高丘、好セーブ連発で最小失点もホワイトキャップス1点が遠く…MLSプレーオフ敗退

後半に入り好セーブを見せたGK高丘。最少失点のまま反撃を待つ。2023年11月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito
後半に入り好セーブを見せたGK高丘。最少失点のまま反撃を待つ。2023年11月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito

 ホワイトキャップスの2023年シーズンが終了した。ロサンゼルスFCとのプレーオフ第2試合、後がないキャップスはGK高丘の再三の好セーブで最少失点も、得点チャンスを生かせなかった。

11月5日(BCプレース:30,204)

バンクーバー・ホワイトキャップス 0-1 ロサンゼルスFC

序盤はホワイトキャップスにも得点好機があったがゴールできず、24分にPKのチャンスを得たLAFCが先制。その後キャップスにPKのチャンスが来たかと思われたが、反則の判定なく、前半は0-1で折り返した。後半も終盤にキャップスは11人で攻撃するも得点できず、試合が決定した。

「最後の最後まで諦めない姿勢は見せた」

 この日はPKでの失点の直後の28分、32分に連続セーブで相手に追加点を与えなかった。また63分にも好セーブを見せ、随所でチームを救った。

 高丘は試合について「ホームで勝つしかないというところで、(チームは)1 週間いい準備してきましたし、前半からしっかりボールを持って、ゲームを支配できたかと思います」と振り返った。

 自分たちの得点好機などでアンラッキーな部分があったが、「それをやっぱり守りきられてしまったというか、それを跳ね返せなかったっていうところが現実としてあるので、そこは素直に悔しいです」とどんな状況でも勝ちきれることの必要性を語った。

 「試合が終わった直後ですし、あんまり整理がついてないですけど、僕らはできる限りのことはしたと思いますし、最後の最後まで諦めない姿勢は見せたかなと思います」と負けはしたものの今季最終試合での戦いに胸を張った。

 Vanni Sartini監督は高丘について「緊張している様子もなく落ち着いていたが」と聞かれると「良かったです」と笑って日本語で答えた。ロサンゼルスでの第1試合は2-5だったが、「(陽平は)すばらしかった」とこの日のプレーを称賛した。

人間としてもゴールキーパーとしても、もっと上のレベルに

 今季を振り返っては、「長いシーズンの中で、まあいい時もあれば悪い時もありますし、我慢しなきゃいけない時期もありますし、僕自身苦しい時もあればチームが苦しい時もあります。そういったいろんな状況の中で僕自身、その時々で何が必要か、自分にとってのベストは何か、チームにとってのベストは何かっていうのは常に考えながらやってきたつもりですし、できる限りのベストは尽くしました」と語った。

 「僕自身、パフォーマンスのところでもチームに与える影響だったり働きかけだったり、まだまだ伸ばさなきゃいけないところがたくさんあると思うんで、もっともっと人間としてもゴールキーパーとしても 1 個 2 個、上のレベルのプレイヤーになりたいなと思いますし、ならなきゃいけないなとは思ってます」とシーズン最後まで自身に厳しいコメントだった。

 Sartini監督は今季の高丘について、「彼にとってとてもいいシーズンだったと思う」と振り返った。どのポジションでもそうだがとしたうえで、「初めてのシーズンで最初の数カ月は上り調子だが、46試合中43試合プレーするという状況では、7、8試合がタイトな時にはメンタル的にも休みがあった方がよりいいプレーができるのではないかと思う」と来シーズンでのよりよいパフォーマンスのための起用方法を話し、「全体的にとても良かった」と高丘のシーズンを評価した。

高丘も猛抗議、監督「この日の審判は最悪だった」

 ロサンゼルスにPKが与えられた瞬間、高丘を含めホワイトキャップス選手はティム・フォード主審を囲んで猛抗議した。しかし、ビデオ判定されることもなくPKが与えられ、この試合唯一の得点となった。

 Sartini監督は記者会見で、「はっきり言って、この日の審判は最悪だった」とためらうことなく語った。ロサンゼルスがPKを与えられた場面を振り返り、あのプレーでロサンゼルスにPKが与えられるなら、ロサンゼルスのLaryeaに対するプレーでキャップスにPKが与えられるべきだったし、高丘の頭に当たるようなロサンゼルスGonzálezのプレーにレッドカードが与えられなかったのは理解できないと語った。

 高丘は「レフリングのところについてあんまり言いたくないですけど」と明言せず、GauldとWhiteも試合後の会見で「自分たちが言うことではないと思っている」と苦笑いを見せ、ピッチ外での審判への批判を封印した。

 監督は「自分たちには公平なチャンスが与えられたなかったと思う。残念ながら審判の判断が悪かったことが原因だ」と批判した。審判に対する批判については自分一人が引き受けるとも語った。

 自身は後半アディショナルタイムにレッドカードを受けたため、来季開幕戦に出場できない。「来季開幕戦がアウェイなことを願っている」とレッドカードを受けたことを後悔している様子はなかった。

キャップスMLS史上最多、3万人を超えるファンが大声援

GK高丘も攻撃に加わり、総力戦に。2023年11月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito
GK高丘も攻撃に加わり、総力戦に。2023年11月5日、BCプレース。Photo by Koichi Saito

 この日のBCプレースには3万人を超えるファンが詰めかけた。ホワイトキャップスによると、MLSに昇格して最多だったという。

 試合開始から大声援を送ったファンだったが、試合終了間際、高丘も攻撃に参加する総力戦の姿勢を見せると会場は一気に沸騰した。

 高丘は「雰囲気はもう最高でしたね」と少し表情を緩めた。今季開幕戦、自身のMLSデビュー戦が約2万人だったと振り返り、「その時以上の熱狂というか、本当にサポートしてもらってるのを感じました」と感謝した。「結果で答えられなかったっていうのが少し歯がゆいですけど、こういう試合を勝っていくことで、ファンは毎試合足を運んでくれたりすると思う」と来季へ向けたファンへのメッセージとなった。

2023年バンクーバー・ホワイトキャップスFC

レギュラーシーズン34試合、12勝10敗12分け48ポイント、西カンファレンス6位
プレーオフ:ロサンゼルスFC戦
10月28日2-5
11月5日0-1

カナディアンチャンピオンシップ:優勝
ボヤジャーズ杯:優勝
リーグスカップ:ラウンド32

選手入場から盛り上がるBCプレース。2023年11月5日、BCプレース/バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
選手入場から盛り上がるBCプレース。2023年11月5日、BCプレース/バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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