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「クロード・ヴィヴィエ」音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第34回

はじめに

 日加関係を応援頂いている皆さま、音楽ファンの皆さま、こんにちは。

 4月の声を聞くと春の訪れをイメージしますが、今年のオタワは違います。温暖化の時代とは思えず、4月になっても真冬に逆戻りする日もあります。さすが、世界で最も寒い首都の一つです。とは言え、街を覆っていた雪も徐々に溶け出し、樹木も目を凝らして見れば蕾が膨らみ始めています。厳しい冬の後の春は喜びもひとしおです。

 さて、今回の「音楽の楽園」は、カナダが生んだ現代音楽の鬼才クロード・ヴィヴィエです。移民立国のカナダを体現するモントリオール出身。出生の瞬間から旅路の終焉まで正に波瀾万丈そのもの。「事実は小説より奇なり」を体現したような人生を生きました。アンブローズ・ピアスの『悪魔の辞典』が芸術家について「法律を巧みにかいくぐる術に長けた者」と定義していたことを思い出します。

 クロード・ヴィヴィエは、弱冠34歳で夭折した天才。現代音楽の巨匠カールハインツ・シュトックハウゼンの下で学びましたが、師の作曲技法を消化・吸収し、誰にも似ていない唯一無二の個性を確率しました。日本にも短期間滞在し、東洋的な要素を絶妙に取り入れているのもヴィヴィエの真骨頂です。短期間に本格的な作品を40以上残しています。どれも時代の先を行く真の前衛。没後、急速に評価が高まりました。代表作は、「ソプラノと管弦楽のための《みなし児(Lonely Child)》」です。現代と伝統、東洋と西洋が交差する音楽の斬新な響きに満ちています。今なお、美しく刺激的です。

 それでは、クロード・ヴィヴィエの辿った音楽的冒険を追体験しましょう。

1948年4月14日〜モントリオール

 クロード・ヴィヴィエは、1948年4月14日、モントリオールに誕生したと記録されています。但し、両親については姓名・人種等一切不明です。と言うのも、誕生直後にカトリック教会が運営する孤児院に置き去りにされたからです。その段階では、名も無き赤ん坊でした。教会により、クロード・ロジェと名付けられ、孤児院で養育されます。そして、2歳半の時に、詳しい経緯は分かりませんが、モン・ロワイヤル公園の側のマイルエンド地区の労働者階級のヴィヴィエ家に養子として引き取ら、クロード・ヴィヴィエとなりました。

 すくすく成長すると期待されていたものの、言葉を話さなかったため特別養護施設への通院も一時は検討されたようですが、6歳になる頃、話し始め健常者だと判明し、養父母はほっとしました。ところが、それも束の間、クロードが8歳になる頃、同居していた養父母の伯父から性的虐待を受けていたことが発覚します。教会の懺悔で、クロードが告白したからです。しかし、養父母は、クロードが嘘をついていると激怒したと言われています。

 この一件以来、家族関係がギクシャクし始めたと云います。同時に、クロードの自我が芽生え、人格が形成されていくのです。

思春期

 1961年、13歳になったクロードは、1817年に創設された名門のカトリック寄宿神学校、マリスト・ブラザーズ校に入学します。ここは、基本的には聖職者養成機関で、質の高い教育で知られていました。クロードは全ての科目で非常に優秀な成績を残します。中でも特に文学と言語学そして歴史に強い関心を示します。アルチュール・ランボーの詩に感銘を受け、ラテン語やギリシャ語も勉強しました。また、ドイツ史に強く惹かれ、ドイツ語も堪能でした。この頃、クロードは友人に、自分の両親はドイツ或いは東欧出身のユダヤ系で音楽家だ、と話しています。如何なる根拠があったのか分かりませんが、後年ドイツへ留学していることを思うと、血脈の影響があることを感じさせます。

 また、マリスト・ブラザーズ校在学中に、クロードは自分が同性愛者であることに気付きます。1960年代のカナダでは、今と全く状況が異なっていて、同性愛はカナダ刑法に云う「重大な不品行為」として処罰の対象でしたし、社会的にも同性愛への偏見は根強かったのです(この状況が変わるのは、ピエール・トルドー首相の登場を待たねばなりません)。それでも、モントリオールは、カナダの中では突出して文化的に多様でゲイ・サブカルチャーが存在していたと言われています。秘密裏に運営されるゲイ・バーやサロンもあったそうです。とは言え、10代のクロードが性的指向を表現するのは極めて困難な社会状況だったのは間違いありません。そんな孤独や葛藤や渇望が音楽を求める本能と化学反応を起こしたのかもしれません。因みに、クロードは18歳の時に、自分が同性愛者であることを告白しています。

音楽への目覚め

 そこで、クロード・ヴィヴィエの音楽についてです。彼の音楽的原点は教会でした。養父母に連れられて参加した礼拝で聴いた聖歌隊の合唱は、声と歌への憧憬を深めます。パイプオルガンの荘厳な響きが幼きクロードの中枢に深く刻み込まれたのです。特に、クロード10歳の時、1958年12月24日のクリスマス・イブの深夜ミサで聴いた聖歌が決定的で、「その瞬間に何かが自分の中で開かれた」と後年語っています。

 上述のとおり、ヴィヴィエ家の家庭環境は決して望ましいものとは言い難かった訳ですが、クロードは音楽への強烈な関心と非凡な才を垣間見せます。養父母は、クロードのためにアップライト・ピアノを買い、時折ピアノ・レッスンにも通わせました。

 マリスト・ブラザーズ校は、カトリック教義を核にしていましたから、ミサ、晩課、グレゴリオ聖歌が日常的に演奏される環境でした。音楽は宗教的実践の不可分の一体だったのです。一方、教育カリキュラムとしての音楽教育は限られていました。そんな中、クロードは、ほぼ独学で音楽について学びます。特に、モーツァルト、チャイコフスキー、バルトーク、シェーンベルグの音楽に魅了されました。作曲も始め、仲間に聞かせていたと言います。また、地元のバレエ教室でピアノの伴奏をしたり、音楽を教えたりしました。また、パイプオルガンの音色に魅せられ、パイプオルガンが設置されている地元の教会を訪れては、ミサの伴奏をさせてもらうようになったといいます。

 マリスト・ブラザーズ校は聖職者養成学校だったにもかかわらず、クロードは音楽にのめり込みます。同時に、クロードの性的志向はカトリックの寄宿舎学校では全く容認されませんでした。結局、放校処分を受けました。クロードは、音楽への道を模索します。生活費を稼ぐために、地元のレストラン等でアルバイトをしたそうです。

モントリオール音楽院

 1967年秋、クロード・ヴィヴィエは、晴れて名門モントリオール音楽院に進学します。専攻は、ピアノと作曲です。作曲は、フランス現代音楽の巨匠オリビエ・メシアンの高弟ジャイルズ・トレンブレイ教授に師事します。トレンブレイ教授は、作曲には無限の可能性があり、特定の時代の技法ではなく全方位的に学ぶべきとの信念を持っていました。ヴィヴィエは、グレゴリア聖歌、バッハからアルバン・ベルグまで500年を優に超える時間軸で音楽の真髄に迫り学びます。ヴィヴィエは、授業の後も廊下でトレンブレイ教授を質問責めにしたとの逸話が残っています。ヴィヴィエの関心の核心は、旋律を如何に活かすかだったと言います。ハーモニーとリズムと音色を駆使し、誰も到達したことのない境地に音楽を導くのがヴィヴィエの野望だったのでしょう。

 この頃、ヴィヴィエが音楽を学んだのは音楽院の閉じた空間だけではありませんでした。自由な気風に溢れるモントリオールでは、世界最先端の音楽を紹介するコンサートも頻繁に開かれていました。そして、ヴィヴィエは生まれて初めてシュトックハウゼンの前衛音楽に触れ、衝撃を受けます。1968年のことでした。

 音楽院の内外から刺激が、ヴィヴィエの創造中枢の爆発への導火線を発火させます。ヴィヴィエの最初期の本格的な作品「ソプラノ、クラリネットと打楽器のための《オジカワ》」も発表されます。20歳の自画像と言ってよいでしょう。大いなる可能性を感じさせます。トレンブレイ教授は、ヴィヴィエの良き理解者でした。巨大な才能の原石の発見者にして親友となりました。教授の強力な推薦もあって、ヴィヴィエは、カナダ芸術評議会から奨学金を得ます。そして、欧州へと飛び立ったのです。この時、23歳です。

ヨーロッパにて

 1971年から73年まで3年間、クロード・ヴィヴィエはクラシック音楽の本場たる欧州に留学します。疾風怒濤の1960年代を経て、欧州は大きな変革の真っ只中にありました。グレゴリア聖歌、ジョスカン・デ=プレ、ヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデル、モーツァルト等々、古典音楽を育んできた欧州は、今や全く新しい革命的な音楽の揺籃の地です。ヴィヴィエは、現代音楽を牽引する3人に師事します。

 まず、国立パリ高等音楽院で指揮者・作曲家のポール・メファノに師事します。特に、詩・言葉と音楽の深淵な繋がりを探求しました。次にユトレヒトにあるハーグ王立音楽院付属ソノロジー研究所でゴッドフリード・マイケル・コーニングに師事します。この研究所は、最先端の電子音楽を主導していました。最新技術と音楽の関わりを体得する絶好の場でした。

 最後に、ケルン音楽院です。ここでは、20歳のヴィヴィエに強烈な霊感を与えた稀代の作曲家シュトックハウゼンが教鞭を取っていたのです。彼にとっての欧州留学の核心です。希望に胸を膨らませるヴィヴィエでした。しかし、シュトックハウゼンは、課題に対しヴィヴィエが書いた楽曲を評価せず、弟子入りを断ったと言います。ショックを受けるヴィヴィエですが簡単には諦めません。最終的には、受け入れられ、1972年から2年間、ここで、シュトックハウゼンの音楽・美学・思想を徹底的に学んだといいます。作曲技法だけではなく、音楽に直結する時間と空間と音響の関係性、更には曲づくりの背景と骨格をつくる思想です。ヴィヴィエにとっては、誰の真似でもない自らの音楽世界を構築する上で極めて重要な土台となるのです。一方、シュトックハウゼン教授はと言えば、ヴィヴィエに関して好意的コメントすることはなく、評価は総じて高くはなかったそうです。師弟関係は、決して一筋縄ではいかないという事でしょうか。

モントリオールの新進気鋭

 1974年、3年間に及んだパリ、ユトレヒト、ケルンでの実り多き留学を終えて、ヴィヴィエはモントリオールに帰還します。作曲家としての内実は充実しましたが、一般には無名です。市内のアパートの賃料も安くはありません。地元の音楽学校で教師をして生活費を稼ぎながら、新進気鋭の作曲家としての道を歩み始めます。

 やがて、大きな転機が訪れます。CBCがヴィヴィエにカナダ国立青少年管弦楽団のための新曲の作曲を委嘱して来たのです。結果、生み出されたのが、代表作の一つ「シッダールタ」です。シッダールタは仏陀のことで、ヘルマン・ヘッセの小説『シッダールタ』にインスパイアされたものです。真理を探求し精神的覚醒に至る旅路を描いた物語に呼応するような楽曲です。ヴィヴィエ自身は「自分自身の声を見出そうとした時期」の作品だと述べています。シュトックハウゼンの重力圏から離れ、ヴィヴィエ流の音楽美学を確立する記念碑作品と評されています。実は、生前は演奏される機会はなく、没後9年を経た1992年にケント・ナガノがモントリオール交響楽団を指揮して初演しました。様々な打楽器を活用し変幻自在なリズムと多彩な音色が観客を魅了し、圧倒的な成功でした。

中東アジア紀行

 ヴィヴィエは、1976年から77年にかけて、エジプト、日本、イラン、タイ、シンガポール、バリを訪れています。欧州とは全く異なった文化的・歴史的な空間に身を置いたのです。それぞれの国で独自に発展して来た音楽について学び、吸収し、それをヴィヴィエ的な作曲語法の中に昇華させていきます。バリではガムラン音楽の影響を受けました。

 日本では、雅楽、仏教音楽、能、声明、歌舞伎等に触れています。間を大切にする独特のリズムの感覚や和楽器的な音色が代表作「ジパング」に滲んでいます。CDも出ていますし、YouTubeでも聴けます。現代音楽は苦手という方も、聴けば、東洋の響きの中に潜む音楽の驚きと喜びを感じられると思います。

パリ〜最終章

 1982年6月、クロード・ヴィヴィエは、パリに移住します。カナダ芸術評議会の奨学金を得て更なる音楽の高みを目指したのです。ヴィヴィエにしてみれば、現代音楽作曲家としてカナダで出来ることはやり尽くしたとの実感があったと言います。

 パリでは、基本的に創作活動に没頭していました。特に、チャイコフスキーの死を題材とした新作オペラに情熱を傾け、構想を練っていました。また、「魂の不滅を信じるか?」と題する新曲の作曲を始めていました。同時に、パリ高等音楽院関係者との交流もあり、正式な教授ではなかったものの、ケベックの音楽事情等についてアドホックに講義をしていたようです。

 一方、私生活は奔放で、頻繁にゲイ・バーを訪れていたことが知られています。夜な夜な行きずりの関係に溺れていたとも言われています。1983年1月には、そんな相手から暴行を受ける事件が起きます。友人たちは心配し、真剣に助言した訳ですが、ヴィヴィエの私生活は変わることはありませんでした。

 それでも、作曲家としては希望に満ちた将来が待っていたはずです。しかし、クロード・ヴィヴィエの生涯は、1983年3月7日、突然、終わります。パリの自宅アパートにて、その夜ベルビル地区のバーで出会った男娼に刺殺されたのです。嗚呼!

 葬儀は3月3日、パリのペール・ラシェーズ火葬場で行われました。そして、4月14日(ヴィヴィエの35回目の誕生日)、モントリオールの聖アルバート・ル=グラン教会において追悼式が行われています。

結語

 クロード・ヴィヴィエは、34年と11か月の人生航路をドラマチックに展開し生涯を終えました。彼の肉体が滅んで早くも42年が経ちます。一方、彼が残した音楽は時間の経過を経て輝きを増しています。

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

開幕の大阪・関西万博、「再生」がコンセプトのカナダ館が人気 開幕に間に合うも、名物の販売施設開業は「追い込みの作業中」

2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)の外観(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)の外観(大塚圭一郎撮影)
大阪・関西万博のカナダ館が夜間にライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)
大阪・関西万博のカナダ館が夜間にライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)

 カナダ政府は、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)で4月13日に始まった2025年大阪・関西万博にカナダパビリオン(カナダ館)を出展して人気を集めている。コンセプトを「再生」とし、拡張現実(AR)を通じてカナダの革新性と多様性、創造性、環境に配慮した社会を知ることができる。カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表は「来館者から高い評価をいただいている」と手応えを示す一方で、カナダの「名物料理」を買える販売店は「オープンが開幕に間に合わず、追い込みの作業を進めている」と打ち明けた。

カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)
カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)

AR技術でカナダ

上空から見た大阪・関西万博の会場。回廊が大屋根リング(大塚圭一郎撮影)
上空から見た大阪・関西万博の会場。回廊が大屋根リング(大塚圭一郎撮影)

 会場を囲んでいる全長約2キロの木造の回廊「大屋根リング」に面したカナダ館は、独自にパビリオンを出展した「タイプA」。氷をイメージした外観は、厳しい冬にできた川の氷が春の訪れとともに溶け出し、氷の断片が川の流れをせき止める自然現象「水路氷結」に由来する。

 入り口には「CANADA」の赤い英文字を設けており、来場者が文字の前で記念写真を撮影できるようにしている。

2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)の外観(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)の外観(大塚圭一郎撮影)

 入館するとタブレット端末を貸してもらうことができ、内蔵カメラを展示物などに向けると拡張現実(AR)の技術を用いてカナダの全10州・3準州が織りなす多様性や創造性、豊かな自然などが画面に映し出される。

 主要な展示室には氷のオブジェが並んでおり、そのうちの一つにタブレットのカメラを向けるとカナダ西部ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーの複合施設「カナダプレイス」と停泊するクルーズ船が画面に出現した。カナダプレイスの東館は1986年に開催されたバンクーバー国際交通博覧会のカナダパビリオンの跡だけに、ここでもカナダ館のコンセプトである「再生」を体現している。

ARで映し出されたカナダプレイス東館とクルーズ船(大塚圭一郎撮影)
ARで映し出されたカナダプレイス東館とクルーズ船(大塚圭一郎撮影)

 他にも最大都市のオンタリオ州トロントにある塔「CNタワー」(553・33メートル)、先住民による彫刻作品の制作、カナダが強みを持つ宇宙開発の様子などが浮かび上がる。

「実は未完成」の部分とは

 出口のある部屋にはパークスカナダ(カナダ国立公園局)のビーバーのキャラクター「パーカ」が待ち受けており、一緒に記念撮影をしてもらえる。パークスカナダが国立公園の絶景ポイントに置いている赤いいすも用意されている。

ステージの前に立つパークスカナダの「パーカ」(左、大塚圭一郎撮影)
ステージの前に立つパークスカナダの「パーカ」(左、大塚圭一郎撮影)

 出る際には、「スタッフたちの手作りだ」というメープルクッキーを振る舞ってくれた。ピーターズさんに「開幕に間に合わないパビリオンもある中で、よくオンタイムに完成できましたね」と話したところ、「実は最後の準備を進めている部分があります」と打ち明けた。

 フライドポテトにグレイビーソースとチーズカードをかけたカナダの名物料理「プーティン」やカナダ産のワイン、ビールなどの販売店を設ける予定だが、まだ開業していないのだ。ピーターズさんは「4月中の開業を目指している」と解説し、カナダに割り当てられた独自イベントの開催日「ナショナルデー」の5月17日には「絶対に間に合わせる」と強調した。

カナダ館の料理アドバイザー、フィル・キャメロンさん(大塚圭一郎撮影)
カナダ館の料理アドバイザー、フィル・キャメロンさん(大塚圭一郎撮影)

 ピーターズさんは「メープル味のソフトクリームも販売すれば人気を集めるのは間違いないので、用意できるかどうかを検討している」とも明らかにした。カナダ館の屋外には飲食用のテーブルといすを備えている。

 カナダ館の料理アドバイザー、フィル・キャメロンさんは「カナダには素晴らしい食材と質へのこだわりがあり、それが多様性に富み、優れた料理につながっている。カナダ館を訪れて確かめてほしい」とアピールした。

120人を超えるパフォーマーが登壇へ

カナダ館のステージ(大塚圭一郎撮影)
カナダ館のステージ(大塚圭一郎撮影)

 館内にはステージも設けられ、カナダの音楽家といった120人を超えるパフォーマーが登壇して幅広い演目を披露する。6月6月にはカナダ人ジャズピアニストの故オスカー・ピーターソン氏の功績をたたえて国立芸術センター交響楽団が演奏。7月にはカナダ人と日本人がストリートダンスのショーを披露し、8月には先住民アーティストに焦点を当てる。

 ピーターズさんに商談や会議、パーティーなどに使う空間「コラボレーションスペース」に案内していただくと、割りばしを再利用して製造したテーブル、壁に貼った再利用可能な木材パネルといった環境負荷低減に配慮した部材が広く使われていた。来場者が目にする展示でも、バックヤードでも、コンセプトの「再生」を徹底したカナダ館は、持続可能性を追求するカナダの真摯な姿勢が貫かれていた。

コラボレーションスペースにある割りばしを再利用して製作したテーブル(大塚圭一郎撮影)
コラボレーションスペースにある割りばしを再利用して製作したテーブル(大塚圭一郎撮影)

 大阪・関西万博の期間は25年10月13日まで。来場には、万博の入場チケットが必要となる。日本での大規模万博の開催は2005年の愛知万博(愛・地球博)以来、20年ぶりとなり、今回で6回目。過去最高の158カ国・地域が参加した。

パークスカナダの「パーカ」(右)と筆者
パークスカナダの「パーカ」(右)と筆者

(文・写真:共同通信社経済部次長〈前ワシントン支局次長、元ニューヨーク支局特派員〉・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者 大塚圭一郎)

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ホワイトが4得点でキャップス快勝、好調のカギは守りにあり

ホワイトが「キョウダイ(兄弟)」と呼んだ高丘。試合後のインタビューのあとで。2025年4月12日、BCプレース。撮影 日加トゥデイ
ホワイトが「キョウダイ(兄弟)」と呼んだ高丘。試合後のインタビューのあとで。2025年4月12日、BCプレース。撮影 日加トゥデイ

 バンクーバー・ホワイトキャップスが今季最多の5得点で快勝した。6勝はリーグトップ。もちろん西カンファレンス首位もガッチリ守った。

4月12日(BCプレース:17,931)

バンクーバー・ホワイトキャップス 5-1 オースティンFC

ホワイトキャップスは13分にFWホワイトが先制点をあげ1-0。38分にもホワイトが決め2-0。前半を2点リードで折り返した。後半に入り早々の47分にはFWサビがゴールして3-0。59分、83分と後半にホワイトが2得点して5-0。終了間際の90分に得点されたものの5-1の大差で快勝した。

開幕から好調のカギは守りにあり

 この日はFWホワイトが4ゴールと大爆発。ゴール前でホワイトがボールに触れるとゴールが決まる。そんな試合だった。オフサイドを取られたゴールも含めるとネットを揺らしたのは実に5回。「おもしろいように」の枕詞がこれほど似合うゴールシーンはなかった。

 本人は「チームはすごくいいリズムでプレーをしている。自分はたまたまゴールできるポジションにいて得点できてラッキーだった」と謙虚。これまで1試合4ゴールは自身初で最多得点という。「最も印象に残る試合になると思う」とうれしそうだった。大量点が目立った試合だったが「チームとしては今季はディフェンスがとても機能している」と分析。守りの堅さが好調の要因と語った。

 GK高丘にとって緊迫したシーンは前半の1対1になった場面に胸で止めたプレーくらいだった。常に余裕のあるプレーが目立った。ただ最後に相手のミドルシュートがエアポケットに吸い込まれるように右隅に決まり、「今年は特にチームとして(クリーンシート)にこだわっているので、そこはやっぱり悔しいです」と無失点にこだわった。

 守りは自分だけでなく「ディフェンスの選手やフォワードの選手もみんなでハードワークしてくれているので」とチーム一丸での堅い守りを強調した。

 今季チームが好調の理由については、監督が変わったことでやり方が変わったことや細かい部分まで詰めて、ミーティングでも確認して、コーチからも指導を受けるため、「そうしたことを一人ひとりが責任を持ってプレーしているのが大きいかなと思います」と語った。

 ソレンセン監督は試合後に「こういう試合をいつも期待はしています。(大差で勝つ試合は)選手たちに自信をもたらすし、ハッピーになるし」と笑顔を見せた。「今日は5点を2人で取ったわけですけど、ブライアン(ホワイト)が4得点して。それでも全員が好調なチームの一員として戦っていると感じられていると思うし、すごくハッピーです」と2選手で大量得点とは裏腹にチームで勝ち取った連勝を喜んだ。

 チームは19日にセントルイスでシティSCと対戦した後、バンクーバーに戻り24日にCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)チャンピオンズカップ(CCC)準決勝第1レグに臨む。相手はリオネル・メッシ率いるインテル・マイアミ。昨季はバンクーバーに来なかったメッシだが果たして今回は?注目の一戦となる。

4月、5月のホームゲームhttps://www.whitecapsfc.com/

4月24日(木)7:30pm インテル・マイアミ戦(CCC)
5月3日(土)6:30pm レアル・ソルトレイク戦 
5月11日(日)4:00pm LAFC戦 
5月28日(水)7:30pm ミネソタ・ユナイテッドFC戦 
5月31日(土)6:30pm ポートランド・ティンバーズ戦 

(取材 三島直美)

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尊厳死入門〜日本語で基本から学ぼう〜

概要:もし、いずれ身体の自由が利かなくなる不治の病の宣告を受けたら、どのような最期を迎えたいですか?

カナダでは、尊厳死(MAID/Medical Assistance in Dying)が、自由意志で選択する医療措置のひとつとして合法化されています。自らの尊厳を守り、希望するタイミングで人生の幕を下ろすことのできる選択肢とも言え、少しずつ周知されるようになってきました。皆様の身近にも、MAIDでご家族を見送った方がいらっしゃるかもしれません。

3回目となる今回は、MAIDについて日本語で詳しく聞くことのできる、とても良い機会です。

お見逃しなく。

日時:バンクーバー時間2025年4月25日(金) 午後7時から午後9時
               日本時間 2025年4月26日(土)午前11時から午後1時

場所:Zoom

スピーカー:ガーリック康子(DWDC・バンクーバー支部独立証人ポランティア)

ゲスト・スピーカー:Alex Muir(DWDC・バンクーバー支部長)

Dying With Dignity Canada DWDC):

1980年に草の根運動から発足した慈善団体。カナダの各支部の運営メンバーおよびボランティアが、地域社会でのMAIDの周知活動を行なっている。

参加費:$20

チケット購入リンク:https://www.eventbrite.ca/e/maid-101-tickets-1250415940739?aff=oddtdtcreator

こちらはクレジットカードでのお支払いになります。


注)  他のお支払い方法 (E-Transfer、小切手)をご希望の方は、下記の参加申込みリンクからお申し込みください。追って、参加費お支払い方法の詳細をメールさせていただきます。

参加申込みリンク: https://forms.gle/3WqHY7BLnHNdvzJG6

申し込み:2025年4月21日(月)まで

連絡先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会

協賛:Dying With Dignity Canada DWDC)

バンクーバー桜まつり「さくらデイズ・ジャパンフェア」今年は4月12日、13日に開催

Sunset Beach, Downtown Vancouver. Photo by Koichi Saito
Sunset Beach, Downtown Vancouver. Photo by Koichi Saito

 毎年3月から4月にかけてメトロバンクーバー各地でイベントが開催されるバンクーバー桜まつり。今年も3月30日にバンクーバー市デイビッド・ラム公園で行われた開会式で幕を開けた。

 中でも最も多くの人が訪れるのが「さくらデイズ・ジャパンフェア」。日本の伝統や文化を体験できるのが魅力で、毎年大人気。茶道や華道、書道などのワークショップや、和太鼓や三味線、空手などのパフォーマンス、風車作り体験などが楽しめるほか、もちろん日本のフードや日本酒などのグルメも満喫できる。

 今年の開催は4月12日(土)、13日(日)。

 メトロバンクーバーでは3月中旬ごろから約6万本の桜が咲き誇る。その始まりは1930年代初めに神戸と横浜の市長がバンクーバーに贈った500本の桜。それらはスタンレーパーク内にある日系カナダ人戦没者慰霊碑の周りに植えられた。

 さらにVancouver Cherry Blossom Festival のサイトによると1958年には当時の在バンクーバー日本国総領事館・田辺宗夫領事により「日加の永遠の記憶と友好」として約300本の桜が贈られたという。バンクーバーで咲く約4万3000本の桜は何らかの形で日本から贈られたと桜まつり発起人のリンダ・ポールさんが記している。

 いまやバンクーバーに春を告げ、市民から愛される、この町になくてはならない存在となった「日加友好の証」。その桜を愛でながら日本文化に親しむ2日間は格別かもしれない。

「さくらデイズ・ジャパンフェア」

日時
4月12日(土)午前10時~午後6時(最終入場は午後5時30分)
4月13日(日)午前10時~午後5時(最終入場は午後4時30分)

会場:バンデューセン植物園(5251 Oak Street, Vancouver)

料金

当日券(4月12日、13日)
大人 $26.00、シニア $21.00、子ども $11.00

*4歳以下は無料。バンデューセン植物園会員は割引あり。
*チケットは土曜日と日曜日の各日で購入する。
*入場には各日午前11時までは時刻に合わせた入場制を導入。

詳しくはウェブサイトを参照:https://vcbf.ca/festival/sakura-days-japan-fair/
その他のイベント情報などバンクーバー桜まつりのウェブサイトはこちら:https://vcbf.ca/

満開の八重桜と浴衣レンタルを楽しむ来場者。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa/Japan Canada Today
満開の八重桜と浴衣レンタルを楽しむ来場者。2024年4月14日、バンクーバー市。 Photo by Ayaka Furuakawa/Japan Canada Today

(記事 編集部)

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「The Last of Us」いよいよ、シーズン2の配信開始!

ペドロ・パスカル シーズン2からのワンシーン。The Last of Us / Photograph by Liane Hentscher/HBO
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 街中のいたるところで桜が満開、美しい季節に入ったバンクーバー。お天気の良い日にぼんやりと桜を眺めていると、世の中で起こっているいろいろな事をすっかり忘れて、穏やかな気持ちになれるから不思議です。自然の力って本当にすごいですよね。

 今回ご紹介するのは、映画ではなくドラマシリーズ。いよいよ、4月13日からシーズン2が配信開始となるHBO制作の「The Last of Us」。同名の人気ビデオゲームを基にしており、大ヒットしたシーズン1はエミー賞やゴールデングローブ賞などにノミネートされ、高く評価されました。

 物語は、寄生菌によるパンデミックで人類が崩壊した後の世界を舞台に、ゾンビ化した感染者や絶望的な状況と戦いながら生き延びようとする人々の姿を描きます。シーズン1では、娘を亡くした男ジョエルと孤児のエリーが感染症で荒廃した国を横断し、過酷な旅を続ける様子が描かれました。彼らの目的地は民兵組織が運営する病院で、エリーが持つ特異な免疫を使って感染症の治療薬が作られる可能性がある場所でした。

ベラ・ラムジー(左) シーズン2からのワンシーン The Last of Us/ Photograph by Liane Hentscher/ HBO
ベラ・ラムジー(左) シーズン2からのワンシーン。The Last of Us/ Photograph by Liane Hentscher/ HBO

 シーズン1から5年後の世界を描くシーズン2では、前シーズンでジョエルがエリーへの愛から下した決断が二人に与える影響と、その影響が波紋のように広がる世界を描きます。

 ゲームのことは知らなかったし、ゾンビ物も好きではなかったため、最初はそこまで興味がなかった私。でも、ゾンビと戦いながら続ける過酷な旅で築かれていく二人の絆や、他の登場人物たちの物語に見ごたえがあり、観始めたら止まりませんでした。全編を通して、生きる意味とか愛について深く問いかけられていた気がして、いろんな場面やセリフが心に残っているほどです。そして本当に怖いのはゾンビではなく人間なんだ、とも思ったり。

 現在大人気のペドロ・パスカルが演じる主人公のジョエル。単なる強い男ではなく、過去の痛みを抱えながら生きる人物で、無口で時に非情だけど実は弟と娘への深い愛情を持っています(こんな渋いオヤジ役がぴったりなペドロ・パスカルが人気なのも納得です)。対するエリーは、過酷な状況に置かれながらも、運命に立ち向かってゆく強さを持つ少女。ベラ・ラムジーがエリーのユーモアや素直さ、人間的な成長を生き生きと演じます。そんな二人が、時に弱さも見せながらもガンガン戦い、そして生き抜く姿は、観るものを魅了するし、応援せずにはいられません。

 シーズン2…どうなるんでしょうか…。「かなりダークな展開」というゲーム好きの友人の助言があったのでネタバレは一切検索せずに観る予定です!

 バンクーバーで撮影されたシーズン2(シーズン1はアルバータでの撮影でした)。ガスタウンやイエールタウンでは、ペドロ・パスカルを見かけた!というラッキーなファンもいたようですね。見覚えのある風景が写っているのか探してみるのも楽しみです。

 バンクーバーでは4月13日からCraveで配信されます。

By Courtesy of HBO
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Lalaのシネマワールド
映画に魅せられて

バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。第1回からはこちら

Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
みなさん一緒に映画観ませんか!?

第23回 夢を叶える旅路も、終活の豊かな形の一つ ~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

こんにちは!この原稿は日本で一時帰国中(もうすぐカナダに帰ります)に書いています(このコラムが出る頃には、時差ぼけで苦しんでいる頃でしょう)。

今回はなんと6週間も滞在したので、私の「死ぬまでにやりたい100のリスト」に書いた夢や希望を、おかげさまで沢山叶えることができました。健康と家族や職場を始めとする周囲の理解と協力があって初めて実現できたことです。本当にありがたいことだと感じています。

春と言えば、桜。今年は日本では開花が遅く、私は満開の桜を旅の後半の長崎で見ることができました。バンクーバーの桜も日本の桜に負けないぐらい素晴らしいですよね。みなさんも今年の桜を楽しまれましたか?

実は「死ぬまでにやりたいこと」を一つずつ叶えていく行為は、終活の重要な一部なのです。終活というと、遺言書の作成や財産整理など、人生の終わりに向けた準備と思われがちですが、1度きりの人生を悔いのないように楽しむことも大切。

長年抱いてきた夢を叶え、やり残したことや、やりたかったことに挑戦し、心の充足感を得ることは、人生を豊かに締めくくるための大切な過程です。私自身、日本滞在中に叶えた小さな夢の数々が、確かな充実感と共に心に刻まれています。

でも、「死ぬまでにやりたいこと」は、一体どうやって実現すればいいのでしょうか?私が実践している小さな一歩をご紹介します。

まず大切なのは、具体的に書き出すこと。「いつか行きたい」ではなく「来年の春に行く」など期限を決めるだけで、夢は現実に近づきます。今回、実現できた長崎への旅も、1年前に書いたリストの中の一つでした。

次に、身近なところから始めること。行きたいところがあれば、まずは身近な近郊から始めて、徐々に遠くの夢へと歩みを進めるのもよいでしょう。

そして何より大切なのは、周囲に夢を語ること。「こんなことをしたい!」と周りに話すと、思いがけない協力や情報が集まってきます。私の今回の長めの日本滞在も、私の旅行プランに配偶者が難色を示すことなく、2つ返事で「行ってこい」と背中を押してくれたこと、そして職場の上司が快くお休みを許可してくれたからこそ実現したのです。

高校生になったとはいえ、食べ盛りの息子2人を長い間ほったらかしにすることには周囲の人が驚いたり、心配されたりもし、正直、私自身も罪悪感がなくはなかったのですが、母親だからと我慢したくないっ!やりたいことができるうちにやる!そしてその姿を見せることはプラスになれどマイナスにはならない!と信じ実行に移しました。

海外に暮らす私たちだからこそ、二つの文化の狭間で育んだ独自の「死ぬまでにやりたいリスト」がある気がします。それを一つずつ叶えていくことは、わくわくして、とーっても楽しい。そんな終活の形もあることを是非、覚えていてくださいね。

カナダに住む私たちには、日本の故郷を訪ねる旅や、昔からの友人との再会、懐かしい味を味わうなど、日本にルーツを持つからこその願いや希望があります。同時に、カナダの壮大な自然を満喫したり、多文化社会ならではの体験を深めたりする夢もあるでしょう。二つの国に心を寄せる私たちだからこそできる「やりたいこと」は無限大です。

実は、リストを書き出してみると、案外と手が届く距離に夢があることに気づくものです。「いつか」と思っていた場所が、実は週末のドライブ圏内だったり。昔から食べてみたかった料理が、実は家の近くのレストランで提供されていたり。書き出すことで、身近な幸せが見えてくるのも不思議です。

こんな小さな一歩の積み重ねが、やがて人生を振り返ったときの大きな満足感になります。今日から、あなたも「死ぬまでにやりたいこと」を一つずつ実現するために、「やりたいことリスト」を作ってみてはいかがでしょうか?

リストを作り始めるなら、まずは10個から。難しく考えず、心が躍ることを書き出してみてください。そして、一番実現しやすそうなものから、小さな一歩を踏み出してください。その先に広がる喜びの世界が、あなたの人生をさらに輝かせてくれるはずです。

*このコラムへの皆様からのご質問やご感想もお待ちしております。このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

グローバルライフデザイナー
2015年、友人の孤独死と相続問題をきっかけに、カナダのバンクーバーで遺言・相続専門の弁護士アシスタントとしてキャリアをスタート。2020年には終活アドバイザー資格を取得し、終活の視点を取り入れた知識と実務経験を活かしたノート術とコンサルティングを提供しています。
「終活せずに困った!」という後悔の声を「やってて良かった」「ありがとう」と笑顔で未来を彩ることをライフワークとしており、これまで300名以上に国境を越えた安心感を届けています。国内外問わず、すべての人が大切な未来をデザインできるようサポートしています。 家族はカナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。日々の活動や最新情報は、メルマガ、ブログ、SNSで発信中。

メルマガ:https://www.shukatsu.ca/mailmagazine
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著書「海外在住日本人のための50代からの終活」:​​https://a.co/d/ad4OeLw

カナダ専門家に聞く「どうなるカナダ総選挙」

改修工事中のカナダ国会議事堂。オンタリオ州オタワ市。2025年4月3日。撮影 日加トゥデイ
改修工事中のカナダ国会議事堂。オンタリオ州オタワ市。2025年4月3日。撮影 日加トゥデイ

 現在連邦選挙戦真っただ中のカナダ。自由党と保守党の一騎打ちと言われる中、新民主党(NDP)、ケベック連合党、グリーン党も各地で党の主張を展開している。

 投開票が4月28日に迫るカナダ連邦下院総選挙について、カナダ政治に詳しい愛知大学法学部教授岡田健太郎氏に聞いた。

今回のカナダ総選挙をどう見ているか?

 30年近くカナダ政治を見てきたが、このような選挙を見るのは初めて。建国以来カナダにとって「アメリカ」は常に大きな存在であり続けてきたが、ここまで直接的にその存在が圧力として感じられる中での選挙は近年では珍しい。激烈な「外圧」が選挙戦とその結果に大きく影響するという状況は、最近のG7(先進7カ国)各国の選挙でも滅多にない。

 かつてピエール・トルドー首相はカナダを「アメリカという巨大なゾウの横で寝ているようなもので、寝返りやため息ですぐに目が覚めてしまう」と言った。しかし今の状況では横で寝ているというものではもはやなく、寝ていたらゾウが覆い被さってきて動けなくなり危険な状況だ。率直に言って異常な状況だし、誤解を恐れずに言えば、一国の選挙をめぐるこういう環境は本来あってはならない。有権者の判断に影響を与え過ぎる。

 外圧によって国民は団結するのは良いことのようにも思えるが、他方偏狭なナショナリズムを育て、これまでカナダが育ててきた、穏健で健全な民主主義を壊しかねない。対アメリカ政策というシングル・イシュー(単一の問題)の選挙になってしまい、他にも重要な政策がたくさんあるわけだが、それらが見えにくくなっている印象がある。

特徴や注目点はどのようなところか?

 外圧はコントロールしにくい。ましてやトランプ政権の行動は全く読めない。予測可能性がほぼゼロ。なので投票日まで何が起こり、何が影響するのか分からないというのが正直なところだ。

 現状では保守党は政治的安定性という点で疑問符がつく。トランプ大統領の再登場までは、保守党のフレッシュさを強調し、長きにわたったジャスティン・トルドー自由党政権の停滞(「安定」とも言える)を打ち破ってくれる、何か変えてくれるのかもしれないとの期待が大きかったし、保守党のポワリエブル党首も自らをポピュリスト的なイメージにもっていきトランプ大統領と重ねていた部分もあったが、それが今となっては裏目に出ているのは間違いない。

 連邦議会での党首討論の際の態度、議会の慣習や下院議長の指示をも無視するような振る舞いは、以前は古いカナダ政治に挑む若々しい、新しいイメージだったかもしれない。しかし今となってはそれらが横暴な振る舞いととられてしまっている。このような傾向は、かつての改革党の党首だったプレストン・マニング(Preston Manning)氏にもあった。野党時代は攻撃的なイメージでいいかもしれないが、そのイメージが強すぎると、今度はその刃が自分に向かってくる。今の時代の保守党にとってはなおさらだ。

 また保守党の議員には、かつてのハーバー政権での要職経験者はオンタリオ州選出のマイケル・チョン(Michael Chong)議員くらいではないか。ほとんどの議員が政権運営に慣れていない。アメリカに対峙しつつ政治的安定性を維持するには、今の保守党は不向きではないかというイメージが有権者のあいだにはそれなりにある。これまで政治経験の全くなかった人々が集まっているトランプ政権の閣僚たちの統一性のない、やりたい放題の振る舞いは、カナダの人々からすれば反面教師だし、恐怖でしかない。アルバータ州のダニエル・スミス州首相はたまりかねてトランプ大統領に選挙が終わるまでしばらく黙っていてほしいと進言したとされるが、こういうのも保守党が窮地に陥る原因だと思う。

 他方、自由党も盤石ではない。手堅い経済実務家のマーク・カーニー首相はこのような状況において政治的・経済的「安定」にとってはうってつけの逸材ではある。しかし問題はカーニー党首の登場によって、トランプ大統領がいなければ大敗が必至だった自由党と自由党的なものがただ「延命」するだけなのか、あるいは、自由党も時代の流れに応じてその立ち位置を大きく変化させるのかどうか、というところだ。

 現状では、トルドー政権の閣僚経験者がカーニー自由党の中枢を占めており、あまり変化はなさそう。今回の選挙を乗り越えて「延命」することだけが目的のようにも見える。現状、新しい斬新な政策というのは見えてこない。

 ただ、カーニー党首はその経済実務家としての並外れた能力への評価ゆえに、自由党支持者に多い高学歴層(弁護士や教員など)やLGBT政策に理解を示すリベラル層に加えて、これまで保守党を支持してきた穏健な、やや左寄りの人々の支持を得る可能性もある。政治経験のなさや、彼の朴訥とした、英語訛りのフランス語がケベック州でどのように評価されるのかといった点が不安定要素として残る。 

 忘れてはならないのが、カナダの国是である多文化主義の今後だ。アメリカと同様、移民や外国人労働者、外国人留学生への風当たりは強いままで、この点はアメリカと同じ。逆風のなかにある多文化主義がこの選挙を経てどのようになっていくのかにも注目している。

岡田健太郎(おかだ・けんたろう)

2001年東大法学部卒。同大学院、ブリティッシュコロンビア大学、トロント大学を経て2009年から2年間在バンクーバー日本国総領事館専門調査員(政務担当)。現在、愛知大学法学部教授。高校時代はバンクーバーで過ごした。昨年夏までの1年はレジャイナ大学(サスカチュワン州)に在籍した。

(記事 編集部)

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和の学校@東漸寺4月のお知らせ

こんにちは。

和の学校@東漸寺は、日本文化を学び継承する活動をしています。
親子で、お友達と、または新しいことを始めるためにおひとりでご一緒に楽しみませんか。

「フィルム向/殺陣教室」

4月6日、13日、27日 (日曜日)
午前10時~午後11時半 「殺陣*レギュラークラス」
午後12時~午後1時半 「殺陣*基礎クラス」

<参加費> 

❍レギュラークラス、基礎クラス
$23/回

「着付教室、着物ワークショップ/着物クラブ」

ご自分で着物を着て、お出かけしてみませんか。
初心者向けの着付け教室です。
着物及び帯や小物のレンタルもしております。(有料)
毎週日曜日 地下道場又は本堂にて
*日時について変更もございますので、その都度ご連絡をいただけましたら幸いです。

<参加費>

❍通常教室$25/回(グループクラス;最少人数3名)
*セミプライベートやプライベートクラスもございます。

❍レンタル着物&名古屋帯$30/回 レンタル浴衣&半幅帯$20/回 

「お寺de日本舞踊ワークショップ」

日時;4月6日(日曜日)
日本舞踊は、日本の伝統芸能の一つで、優雅な踊りやしぐさが魅力です。
日本舞踊の基本や挨拶の仕方、扇子の開き方、歩き方などを体験してみませんか?
ご希望の方には、浴衣レンタルもございます。

<参加費>

❍ワークショップ(子供&大人)
$10/小人(対象年齢:3歳~12歳) 無料/保護者(付き添い)
$20大人(13歳~大人)

❍浴衣レンタル

$10/小人 (対象年齢:3歳~12歳)$20/大人(13歳~大人)
*  担当講師は、『東漸寺』と『和の学校@東漸寺』への奉納舞として、講師料金をお寺に寄付してくださっています。

心より感謝申し上げます。

「茶話タイム」

午後12時~1時
(茶話タイム内では、各種お教室に参加された方同士の社交の場として、お愉しみください。着物クラブを同時開催することもございます。)
❍茶話タイム $5~ドネーション/教室への参加者は無料です。

<和の学校@東漸寺イベント及び各種教室のお申し込み*お問い合わせ>
和の学校@東漸寺TOZENJI コナともこ tands410@gmail.com
住所 209 Jackson street Coquitlam, B.C.
和の学校@東漸寺ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/

<バンクーバー日系人合同教会から4月のお知らせ>

  • バンクーバー日系人合同教会はすべての人に開かれた教会です。キリスト教会が初めてという方も大歓迎です。
  • 毎週日曜日午前11時から12時礼拝を行っています。聖書について話し、讃美歌を歌い、礼拝後は軽食を囲み交流の時を持っています。ワーキングホリデー、留学生の方々の情報共有も行われています。
  • 4月20日(日)はキリスト教の一番大事な祭りイースター(復活日)礼拝です。午前11時から日英語のバイリンガル礼拝が行われます。礼拝後は、一品持ち寄りのポットラックランチを行います。

 子どものプログラムも用意されています。礼拝前のイースターの話、イースター卵デコレーションおよびイースターエッグ探しが行われます。人数の確認のため、お子様の年齢を下記の連絡先にお知らせください。

  • オンラインZoomで聖書を読む会(火曜、水曜)があります。聖書を読むのが初めてという方もお気軽に参加できます。
  • ボランティアしてみませんか?
    ダウンタウンイーストサイドのホームレスの方々に配るサンドイッチ作りと配布のお手伝い。木曜日午前9時から教会でサンドイッチとコーヒーの準備、11時から11時半配布のボランティアをしてみませんか?(場所はカーネギーコミュニティーセンタ―横)
  • 教会で行われている会合の紹介
    合気道(火、木曜 午後6時半~)、カトレアコーラス(木曜午前10時~、Zumba(金曜午後5時半~)Line ダンス(土曜午前11時~)、沖縄友愛会(土曜午後7時)バトミントン(日曜午後7時から)、ピックルボール

詳しくはメールで問い合わせください。

  • 結婚、葬儀、その他の人生相談をお伺いします。

お問合せ:604-618-6491(テキスト可)、vjuc4010@gmail.com  牧師 イムまで

住所:4010 Victoria Dr, (Between 23rd and 25th Ave East), Vancouver

  • Zoom(ID 5662538165、パスコード1225)

ホームページ、Facebook “バンクーバー日系人合同教会”で検索

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サレーNorthwood 合同教会 日本語会衆 

4月20日(日)イースター礼拝 午後3時より。

住所:8855 156 St, Surrey, BC, V3R 4K9

お問い合わせ:604-618-6491(テキスト可)イム、kuniokazaki98@gmail.com 岡崎まで 

日系文化センター・博物館 & NNMCC活動補助グループ主催「日系センター 春のバザー」

5月3日(土)4日(日)
午前11時~午後4時
入場無料

人気の饅頭をはじめ、餃子やおにぎりの軽食や屋台ごはん、お持ち帰り用食品など、おなじみの味をお楽しみください。日系ガーデンでは、野菜の苗やお花などの植物を販売します。林ホールでは手作りクラフトのお買い物をお楽しみください。このイベントで得られる収益は、日系センターの日本文化普及活動と運営資金に活用されます。

Nikkei National Museum & Cultural Centre

日系文化センター・博物館
6688 Southoaks Crescent, Burnaby BC  V5E 4M7
604.777.7000
https://centre.nikkeiplace.org/events/spring-bazaar2025/

The Friend「彼の残した大きな愛」

2025 Mongrel Media/ Star PR
2025 Mongrel Media/ Star PR

 作家で教師のアイリス(ナオミ・ワッツ)はニューヨークで心地良くシングルライフを楽しんでいた。だがある日突然、いつも一緒に過ごしていた親友兼メンターのウォルター(ビル・マーレイ)が亡くなり、彼の大きな犬(150パウンドのグレート・デーン)アポロを預かることになる。

 ニューヨーク市のアパート現状、職場での葛藤、家を荒らす犬、彼への悲しみや怒りなど新しい問題だらけ。だが自分と同じように悲しんでいる犬を見て、自分に素直になり彼との時間を新たな小説に変えていく。

 監督はスコット・マッギーとデビッド・シーゲルで、原作は作家のシークリット・ヌーネス。見終わった後にジーンとなる感動映画。

2025年4月4日よりThe Park Theatre にて上映
言語:英語
120 分

2025 Mongrel Media/ Star PR
2025 Mongrel Media/ Star PR

(記事 Jenna Park)

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