薬物中毒対応への公衆衛生緊急事態宣言から5年、コロナで事態は悪化

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州が違法薬物過剰摂取による死亡者数増加を食い止めるために発令した公衆衛生緊急事態宣言から5年となった。

 当時のBC州衛生管理局長ペリー・ケンダル博士により、2016年4月14日に発令された。全国でも初の試みで、これにより公衆衛生法に基づいて州の保健担当者が緊急権を行使することができるようになった。

 それが功を奏してか、2019年には違法薬物の過剰摂取による死亡者は減少へと転じたという。しかし2020年新型コロナウイルス感染が拡大すると事態は悪化した。

 BC検視局は14日、5年間で違法薬物使用による中毒死亡者は7,072人と発表。2020年だけで1,742人と最悪の数字となった。2021年に入っても1月、2月で329人が命を落としているという。

 新型コロナ感染拡大で人との接触を制限されているため、出回っている違法薬物を一人で使用する中毒者が急増したという。BC州では薬物中毒者が、安全な薬物を看護師などの専門家を常駐した施設で使用できるよう対策を講じている。違法薬物による死亡者を減らすのが目的。しかし、新型コロナがこうした薬物使用施設の利用を困難にし、サポートネットワークの規模も小さくなったため、頼るところがなく死者が急増したと説明した。

 昨年はBC州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士も、機会があるごとに一人で薬物を使用しないよう、すぐに助けを呼べる人がいるところでのみ使用するよう呼び掛けていた。

 特に影響が大きかったのは先住民族コミュニティで、First Nations Health Authority(FNHA)の同日の報告によると、2020年1月から5月までに、89人の先住民が違法薬物中毒により死亡し、2019年の同時期と比較して93パーセント増加したという。先住民族がBC州人口の3.3パーセントなのに対し、この期間の薬物中毒死では16パーセントを占めている。

 FNHA局長シャノン・マクドナルド博士は、公衆衛生上の緊急事態を宣言して5年がたってもオピオイド危機が先住民族に大きな影響を与えているという事実は、この危機を解決するために必要な対策が不十分であることを明確に示していると語った。

 BC州政府は同日、違法薬物過剰中毒死を防止するための対策に3年で4500万ドルを投じると発表した。これは2020年8月に発表した支援を延長し、拡充するもの。

 これにより、公的薬物使用施設の新設・拡充や、依存症治療薬を処方できる看護師の採用、ソーシャルワーカーらの採用を拡大できるとしている。

 BC州メンタルヘルス・依存症対応大臣シーラ・マルコムソン氏は、少量の薬物所持に限り「非刑罰化」を実現して薬物中毒者の精神的な負担を減らすことが必要と語った。

 そのための課題は、薬物単一所持の定義、許容される薬物量の決定、非刑罰化をサポートするための法執行機関、医療、社会サービスの準備体制の確保という。

 BC州政府はカナダ保健省と規制薬物法の免除について話し合いを続けていると説明した。

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