第23回 「肉体の死と存在の死と生」

 今日もまた朝5時に息子の愛犬「ジュナ」に起こされ、温めたエサを上げ、庭へトイレに出し、そっと身体を拭いて中に入れ、私はゆっくりコーヒーを飲みながらPCに向かう。
 毎週、彼女の為に「アニマル ドクター」助言の野菜入り餌を作り、それを1日2回食べさせる。彼女も私と同じ老齢でよたよた歩くし、遠くへ散歩はもうできない。もそもそ動く犬と私、互いに「老齢の犬と人」労わり合いながら生きている。

 今朝、PC開けて、最初に目に留まったのがチロチャンからのメイルだった。
Date: 2024/02/04 日 21:50
Subject: 母の容態

ポテおばさん
こんにちは。
今日の東京は(関東地方全体)大雪の予報がでており、 会社のデスク下でヒーターを入れているのですが底冷えがします。
土曜日に母に面会してきました。 もうほとんど声が出ず、コミュニケーションはYESとNOを苦しげに、 まばたきでするような状態です。
あるいはホワイトボードに文字で書いて用件を伝えると、 弱々しい手つきで、力なく文字で受け答えをしていました。
そのような中、今週、父が緩和ケア施設に転院する旨を伝えると、 私も一緒に行きたい、パパに会いたい、と言うので、 また私の涙が止まらなくなってしまいました。 一日も早く二人が会えるように、施設に空き状況を確認したのですが、 現在は満室とのことで、母はいつ入れるか分かりません。 最後に二人を、何としても会わせて上げたいです。
チロより

チロちゃん
 
返信遅れごめんなさい。さっきテレビで日本のニュ―ス見ました。2月5日、関東地方は雪で10-15センチ積もると言っていました。
 ここバンクーバーの我が家床暖房ですから家の中暖かです。でも、外は寒いですね。昨日は、マイケルが腎臓結石で緊急病院へ行き11時間くらいの入院で戻って来ました。
 彼は家で今薬を飲み落ち着いています。かなり痛かったようで可哀そうでした。でも、大丈夫でしょう。
 彼はチロチャンが12歳でモントリオールへ1年留学に来て我が家に滞在、その後バンクーバーへ転校しましたね。彼は其の後、モントリオールで生まれた息子です。

 優しいチロちゃんのメイル、貴方やご両親「クーニャンとイーちゃん」との忘れられない懐かしい昔、全て思い出しながら涙で読みました。
 そうですね。「クーニャン」が夫「イーちゃん」のそばに行きたい気持ちわかります。一緒にさせて上げたい、仲良し夫婦ですものね。
 そして、何だか今、次々色々思い出しながら人間の「肉体の死と存在の死と生」も考えています。するとチロちゃん、貴方ご自身と私達家族もつながって、結局、全て…私達の素敵な出会いが良い思い出となり、「存在」が語り継がれる間、その人は死なないのですよ。「その人の存在」は「笑顔」一つ「人に与えたもの」に全てが残る。ねぇ、…そうだとすると、チロチャン、私達の出会い、皆「素敵な人生」の一部だったと言えるでしょう?
 そう、「幸せな私達」が此処にいると思いましょう。数えきれない思い出をこれからしばらくエッセイに書いて行こうと思います。
 「クーニャンとイーちゃん」は何時も私の思い出に生きています。
澄子

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「『セレンディピティ』幸運をつかむ」はこちらから全てご覧いただけます。