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ジャンルを超えた芸術映画「粒子のダンス」岡博大監督インタビュー

レッドカーペットに登場した岡博大監督。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
レッドカーペットに登場した岡博大監督。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

 バンクーバー国際映画祭(VIFF)で隈研吾氏の建築プロジェクトを追ったドキュメンタリー映画「粒子のダンス(英語タイトル:particle dance)が上映された。映画祭に参加するためにバンクーバーを訪れた岡博大監督に話を聞いた。

映画作りのきっかけ

 不思議な映画を観た。一見世界的に有名な建築家の隈研吾氏の建築プロジェクトを追ったドキュメンタリー映画だが、どこか違う。まず主役の隈氏のインタビューがない。隈氏は主人公ではあるが、講演の様子や誰かを相手に会話をする時だけ話す。さらにドキュメンタリー映画独特のナレーションやサブタイトルがない。何かの情報を習うのではなく、軽快なジャズ音楽を聴きながらどんどん変わっていく映像をひたすら目で追う、まるで美術館を廻ったかのような感覚になった。「私は選考する時に1回見て、ふと考えて時間を置いてもう一度見たんです」とVIFFのアラン・フレーニー氏が映画館で語ったように、終わりがないからもう一度見たくなる映画だ。

「粒子のダンス(particle dance)」Photo proided by VIFF
「粒子のダンス(particle dance)」Photo proided by VIFF

 大学生の頃「何か社会の役に立ちたい」と思っていた岡監督は、ふと「隈研吾先生」の授業を受けてみた。当時40代前半で新進気鋭だった隈氏は、絵画などの美術や自分の作品を通して、建築の魅力を学生に伝えていた。「ひとつ一つの建築作品に彼自身のストーリーがあったんです」と熱心に話した。もともと建築が専門分野でなかった岡監督は東京新聞の記者になった。そして恩師である隈氏の記事を書いている時、さらに感銘を受け、今度は映画撮影するために記者の仕事を辞めたという。

 もう一つのきっかけはアメリカの有名な映画評論家で、1960年代に小津安二郎、黒澤明、溝口健二監督らの作品を積極的に海外で紹介したドナルド・リチーさんとの出会いだった。「リチーさんが、映画は詩のように誰でも作ってよいもの、全く素人の私でも映画を作る権利があるんだと言ってくれました」と直接励まされたエピソードを語った。その後映画を撮りながらの独学が始まった。気がついたら15年間、17カ国、100カ所以上の建築プロジェクトがカメラに収まっていた。

隈研吾の魅力

 「建築家には主に2つのタイプがあります」と監督は前置きして、「前者は自分のスタイルを築いて、作品を見たら名前が分かるぐらい流儀を貫く建築家。後者は隈研吾先生のように、その土地の素材や職人を使って工夫しながら作品を作り上げていくテーラーメイド的な建築家です」。

 さらに「先生の建築は映画でいえば小津安二郎監督。小津映画は家族愛など大切なテーマを押し付けるのではなく、普通の日常生活の中で軽やかに描いています。隈先生も軽みを持ちながら、その土地の歴史、文化、技術、素材などを考慮した建築作品を残されています。そして私もその彼の軽み、柔らかさを映像に残したいと思いました」と話す。

 「隈研吾先生は毎回クライエントと相談しながら、その土地の地形を勉強します。素材も最近は木材も増えましたが、石、プラスチック、ガラスなど土地の名産や技術を、与えられた予算内に組み込もうとします」と岡監督が建築プロジェクトの背景を説明した。

 東日本大震災後の南三陸町での復興プロジェクトでは、地元の人たちからの「真新しい建物で街の雰囲気が壊されたくない」という意見を受け止めながら、新しいアイデアで街を明るくして人々の楽しみが増えるように努めた。実際に住民が喜んで隈氏に感謝している様子も収められている。

 監督によるとこのテーラーメイド的な建築は撮影当初は少なかったが、隈氏以外でもこの15年間で増えてきたそうだ。隈氏独特の粒子的な細かなエレメントを集めて作るモダン建築法にも「今時代がやっと追いついてきた感じです」と語った。

VIFFでの上映後にQ&Aに答える岡監督(中央)。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFでの上映後にQ&Aに答える岡監督(中央)。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

 映画の中で1人のフランス人女性による「あなたのような世界的に有名な建築家がなぜこんな田舎で建築をするの?」という素朴な質問に隈氏は、「建物の大小でなく、この特別な場所に似合う作品を作りたかった」とさりげなく答えている。

 隈氏の建築映像を後世に残したいと映画作りに初挑戦した岡監督だが、やはり自主制作で学びながらの15年は形になるのか分からずとても大変だったそう。一時は隈氏から「ガウディの建築」(終わりが見えないでずっと続いていく)のようだ」と冗談も言われた。でも隈氏は映画の完成を温かく見守ってくれたという。

 今回の映画祭では「彼の建築を見に日本へ行きたいが、どこへ行ったら見れるの?」「ヨーロッパから来ました。V&A Dundeeの美術館はすっかり市民の憩いの場になっています」「続編は作りますか?私は隈建築の続きを見たいです」という観客からの個人的な意見が多かった。

 VIFFで2回の上映とも満席だった「粒子のダンス」。今後はVIFFアンコールや世界中で上映されることを期待したい。隈氏は現在70代。まだまだ新しいプロジェクトに挑戦するならば、この映画は岡監督にとって「永遠に続くプロジェクト」になるかもしれない。

妹でプロデューサーの岡桃子さん(左)と岡監督。2025年10月8日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
妹でプロデューサーの岡桃子さん(左)と岡監督。2025年10月8日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

(取材 Jenna Park)

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高丘好セーブ光るも、ホワイトキャップス最終戦飾れず西2位でプレーオフへ

混戦で好セーブが光るGK高丘。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
混戦で好セーブが光るGK高丘。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 序盤から波乱の幕開けだった。いきなりレッドカードを受けたホワイトキャップスは10人で善戦したが、一歩及ばず惜敗。西カンファレンス2位でプレーオフ進出となった。

10月18日(BCプレース:26,741)
バンクーバー・ホワイトキャップス 1-2 FCダラス

11分にラボルダ(#2)がレッドカードで退場処分、18分にコーナーから決められ0-1。それでも28分にはミュラー(#13)がPKを決め同点に。しかし後半早々の47分にゴールされ1-2。後半の猛攻も実らずホワイトキャップスは追加点が奪えなかった。

高丘、再三の好セーブもレギュラーシーズン最終戦は惜敗

 11分にキャップスDFラボルダがレッドカードで10人での試合を強いられたが、GK高丘の動きはシャープだった。先制されるまで立て続けの好セーブが光った。後半に入っても1失点したものの、スーパーセーブを連発した。

 試合後、「10人になってオープンな展開になりましたが、そういう場面にも常に準備してましたし、ある程度自分の仕事はできたと思います」と振り返った。試合内容については「もちろん勝ちたかったですけど、アクシデント的に退場者が出た中で、良い試合を10人でもある程度できたと思います」と前向きに捉えた。ただ2失点したことは「悔しい」とプレーオフに向けてしっかりと準備したいと語った。

 勝利か引き分けで西カンファレンス1位を確定する大事な試合。序盤から緊張感ある展開を壊したのは審判の判定だった。11分にラボルダが受けたのはイエローカード。しかしその後ビデオ判定でレッドカードとなり、ホワイトキャップスはいきなりディフェンダーを失うことに。ソレンセン監督は「(ラボルダは)ファールだとは思ったけどレッドは厳しすぎる」と語った。ただビデオ判定で「そう判断したのだろう」と冷静な対応を見せ、「あとでまた分析する」と語った。

 10人でもチームは「特に後半は攻撃面で力強いプレーができたと思う。全体的にエキサイティングな試合だった」と振り返った。

キャプテンを務めたミュラー(#13)、先発フル出場でチームをけん引する。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
キャプテンを務めたミュラー(#13)、先発フル出場でチームをけん引する。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 キャプテンを務めたミュラーは「審判の判定については触れたくないが」と前置きして、もう少しよく見てれば判定が違ったところはあったと思うが「判定は判定だ」と審判を責めることはなかった。チームとしてはいくつかミスがあり、それが勝てなかった要因だったと思うが「(負けはしたが)内容的には良い試合だったと思う、次に向けて調整していければいい」と前を向いた。

高丘、今季は13無失点試合でMLS最多、ホワイトキャップス歴代最多タイ

 この日でレギュラーシーズン全34試合を終え、高丘は個人成績では13クリーシートはMLSリーグ最多、GKとして今季18勝はリーグタイとなった。

 クリーンシート13はホワイトキャップス歴代ゴールキーパーではウーステッド選手の記録に並んだ。

直接対決の場面でスーパーセーブを見せた後、すぐに起き上がりネット前へ。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
直接対決の場面でスーパーセーブを見せた後、すぐに起き上がりネット前へ。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 現在MLSでは今月24日まで、MLS Save of the Yearの投票を受け付けている。候補プレーの中に高丘も含まれている。候補プレーの動画はこちらから。投票についてはMLSの該当ページを参照。https://www.mlssoccer.com/news/vote-for-the-2025-mls-save-of-the-year

日本代表ブラジル戦での勝利に刺激

 日本代表が初めてブラジルに勝利した10月14日(日本時間)の試合をバンクーバーで観戦していたという。「ブラジル相手の0-2の難しい展開でしたけど、そこから逆転できる力を持っているっていうのはすばらしい」と称賛。

 日本代表については「ワールドカップ(2026)で優勝を目指しているグループなので、僕自身もそこに食い込めるようにやっていかないといけないと思っています」と語り、海の向こうでの代表の活躍に「良い刺激をもらっています」と笑顔を見せた。

 高丘は来週から始まるプレーオフについて、「また同じ相手とできるので、今日の反省も生かしつつ、しっかり修正して勝てるようにしたいと思います」とこの日の敗戦にも手ごたえを感じているようだった。

プレーオフはFCダラスと10月26日から

 18勝7敗9分、勝ち点63で西カンファレンス2位となったホワイトキャップスのプレーオフ1回戦は、この日対戦した同7位のFCダラスが相手。10月26日にBCプレースで4:30pmキックオフ、第2戦は11月1日にダラスで、第3戦までもつれ込むと11月7日にBCプレースで行われる。

 昨季の覇者で吉田麻也率いるLAギャラクシーは今季は西カンファレンス最下位に沈み、プレーオフ進出はならなかった。MLSプレーオフ全日程はMLSサイトを参照。

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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日本語認知症サポート協会「オンライン de Cafe・笑いヨガ」

「笑顔の力」を引き出そう〜「笑いヨガ」で、元気な心と体づくり〜

毎月、「笑いヨガ」を行っています。自宅にいながら参加できる、オンラインでのセッションです。 初めての方も大歓迎。楽しく一緒に笑いましょう!

日時:2025年11月20日(木)午後8時〜午後9時
会場:Zoom
参加費:初回無料、2回目からドネーション(e-Transfer、PayPalまたは小切手にて)

申し込み締め切り:2025年11月18日(火)
申し込みリンク: https://forms.gle/ScSN2tx7P12Me6ZGA

*お申し込みいただいた方には、追って参加方法をご案内いたします。

お問い合わせ先:orangecafevancouver@gmail.com
主催:日本語認知症サポート協会(Japanese Dementia Support Association)

おれんじカフェ de 看取りーと「あなたならどうする? 〜最期の選択、尊厳死〜」

皆さんは、ご自分の「最期」について考えたことがありますか?

もし、病気が治る見込みがなく、死期が迫ってきたとき—延命治療を受けず、自分の意思で人生の幕を閉じるという選択。それが、**尊厳死(MAID:Medical Assistance in Dying)**です。

カナダではこの尊厳死が合法化されており、「医療によって生かされる」のではなく、「自分で最期を選ぶ」ことができる選択肢のひとつとなっています。

今年の 「おれんじカフェ de 看取りーと」 では、この尊厳死をテーマに、高山宙丸さんのパフォーマンスをきっかけに、やさしく、ゆる〜く、皆さんの考えを分かち合いながら、「自分の最期」についてご一緒に考えてみませんか?

どうぞ、お気軽にご参加ください。

日本語認知症サポート協会

***

人生には終わりがあります。その時、自分はどうありたいですか?

今年の「おれんじカフェ de 看取りーと」では、ただ「死」を待つのではなく、自分の意思を大切にする選択肢のひとつ、「尊厳死」を取り上げます。

自分らしい最期について、一緒に考えてみましょう。

特別ゲスト:高山宙丸
プロフィール:詩人、ビートメーカー(モジュラーシンセ)。法政大学哲学科卒。2007年より4年半、世界を放浪。無印良品、バンクーバー日本語学校、日系プレースなどに依頼を受けて詩や動画作品を提供。「Labyrinth of Messages」など、パブリックアートイベントを企画・主催している。

開催日時: 11月2日(日) 午後3時から午後5時
会場: Zoom

参加費:$20
チケット購入リンク:https://JDSA-Mitori.eventbrite.ca

(クレジットカードでのお支払い) 
 他のお支払い方法 (E-Transfer、小切手)をご希望の方は、下記のお申し込みリンクからお申し込みください。

参加申込リンクhttps://forms.gle/dMaWqsbpB7VqxFBP6
申込締切:10月30日(木)

連絡先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会
後援:一般社団法人日本看取り士会
メディアスポンサー:ふれいざー、日加トゥデイ、Life Vancouver

ある家族の肖像~被爆三世代の証言~

上松道夫監督作品 58分Blu-ray上映

【あらすじ】

2023年5月、ある家族三世代が神戸から旅に出た。目的地は祖父の被爆地・広島
78年前の薄れゆく“記憶”を取り戻すために…

凄惨な体験をした地で、果たして祖父・鈴木照二は何を思い出し、何を語るのか?
そして被爆二世である母・カオル、三世である娘・万祐子は、何を感じるのか?
カメラの前で、被爆三世代がそれぞれの思いを紡いだ…

祖父・鈴木照二さん(取材時95歳 被爆一世)

  昭和20年8月、旧制広島高等学校1年在学時、勤労動員先の寮内で、原爆に遭遇。大きなけがはなかったものの、翌日から1週間、帰らぬ学友の姿を求めて爆心地付近を捜索。京橋川の河畔で凄絶な地獄絵を見た。長年、体内に悪性腫瘍をかかえており、孫にも被爆の影響が出たのではないかと案じている…

母・鈴木カオルさん (取材時64歳 被爆二世)

 高校生の時、心臓に異常が発見され体調不良の日々を過ごす。 結婚し一女を出産。その後も甲状腺の機能低下や、原因不明の症状に悩まされている。愛娘に甲状腺ガンが発見され、ショックを受ける。福島の原発事故で避難を余儀なくされた子どもたちを、サマーキャンプに招待するボランティアに参加したことから、平和活動を推進することを決意。 ピアニスト・金谷康佑とともに平和のイベントを赤字覚悟で主宰している。

一人娘・万祐子さん (取材時26歳 被爆三世)                 

 たった一人の孫娘で、祖父から可愛がられた。 大学で軽音学部に所属し、ギターとヴォーカルを担当。卒業ライブを控えた四年次の7月、検査で甲状腺ガンが発見された。 医師から「甲状腺の全摘手術で声帯を傷つけるかもしれない。手術の日までに一生分の歌を歌っておくように」と言われた。4カ月後の手術当日、喉を広く切開しリンパも切除する大手術に臨んだ。果たして手術は成功し、再び歌うことができるようになるのか…

朗読・斉藤とも子(女優)

 2023年4月22日、広島のライブ・ジュークで行われた女優・斉藤とも子の朗読と、ジャズピアニスト・金谷康佑のコラボレーションをノーカット収録。爆心地近くで被爆し、小頭症児を出産したある被爆者の原爆症認定裁判での“陳述”を、斉藤とも子が渾身の朗読。恐ろしい原爆の実相と被爆者が背負わされた過酷な運命に胸を震わされる。

音楽・金谷康佑

 ジャズピアニスト・作曲家。兵庫県出身、立命館大学卒業。関西を中心に活動。金谷康佑のオリジナル・アルバム『LYRICISM』から、「気だるい午后のワルツ」「邂逅」「私のこの人生」「家族の肖像~セピア色の寫眞~」など…澄んだピアノ・ソロが、ドキュメンタリー全編を彩る。2023年から、女優・斉藤とも子の朗読と共に「地球・平和、そして未来へ」と題したライブ活動を各地で行なっている。鈴木カオルと中学生時代の同級生。

撮影・編集・監督 上松道夫

 1948年生まれ。1972年、テレビ朝日入社。数々の報道番組を制作。「報道ステーション」初代エグゼクティブプロデューサー。テレビ朝日退職後、フリーランスとしてドキュメンタリー制作を継続。2018年、テレメンタリー『追跡・原爆影響報告書』が、アジア・テレビジョン賞最優秀ドキュメンタリー番組にノミネート。2021年『ラストメッセージ“不死身の特攻兵”佐々木友次伍長』発表。映画雑誌「キネマ旬報」2024年ベストテンの文化映画部門で、奥村賢選考委員より1位に選出される。

トランプ関税懸念で「日本のような信頼できる貿易相手国が必要」 ランツPEI州首相インタビュー

インタビューに応じるカナダ・プリンスエドワード島州のロブ・ランツ州首相(大阪市で大塚圭一郎撮影)
インタビューに応じるカナダ・プリンスエドワード島州のロブ・ランツ州首相(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 小説「赤毛のアン」の舞台として知られるカナダ東部プリンスエドワード島(PEI)州のロブ・ランツ州首相が2025年9月20日、大阪市で日加トゥデイの英語での単独インタビューに応じた。PEI州の魚介類や農産物の多くはアメリカ(米国)に輸出されているが、輸入品への関税を引き上げているドナルド・トランプ米大統領の復帰で「貿易相手国としての信頼性が低下している」と指摘。「日本のような信頼できる貿易相手国が必要だ」強調し、日本への輸出拡大に意欲を示した。

(共同通信社経済部次長・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者・大塚 圭一郎)

▽「より多様な外国市場の開拓が必要」

 ―2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)でPEIの魚介類と農産品を知ってもらうイベントを9月20日に開催した目的を教えてください。

 「日本の食の選択肢を広げるのに役立つPEIの食品を、より効果的に発信する必要があると考えたためです。PEIは新鮮で自然、清潔で安全、持続可能な食品を提供している『食の楽園』です。これらは全て、日本の消費者が重視している品質と価値そのものです。

プリンスエドワード島の沖合で捕れた雌のロブスター。重量は844グラムあった(大阪市で大塚圭一郎撮影)
プリンスエドワード島の沖合で捕れた雌のロブスター。重量は844グラムあった(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 もちろん来日の大きな目的は日本の皆様にPEIの商品を売り込みたいからですが、同時に日本からの輸入も拡大し、友好関係も深めたいとも思っています。良好な関係は双方向で成り立つものであり、おそらく日本から購入できるものもたくさんあります。貿易に不確実性がまん延している今、私たちが求めているのはまさにそれです」

 ―PEIが輸出先を広げようとしている不確実性とは、カナダにとって最大の貿易相手国である米国の大統領にドナルド・トランプ氏が復帰したことを指すという理解でいいですか。

 「はい。米国に近い私たちにとって長年重要な貿易相手国でしたが、トランプ氏が大統領に復帰して信頼性が低下し、予測不可能になっています。このことを踏まえると、より多様な外国市場を開拓することが必要だと承知しています。トランプ政権下ではルールがいつでも変わる可能性があり、より強靭な貿易基盤を構築するためには他の相手国を探す必要があります。それには日本のような信頼できるパートナーが必要なのです」

 ―類似の事例として私がPEI州関係者から聞いたのは「2010年代には輸出先および旅行者拡大で中国を重視していたものの、カナダと中国の関係悪化を受けて急速に冷え込み、中国に偏重することはリスクが大きい」という話でした。

 「そうです。かつてPEIからは年間約4千億カナダドル相当の生ロブスターを中国に輸出していましたが、中国政府がカナダ産の魚介類に100%の関税を課したために門戸が閉ざされてしまいました」

 ―カナダは米国、メキシコとの間で自由貿易協定(FTA)のアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を結んでいますが、発効6年後となる2026年7月1日までに実施する共同見直しに向けてトランプ氏は大幅な変更を辞さない姿勢を示していると報道されています。

 「USMCAは現在も有効で、PEIは実は非常に恵まれています。なぜなら、PEIから米国、メキシコへのほぼ全ての輸出品がUSMCAのおかげで現時点では関税が免除されているからです。一方でカナダには、トランプ政権が自動車や鉄鋼・アルミニウム、銅に対する輸入関税を引き上げた影響をより強く受けている州もあります。これらは他の州では非常に大きな産業になっているため、カナダ全体に大きな影響を与えています。このようにカナダ全体ではトランプ関税の影響を受けており、間接的な影響がPEIにも波及しています。ただ、PEIの現状はまずまずです」

▽PEIへの旅行促進アピールの「絶好の機会」

 ―日本には特にどのような品目の輸出を拡大したいですか。

 「あらゆる食品をもっと多く輸出したいのですが、特にブルーベリーは大きなチャンスがあると考えています。なぜならば日本向けのブルーベリーの流通ルートはまだ確立されていないものの、PEIは自然のままの素晴らしいブルーベリーを豊富に栽培しており、日本の消費者がその存在を知れば輸出を拡大できると考えているからです。一方、日本で既に多少売れているロブスターはもちろん、ムール貝やかきなどの幅広い魚介類もそろっています」

プリンスエドワード島産のブルーベリー(大阪市で大塚圭一郎撮影)
プリンスエドワード島産のブルーベリー(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 ―私はPEIを2017年に訪れてロブスターと生ガキ、ムール貝の素晴らしさに感激しました。今回のイベントでは牛肉のバラ肉のステーキを試食し、PEIの牛肉の高品質ぶりにも驚かされました。

 「牧草で育てている自然飼育の素晴らしい品質のPEI産牛肉は、市場を順調に広げています。家族経営の小規模農場は牛を牧草地で放牧し、自然に生えた草を食べて育っています。このようなあらゆる品目で日本との関係を強化できると確信していますし、これこそが私たちが今回来日した使命です」

プリンスエドワード島の沖合で養殖したカキ(大阪市で大塚圭一郎撮影)
プリンスエドワード島の沖合で養殖したカキ(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 ―PEIは2024年の旅行者数が年間過去最高となる約170万人でしたが、25年の旅行者数はどのように推移していますか。

 「ご存知の通り、PEIの主要産業の一つは観光業です。(トランプ関税への反発などで)米国への旅行を控えているカナダ人がPEIを大勢訪れたため、2025年夏は非常に好調でした。レストランとホテル、観光名所、公園のいずれにも大勢の旅行者が訪れ、PEI州の経済は非常に好調です」

 ―一方で、『赤毛のアン』が高い人気を誇る日本からの旅行者数はかつてより大きく減りました。

赤土が美しいプリンスエドワード島の海岸(大塚圭一郎撮影)
赤土が美しいプリンスエドワード島の海岸(大塚圭一郎撮影)

 「確かに私が若かった頃の1980年代後半から90年代にかけてはPEIで多くの日本人旅行者に出会い、今でも来ているものの昔ほど多くはありません。ですから、今回の訪日はPEIへの旅行を促進するためにアピールする絶好の機会でもあると思います。

 他方で日本が今、外国人旅行者数が非常に好調だと承知しています。大阪・関西万博の開催が追い風になっているだけではなく、非常に安全で美しい国、親切な国民性、おいしい料理が相まって訪日旅行の人気が急速に高まっています。今回は、ずっと日本に来たがっていた妻も帯同しました」

 ―日本からPEIへの旅行者数が減った背景には、外国為替市場での円安傾向で海外旅行費用が上がったことも一因になっています。

 「確かに過去数十年間に海外旅行の費用が高くなり、日本の訪問者数が減少したと認識しています。しかし私たちは、日本経済が繁栄し、日本の方々がよりお手頃な価格で旅行できるようになることを願っています。そしてPEIへのご来訪を促進し、歓迎するための方法を探していきます」

【ロブ・ランツ(Rob LANTZ)氏】ITやバイオサイエンス、再生可能エネルギーなどのスタートアップ企業のコンサルタント、投資家を経て、2023年4月にプリンスエドワード島(PEI)州議会議員に当選。PEI州の住宅・土地・地域相、教育・幼児教育相を経て、25年2月に第34代首相に就任した。州都シャーロットタウン出身。

色とりどりの漁師小屋が並ぶプリンスエドワード島のフレンチリバー地区(大塚圭一郎撮影)
色とりどりの漁師小屋が並ぶプリンスエドワード島のフレンチリバー地区(大塚圭一郎撮影)

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バンクーバーで第54回スーパーレディースゴルフ大会開催

スーパーレディースゴルフ大会2025に参加者で。2025年9月26日、バンクーバー市。写真提供 塩入勝子さん
スーパーレディースゴルフ大会2025に参加者で。2025年9月26日、バンクーバー市。写真提供 塩入勝子さん

 今年第54回を迎えた、毎年恒例のスーパーレディースゴルフ大会が9月26日、バンクーバー市University Golf Courseで開催された。天気が心配されたが、当日は厚い雲が覆ったものの雨が降ることもなくゴルフ日和となった。

 今年は例年より少ない参加者となったということだが、女性ゴルファーたちは日頃の練習の成果を存分に発揮。優勝はTerri Laliberteさん。主催した塩入勝子さんによると、54回目にして初めて日本人以外の名前が優勝者に刻まれたという。

優勝したLaliberteさん(左)と主催者の塩入さん。2025年9月26日、バンクーバー市。写真提供 塩入勝子さん
優勝したLaliberteさん(左)と主催者の塩入さん。2025年9月26日、バンクーバー市。写真提供 塩入勝子さん

 スーパーレディースゴルフ大会は1988年に「ルールなどを学びながら楽しくゴルフをうまくなりましょう」と塩入さんが日系の女性ゴルファーに声を掛けて始まった。現在は日系にこだわらず女性ゴルファーの交流の場として毎年開催されている。年に1回以上開催していた年もあることから今年が37年目となる。

 初優勝のLaliberteさんには優勝トロフィ、賞金、賞品が贈られた。

 毎年「来年も続けられたら」と話す塩入さんは「今年も開催できて本当によかった。次も参加してくれる皆さんがエンジョイしてプレーできるようにがんばりたいと思います」と語った。そして開催に尽力してくれた参加者や賞品をドネーションしてくれたスポンサーに感謝した。

第54回スーパーレディースゴルフ大会結果

Net
優勝 Terri Laliberte 68
2位 石倉仁美 71
3位 松下秀弥 73

Gross
優勝 石倉仁美 87
2位 Terri Laliberte 90
3位 Babara Mcdaniel 91

Gorss優勝、Netでも2位の石倉仁美さん(右)と塩入さん。2025年9月26日、バンクーバー市。写真提供 塩入勝子さん
Gorss優勝、Netでも2位の石倉仁美さん(右)と塩入さん。2025年9月26日、バンクーバー市。写真提供 塩入勝子さん

(記事 編集部)

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「アワ・レディ・ピース」音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第40回

はじめに

 日加関係を応援頂いている皆さま、音楽ファンの皆さま、こんにちは。

 10月の声を聞くと一気に秋が深まり既に冬の予兆を感じます。先日、朝起きたら気温は1℃。日課のウォーキングに出かけた訳ですが、近所の公園に通じる遊歩道では前日の雨で出来た水たまりに薄っすら氷が張っていました。紅葉が進み、落ち葉も目立って来ました。空気が澄んで、遠くの景色も輪郭がはっきりと見えます。

 こんな初冬の季節には、自分を元気付けるために、芯の強いロック・ミュージックを聴きたくなります。商業化されたロックではなく、ウッドストックの頃の熱量と創造性を放射するような21世紀のロックです。

 そこで、今月の「音楽の楽園」はアワ・レディ・ピース(Our Lady Peace)です。敬愛を持ってOLPと呼ばれています。1992年にトロントで結成。以来、ヴォーカル兼ギター兼ソングライターのレイン・メイダを核として30年を超えて今も現役です。カナダのオルタナ/グランジ系ロックの象徴的な存在です。現在、「OLP30」と銘打ったコンサート・ツアーを敢行中で、12月にはトロントやバンクーバーでその勇姿が観れます。

名は体を表す

 ロック史を紐解くと、幾つかの偉大なバンドはアルファベット3文字の略称を持っています。ファンにとっては、その3文字が楽団の音楽性を表すだけでなく、歴史をも語りかけるのです。例えば、ELP(Emerson, Lake & Palmer)、ELO(Electric Light Orchestra)、BST(Blood, Sweat & Tears)、BBA(Beck Bogert & Appice)等々です。そんな、ロック烈伝にOLPも列せられています。

 そこで、まず疑問が沸くのはOLPという名前の由来です。Our Lady Peace、訳しようによっては「平和の聖母」です。決してロック・バンドっぽくはありません。しかし、ビートルズもローリング・ストーンズも楽団名には強烈なメッセージが含まれています。「平和の聖母」にもバンドの思いが込められているのです。

 時は、1991年。トロント大学で犯罪学を専攻していたレイン・メイダは、英国出身のギタリストのマイク・ターナーと出会い新しいバンドを結成。「As If」と名乗り、トロント近郊のオシャワを拠点に活動を開始します。やがて、音楽プロデューサーのアーノルド・ラニと出会い、オリジナル曲を軸に活動を本格化させ、音盤制作も視野に入れていきます。必然的に、バンド名をもっと印象深く主張の明確なものに変更しようとなるのです。

 そこで、メンバー間で相談している中で、行き着いたのが詩人・作家マーク・ヴァネ・ドレンの1924年の詩集「Spring Thunder」に収録された詩『Our Lady Peace』です。ドレンは、米国イリノイ州出身で長くコロンビア大学で教鞭を取り1940年にピューリッツァー賞を受賞。アレン・ギンズバーグやジャック・ケルアックらビート世代に影響を与えています。この詩は、人間社会の混乱や戦争、暴力の中に精神的な救済を求める内容で、Our Ladyは聖母マリアの慈愛を暗示し、Peaceは魂の安寧を志向しています。

 文学的かつ哲学的で精神的な内容である上に、その響きの美しさに惹かれて、バンド名に採用したと云います。メイダ自身も「宗教的な意味はなく、混沌とした中にある平和の感覚を表したかった」と語っています。OLPは30年以上に及ぶ活動の中で進化していますが、人間の孤独、精神的苦悩、社会への問いかけが音楽の根底にあり、このバンド名は正に「名は体を表す」を地で行っている訳です。

OLP始動

 音楽に限らず、文学でも映画、絵画、ファッション等の芸術では、時として、デビュー作品に作家の核心が表れるものです。OLPも例外ではありません。

 デビュー盤「ナヴィード(Naveed)」は、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムというロック・バンドの黄金律が生むシンプルにしてパワフルな直裁な音楽です。1994年3月にリリースされましたが、今聴いても荒削りな中に虚飾を排した原初的ロック・ミュージックの輝きが眩しいです。音盤の表題ナヴィードとはペルシャ語で「良い知らせ」或いは「福音」を意味し、メイダが書いた歌詞には形而上学的な要素が潜み、救済と破滅の間の緊張感、希望と現実の間に引き裂かれる孤独のような二律背反がテーマになっています。哲学的な主題が荒々しいロックのリズムに乗って歌われ、聴く者の胸にダイレクトに迫ります。特に、メイダの声は、一度聴くと耳に残ります。村上龍の最高傑作「コインロッカー・ベイビーズ」の主人公ハシを彷彿させる屹立した声と言うべきでしょうか。U2のボノに近い声質です。

 「ナヴィード」には全11曲が収録されています。これらの楽曲は、1992年にOLPが結成された直後から書き溜め、デモ・テープを作って、独立系のレコード・レーベルに売り込みをかけていたものです。1993年4月に最大手ソニー・ミュージックのカナダ会社と契約。以後、デビュー盤の本格的制作に入ります。リハーサル・スタジオを借り切り、演奏力を鍛えると同時に、楽曲の完成度を高めます。この段階で加入したドラム奏者ジェレミー・タガートは100人を超えるオーディション参加者の中から選ばれた弱冠17歳の神童です。

 デビュー盤の11曲に響く全ての音はOLPの4人のものです(但し、7曲目『Denied』のリードギターだけ例外的に。後にボンジョビのギタリストに就任するフィルXがゲストで弾いた)。バンド・メンバーだけで全て録音するというのは、巨大な産業と化し専門の職業的スタジオ・ミュージシャンが録音するのが普通の音楽業界では稀有なことです。バンドの息づかいや皮膚感覚が1ミリも違うことなく伝えられるのです。

 地元トロント周辺の好事家には知られていても一般には全く無名の新人バンドOLPでしたが、デビュー盤「ナヴィード」はカナダの若者の心を掴みました。グランジ系のロックが商業的な成功に繋がる例は多くないのですが、この音盤からは5曲がシングル・カットされ、1994年に10万枚以上が売れました。カナダのグラミー賞とも言うべきジュノー賞のデザイン部門も受賞しました。この音盤のちょっと変なジャケットが評価されたのです。

 そして、OLPはロック・レジェンドの心も掴むのです。あのレッド・ツェッペリンのロバート・プラントとジミー・ペイジが結成した「ペイジ&プラント」のコンサート・ツアーに同行してオープニング・アクトを務めることになったのです。これは凄いことです。実力が認められたということです。前座と書くと軽く見られがちですが、超大物を目当てに来た聴衆を前に演奏出来るのですから、新人バンドにとっては絶好の機会です。時には、主役を食うほどの盛り上がりを見せたと云います。更に、ヴァン・ヘイレンのツアーにも同行することになりました。英米の最高峰バンドのツアーへの同行は、評判を呼び、「ナヴィード」は米国でも英国でもリリースされることになりました。

 2021年11月の段階で「ナヴィード」はカナダだけで40万枚を売り上げたと公式に確認されています。

次作への挑戦

 OLPは、1992年の結成から2年後にデビュー盤をリリースし、英米の伝説的トップ・バンドのツアーに同行。1995年には、当時人気絶頂のアラニス・モリセットのツアーにも参加しています。瞬く間にカナダ有数のバンドへと成長した訳です。

 そうなると、当然ながら次回作への期待が否が応でも盛り上がります。しかし、事はそう簡単ではありません。人によっては、その期待をプレッシャーと感じることもあるでしょう。演奏ツアーを続けながら、バンドとしての統一感を維持した上で前作を超える質を達成し、時代を先取るのは、言うは易く行うは難しです。でも、OLPは“一発屋”で終わらず、“ちゃんとアルバムを作るバンド”であることを証明したいのです。

 まず、バンドの要ベースがダンカン・クーツに交代します。そして、1996年1月、新アルバム制作の準備のために、オンタリオ州マスコーカにあるクーツの山荘に楽器と録音機材を持ち込んで約1か月間籠ります。全くのトリビアですが、マスコーカは2010年のG8サミットが開催された場所で、私も代表団の一員で参加しましたが、周りに何も無い、大自然の懐に抱かれた地でした。要するに、OLPの4人のメンバーとプロデューサーのラニーは、家族・友人・レコード会社関係者・メディアから完全に隔離された環境に身を置き合宿した訳です。しかも1月の厳冬期です。曲づくりに集中するしかありません。休憩にアイスホッケーで気分転換したそうですが。結果、20曲の新曲が出来上がりました。ほぼ毎日、新曲が出来上がった訳です。

そして、最高傑作

 1996年2月、OLPはトロントのスタジオに参集。マスコーカで出来たばかりの新曲20曲をブラッシュアップして録音します。その中からベスト・テイク11曲が厳選されます。

 そうして第2弾音盤「クラムシー」が1997年1月にリリースされました。カナダのアルバム・チャートでは初登場1位を獲得。米国でもリリースされ、ビルボード誌アルバム・チャートにも入りました。「クラムシー」はカナダと米国でもそれぞれ100万枚ずつ売り上げています。音盤の質を売上枚数で示すのは商業主義的過ぎるかもしれませんが、マスコーカの音楽三昧の合宿生活で生み出された曲は、前作「ナヴィード」を超える佳曲揃いです。今回も完全にメンバー4人のみの録音でしたが、メイダはピアノ・キーボードも弾いて、バンド・サウンドに厚みを加えています。高速のドライブ感もあればスローなバラード調もあります。メイダの声も七変化。曲想の幅が大きく1枚の音盤の中に極上のロック宇宙が拡がっています。OLPの最高傑作にして、北米におけるグランジ系ロックの最良の1枚と言えると思います。

 そんな名盤の生まれた瞬間をメイダが次のように語っています。

 「その時までの曲は全部置いていって、まったくゼロから始めたんだ。MTVもMuchMusicも、メディアもマネージャーもいない。ただ音楽を演奏して、作曲しただけだった・・・朝起きた誰かがアコースティック・ギターを手に取って、自然に曲が生まれていく。また、“音楽を楽しむ”という感覚を取り戻せたんだ・・・何かを楽しみ始めると、もう他人がそれを好きかどうかなんてどうでもよくなる。そうやってプレッシャーが完全に消えたんだ。(エドモントン・ジャーナル紙)」

継続はチカラ

 OLPは、その後もコンスタントに音盤を発表しています。

 2000年の「スピリチュアル・マシーンズ」は、未来学者レイ・カーツワイルの著書に触発された音盤です。近未来にAIが人間の知能を超える特異点が来る可能性を念頭に、改めて人間とは何かを問う傑作。バンドの生音と電子音が共存するサウンドも象徴的です。

 2002年には、創設メンバーのマイク・ターナーが抜けて、バークレー音楽院出身の米国人ギタリストのスティーブ・マズールが加入。OLPは、新たな高みを目指します。グランジ系の荒々しいサウンドからストリングスも大胆に取り入れてより洗練されたサウンドへと進化して行きます。メイダの声もかつての高音域から中音域を主体に深みのある歌唱法へと変化していきます。音盤「グラビティ」には、結成から10年を迎えたOLPの新しい面が見えています。

 2003年には「Live」をリリース。結成以来の幾多の演奏ツアーで鍛えられたライブでの実力を余すことなく見せつけます。全く私事ですが、ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンで大音量でこのライブを聴きながらウォーキングをすると自然とチカラが沸いて来ます。ちょっと面倒くさく錯綜する難問も、きっと何とかなるとポジティブに捉えられるのが不思議です。

結語

 最新作は2025年7月に発表された「Whatever(Redux)」です。ここには、結成から33年を経ても、OLPの核にある社会の現実に関する透徹した認識と人間への温かい眼差しがあります。

 この曲は、カナダ出身でWWE所属のプロレス世界ヘビー級王者クリス・ベノワの応援歌として2002年に誕生。ベノワ入場のテーマ曲でした。「Live」にも収録されたヘヴィー・ロックの佳曲です。が、クリス・ベノワは長年のトレーニングと試合で慢性外傷性脳症を患い、2007年に悲劇的最後を迎えました。衝撃的事件でした。

 初出から23年を経て、OLPは、改めて自殺予防とメンタルヘルスへの意識を広げるために、斬新なアレンジで再録音したのです。この曲のストリーミング収益は全て北米各地の自殺防止活動に寄付すると云います。

 私達は、地球温暖化と厳しい地政学と人工知能の時代に生きています。過酷な現実の中、絶望と諦観、救済と希望を示すOLPの音楽が必要だと実感します。

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

日本のアコースティック・デュオTOW(とう) のカナダ初公演ライブ

日本のアコースティック・デュオTOW(とう)のカナダ初公演となるツアーが、2025 年 11 月に開催されます。歌声、ギター、アコーディオンを融合させたシネマティックなサウンドで知られる TOW は、日本国内のみならず海外でも、幻想的かつ物語性に富んだ音楽で観客を魅了してきました。

今回のカナダツアーは、ブリティッシュ・コロンビア州内 3 つの会場で TOW の没入型パフォーマンスを体験する貴重な機会となります。

  • 11 月 6 日— バンクーバー|R. マクミラン・スペースセンター

プラネタリウムドームの下、 音と映像が 360 度に広がる圧倒的な没入空間で、TOWのシネマティックな音楽をお楽しみいただけます。

この特別公演には、サザンウェーブ沖縄の唄と踊り愛好会の皆さんをお迎えします。伝統と現代アートが交差する舞台をお楽しみ下さい。

  • 11 月 9 日— ミッション|クラーク・シアター

ツアーの最終公演となるミッションでは、ライティングとプロジェクション・デザインにより、幻想的で特別な劇場空間を体験いただけます。

TOW のステージは単なる音楽にとどまらず、ライブ映像やナレーションを取り入れることで、言語や文化を超えた体験を創り出します。さらに、今回の 2025 年ツアーは、Studio Snowblind による新作アクションアドベンチャーゲーム『Glaciered』のサウンドトラック制作と時期を同じくしてお り、彼らの多彩な表現力を改めて示すものとなっています。

チケット情報および詳細は、https://powellstreetfestival.com/tow-canada-tour-2025/、または各会場の公式サイトをご覧ください。

H-Martラングレー店内にダイソーがオープン

DAISOカナダのスタッフが揃って、H-Martラングレー店で。写真提供 H-Mart。
DAISOカナダのスタッフが揃って、H-Martラングレー店で。写真提供 H-Mart。

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー市を中心に展開しているアジア系スーパーマーケット、H-Martのラングレー店内に日本のダイソーが9月24日にオープンした。

 H-Martラングレー店は、現在メトロバンクーバーでも急速に発展しているバンクーバー市郊外のラングレー市にある。

 今回のオープンについてダイソーカナダは、「この度、ラングレーのH-Mart様の店内にDAISO店舗をオープンさせていただきました。H-Martラングレー店の開店により5店舗体制となります。ラングレー地区は人口の増加が進んでおり、当社としてもぜひ出店をしたいと考えていた地区でございます」とコメント。

 H-Mart店内への出店については、「H-Mart様の高い運営能力と商品力、当社の商品との親和性に期待して出店の相談をさせていただきました。開店にあたり多大なるご協力を賜り、当社の通常の店舗と同水準の品揃えで開店させることができました。同地区の消費者の皆さまに日本品質のDAISO商品を提供できる機会を与えていただいたことに心より感謝しております。また、新しい商品の導入や品揃えの改善などを進めてまいりますので今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします」と相乗効果を期待した。

 H-Mart担当者は、「H-Martラングレー店内に、5店舗目となるDAISOが9月24日(水)にオープンいたしました。オープン前から大きな注目を集め、当日には多くのお客様にご来店いただきました。ダイソー様の商品は、低価格でありながら品質にもこだわり、一定水準以上の機能性やデザイン性を備えております。これにより、地域のお客様にもご満足いただけるものと確信しております」と語っている。

 H-Martは1982年にアメリカで創業。カナダでの1号店は2002年BC州コッキトラム市。以来、バンクーバー・ダウンタウン店などメトロバンクーバーに8店舗、BC州では9店舗目となるビクトリア店が今年5月22日にオープンした。国内では、アルバータ州に4店舗、オンタリオ州7店舗、ケベック州で3店舗を展開している。

 ダイソーはカナダで初めての直営店を2021年4月1日にバンクーバー市ダウンタウンのグランビルストリートにオープン。当時は新型コロナウイルス禍にもかかわらず、オープン時には長蛇の列ができた。現在は、バンクーバー市ダウンタウン、バーナビー市メトロタウン、サレー市ストロベリーヒル・ショッピングモール、リッチモンド市ランズダウンセンターに展開。ラングレー市H-Martラングレー店内で5店舗目となる。

「キッチン用品や文具などの生活必需品に加えて、各種公式キャラクターグッズも豊富に品揃えしています」というH-Martラングレー店内。写真提供 H-Mart
「キッチン用品や文具などの生活必需品に加えて、各種公式キャラクターグッズも豊富に品揃えしています」というH-Martラングレー店内。写真提供 H-Mart

(記事 三島直美)

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第29回 私活(わたしかつ)=「私を生きる」って、どういうこと? ~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

気づけば、もう10月。秋の風が心地よく感じられるようになりました。

ふと足を止めて空を見上げると、日差しの角度までやさしく変わっていることに気づきます。そんな季節の変わり目は、自分の心や暮らしを見つめ直すのにもぴったりですね。

さて、先月のコラムでご紹介した「私活(わたしかつ)」について、「もっと詳しく聞きたい!」という嬉しいメッセージをいただきました。今回はその“私活”を、少し深掘りしてお話しします🌸

実は「私活」とは、私の造語なんです。(今、試しに「私活(わたしかつ)」で検索してみたら、出てくるのは全部、私のブログとこの連載ばかりでした)

私が考える終活は「死や終わりの準備」ではなく、“これからを自分がどう生きたいか”に焦点を当てる活動のこと。

先日、あるオンライン対談で、教育の現場で長く活躍されている方が、こんな言葉を口にしました。

 「私は今が一番幸せ!地に足がどーんと着いてる!自分を満たすことが幸せ!!」

その瞬間、心の中で拍手したくなりました。あぁ、これこそ“私活”だなって。「誰かのため」だけに生きるのではなく、ちゃんと“自分の軸”をもって生きている。

私たちはつい、家族のことや人の目を優先して、自分の想いを後回しにしてしまいがちですよね。でも、ふと立ち止まって考えてみてほしいんです。

 ・どんな暮らしをしたい?
 ・自分が本当にしたいことは何?
 ・今、幸せって自信をもって言える?

この問いに素直に答えられたら、きっとそれが“私活”の第一歩。人の期待や常識に流されず、自分の人生のハンドルをしっかり握ること。それが「私を生きる」ということ。

でも現実は、そう簡単じゃないですよね。

仕事、家族、健康、お金、環境、、、、どれも大切。だからこそ、やりたいことを後回しにしたり、今すぐには動けないこともあります。私自身も、「やりたいけど、今は無理かも」と感じる瞬間が何度もあります。

でも最近気づいたんです。「できない理由」を一枚裏返すと、そこには本当の「夢」が隠れている。

たとえば「時間がない」は、「本当はもっと自分の時間を大事にしたい」、「家族が反対する」は、「本当は応援されるくらい自分を信じたい」。実はそんな願いの裏返しだったりするのです。

だから、“私活”は完璧じゃなくていい。

現実と理想のあいだで揺れながらも、「私はどう生きたい?」と自分に問い続けることが、すでに“私を生きる”ことなんだと思います。

終活=私活。

それは「人生の終わり」を整えることではなく、「これからの人生をどうデザインし、どんな未来を描くか」を考えることです。

年齢を重ねても、「私、今が一番幸せ」と言える自分でいたい。そのために、日々の暮らしの中で小さな“私活”を積み重ねていきたい。

今日も、自分の人生を自分らしくデザインしていきましょう!

Let’s 私活!

*ご感想・ご質問は、メールにてお気軽にどうぞ。voice@shukatsu.ca

本コラムは終活に関する一般的な情報提供を目的としています。内容には十分配慮しておりますが、必要に応じてご自身での確認や、専門家へのご相談をおすすめします。なお、本コラムをもとに行動されたことによる不利益については、免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

グローバルライフデザイナー/海外終活アドバイザー
カナダ・バンクーバー在住。

カナダで親しい友人を突然亡くしたことをきっかけに、終活の大切さを実感。
相続専門の弁護士アシスタントとしての経験をもとに、海外を含むさまざまな場所で暮らす日本人の終活を、学びの視点から支えている。

エンディングノートの活用や家族との対話を通じて、「自分らしくこれからを生きる」ヒントを共有する活動を続けている。

「終活」を、これからの人生を見つめ直す機会ととらえる——そんな“私活(わたしかつ)”という考え方も、大切にしている。

家族は、カナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。
ホームページ:https://www.shukatsu.ca

「赤毛のアン」の島、州首相が日本への輸出拡大を目指して豊かな食品PR トランプ米大統領復帰で「貿易不透明」の中で

2025年大阪・関西万博のカナダ館の赤くライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館の赤くライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館でのイベントでプリンスエドワード島(PEI)について紹介するロブ・ランツPEI州首相(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館でのイベントでプリンスエドワード島(PEI)について紹介するロブ・ランツPEI州首相(大塚圭一郎撮影)

 小説「赤毛のアン」の舞台として知られるカナダ東部プリンスエドワード島(PEI)州のロブ・ランツ州首相が来日し、ロブスターやサーモン、かき、ムール貝といった豊かな食品を紹介するイベントが2025年大阪・関西万博(大阪市)のカナダパビリオン(カナダ館)で9月20日、開かれた。最大輸出国となっているアメリカ(米国)のドナルド・トランプ大統領が輸入品への関税を引き上げるなど「アメリカとの貿易が不透明になっている」(ランツ氏)という中で、日本を含めた世界への輸出を拡大するのが狙いだ。

▽「タリフマン」が脅威に

 カナダは2024年のモノ(商品)輸出のうち約76%に当たる5474億カナダドル(1カナダドル=105円で57兆4770億円)を米国が占めている。私が2020~24年に駐在していた米ワシントン首都圏では、PEI産の新鮮なカキが「安心して食べられるブランド」として認知されて販売されていた。

 輸出の追い風になっているのは、カナダと米国、メキシコが結んでいる自由貿易協定(FTA)の「アメリカ・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)で、魚介類や農産物の多くの品目について互いに輸入関税の適用を免除している。

 しかし、「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は、USMCAの大幅な見直しを迫っている。発効6年後となる2026年7月1日までに実施する共同見直しが迫る中で、カナダのムール貝漁獲量のうち約8割を占め、ジャガイモ生産量のうち約2割を賄うなど食品生産が活発なPEI州は懸念を強めている。

▽カナダ館政府代表「『カナダの食の島』という名にふさわしい」

 カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表は「小説『赤毛のアン』の舞台であるPEIは赤い砂浜と肥よくな農地から世界的に有名なロブスター、ムール貝、ジャガイモに至るまでが送り出されているプリンスエドワード島は『カナダの食の島』という名にふさわしい存在だ」と紹介。

2025年大阪・関西万博カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)

 PEI州のランツ州首相は「PEIの魚介類や農産品の高い品質の背景には漁師や農家のまごころ、何世代にもわたって海と大地で働いてきた家族の誇り、そして安全で持続可能、信頼される食料を生産するという確固たる決意がある」と強調した。

ロブスターロールを作るところを実演するシェフのアダム・ルー氏(大塚圭一郎撮影)
ロブスターロールを作るところを実演するシェフのアダム・ルー氏(大塚圭一郎撮影)

 イベントでは、バンズにロブスターの身を挟んだ「ロブスターロール」や生ガキ、蒸したムール貝の料理、揚げたジャガイモに載せたスモークサーモン、バターと香草で味を添えたズワイガニの料理、牛肉のバラ肉を焼いたステーキなどが出席者に振る舞われた。

 PEIのレストランで腕を振るうシェフのアダム・ルー氏は、持続可能な漁業をしていることを証明する国際認証制度「海洋管理協議会」(MSC)の認証を受けたロブスターを使ったロブスターロールを作る様子を実演した。

 また、PEIの州都シャーロットタウンにある「赤毛のアン」を題材にしたチョコレート店「アン・オブ・グリーンゲイブルズ・チョコレート」や、PEIにあるブルーベリー農園などの経営者らも会場で自社商品を売り込んだ。

【プリンスエドワード島】北大西洋に面したセントローレンス湾に浮かぶ島で、2025年4月1日時点の人口は18万29人。島を所管するプリンスエドワード島州はカナダの州としては最小で、州都はシャーロットタウン。赤い砂浜と灯台、瑠璃色の海で知られる保養地となっており、日本でもルーシー・モード・モンゴメリの小説『赤毛のアン』の舞台として広く知られている。

 カナダ連邦が誕生した1867年7月の約3年前、国家樹立について協議した最初の建国会議の舞台はシャーロットタウンだった。このためカナダ本土のニューブランズウィック州との間に1997年に架けられた橋は、連邦結成を意味する「コンフェデレーション橋」(全長12・9キロ)と名付けられた。橋は高速道路の一部となっており、片側1車線、計2車線の道路を通って自動車で直行できる。

バターと香草で味を添えたズワイガニの料理(大塚圭一郎撮影)
バターと香草で味を添えたズワイガニの料理(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館の赤くライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館の赤くライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)

(共同通信社経済部次長・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者・大塚 圭一郎)

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