
人生には、思い通りにならないことがある。大切な人を失うこともあれば、思いがけない誰かに引かれたり、後悔するような間違いを犯したりもする。それでも、いつかはまた前を向いて歩き始めなければない。「Ha-Chan, Shake Your Booty!」は、そんな人生のままならなさを、社交ダンスとユーモア、そして少し不思議なファンタジーを交えて描いた作品だ。
扱われるテーマは決して軽くない。それでも随所に散りばめられたユーモアと、登場人物たちの愛すべきおかしさ、そしてダンスがもたらす躍動感が、心地良い笑いを運んでくる。
何より印象に残るのは、主人公ハルを演じる菊地凛子さんの存在感だ。ハルは恋人のルイスと社交ダンスを楽しみ、競技会にも出場していた。しかし、ある出来事をきっかけに日常は一変する。ダンスからも人との付き合いからも距離を置き、時間が止まったような状態になってしまう。そんなハルの悲しみ、無気力さ、再び何かに心を動かされた瞬間の高揚感。菊地さんは、その繊細な変化を表情や佇まいで見せていく。ハルの一挙一動に目を奪われ、その感情の揺れを追っていくこと自体が、この映画の楽しさのひとつになっている。作品は、ユーモアや驚きの展開を織り交ぜながら、ハルを一人の人間として生き生きと描いている。
そして、ハルを支える吉田羊さんとYOUさんの存在も忘れがたい。姉のユキを演じる吉田さんは現実的でしっかり者。一方、いとこのヒロミを演じるYOUさんはとにかく奔放でユーモラスだ。悲しみの中に閉じこもるハルを、二人はそれぞれ違ったやり方で外の世界へ連れ戻そうとする。その対照的なキャラクターがハルの孤独を和らげ、作品に温かさと笑いをもたらしている。
この映画が扱うのは、愛するということ、喪失、恋愛、そして自分自身をもう一度見つけること。それでも重苦しさは全くなく、失敗しても、迷っても、ときには少し格好悪くても、また笑って前を向く。その尊さをユーモアとダンスの楽しさを通して描いていく。観た後には元気をもらえる、そんな作品だ。

(記事 宮井みちる)
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