カナダで開設できる3つの積立口座 RRSP・TFSA・FHSA:第1回「RRSP」

RBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさん。2023年2月10日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
RBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさん。2023年2月10日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

 将来のために積み立てを考えている人、現在のプランを見直したい人など、知っておくとためになる、カナダの3つの積立口座を紹介。

 今の時期に話題になる「RRSP:Registered Retirement Savings Plan」、非課税が特長の「TFSA:Tax-Free Savings Account」、今年中に始まる「FHSA:First Home Savings Account」。

 それぞれに特徴が異なるが、口座移行もできるなど相互に利用も可能で、内容をよく理解して、自身や家族の将来のために賢く利用したい。

 そこで今回はRBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさんに話を聞いた。

 3回に分けて紹介する。第1回は「RRSP:Registered Retirement Savings Plan」。

RRSP:Registered Retirement Savings Plan

 2月になるとニュースでもよく耳にするRRSP。その名称の通り、リタイアした後に政府からの年金以外の収入源として積み立てるための自己積立型年金プラン。

対象:
カナダに居住し勤労所得がある人

特徴:

  • 積立額を所得から控除できる。
     RRSP口座に入金された金額はその年のタックスリターンで税控除が受けられる。そのため、入金できる締め切り日があり、通常対象年度の翌年2月末まで。2022年分は2023年3月1日までに入金をすれば、2022年タックスリターンで税控除の対象となる。
     また、源泉徴収されている所得税を払いすぎている場合は、政府から還付金が受け取れる。
  • RRSP積立は勤労所得の18%まで、2022年度分は29,210ドルが上限。毎年若干上昇する。           
     控除限度額は前年のタックスリターンで申告した収入の18%。例えば今年申告する2022年タックスリターンのためのRRSP限度額は昨年申告した2021年タックスリターンの勤労所得を基に計算されたもの、さらに過去からの累積分となる。正確な金額は、自身のCRA(Canada Revenue Agency:カナダ歳入庁)アカウントで確認できる。CRAから送られてくるNotice of Assessmentにも記載されている。
  • 積立期間中は非課税で、複利運用で資産を育てられる。
     入金された金額は口座に入っている間は金額が増えても課税されず、複利で増やすことができる。
     ただし、あくまでも税金は繰り延べされているだけで、引き出した時に所得として扱われ課税される。これは、退職した後や収入が少ない時に引き出すことで、課税率が低くなり税負担を減らす措置となっている。
  • 71歳になる年には、RRIF:Registered Retirement Income Fund(年金所得口座)に移行する。
     RRSPは71歳になる年まで将来のために積み立てていく口座で、72歳になる年からは少しずつRRIF口座から引き出す。
  • RRSPとRRIFの資産は、破綻の場合に債権者から保護される。
    (対象外となるケースがあるので注意)
  • 年齢に関係なく途中での引き出しも可能。
     リタイア前でも、収入が少ない時など必要な時に引き出しは可能。ただし、引き出した年の収入として扱われるため、所得税の対象となる。

 RRSPは所得が多い就労年齢時に税控除をすることで積み立てを促し、将来収入がなくなる、もしくは減少した時に備えることを目的としている。
 積立額が控除の対象となり、カナダでは税率が所得額に応じて上がっていくため、所得が多い時にRRSPを利用すると納税額が減る割合が大きくなるという特徴もある。

お勧めの積み立て方法

 平井さんはお勧めの積み立て方法として、「お客さまの可能な範囲内で、例えば、毎月金額を決めて自動積み立てを設定されるのが安定していると思います」と話した。

 RRSPの締め切り2月末頃に、ギリギリになって慌ててまとめて入金という事態を避けることができると言う。

 また、毎年限度額まで入金する必要もないとアドバイス。その年に利用しなかった積み立て可能額は翌年以降に繰り越されるため、無理のない積み立て設定を勧めている。

 「多くの方に知っておいていただきたいのは、積み立ての開始が締め切りの翌日からということです。なので、その年のタックスリターンのNotice of Assessmentが来たら、RRSPの金額を確認して、入金額を再検討して早めに設定されるのがいいと思います」とアドバイスした。

 さらに、50・60代にはRRIFへの移行を円滑にするための見直し、20~40代には今の税控除と将来の年金のために自動積立設定がお勧めと語った。

 第2回は「TFSA:Tax-Free Savings Account」を紹介する。

平井アンディ(ひらい・あんでぃ)
Chris Kwok Wealth Management Group・Associate
15年以上のキャリアを持つ。将来を安定して過ごせるためのライフプランについて、セカンドオピニオンの相談も受けている。
https://ca.rbcwealthmanagement.com/chris.kwok/home

Chris Kwok Wealth Management Group
RBC Wealth Management Dominion Securities Inc.(RBCウェルス・マネジメント資産運用グループ)の日本語担当サービス。
RBCグループを構成する5事業の一つRBCウェルス・マネジメントに含まれる。個人および法人の資産管理、並びにあらゆるニーズに応える金融商品・コンサルティングサービスを提供している。

RBC Wealth Management Group日本語チーム。写真提供:斉藤光一
RBC Wealth Management Group日本語チーム。写真提供:斉藤光一

(取材 三島直美)

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