利みさき(三浦透子)と妻の不倫相手だった若い青年、高槻耕史(岡田将生)が現れる…。

10/2 (土)11:15 am Vancity Theatre: VIFF Centre
10/4 (月)8:45 pm Vancouver Playhouse
10/9 (土)8:45 pm Vancouver Playhouse

Wife of a Spy
スパイの妻

監督:黒沢清
2020年、115分

「スパイの妻」は2020年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。Provided by Vancouver International Film Festival
「スパイの妻」は2020年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。Provided by Vancouver International Film Festival

社会のルール対自分の正義感

 黒沢清監督の教え子だった野原位が黒沢監督に企画を依頼し、濱口竜介監督をも交えた三人で共同脚本した。2020年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞、日本人としては『座頭市』での北野武以来の17年ぶり)を受賞したスパイ・心理サスペンス映画。

 舞台は1940年代前半の神戸。第2次世界大戦が近づき緊迫してくる社会の中に、裕福で幸せな福原優作、聡子夫妻(高橋一生、蒼井優)がいた。満州を旅した夫が知っってしまった国家機密のために二人の正義と愛が試される。

 以前にVIFFに参加したこともある俳優、東出昌大が憲兵分隊長、津森泰治役として出演している。CGやセットを使わず、実在する場所で撮影した高品質で見応えのあるフィクション映画。

10/3 (日)12:45 pm Hollywood Theatre
10/10 (日)6:15 pm Hollywood Theatre

オンライン
10/1(金)~10/11 (月)11:59 pm(VIFF Connect)

Spaghetti Code Love
スパゲティコード・ラブ

監督:丸山健志
2021年、96 分

「スパゲティコード・ラブ」。Provided by Vancouver International Film Festival
「スパゲティコード・ラブ」。Provided by Vancouver International Film Festival

誰もいない森の中で1本の木が倒れたら…

 13人の若者らがそれぞれ異なる点から生きる意味を見つめる。友達はフェイスブック上のみで本当の友達はいない、自分はただ東京をさまよっているだけ……。そんな彼らが、愛を手に入れて幸せになりたい、ソーシャルメディアに嘘の投稿を続けている、認められたいなどそれぞれの悩みを明かしていく群像劇。

 監督は複数の物語を自由に進行させ、思いがけない方向に導きながらも最後にバランスよくまとめている。「映画は嘘の世界、何でそんなものを作っているのか」というセリフも響く。

10/1 (金)9:15 pm The Cinematheque
10/9 (土)10:30 am VIFF Centre – Vancity Theatre

オンライン
10/1(金)~10/11 (月)11:59 pm(VIFF Connect)

Fortune Favors Lady Nikuko
漁港の肉子ちゃん

監督:渡辺歩
2021、97分

モントリオールのファンタジア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した漁港の肉子ちゃん。Provided by Vancouver International Film Festival
モントリオールのファンタジア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した漁港の肉子ちゃん。Provided by Vancouver International Film Festival

食べてハッピーで感動しよう

 モントリオールのファンタジア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した作品。西加奈子による日本の小説を、STUDIO4°C、興行、明石家さんまのコラボで完成させ、声優は主人公肉子ちゃん役に大竹しのぶ、キクコ役に木村拓哉と工藤静香の娘のCocomiなど。

 舞台は日本海に面する架空の漁港。太っていてプラスサイズのシングルマザー、肉子ちゃんは娘のキクコと幸せに暮らしている。ふとしたことから肉子ちゃんの素顔とこれまでの苦労が明らかになる。家族をテーマにしたアニメーション映画。

10/9 (土)6:45 pm SFU Goldcorp Centre for the Arts
10/11 (月)3:45 pm VIFF Centre – Vancity Theatre

(文:Jenna Park、写真提供:VIFF)

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