第13回 スワミのお別れ準備 その4

 ロシアの意地悪ビッチ3人組からの思いがけない招待で、皆が敬愛する「サイババの通訳」との懇談会に出席でき、至福の一時をロシア人仲間と過ごすことが出来た。そこで分かったことは、彼女達は決してビッチでは無い。彼女らをビッチにさせたのは、朝4時に起きて、皆の睡眠を邪魔したこの私なのだ。

 予想外の会合に同席させてもらえ、それだけでない、その後、ロシア人グループの集まりに毎回誘ってくれるようになった。そこはまた、新たな気付きと学びの場だった。ドイツから来た同室の2人は僅か数日でいなくなっていた。スリランカの2人とは友達になって、手紙やカードの交換を私は帰国後もしていた。そして、私が帰国する日、新しい入室者が来た。私のベッドを使う親子だ。「カザフスタン」と言う国から来た親子だ。彼らの宗教は「モスラム」だがサイババが大好きで、プッタパルティに来ているという。
 誰でも、宗教を問わず何だかこのアッシュラムは世界中から人々が「愛」を求めて行く場所みたいだ。
 私はカザフタンが何処にあるのか知らない。でも彼女は日本が何処にあるか知っていた。ちょっとその親子と英語でおしゃべりしてから、私は最後のお掃除をし始めた。最後の掃除だから一生懸命やっている。するとカザフスタンの親子が「今日、貴方は日本へ帰るのでしょう?何でお掃除するの?」と聞いたのです。
 私はびっくりして、「今日、帰るからちゃんと掃除をしなきゃいけないのよ」と答える。すると彼女達は分からなそうにしている。それで、日本には「たつ(出発)鳥、後を濁さず」と言う言葉があるのよ。だから、普段より綺麗にして、後に来る人が住みやすい様にするのですと説明した。
 すると随分と驚いていたが、直ぐに2人は私のお掃除を手伝い始めたのです。7-8歳の娘はバケツに水を入れて運んだのです。母親は床に有った棒雑巾に私の使わないバスタオルを濡らして巻き付け、床を器用にぱぱっぱと拭いていきます。

 昼過ぎ、空港行バスが迎えに来た。彼女達はバスの所まで見送りに来て、モスラムの人が被る丸い帽子やら、カザフスタンの民族楽器のおもちゃ等くれました。今も私のPC机の前にそれらは飾られ、よい思い出になっています。大勢の友達に見送られて帰国路に着いたプッタパルティ訪問最終会。そして思い出すのは、誰れ一人新しい友達もできず、ただスワミが膝の上に置いてくださったサリー、それを片手に彼の温かい波動を全身に受けて帰国した初回訪問。けれど、そこにずっーと絶えることなく流れ続けている彼の全てを包むゆるぎない「愛」の波動、それは今も続いている。

 皆に見送られて帰国路に着いたあの時は2010年8月の事です。その8ケ月後、翌年2011年4月24日、サテイヤ・サイババは他界されました。
 彼に最初に会えた時から、今は既に28年たっている。サイババ、私の「スワミ」が下さったこの一生、私にくれた素晴らしい数々の贈り物、それは全て「『セレンディピティ』幸運をつかむ」そのものなのだろう。サイラム

注:サティヤ・サイ・ババ(Sathya Sai Baba, 1926年11月23日 – 2011年4月24日)は、インドのスピリチュアルリーダー。日本ではサイババと呼ばれているが、サイ・ババの正確な発音は、サンスクリット語ではサーイ・バーバー(Sāi Bābā)、ヒンディー語ではサーイー・バーバー(Sāī Bābā)である。サティヤはサッティヤと発音される。
活動本拠地としてインドにいくつかのアシュラム、病院、学校があるほか、国内外に数百万もの信奉者を獲得し、世界126カ国に1,200のサティヤ・サイ・ババ・センターを作った。1972年にサイ・ババが設立したシュリ・サティヤ・サイ・セントラル・トラストは、2020年に国連の特別諮問機関として選出された。また、新型コロナウイルス対策について、ユニセフと連携した。サイ・ババ御降誕97周年祭には、ナレンドラ・モディ首相からお祝いのメッセージが届いている。(ウィキペディアより引用)

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/