ホーム 著者 からの投稿 Naomi Mishima

Naomi Mishima

Naomi Mishima
1548 投稿 0 コメント

7人制ラグビー・カナダセブンズ女子日本代表ベスト4に食い込む「小さい体でも勝てるラグビーを目指す」

逆転勝ちを喜ぶ日本代表。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
逆転勝ちを喜ぶ日本代表。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
執念の逆転勝ちに喜ぶ日本代表とぼう然とするアメリカ代表。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
執念の逆転勝ちに喜ぶ日本代表とぼう然とするアメリカ代表。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 バンクーバーで開催された7人制ラグビー世界大会カナダセブンズ。2月21日から23日までBCプレースで行われた白熱の戦いは、女子はオーストラリア、男子はアルゼンチンの優勝で幕を閉じた。

 女子日本代表は準々決勝でアメリカを破り準決勝に進出。今シーズンはドバイ大会での7位から、ケープタウンで6位、パースで5位と順調に順位を上げ、バンクーバーで初のベスト4入り。シリーズ総合順位も6位からカナダを抜いて5位に浮上した。

初日から強敵を倒し2連勝、準決勝ではアメリカに逆転勝ちでベスト4をつかみ取る

 初戦のフィジーに逆転勝ちすると、2戦目のイギリス戦では逃げ切って勝利した。2連勝で臨んだ2日目のプール最終戦ではプール最下位に沈んでいたフランスが本来の強さを見せ日本を圧倒。日本は2勝1敗としてプールC組2位で準々決勝に進んだ。

 相手はシーズンここまで4位の強敵アメリカ。前半を終えて7-5とリードしていたが後半立て続けにトライを奪われ逆転を許す。しかし13分、14分と連続トライで同点に追いつき、延長戦へ。17分に谷山がトライを決めて再逆転でアメリカを下し、準決勝への切符をつかんだ。

延長戦でアメリカに勝利する谷山のトライ。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
延長戦でアメリカに勝利する谷山のトライ。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 大会3日目、準決勝は初戦で勝っているフィジーとの対戦だったが、前半から圧倒され、最後まで追いつくことができず大敗。3位決定戦へと回った。相手はシリーズ総合2位のオーストラリア。幸先よく先にトライを奪ったものの前半で逆転を許し、後半に日本もトライを決めたが及ばず、メダルには手が届かなった。

 試合後、兼松由香ヘッドコーチは前大会より順位を上げることを今大会の目標にしていたと語り、「ベスト4に行きましたが、そこで満足せずメダルを取りに行きました」とオーストリア戦に臨んだという。スピードとパワーを持つ相手に対してのディフェンスに課題が残ったとは言え、これまでオーストラリアと対戦した時は全く自分たちのラグビーができなかったが「今回の試合の中では自分たちのスタイルでトライを取りきれたと思います」と収穫を語った。

このままトライを決めた梶木キャプテン。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
このままトライを決めた梶木キャプテン。アメリカ戦。2025年2月22日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 ベスト4は女子日本代表にとって初の快挙。梶木真凜キャプテンは「後半にしっかりと自分たちのアタックを継続して執念を持ってトライまで取り切れた」と今大会を振り返った。

「小さいから強い」小さいことを強みにするラグビーを構築する

 バンクーバーで男女同時開催になったのは2023年。女子日本代表は出場するも2023年は9位、2024年は10位と、ベスト8を目指しながらも一歩届かないシーズンが続いた。

 しかし今シーズンはここまで全て7位以上。兼松HCは日本人選手の体が小さいことは変えられないが「逆に『小さいけど』ではなくて『小さいから』強いんだ、自分たちが小さいことを強みにするラグビーというもの今構築しようとしています」と話す。

オーストラリアとの3位決定戦。2025年2月23日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
オーストラリアとの3位決定戦。2025年2月23日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 スピードとパワーが勝因の大きな要素を占める7人制ラグビーで「小さいから強い」を実現するために、「一大会、一大会でチャレンジをして、通用するところ、まだまだ改善しなくてはいけないところ」を積み重ねているという。そして「新たに自分たちの強みも大会ごとに見つかって、順位も一つずつ上がっています」。

 最終的な目標は2028年ロサンゼルス五輪でのメダル獲得としながらも、今シーズンは「ベスト8に入って(ロサンゼルスでの)グランドファイナルに進出することが当初の目標でしたが、こうして順当に順位を上げられているので次回の大会ではメダルを目指していけると思います」と香港、シンガポール大会を見据える。

 梶木キャプテンも「ベスト3、欲を言えば1位を狙えるよう戦っていきたい」と自信をのぞかせた。

2025年カナダセブンズ女子日本代表結果

プールC
日本 19-14 フィジー
日本 19-14 イギリス
日本 12-31 フランス

準々決勝
日本 22-17 アメリカ

準決勝
日本 7-28 フィジー

3位決定戦
日本 12-26 オーストラリア

準々決勝のフィジー戦。2025年2月23日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
準々決勝のフィジー戦。2025年2月23日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

合わせて読みたい関連記事

ACT Vol. 7「複数形の身体」トーキョーアーツアンドスペース本郷で開催、モントリオール出身アーティストも参加

マリオン・パケット《Corps commun (Common Body)》2025
撮影:髙橋健治 画像提供:トーキョーアーツアンドスペース
マリオン・パケット《Corps commun (Common Body)》2025 撮影:髙橋健治 画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

 「身体の複数性をテーマに、身体を起点とした表現を追求する」アーティスト3人の作品を紹介する「ACT(Artists Contemporary TOKAS)Vol. 7『複数形の身体』」がトーキョーアーツアンドスペース本郷で2月22日から開催されている。

 「他者との関係性をとおして変容していく身体や、ヴァーチャル空間における身体の複数化、社会というひとつの集合的身体など、さまざまな観点から現代における身体のあり様やその可能性を考察」するという展覧会に参加しているのは、マリオン・パケットさん、敷地理さん、庄司朝美さん。

 パケットさんは、1992年ケベック州モントリオール市生まれ、2015年ケベック大学モントリオール校ヴィジュアル&メディアアート学部卒業。2023年度二国間交流事業プログラム「ケベック」参加。2023年にTOKASのレジデンス・プログラムに参加した際には、「日本の公共空間で見られる『居眠り』という現象をリサーチし、どこでも簡単に個室の休憩空間を実現させる持ち運び可能な作品《inemuri -居眠り- dormir présent·e》を考案、公共空間に仮設的に出現させたプライベート空間によって、社会的な身体が突如、私的な身体へと変化する状況を作り出した」と紹介されている。

 モントリオールを拠点に活動し、「テキスタイルや紙など可塑性のある素材を用いた柔らかな彫刻作品を特徴とする」という。今展覧会では「生物の生態系を支える菌類のネットワーク『菌糸体』から着想された、大型のインスタレーション作品を展開」。3月23日にはクロージング・イベントでのパフォーマンスも予定されている。助成:ケベック・アーツ・カウンシル

ACT(Artists Contemporary TOKAS)Vol. 7「複数形の身体」

期間:2025年2月22日(土)~3月23日(日)
開館時間:11:00-19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷(東京都文京区本郷2-4-16)
入場無料
マリオン・パケットさんのパフォーマンス:2025 年3月23日(日)3:00pm、予約不要
ウェブサイトhttps://www.tokyoartsandspace.jp/archive/exhibition/2025/20250222-7387.html

(記事 編集部)

合わせて読みたい関連記事

バーナビー日本語学校 幼稚科体験会

【日 程】2025年4月2日 (水)

【時 間】午後4:30~6:00

【場 所】Lochdale Community School  (6990 Aubrey Street, Burnaby,  V5B 2E5)

【対象年齢】2〜4歳(2025年度のご入学は、年内に3歳以上になるお子様が対象です。)

【お申込み】https://forms.gle/5Jgb4oc4pSB6QP4Z8

【お問合せ】office@bjls.ca

ひな祭り茶会@東漸寺

和の学校@東漸寺

桃の節句

【ひな祭り茶会@東漸寺】

日本のお菓子とお抹茶をいただき、ひな祭りをお祝いしましょう。

日時:202532(日曜日)

午後1時〜午後2時

会場:東漸寺館内 (TOZENJI住所:209 Jackson street Coquitlam)

参加費:3⁄お子様 (6歳~13歳)   $5/大人 
(お菓子とお抹茶を呈茶で差し上げます)

お申し込み:Tomoko tands410@gmail.com

*皆様のお越しをお待ちしております*

<Tozenji Temple>東漸寺関係リンク

Japanese culutre school 和の学校@東漸寺Homepage
https://wanogakkou.jimdofree.com

Japanese culutre school 和の学校@東漸寺Instagram
https://www.instagram.com/wa_no_gakkou_tozenji

Japanese culutre school 和の学校@東漸寺Facebook
https://www.facebook.com/profile.php?id=100069272582016

Tozenji東漸寺Homepage
https://tozenjibc.ca

練香ワークショップ@東漸寺

同仁文化会と和の学校@東漸寺のコラボレーション

桃の節句

【練香ワークショップ@東漸寺】

日本の香りを楽しむ練香(ねりこう)を作りその歴史とアートについて学びませんか。

開催日時:202532(日曜日)

午前10時〜午後12時

(ワークショップ1時間30分、呈茶30分)

会場:東漸寺館内 (TOZENJI住所:209 Jackson street Coquitlam)

参加費:$50 (練香の材料、それに伴う道具、お菓子とお抹茶)
お申し込み:Tomoko tands410@gmail.com

講師:Maiko Behr先生

平安時代(794-1192年)から、日本では香り高い粉末状の原料を蜂蜜や梅肉と混ぜて練り、丸くまとめた「練香(ねりこう)」が作られてきました。

この形式の香は、直接燃やして香りを出すのではなく、間接的に熱して香りを聞きます。90分の実践型ワークショップでは、練香の歴史や日本におけるその利用方法について学んだ後、参加者は自分自身で香料を混ぜ、丸めて自宅に持ち帰るための香を作成します。

今回は香道京都泉山御流の調合による二種の練香「荷葉」と「竹生」をお持ち帰りいただけます。

練香は炭の粉を使って、直接手で丸めますので、練る過程でどうしても手につきます。手や布地から簡単に洗い流せますが、ワークショップには濃い色の衣服を着用されることをお勧めします。

*皆様のお越しをお待ちしております*

<Tozenji Temple>東漸寺関係リンク

Japanese culutre school 和の学校@東漸寺Homepage
https://wanogakkou.jimdofree.com

Japanese culutre school 和の学校@東漸寺Instagram
https://www.instagram.com/wa_no_gakkou_tozenji

Japanese culutre school 和の学校@東漸寺Facebook
https://www.facebook.com/profile.php?id=100069272582016

Tozenji東漸寺Homepage
https://tozenjibc.ca

<バンクーバー日系人合同教会から3月のお知らせ>

  • バンクーバー日系人合同教会はすべての人に開かれた教会です。キリスト教会が初めてという方も大歓迎です。
  • 毎週日曜日午前11時から12時礼拝を行っています。聖書について話し、讃美歌を歌い、礼拝後は軽食を囲み交流の時を持っています。ワーキングホリデー、留学生の方々の情報共有も行われています。
  • 第2日曜日3月9日午前11時から日英語のバイリンガル礼拝が行われます。
  • オンラインZoomで聖書を読む会(火曜、水曜)があります。聖書を読むのが初めてという方もお気軽に参加できます。
  • ボランティアしてみませんか?
    ダウンタウンイーストサイドのホームレスの方々に配るサンドイッチ作りと配布のお手伝い。木曜日午前9時から教会でサンドイッチとコーヒーの準備、11時から11時半配布のボランティアをしてみませんか?(場所はカーネギーコミュニティーセンタ―横)
  • 教会で行われている会合の紹介
    合気道(火、木曜 午後6時半~)、カトレアコーラス(木曜午前10時~、Zumba(金曜午後5時半~)Line ダンス(土曜午前11時~)、沖縄友愛会(土曜午後7時)バトミントン(日曜午後7時から)、ピックルボール

詳しくはメールで問い合わせください。

  • 結婚、葬儀、その他の人生相談をお伺いします。

お問合せ:604-618-6491(テキスト可)、vjuc4010@gmail.com  牧師 イムまで
住所:4010 Victoria Dr, (Between 23rd and 25th Ave East), Vancouver

  • Zoom(ID 5662538165、パスコード1225)

ホームページ、Facebook “バンクーバー日系人合同教会”で検索

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

サレーNorthwood 合同教会 日本語会衆 

3月16日(日)午後2時より。

住所:8855 156 St, Surrey, BC, V3R 4K9

お問い合わせ:604-618-6491(テキスト可)イム、kuniokazaki98@gmail.com 岡崎まで 

日本語認知症サポート協会「オンライン de Cafe・笑いヨガ」

「笑顔の力」を引き出そう〜「笑いヨガ」で、元気な心と体づくり〜

毎月、「笑いヨガ」を行っています。自宅にいながら参加できる、オンラインでのセッションです。初めての方も大歓迎。楽しく、一緒に笑いましょう!

日時:2025年3月20日(木)午後8時〜午後9時

会場:Zoom

参加費:初回無料、2回目からドネーション(e-Transfer、PayPalまたは小切手にて)

申し込み締め切り:2025年3月18日(火)

申し込みリンク:https://forms.gle/F41Gixkymq38rM5F9
*お申し込みいただいた方には、追って参加方法をご案内いたします。

お問い合わせ先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会(Japanese Dementia Support Association) http://www.japanesedementiasupport.com

バンクーバー・ホワイトキャップス2025年シーズンがまもなく幕開け、ホーム開幕はLAギャラクシーと対戦

随所に好セーブを見せたGK高丘。2024年10月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
随所に好セーブを見せたGK高丘。2024年10月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 MLS(メジャーリーグサッカー)バンクーバー・ホワイトキャップスFCの2025年シーズンが2月23日に開幕する。

 開幕戦はアウェイでカスケディアライバルのティンバーズとポートランドで対戦する。

 ホワイトキャップスには今年もGK高丘陽平選手が在籍する。ホワイトキャップスで3年目のシーズンを迎える。

ホーム開幕戦はLAギャラクシー、いきなり日本人対決実現か?

 ホームの開幕戦は3月2日。対戦相手は吉田麻也選手がキャプテンとして2024MLSカップで優勝したLAギャラクシーだ。

 昨季もバンクーバーで実現した日本人対決だが、今季はいきなり開幕戦でぶつかる。高丘選手は昨年のシーズンオフでのインタビューでは、同じリーグで日本人選手ががんばっているのは心強いと話していたが、ピッチの上では特に日本人対決は意識していないとも。それでもバンクーバーにいる日本人サッカーファンにとっては楽しみな一戦。

試合終了後に話す高丘とLAギャラクシー山根。同じ横浜市出身で少年時代から知っている仲という。LAギャラクシー戦。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
試合終了後に話す高丘とLAギャラクシー山根。同じ横浜市出身で少年時代から知っている仲という。LAギャラクシー戦。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 開幕戦でどんなプレーを見せてくれるのか、今季も期待がかかる。

ホワイトキャップス、ゴールキーパーを獲得

 昨季までのイタリア出身バンニ監督に代わって、今季からホワイトキャップスを率いるのはジェスパー・ソレンセン監督。デンマーク出身でこれまでデンマーク以外での選手経験も監督経験もないという。国際試合ではU-21のデンマーク代表監督を務めている。

 バンニ監督は積極的に日本語を覚えるなど高丘選手とも良好な関係を築いていただけに、新監督になってどのように変わるのか気になるところ。

 もう一つ気になると言えば、ホワイトキャップスがゴールキーパーを獲得したことだ。エイドリアン・ゼンデジャス選手(29歳)で、これまでアメリカとスウェーデンでプレーした経験を持つベテランGK。

 高丘選手と切磋琢磨してホワイトキャップスを盛り上げていくことを期待したい。

今年もアップルTVで放映

 MLSは今年もアップルTVで放送される。シーズン中にはカナダのスポーツチャンネルTSNで放送する試合もある。

 3月2日のホーム開幕戦は、アップルTV、TSNで放送される。キックオフは2pm。

ホワイトキャップス3月のホームゲーム

3月2日(日)2:00pm LAギャラクシー戦
3月8日(土)6:30pm CFモントリオール戦
3月22日(土)7:30pm シカゴ・ファイヤーFC戦

吉田選手と高丘選手。LAギャラクシーがBCプレースを離れる直前に。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
吉田選手と高丘選手。LAギャラクシーがBCプレースを離れる直前に。2024年4月13日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(記事 編集部)

合わせて読みたい関連記事

今年もバンクーバーで7人制ラグビー「カナダセブンズ」21日開幕、日本代表は男女とも出場

カナダセブンズ3日目、9位決定戦。日本対アイルランド。2024年2月25日、BCプレース・バンクーバー。Photo by Koichi Saito
カナダセブンズ3日目、9位決定戦。日本対アイルランド。2024年2月25日、BCプレース・バンクーバー。Photo by Koichi Saito

 毎年恒例となった7人制ラグビー世界大会HSBCセブンズのカナダ大会「カナダセブンズ」がバンクーバーのBCプレースで開催される。2月21日~23日の3日間、男女各12チームが熱戦を繰り広げる。

 バンクーバーでの開催は今年が10年目の記念大会。2015年に初めてバンクーバーでカナダ大会が開催されて以来、新型コロナウイルス禍でも途切れずに毎年開催されている。2023年からは男女同時開催となり、開催期間もそれまでの2日間から3日間となった。

 7人制ラグビーは2016年リオデジャネイロ五輪から正式種目となり、セブンズ大会も出場権獲得大会になるなど重要な世界大会となっている。フランス五輪が昨年終わったばかりだが、すでに次のロサンゼルス五輪に向けた戦いが始まっている。

日本代表は男女出場、女子は6位と好調

 セブンズ大会が男女同時開催となって3回目となる今大会。女子は毎年コアチームとして参加。過去2回は2023年が9位、2024年は10位と悔しい結果に終わっている。

 しかし今年はここまで3大会を戦って6位につける。今年1月にパースで行われたオーストラリア大会では5位となった。バンクーバーでの活躍も期待できる。

 男子は2023年大会以来2年ぶりにバンクーバー大会に参加。ただし今年は招待チームとして参加するため順位に関係なく1日目と2日目に試合に臨む。対戦相手はカナダとトリニダード・トバゴ。

大会スケジュールはこちら。https://vansevens.com/schedule

セブンズシリーズ、2024-25年大会から6大会に変更

 HSBCセブンズシリーズは2024-25年大会から6大会開催となり、その後にワールドチャンピオンシップが開催され、今シーズンの優勝チームが決定する。

 世界6大会は2024年11月のドバイを皮切りに、12月ケープタウン(南アフリカ)、1月パース(オーストラリア)、2月バンクーバー(カナダ)、3月香港、4月シンガポール。6大会の合計ポイントで上位8チームが、5月にロサンゼルスで行われるワールドチャンピオンシップに出場する。またロサンゼルスでは、9位から12位のチームとワールドラグビーHSBCセブンズチャレンジャー上位4チームが、2025-26年シーズンのセブンズシリーズ出場4チームを掛けて戦う。

日の丸くん。日本代表がトライをするたびに、ビッグスクリーンに映っていた! 2023年3月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
日の丸くんたち。日本代表がトライをするたびに、ビッグスクリーンに映っていた! 2023年3月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(記事 編集部)

合わせて読みたい関連記事

「初夢25(2)」~投稿千景~

エドサトウ

 魏志倭人伝の中に卑弥呼が中国の王に絹を献上したとあるのを見れば、九州などの西日本では弥生時代の早くから絹が創られたようである。

 西日本は、蚕のエサとなる桑の木や、蚕が育つこと、気候的に蚕の原産地とされるベトナムと気候が似ていることから、北九州を中心に絹の生産がおこなわれていたようである。その後、古墳時代には、日本海側や近畿地方に広がっていくのではあるまいか?しかし、縄文人は芭蕉の繊維で織った白い布に首を通す穴をあけて、それを羽織り、麻縄の腰紐でしばっていたようである。麻縄は縄文時代の早い時期から作られたようである。

 「5世紀の加羅諸国の活動はそれほど活発ではなかった。400年に南下してきた高句麗軍を任那加羅、安ラなどが倭と協力して撃退したのちは約八十年間、なんの動きも伝えられていない。(やがて)小国が統合し領主的な貴族による統合国家ができた。ーーー」、その中に安ラ出身の漢氏や金海加羅出身の秦氏がいた。さらに、この井上秀雄氏の『古代朝鮮史』を読めば、「百二十二年のこととして玉都(ぎょくと)の人たちは、倭兵の侵入という流れに惑わされ山や谷に逃げ込もうとした。ーーー外部の発達しない地方では、住民が自ら安全な地を求めて山谷にひそむことが多い。」「このように朝鮮の城郭は、中国の県城から始まりながら、山城の創設に見られるように、住民保護を主目的としたものであった。」その住民保護から想像できることは、仁徳天皇陵古墳が、この地域の開拓に携わっていた南朝鮮の倭人や縄文人の大きなグループであったとすれば、何か大きな争いが起きた場合に、お堀のあるこの大きな古墳に逃げ込み、自衛の戦いの用意をしたのかもしれない。また、この人たちを守るユダヤ人傭兵がいたのかもしれない。そのように考えれば、仁徳天皇陵古墳の大きなことが理解できるのである。

 城ではないが北の方角に位置する小高い円墳に登れば、遠くを見ることができるし、弓矢を放つこともできる。南寄りの方墳の広場には高床式の屋敷がありコメなどが貯蔵されてあるとすれば、堀には水が十分にあるから、古墳から住民とともに外敵と戦うことができる。表向きには古墳であっても、開拓者住民の砦であったようにも想像できる。だとすれば、彼らの傭兵にユダヤ系の人がいたのかもしれない。だから、古墳の周りから兵士や馬の埴輪が出てくるのかもしれない。

 だから、古墳であっても実は自衛のための城郭のようなものであったためにか、また鉄の武器や農具を安全に盗賊から保管するためにも頑丈な大きな石でできた石室であったのかもしれない。頑丈なお墓は沖縄のお墓と同じように女性の子宮を意味して、死者が子宮に帰るところであり、また台風などの暴風雨から家族が身を守るところであったようにも想像される。

 <林屋_ーーーやはり韓半島の突端に倭の巨頭保みたいなものが作られておったに違いない。

  司馬_それがこちらから出向いて行ったものか、元来向こうが本尊なのか、そこまで断定すると仮説の世界に入るからいわずとしておくとして、当時は何でそんなに朝鮮と往来がさかんなんだろう。説話でも、神功皇后の朝鮮出兵があったり、とにかく韓半島に執着しておりますね。生活の必要から言えば、先ほども話に出たように、日本列島のほうがはるかに食っていきやすい。であるのに倭の政権があれほど韓半島に支店を置き続けることに執着したのか?

  林屋_それは、やはり半島は大陸の橋みたいなものですからね。大陸が文化、技術の源泉だという考えは牢固としてあるでしょう。現に百済との交流も任那を通じて開けてくる。ですから文化の通路として、何とかあの一角を押さえておきたい、あるいは半島から来る人は大事にする。これは利用せねばならぬという考えはありますね。

  司馬_一つだけ、強烈な魅力としたポイントを選ぶとしたら、鉄でしょうね。> 『歴史の夜咄』司馬遼太郎 林屋辰三郎から

 鉄の道具とか牛馬の動力がなければ、あれだけ大きな仁徳天皇陵古墳はできないであろうと僕は夢のような想像を膨らますのである。

投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
これまでの当サイトでの「投稿千景」はこちらからご覧いただけます。
https://www.japancanadatoday.ca/category/column/post-ed-sato/

「ジャン=ミッシェル・ブレ」音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第32回

はじめに

 日加関係を応援頂いている皆さま、音楽ファンの皆さま、こんにちは。

 2月になり、冬が本格化しています。私にとっては3度目の冬ですが、初めて、世界で最も寒い首都の一つというオタワの本領が発揮されていると実感する日々です。寒い日は、氷点下20度を下回る日が続きます。青空で雲一つない晴天で、積もった雪が眩しく感じるような日が実は気温が低いのです。放射冷却現象です。どんよりと曇っている日は、厚い雲が地表面の熱を保存しているせいで、マイナス5度ほどにまで上昇します。

 そんな冬の日々、仕事がら様々な方々にお目にかかり、実に色々な事を学びます。先日は、公邸にカナダ国立美術館の関係者をお招きして夕食を共にしました。公邸の嶋シェフの絶品和食と日本酒で、お互いに打ち解けた雰囲気で、大いに盛り上がりました。話題はトランプ政権、カナダ内政、現代美術の将来、日系人アーティスト、NYのメトロポリタン美術館の歴史、更には2028年の日加外交関係樹立100周年に向けた国立美術館との協力にまで多岐に渡りました。

 私は、食卓でも常に音楽をかけています。BGMですから、音量は控えめです。ちょうど、マイルス・デイビスの「イン・ア・サイレント・ウェイ」を流している時でしたが、音楽話しが弾み、ジャン=フランソワ・ベリズリー館長が現代のカナダ音楽界で素晴らしいアーティストがいるとして、ピアニスト・作曲家のジャン=ミッシェル・ブレ(Jean=Michel Blais)を教えてくれました。実は、これまで、ブレの音楽を聴いたことはありませんでした。ベリズリー館長は、外交官の息子として世界各地で育ち、長じて名門コンコルディア大学で美術史・現代アートを専攻し、卒業後はサザビーズ、UNESCO等で活躍。48歳の若さで国立美術館の館長に就任した才人です。鋭い感性を備えたベルズリー館長の一押しです。アップル・ミュージックで探して、直ぐにかけました。それが、ブレの音楽との出会いです。

 前置きが長くなってしまいましたが、今月の「音楽の楽園」は、ジャン=ミッシェル・ブレです。

第一印象

 夕食会が終わりゲストの皆様が帰った後、書斎でブレを聴きました。「II」という2016年に発表されたデビュー盤です。胸にすーっと入って来ました。何の準備も要らない。ただ、耳を傾ければ、音楽が染み入って来る感じです。透明でシンプル。必要最小限の音で出来ていると感じました。同時に、ブレは、ピアノと一体化していると感じました。呼吸するように、話すように、微笑むようにピアノを弾いてるのだと。喜怒哀楽が指先からピアノの88個の鍵盤に伝わっているようです。エリック・サティやジョージ・ウィンストン、或いは久石譲を彷彿させます。

 また、ブレの音楽には押し付けがましさとか過度な自己主張が無いとも感じました。私の全く個人的な感覚ですが、傑作や名作と称される音楽の中には、聴くのに凄いエネルギーを要するものがあります。勿論、そこには、巨大な音楽的感動はあるのですが、余り元気のない時には聴く気がしません。ブレの音楽は、真逆です。聴く側に元気があろうがなかろうが、聴く者の心に寄り添うように音楽的な詩情を喚起します。私小説的な親密さを感じさせます。

 聴く者にとって、ブレの音楽は非常に自由です。聴く者の思いを開放する音楽です。例えば、デビュー盤収録の「Casa」という曲は、雪景色の中で聴くと、正に雪にピッタリと感じるのですが、仮に夏の夕暮れに聴けば、暑さの火照る都市の喧騒の中に現れる一瞬の静寂にも似合うように感じます。要するに変幻自在なのです。だから、ジャンルを特定することが出来ません。クラシックの要素もあれば、ジャズ的でもあります。映画音楽にもなるでしょう。目が冴えて眠れぬ夜に聴けば、あっという間に熟睡に誘います。

 そんなブレの来歴が非常に興味深いです。

神童の放浪

 ジャン=ミッシェル・ブレは、1984年4月にモントリオール郊外のニコレに誕生します。父は聖歌隊で歌っていましたし、母はオルガン奏者でもありました。音楽に溢れる家庭で、両親からの影響は陰に陽にあったことでしょう。

 9歳の頃から自宅のピアノで遊び始めたと云います。ジャン=ミッシェル少年にとっては、ピアノは学ぶものではなく、日々の生活の中の自分の分身のような存在になっていたことでしょう。家の中にあるビンやフライパンを叩いたドラムごっこも大好き。ラジオ・カナダで放送される「ワールド・ミュージック」を熱心に聴き、ケルト音楽や東欧の音楽に惹かれたといいます。11歳になる頃には、オリジナル曲を書き始めました。特段、誰かに師事したというのではなく、自然な成り行きだったそうです。

 そして、地元の音楽関係者の間で注目され、17歳にして、ケベック州トロリヴィエール音楽院に進学。本格的に、ピアノと作曲を学び始めました。しかし、ジャン=ミッシェルにとっては、音楽院での音楽の「勉強」は、余りにも制約が多く、喜びよりも苦痛を感じたといいます。何故ならば、自分が本当にやりたい事は、その瞬間のインスピレーションを切り取る即興や変奏、破天荒な音楽的冒険なのだと気がついたからです。周囲の関係者も、音楽院が提供する科目・授業は、彼が欲する音楽とはズレていると感じたそうです。要するに、音楽院には彼の居場所はなかったのです。そうと気が付くと、ジャン=ミッシェルは躊躇なく音楽院を去ります。

 ここからのジャン=ミッシェルの青春の旅路が非常に印象的です。青年は荒野をめざす的な自分探しですね。

 まず、中米のグアテマラに行きます。何故、グアテマラだったかは知る由もありません。が、彼の地の孤児院で4ヶ月に渡って働きます。その後は、ベルリンに行きました。そして、再び南米、アルゼンチンはブエノス・アイレスに渡ります。この間、「ピアノは全く弾かず、ピアノのことも忘れていました」と或るインタビューで述懐しています。

 文字通り、音楽から離れ、故郷から離れた日々が、己を鍛え、真の自分を見出すことに繋がります。

音楽との再会〜自己流スタイルの確立

 ジャン=ミッシェルは、1年余に亘る旅からモントリオールに帰還します。

 その時、家族・友人・知人に見せるような旅先で撮った写真がないことに愕然とします。音楽院での挫折から立ち直る傷心の旅路ですし、元来、カメラを持ち歩くタイプでもないのです。とはいえ、旅先で出会った人や風景や驚きや感動を伝える術が無いことに心が騒ついたことでしょう。そこで、ジャン=ミッシェルは、自分を見出すのです。自分には、写真はないが、音楽があると。ピアノが弾けるじゃないか、作曲できるじゃないか、と。己が経験したことや感じたことを、音楽を通じて表現出来ると。

 或る時、かつて即興的に作曲した曲のディテールを思い出せなかったことがあったといいます。それ以来、断片であれ何であれ、録音しておくようになります。高級な機材ではなく手頃に入手できるもので。自分の部屋の日常的な音も録音されます。それも音楽の一部だと感じるようになります。ここにジャン=ミッシェルの独自のスタイルが出来上がるのです。

 とは言え、この段階では、未だ音楽だけで生活を支えるには至っていません。放浪から帰還したジャン=ミッシェルは、コンコルディア大学で、一般教養を修めると同時に特別支援教育について学びます。そして、ケベック州の特別支援学級の教師となります。情熱をもって教師を勤めつつ、自己の音楽を追求する日々です。有り体に言えば、音楽を趣味とする教師です。趣味と言うには、ほぼプロですが。実は、世の中には、世に出る機会に巡り会わない玄人裸足の音楽家は少なからずいます。ジャン=ミッシェルも10年程そんな日々を過ごします。

Arts & Craftsとの出会い

 特別支援教師の傍ら、自己の音楽を追求していたジャン=ミッシェルは、やがて、完成した曲をBandcampというオンライン・プラットフォームに投稿し始めます。メジャーなレコード会社との契約のない音楽家にとっては、貴重な作品発表の場です。教師とセミプロ音楽家の日々を過ごすジャン=ミッシェルにとっては、教師と音楽を両立できて不満はなかったと言います。ですが、遂に、運命の扉が開きます。

 2015年、31歳になったジャン=ミッシェルは、モントリオール地元のArts & Crafts(A&C)というレコード会社に発見されたのです。キャメロン・リードというアーティストがBandcampで聴いたジャン=ミッシェルの曲に魅せられます。そこで、リードはA&Cの関係者に彼の音楽を紹介します。美しいというだけでは音盤になりません。レコード会社も民間企業ですから商売にならなければ意味はありません。この時、A&Cのプロデューサーはジャン=ミッシェルの音楽にサムシングを感じたといいます。無駄な装飾のない音楽の原風景でしょうか。A&Cは、ジャン=ミッシェルに連絡を取ります。最初のコンタクトに関し、ジャン=ミッシェルは、冗談だと思って、送られてきたEメールを削除しそうになったと語っています。最終的には、双方のコミュニケーションが取れて契約に至ります。条件は、教師を辞めて、音楽に専念することでした。生活が一変する訳ですから、逡巡もあったに違いありませんが、プロの音楽家としての道を歩み始めました。

 デビュー盤「II」は、ジャン=ミッシェルの自宅で録音されました。使用楽器は、自宅のアップライト・ピアノとキーボード。録音時の生活音もありのままに含まれています。耳をすませば、雨、子供たちの声も聞こえます。即興的に作られた8曲が収録されています。

 今や、音楽は、高度に産業化され、最新の設備で工業品のように生産され商品にされています。そんな中にあって、「II」は手作り感いっぱい。時代の流れから超然としていると言えば、褒め過ぎですね。でも、偽らざる等身大の音楽です。シンプルな音楽ですが、旋律が生きています。何度聴いても発見があり、新鮮です。

 タイム誌「今年のベスト10アルバム」にも選択されました。そして、ジャン=ミッシェル・ブレは、素晴らしい楽曲を生み続け飛翔します。

カンヌ映画祭

 2019年には、ジャン=ミッシェルは、ケベック出身のグザヴィエ・ドランが監督・脚本・主演を務めた映画「マティアス&マキシム」の音楽を担当しました。ドラン監督は、幼少の頃から子役も務めたカナダ映画の申し子です。友情と恋愛の境界線と自己認識の揺らぎを繊細に描いた本作品は、映画の批評家筋から高い評価を得て、カンヌ映画祭においてプレミア上映されました。映画音楽はジャン=ミッシェルです。音楽が全面に出過ぎず、しかし、映画を観る者にそれぞれの場面の情感をリアルに伝えるのです。彼が映画のために提供した音楽は、目と耳の肥えたカンヌの批評家等を魅了しました。カンヌ映画祭のサウンドトラック部門を受賞したのです。

 この受賞に関し、ジャン=ミッシェルは「映画音楽作曲家として仕事が出来るなんて思ったことはありませんでした。まして、カンヌに来れるなんて」とSNSでコメントしています。謙虚な人柄の一端が現れていますね。

 その後も着実に名盤をリリースしていますが、もう1枚だけ。

aubades

 私が最も好きなアルバムが2022年に発表された「aubades」です。このタイトルは、直訳すれば「夜明けのセレナーデ」です。ここには、新しい始まりに歓喜し、未だ見ぬ出会いを応援するような響きがあります。闇に抱かれた夜が終わって、これから登る陽光への憧憬があります。

 ジャン=ミッシェルは、この音盤について「私は、ロックダウンの最中に自宅で一人、離婚の手続きをしていました・・・孤独に負けないよう、自分自身を癒すために書いたものなのです」と語っています。

 全11曲が収録されていますが、ピアノを軸にしつつも、弦楽器と管楽器が音楽の陰影を深く多彩に仕上げています。アップル・ミュージック版には本人が記した簡単な解説が付してあります。そこには、フィリップ・グラス、ドビュッシー、チリー・ゴンザレス、ヤニー、サティ、ショパンといった作曲家の名前も言及されています。創作の過程を垣間見る思いです。

結語

 ジャン=ミッシェル・ブレは、今年41歳。デビューから9年、いよいよ脂が乗って来たようです。1オクターブに存在する12の音の順列組合せが生む、音楽の無限の可能性を自然体で、さりげなく見せてくれます。頭脳ではなく心が感じる旋律の妙があります。

 最新盤は、3月発表予定の「désert」です。将来がいよいよ楽しみです。

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

第21回 デジタル時代の想いの伝え方~新しい記録と継承の形~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

厳寒の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。バンクーバーでは、凍てつく朝も多い中、時折晴れ間が覗き、午後4時を過ぎても空が少しずつ明るくなってきているのを感じます。日一日と陽が長くなり、春の気配を少しずつ感じられる季節となってきました。

最近、こんな出来事がありました。ある高齢の方が、スマートフォンを見ながら困っておられました。「孫から送られてきた写真、どこに保存するんだろう」と。でも、その方の表情は嬉しそうでした。「離れていても、こうやって孫の成長が見られるってありがたいね」と。

この光景に、私は想いを伝え、記録を残すことの新しい可能性を感じました。今回は、デジタル時代ならではの、想いの伝え方についてお話ししたいと思います。

手書きの文字には、その人らしさや温もりが宿ります。1人1人違った筆跡、筆跡のくせや好んで使う言葉や言い回し、書かれた文字に込められた想い、これらは、デジタルでは決して代替できない大切な価値です。「あぁ、これはお父さんの字だ」と微笑むとき、そこには温かな記憶が一緒に蘇ってくるものです。

一方で、デジタル技術は、私たちに新しい表現方法を提供してくれています。

例えば、

母の味を伝えたいとき

– レシピを書き留めるだけでなく、調理の様子を動画で撮影
– 出来上がりの写真と共に、コツやポイントを音声で説明

大切な思い出を残したいとき

– 家族旅行の写真をデジタルアルバムに整理
– 写真に場所や日付、エピソードをデジタルメモとして添付
– 思い出の場所をGoogle マップでマーク

家族の歴史を伝えたいとき

– 古い写真をスキャンして、デジタル保存
– 祖父母の声をスマートフォンで録音
– 家系図をデジタルで作成し、写真や情報を追加可能に

特に海外在住の私たちにとって、デジタル技術は距離を越えた情報共有を可能にしてくれます。日本の家族と共有クラウドフォルダを作り、必要な書類や情報をアップロードしておく。また、デジタル文書なら多言語での記録も簡単になります。

ただし、デジタルツールを使う際は、気をつけたい点がいくつかあります。

セキュリティの配慮

– パスワードを適切に管理しておく
– バックアップを忘れずに

アクセシビリティの確保

– 高齢の家族でも扱いやすいツールを選ぶ
– 必要な情報へのアクセス方法を明確にしておく

先日、あるご家族がこんな話をしてくださいました。「母が残してくれた手書きのメモ書きを、家族みんなで少しずつデジタル化しています。スキャンした文字を見ながら、母の声が聞こえてくるような気がして…」。特に若い世代は紙という物質的なものより、スクリーンから見ることに利便性を感じているため、手書きの温もりとデジタルの利便性が見事に調和した、素敵な取り組みだと感じました。

大切なのは、これらのツールが「手段」であって「目的」ではないということ。

デジタルであれ手書きであれ、あなたの想いを大切な人に伝えるための架け橋となれば、それで十分。この機会に、手書きとデジタル、それぞれの良さを活かしながら、あなたの想いを未来に思い描いていけたら楽しそうですね。

*このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

グローバルライフデザイナー
2015年、友人の孤独死と相続問題をきっかけに、カナダのバンクーバーで遺言・相続専門の弁護士アシスタントとしてキャリアをスタート。2020年には終活アドバイザー資格を取得し、終活の視点を取り入れた知識と実務経験を活かしたノート術とコンサルティングを提供しています。
「終活せずに困った!」という後悔の声を「やってて良かった」「ありがとう」と笑顔で未来を彩ることをライフワークとしており、これまで300名以上に国境を越えた安心感を届けています。国内外問わず、すべての人が大切な未来をデザインできるようサポートしています。 家族はカナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。日々の活動や最新情報は、メルマガ、ブログ、SNSで発信中。

メルマガ:https://www.shukatsu.ca/mailmagazine
ブログ: https://globalmesen.com/
Facebook: https://www.facebook.com/noricovancouver
Instagram: https://www.instagram.com/norikocanada/
著書「海外在住日本人のための50代からの終活」:​​https://a.co/d/ad4OeLw

Today’s セレクト

最新ニュース