ワクチン接種に関する疑問に答える!BC州ワクチン接種計画リポート後編(更新)

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州政府が3月18日に、6月末までに希望する州民全員へのワクチン接種1回目を終える予定としていることを発表した。当初の予定より計画の実施が前倒しになっている。

 400万人を超える州民が対象という大掛かりな接種となるため、州ではNational Advisory Committee on Immunization(予防接種に関する全国諮問委員会)、 州のImmunization Committee(予防接種委員会)、公衆衛生局の委員会などのガイダンスや専門家の助言を受けて計画を準備してきた。

 ワクチン接種計画について政府発表の内容を、1月22日の発表に基づき当初、2回に分けてリポートした。2月1日公開の記事後編では供給状況や1回目と2回目のワクチン接種の間隔、また、ワクチンに関してBC州政府がウェブサイトで発表しているFAQについてその内容を紹介した。

 3月25日現在、BCCDC(BC Centre for Disease Control)の回答に変更があるので記事を更新する。新たな質問とその回答についても加えた。変更と追加は赤字で示す。

 日加ヘルスケア協会理事の田中朝絵医師の「ワクチンについてデマやうわさもあるので正しい情報を得るようにしてください」と言う助言について、2月1日に紹介した田中医師から一部の「うわさ」についてのコメントも引き続き掲載している。

ワクチンの効果が現れるのは最初の接種の2週間後

 現在、カナダで承認されているコロナワクチンはファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンが開発した4種類で、ジョンソン&ジョンソン社製以外は2回接種する必要がある。

 そのほか、
・ワクチンの効果は最初の接種の2週間後に現れる
・その効果はファイザーとモデルナ社製ワクチンで90パーセント以上
・ワクチンを開発した会社が推奨する1回目と2回目の接種間隔は21~28日で、21日以前に2回目の接種を受けるべきではない
・一般的には間隔を延ばすことで、長期的なワクチンの効き目が減ることはなく、多くのワクチンで少し長めに間隔を持つことは逆に良いとされる

 一方、ワクチン接種による効果の持続期間は現在も研究中で、はっきりしたことは分かっていない。

各ワクチンの1回目および2回目接種後の効果

ワクチン1回目14日後から2回目接種まで2回目接種の7-14日後
ファイザー93% (69–98%)95% (90–98%)
モデルナ92% (69–99%)94% (89–97%)
アストラゼネカ76% (59-86%)67% (57-74%)
Public health statement on deferral of second dose of COVID-19 vaccine in BC

ワクチン接種後もマスク着用など感染防止策は必要

 ワクチンを接種しても新型コロナに感染することもある。ただし、その場合、病状が重篤になる可能性は低いという。

 ワクチンを接種したあと、新型コロナのような症状が出た場合は、BC self-assessment toolでPCRテストを受けるべきか判断することを求めている。

 接種後も感染の可能性があることから、これまで同様に手を清潔に保つ、物理的距離(Physical Distance)を保つ、マスクを着用する、体調が悪いときは外出しない、州の公衆衛生命令を守るなどが必要とされている。

ワクチンの種類を選ぶことができるか?

 現在のところ、接種を受ける新型コロナワクチンを選ぶことはできない。ほかの予防接種のワクチンの種類を選ぶことができないのと同じ。

69歳ですが、今年の誕生日で70歳。69歳枠で接種申し込みができるでしょうか?

 ワクチン接種の年齢区分は今年誕生日を迎える年齢(生まれた年)を適用する。現在69歳でも今年70歳になるなら、70歳の人が接種予約を始めるときに申し込む。

新型コロナに既に感染しました。ワクチン接種は不要でしょうか?

 Immunize BCのウェブサイトでは、コロナ感染歴があってもワクチン接種を受けることを勧めている。ただし、感染して自己隔離中の人、感染して体調がすぐれない人は、隔離終了、もしくは回復するまでは接種を受けない。

 また、ワクチン供給量が限られていることから、回復してから3カ月は接種を待つことが求められている。

ワクチン接種後数日はアルコールを我慢?!

 計画発表当初、BC州政府ではワクチンを接種してから数日はアルコールを飲まないことを強く勧めていたが、現在「新型コロナワクチンとアルコールとの効果に関する研究はない」とトーンダウンしている。

 適度な量のアルコールの使用はワクチンの免疫反応にはマイナスの影響があると考えないというのが、現在の専門家の見解。(当初はアルコールは免疫反応に影響するためで、強い、長期的な免疫をつけるためにはアルコール摂取は避けるべきとしていた)

 厚生労働省の2月17日付け書類では「通常の生活は問題ありませんが、激しい運動や過度の飲酒等は避けてください」としている。
www.mhlw.go.jp/content/000740468.pdf

ワクチン接種の順番を他の人に譲れるか?

 今回のワクチン接種は年齢などによって順番が決められている。自分は接種を受けたくないが、たとえば家族は受けたい。でも、接種が先だという場合、接種の権利を譲ることができるかだが、答えは否。自分の順番が来るまで待つ必要がある。

ワクチン接種の時期を逃してしまった

 ワクチン接種の時期が来たけれど、体調を崩して受けられなかった。あるいはそのときは受けたくなかったが、気が変わって接種してもらいたい…、そういう場合もBC州ではワクチン接種を受けることはできる。

 予定されている時期より前に受けることはできないが、後になるのは構わない。

インフルエンザなど他のワクチンとの接種

 肝炎、インフルエンザ、HPV(子宮頸がん)など他のワクチンの接種を受けても、あるいは受ける予定があっても、新型コロナワクチンの接種を受けることはできる。

 しかし、副反応が現れたときどちらのワクチンによるものか見極めるためにも、異なるワクチン接種は2週間以上後に行うことを推奨している。

mRNAワクチンがヒトのDNAを変えることはない

 mRNAワクチンがヒトのDNAを変えるのではないかという懸念を示す人がいるが、そのようなことはないという。

 Immunize BCの新型コロナワクチンのウェブサイトでは、その根拠としてアメリカVaccine Education Centerのポール・オィット博士の説明が紹介されている。  

 ・DNAは細胞核内で守られていて、mRNAは核に入ることができないため、DNAを変えることはできない。  
 ・mRNAはDNAではないため、ヒトのDNAを変えるときにはRNAをDNAに変換する必要がある。RNAをDNAに変換するには、一部のウイルスにのみ存在する特定の酵素が必要だが、コロナウイルスにはその酵素が含まれていない。

とする。

 田中医師も「mRNAは遺伝子ではありません。メッセンジャーとしてタンパク質を作る青写真すなわち設計図を届け、その結果、免疫ができます」という。

 「またmRNAはとてももろく、低温で保存が必要なのはそのためです。抗体をつくるとすぐに破壊されています」と、DNAを変えることはないとの考えを示した。

ワクチンにマイクロチップが含まれている?

 「ワクチンにはマイクロチップが含まれていて動向を追跡される」という人もいる。

 マイクロソフトのビル・ゲイツ氏がマイクロチップで、ワクチン接種した人の動きを追跡しようとしているというものだ。

 「慈善活動に熱心なゲイツ夫妻がアフリカなどの途上国で予防接種を行っていて、誰に何を接種したかを管理することが難しく、マイクロチップの使用を検討していることから、そんな話が出てきたようです。

 また新型コロナウイルスワクチンに特別なインクを入れて誰がワクチンを受けたかわかるようにするリサーチが、Gates Foundationから資金を得ていると聞いて、マイクロチップに結び付けて考える人もいるようです」と田中医師は語った。

 「検討しているのは、マイクロチップをワクチンとは違う場所に入れて、その情報をあとで機械を使って見るようにするというものです。マイクロチップの技術は今でも例えばペットのために使われていて、うちの犬にも入れてあります。マイクロチップは米粒ぐらいの大きさで、注射には入りません」

 「つまりワクチンの中にマイクロチップを入れることはできません」
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC526112/ (アメリカ国立衛生研究所・国立医学図書館)

早すぎたワクチン開発?

 パンデミックが始まって1年以内に開発された新型コロナワクチンについて、不安に思っている人は多い。州政府は新型コロナワクチンに関するウェブサイトで、「あらゆるカナダ人に対しての安全性と有効性を確認した上で、規制や承認プロセスを全てクリアした」として安心を呼び掛ける。

 田中医師も「ワクチンの開発があまりにも早くて心配だという話をよく聞きます。でも、たとえばモデルナ社は新しい会社ですが、10種類ほどのワクチンの開発を進めていてデータは既にありました。新型コロナウイルスのワクチンは急いで作る必要があったため、多くの政府や企業が資金を出しています。こんなに早くワクチンができたのはそのおかげです」と説明する。

 「今回のワクチン開発では、治験・研究期間は数カ月しかなかったので、今のところ長期的なデータはありません。でも、BCCDCのウェブサイトにも書かれていますが、たいていのワクチンの副作用は6週間以内に出るそうです」 

心配な場合は医師に相談

 前編でも紹介したが、Canadian Society of Obstetrics and Gynecology:SOGC(カナダ産科婦人科学会)、National Advisory Committee on Immunization(予防接種に関する全国諮問委員会)、BC州の公衆衛生の専門家は、妊娠中や妊娠したい人、授乳期の人もワクチン接種を安全に受けることができるという考えを示している。

 ただし、心配や質問がある場合は医師への相談を推奨している。

 Immunize BCのウェブサイトで新型コロナワクチンに関する質問を受け付けている。https://immunizebc.ca/ask-us

*記事は3月25日の時点でのBCCDCとBC州政府の情報に基づく。

(取材 西川桂子)

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