カナダで開設できる3つの積立口座 RRSP・TFSA・FHSA:第3回「FHSA」

RBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさん。2023年2月10日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
RBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさん。2023年2月10日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

 将来のために積み立てを考えている人、現在のプランを見直したい人など、知っておくとためになる、カナダの3つの積立口座を紹介。

 退職後のための自己積立型年金プラン「RRSP:Registered Retirement Savings Plan」、非課税が特長の「TFSA:Tax-Free Savings Account」、今年から始まった「FHSA:First Home Savings Account」。

 それぞれに特徴が異なるが、複数を開設しての利用も可能で、内容をよく理解して、自身や家族の将来のために賢く利用したい。

 そこで今回はRBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさんに話を聞いた。

 第1回は「RRSP」、第2回は「TFSA」を紹介(各回を参照)。そして今回は、今年4月から始まった新しい口座「FHSA:First Home Savings Account」を紹介する。

FHSA:First Home Savings Account

 2023年から始まった新しい貯蓄型口座。RRSPやTFSAと同じ貯蓄専用口座で、RRSPとTFSA両方の利点を導入しているのが特長。

 ただ、貯蓄の目的がマイホーム購入に限定されているため、RRSPやTFSAとは利用時の条件や特徴が異なる。

対象:
 カナダに居住し、口座開設時から過去5年間マイホームを所有していない人で、将来購入を考えている人。

特徴:

  • RRSPの税控除とTFSAの非課税の両方の利点がある。
     RRSPは入金時に税控除を受けて引き出し時に税金を支払う、TFSAは税金を納めたあとの所得から入金するため引き出しに非課税というのが特徴だが、FHSAは入金時に税控除を受け、さらに、入金後マイホーム購入目的であれば引き出し時には非課税という両方の利点を備えている。
  • 毎年8,000ドルまで積み立てが可能、生涯の積立上限は40,000ドル。
     積立額の上限は1年8,000ドルまで。上限額を利用しなかった場合、翌年に繰り延べは8,000までできる。翌年より先に繰り延べはできない。生涯で積み立てられる上限額は40,000ドルまで。
  • FHSAの利用年齢は成人に達した年齢から71歳まで。
     FHSA開設は、成人に達した年齢(州によって異なる)から71歳まで可能。
    *成人年齢は、ブリティッシュ・コロンビア州は19歳、アルバータ州、オンタリオ州は18歳。その他も各州で確認が必要。
  • 口座を開設した年から積立金額枠が開始される。
     FHSAは、口座を開設しなければ積立金額の枠が開始されない。
     TFSAは口座を開設した時期に関係なく、カナダに居住した年から限度額が累積されていくため、例えば、2009年以前からカナダに居住している人は、今年TFSA口座を開設しても2009年(TFSA開始年)からの累積限度額88,000ドルまで入金できる。
     それに対して、FHSAは口座を開設した年に入金限度額の枠が与えられる。例えば、今年開設すれば、2023年は8,000ドルの上限額まで入金でき、来年開設すれば2024年から1年8,000ドルの上限額枠内で利用できる。そのため、FHSAが2023年から開始されたからといってTFSAのように2024年に開設した時に累積上限額が16,000ドルとはならない。
  • マイホーム購入目的以外で引き出した場合は課税される。
     ただし、RRSP口座に移行する場合は非課税となる。

お勧めの利用方法

 FHSAは、RRSPとTFSA両方の利点を備えていることを考えると、平井さんは「将来マイホームを購入されたい方で現在働いている方は、まずこの口座を利用されるのがいいかなと思います」と話した。

 上限枠が開設した年から始まることから、マイホーム購入を考えているなら早めに口座を開設することを勧めるという。「100ドルでもいいので、まずは口座を開設しておくと、毎年上限額を利用しなくても、あとは自分のプランに合わせて積み立てができますので」と平井さん。

 20~40代でマイホームの購入を考えている人には自動積立設定がお勧め。また、「成人している子どもやお孫さんが将来マイホームを持てるように援助してあげたいという場合にも、開設を勧めるには最適な口座だと思います」と語った。

 ここまでカナダで開設できる貯蓄型口座3種類、RRSP、TFSA、FHSAを紹介した。

 平井さんは、RRSP、TFSA、FHSAのうち最初にどこから始めたらいいかという質問があった場合には、FHSAを勧めると話した。4月に始まったばかりのFHSAだが、これから積み立てを始めたいと思っているなら、RRSPとTFSAのいわゆる「好いとこ取り」をした貯蓄型口座を利用するのも一つの方法。

 貯蓄型口座は、個人の目的と用途に合ったものを賢く選んで、「カナダに居住されている成人の方にはぜひ利用していただきたい」と語った。

平井アンディ(ひらい・あんでぃ)
Chris Kwok Wealth Management Group・Associate
15年以上のキャリアを持つ。将来を安定して過ごせるためのライフプランについて、セカンドオピニオンの相談も受けている。
https://ca.rbcwealthmanagement.com/chris.kwok/home

Chris Kwok Wealth Management Group
RBC Wealth Management Dominion Securities Inc.(RBCウェルス・マネジメント資産運用グループ)の日本語担当サービス。
RBCグループを構成する5事業の一つRBCウェルス・マネジメントに含まれる。個人および法人の資産管理、並びにあらゆるニーズに応える金融商品・コンサルティングサービスを提供している。

RBC Wealth Management Group日本語チーム。写真提供:斉藤光一
RBC Wealth Management Group日本語チーム。写真提供:斉藤光一

合わせて読みたい関連記事