第11回 スワミのお別れ準備 その2

 インドのプッタパルティで行われるサイババ世界大会にセンター参加者とは別行動、でも、どうやら日本人グループに同行させてもらえた。そのお陰で、何時もはプッタパルティ直行のインド旅行が、今回はグループリーダー インド通のシヤさんのお陰だなぁ。その昔のインド歴史を語る、マイソール市へ行けたし、次には近くの孤児院訪問まで手配されていた。
 皆で土産の食物、お米迄を沢山買って孤児院へ行った。入り口を入ると其処は直ぐベッドルーム。ベッドは2段ではなく3段ベッドだ。サイズも普通のシングルベッドよりずっと狭い。
 そして、添え付けベッドの終わりに、物がまとめて置いてある。とてもよく整理されているが、そこにあるナップザックの一つ一つが、此処の子供たちの全財産なのかと思うと、なんだか悲しくなった。

 しかし、私の思いに反して、そこにいる子供達は皆とても明るかった。その子供達を世話しているのは、主にその施設で育ち、大人になった孤児達なのだ。
 早朝、その日の係になった子供達は村の家々に食べ物をもらい歩く、それを持ち帰って、皆で食べるのだ。聞くところ、施設のドアを朝開けると、時々赤ちゃんがそこに捨てられているのだそうだ。その赤ちゃんを育てるのは、そこで育ち大人になった孤児だった人なのだ。
 1階のベッドルームから階段を上がり2階に出る。1階の暗さに比べ、2階は明るい。スペースは階段と踊り場だけで、テラスのような少し広い所へ出る。
 そこは屋根が無い。洗濯物を干したり、食事をしたり、子供達の遊び場でもあるようだ。帰りに階段の所に幼い子供がニッコリしながら私の手を取り、なんと私の階段下りを手伝ってくれようとしているのだ。階段下には少し年上の女の子がいて、私を車まで歩くのを手伝う為に待っていたのだ。誰が指示したわけでもない。
 年を取っているこの白髪の老女(73歳)を見て優しくしようとしているのだ。あの頃の私はそれほどの老女ではなかったけれどなぁ。

 そして今でも、あの優しい子供達を思うと胸が熱くなる。帰国後、皆でいくらかの寄付をさせてもらった記憶がある。
 こんなに素晴らしい子供たちに出会えたのは『セレンディピティ』幸運をつかむ!本当にあの笑顔の子供達、あの時の至福感、きっとこの老婆の心に生涯続いていてくれるだろう。

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/