カナダで気をつけたい「留学生を狙う詐欺 日本人留学生3人の証言」前編

 知らない土地で住まいを探し、慣れない英語で契約など手続きに取り組む留学生にとって、巧妙な詐欺を見抜くことは容易ではない。その状況につけ込み、さまざまな詐欺被害が起きている。

 カナダに留学中、詐欺被害に遭った日本人学生3人に被害の経緯を聞いた。前編・後編で紹介する。

マンションで突然の退去 入居後3カ月目に起きた被害

 千歩さんは専門学校を卒業後ワーキングホリデーでバンクーバーに来た。当時21歳で、貯金額は約10万円。ホームステイ終了後の住まいを探す中で、日本語掲示板でイエールタウンの高層マンションにある家賃800ドルの「デン」と呼ばれる小部屋を見つけた。入居を決めた理由について「仕事場がウォーターフロントだったので」と話す。

 入居後しばらくは大きな問題もなく過ごしていたが、入居して3カ月目のある朝、オーナーから突然「鍵を作りたいからメールアドレスを教えて」と連絡が来た。本人もよく意味が分からなかったが、言われたとおりにメールアドレスを伝えて外出した。しかし、帰宅すると鍵が使えなくなっていた。裏口も反応せず、アルバイトの時間が迫り困っていると、マンションの中から出てきた男性が扉を開けてくれた。

 ところがその男性は、扉を開けた瞬間に「何号室の方ですか?」と言い当てるように聞いてきた。そのまま千歩さんを共用スペースに連れて行き、オーナー名や住人数、どのような契約で住んでいるのかなどを次々と問い始めた。千歩さんは、「英語が分からないふりをしても翻訳アプリを使って質問が続いて、逃げ場がなかった」と当時の緊迫した様子を話す。

 そして契約書データをこっそり確認しようと端末を開いた瞬間、男性は画面をのぞき込んで「これは何?」と追及し、契約書データの送付を強く求めた。鍵が使えず部屋へ戻ることもできない状況で、拒否することはできなかったという。

 契約書のデータを共有して部屋の鍵を開けてもらい、戻ってオーナーに状況を伝えると、すぐに電話がかかってきて「なんで従ったのか」と強い口調で責められた。その後アルバイトがあったにもかかわらずその場で待機することを命じられ、「管理人さんに出ていってって言われた」と当日の夜までの退去を指示された。急な対応で欠勤となり、職場からも注意を受け、信用にも影響したという。

 オーナーの車で移動した先は、ロブソン通り沿いのマンションで、ソラリウムと呼ばれる、壁がガラス張りになっている小部屋だった。1カ月は同じ家賃で住めるが、2カ月目からは家賃が上がると説明された。不信感が強くなっていた千歩さんは、その後新たな住まいを見つけ、1カ月で退去した。

 退去後もデポジット返金や電気代の差し引きをめぐる混乱が続いた。返金を問い合わせると「今アメリカ旅行に行ってる」などと説明し、鍵のデポジット100ドルは返金されていなかった。指摘すると「忘れていた」と話し、家賃のデポジットは時間をかけて返金されたが、電気代の計算は曖昧なままだった。

 その後移った一軒家では、ブリティッシュ・コロンビア州の規定に沿った紙の契約書を対面で交わした。ここで初めて適切な契約手続きを知った。以前の契約書はデータのみで、オーナー名はファーストネームだけ、署名もなかった。

 その後、友人の紹介で偶然にも同じマンションで以前暮らしていた日本人に会った。その人も、水漏れ工事を理由に突然退去させられ、まったく同じソラリウムに移されたという。もともと住んでいたデンは値上げされて再募集されていた。さらに入居前にも、別の日本人留学生がデポジットをめぐるやり取りでトラブルになり、迫られて退去させられたケースがあったという。

 こうした話を聞くうちに、千歩さんは「管理人とオーナーは最初からつながっていて、理由をつけて住人を入れ替え、家賃を上げる流れができていたのではないか」と感じたと話す。

 渡航前の貯金は10万円ほどで、急な退去は生活の基盤を大きく揺るがす出来事だった。当時の心境について千歩さんは「なんでこうなってるんだろうって。追い出されて次どうしようっていうので頭がいっぱいで、何も考えられなかった」と振り返る。

 「留学生って、本当に狙われやすいんだなと思いました。自分は知らなかっただけで、後から同じ被害にあった人に会って、ようやく全部つながった。これから来る人には、最初に知っておいてほしいです」と話した。

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 後編では、SNSをきっかけにした被害で、小切手やE-transferなどカナダ特有のやり取りに戸惑う体験談を紹介する。

(取材 田上麻里亜)

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